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戦争②

俺の目の前には、真っ白な天井が広がっている。


「ト……ルト……アルト……」


どこからか俺の名前が聞こえてくる。俺は死んだのだろうかと錯覚してしまうくらいどこか心地よく、だが心の中は闇で包まれている


「狐月 湊!」


その言葉に俺は過剰に反応する。その名前は俺の前世での名前だからだ


そして、その名前が呼ばれると心地よいものから、何故か名前を知っている者への警戒心に瞬時に切り替わった。


俺はすぐに起きあがり辺りを見回す


するとそこには1人の老人が立っていた


「確か……貴方は絶対神?」


「ほっほっ、やっと気づきおったか」


自身の髭を撫でながら、優しく笑う絶対神に警戒心はとけた。


ここには見覚えがある。というか2回来ている


1度目は転生の時、2度目は洗礼の時


1度目は他の神たちもいたのだが、今回は2回目同様1人だけである。


「で、なんで俺をここに?」


「それはな、罪神の事と今のお主の父……その領地の人々におきている事を説明するためじゃ」


説明……


「俺は……父様に、領民な化け物とそう言われた」


アルトは拳を強く握り、プルプルと小刻みに震わせている。

それは怒りから来るものでもあるが、殆どは悲しみと恐怖から来るものだろう。


「落ち着け……と言っても無理だろうが少し落ち着くんじゃ。事を説明する。」


「たの……む」


絶対神は魔法で椅子を出し、そこに腰掛け話し始めた






つまりは罪神の「最後の細工」によって記憶操作が施され、みんなの記憶に「これまでの悲劇は俺のせい」という記憶が埋め込まれていたのだ。


「それは、どうやったらとける?」


「術者を殺すか、神魔法で打ち消すしかない」


「神魔法……。俺にも使えるはずだよな? 十神の力を持っている俺なら」


「無理じゃ」


それは即答だった。それはアルトが淡い期待を抱く事を避けての配慮なのかは分からぬが、その言葉には少し悲しみが混じっていた。


「何故だ! 俺は……力を」


「神魔法、それは神のみが使える魔法」


アルトの言葉を遮るように絶対神は言う。それはアルトが使えない事が明確だということだろう。


何故か出来ないでなく、できない理由がある


「お主は神の力を持っているから使う力はある。だが権利がない」


「権利?」


「そうじゃ、神魔法を使うには神格が必要。罪神も一応神に部類される。弱くはあるが神魔法を使う権利を持っておるのだ。


だから最後に仕掛けたのだろう。」


「な、なら俺が神格を手にしたら!」


「それも無理じゃ」


また即答の否定。アルトの心はだんだんと傷つけられていく。だが、変な期待を持たせ、それが無理だった時の傷に比べればマシだろうそう思って絶対神は言っている。


そもそもアルトを……いや、湊を殺したのは神、転生先で苦しめているものも神。更にはその心に追い打ちをかけているのも神。


絶対神はこの事を分かっている為、大変心が痛く今後の展開しだいでは責任を取る……つまりは神の代表として罰を受ける覚悟は出来ている。


本来、たかが人間1人の為にそこまではされないが、人生を2度も「神のミス」で潰しその精神を蝕んでいる。


今日他の9人の神を呼ばなかったのは、絶対神が全ての責任を負う、結末のケツ持ちをすると言う覚悟の表れだ。


「神格を手に入れるとお前は神界で生きる事となる。


そうなれば残された家族が悲しむ。それに、世界に封印した罪神が野放しにされその世界を滅ぼし、最悪地球や、ほかの世界にも被害が出かねない。


身勝手なのは分かっている。命を差し出せと言われれば差し出そう


それで罪神を止められるならば、世界の均等が保たれるのならば……喜んで命を差し出す。


それほどに罪神は儂らの手には追え

ない。


だから、罪神を野放しにするのだけは避けてくれ……」


深々と頭を下げる絶対神。


神になって罪神を止めればいいと考えるだろうがそれは無理だ。


神は世界に干渉できない、罪神は世界に干渉した為罪神となった。


だからこのように人に頼むしか無いのだろう


確かに身勝手だ。神共の事情など知ったことは無い。


だが地球には友人、こっちの世界にはネメスやスーリヤそれにキウン。更には父様やミルもいる。


この力も元はと言えば神に貰ったもの。


別に神のためじゃない。俺が冷静にメリットとデメリットを比較しただけだ。


呪いが解けなくてもいい。一人でもいい


でも……これ以上俺のせいで俺の大切な人や、関係ないほかの人まで死ぬのは俺が今後生きる中で一生後悔するだろう。


神となれば不老となり、老化で死ぬことはない。


その期間、長い長い期間をその後悔を背負って生きていくのは絶対にごめんだ


もう一度言う。神のためじゃない


あくまでも俺の為だ。俺のメリットを考えて動いたら結果神の助けになっただけだ。


それに、罪神を殺せば皆元に戻る。父様もミルも俺の事を化け物とは言わないだろう。


ほんの少しの辛抱だ


アルトは自分にそう言い聞かせた。


そして、ポツリと呟く


「良いよ」


バッ! と顔を上げた絶対神の目は少し潤っている


「助かる……アルト」


「別にあんたの為ではない。俺の為だ」


「だが、助かる……有難う」


はっ!


急に視界がブラックアウトしたかと思えば目の前はさっきとは違う景色だ。


と言うより洞窟? なのだろう。天井が石でできている


「ご主人様!」


アルトは首を横に向けると、そこにはスーリヤが立っていた





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