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国士騎士⑦

ギラギラと照りつける太陽の光が、山の中をスキップで颯爽と駆け抜ける男達を。

―さも周りにお花畑があるかのように、煌びやかに照らしていた。


が、花は花でも「あなたの死を望む」という花言葉を持つ''スノードロップ''が一面に咲き誇っていることだろうか。


強化合宿が始まって早、3週間。毎朝の恒例行事となりつつある、''腐死犬''との追いかけっこ。


1度噛み付かれたものは、その日1日臭豆腐なんぞ比にならない臭いを付けられる。

それはまさに死。周りのものから避けられ、軽蔑の眼差しで見られ。

―つまり、社会的死である。


それはさておき、死に物狂いで地を駆ける騎士隊達であるが。



「さぁ、走れ走れ! 噛まれてもダメージはないが、臭いぞ! 」



――アッハッハッハッハッ!



その姿を空中から笑うのは、アルト。

まるで、全てを支配しているかのように。


「みんな、あと少しだ! 」


木で覆われていた森だが、目の前に開きが見える。その先に森は続かず。つまり、この地獄の終結である。


「おらぁぁぁぁ! 」


魔法を使ってはならないという、そんな鬼畜な制限はないこの訓練。

いや、犬達からスキップで何十キロを逃げ切れという既に鬼畜な訓練であるが。


魔法を行使し、人ならざる速さで駆け抜ける者達には、ほんの数時間の出来事。


隊員達が、次々と天国に飛び込んでいく。


「はぁ、はぁ……。皆、ぶじか? 」

「あぁ。第1班、問題なし」


続いて、息を切らしながら。


「第2班も無事だ」

「同じく3班」


4班に分かれ行われているこの訓練。毎回、生存者の点呼を行うが。


今日も今日とて''腐''敗者入るもので……。


唇を噛み締めながら、4班のリーダーランド。


「4班……くっ、1名、犠牲」

「そ、そうか……」


班は違えど、同じ騎士隊の中から犠牲者がでたのた。涙を飲むように、悔しそうに……?


いや、違う。―これは……。


「な、もう……。笑わないでください! 」


そう、笑いを堪えていた。


「いやー、すまんすまん」


腹を抱えて笑い出す4班以外の面々。まるで他人事である。

いや、実際に他人事ではあるのだが。


「皆、ご苦労であった。今日の犠牲者は4班だけと、初日と比べれば随分と成長したものだ」


アルトは思い出す。

初日に無事、''腐死犬''から逃げ切れたのは、たったの3名だけであったことを。


なれない山道、スキップ。このダブルパンチに幾度となく敗れた騎士達。


だが、日々日頃の訓練の成果。

着々と増え続ける体力と魔力、不慣れな足場はの対応。―そしてスキップ。


「そして、君達には朗報がある。あと3日でこの合宿は終わりを迎える」


その言葉に騎士達。


「「「うぉぉぉぉぉぉぉ! 」」」


―やった、やっと終わりだ!

―地獄から解放される!

―生きて、生きていたんだ!


などと。

皆が喜びの声を荒らげ、祝杯をあげんばかりの勢いで。


だが、その喜びは突如と消え去る。


「まぁ、そう焦るな。君たちに、最後の試験を与えようと思ってな」


ふぅ……。と、一息。そして続ける。


「初日に倒したキングオーガ。あれを単独討伐してもらう」


「「「………………」」」


訪れるのは沈黙。これほどの人数がいて、これほど沈黙になるなど……。

校長先生の技量があっても難しかろう。


「た、隊長……。冗談、ですよね? 」


声を震わせて言う、ランド。

ランドの顔を見てアルト、笑顔で頷く。

微かな希望……いや、冗談だという確信。


そんなことを言うはずがないと。自らに、死ににいけと言わんばかりの命令に……。


だが、その期待は即座に粉砕される。


「真面目も真面目、大真面目だ」


と……。


「で、できま―」


ランドの言葉を遮って、アルト。


「お前達を、1ヶ月間鍛え続けたのは誰だと思っている? 俺だぞ、国士騎士隊長アルトだ」


空中にいたアルト。ゆっくりと地に足をつけると……。

近くにいた騎士太刀を指さしながら。


「お前も、お前もお前も! 」


そして、また空中に。


「ここにいる全員が! キングオーガと単独でやり合うだけの力はついている。間違いない! 」


無言になる騎士達。隊長に直々に言われた「力がついている」という言葉に、少しは心を楽にされただろうが。


まだ、まだまだ足りていない。

初日、あんなに苦労して、やっとの思いで討伐したキングオーガ。


最終試験は、それの単独討伐。


恐怖に、踏ん切りがつかないでいる。


「そうか……ならいい」


と、アルト。冷めた口調で、見捨てるように。


「お前達なら行けると、そう信じた俺が馬鹿だった。そうだよな、お前達程度には無理があるよな」


と、ならもういいと。無言で俯く隊員達から視線をそらし。


覚悟を決めようと、声をあげようと。そんな気持ちで震わせる拳に、見て見ぬふりをし。


アルトは、山頂へと飛び立った。






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