会心の一撃
「スケ君。君は明日はクッキーを作ってこい」
「ハルさんは明日ジュースだからな」
俺とハルさんが言い合っている間にも試合は消化されていく。
「あ! 研太郎。今見たこともないような大ダメージが出たぞ!」
「ああ。会心の一撃ってやつだな」
まるで運ゲーじゃないか。
まあ、実際プレイしているわけでは無いからどうでも良いのだが。
どんな理屈で会心の一撃は出るのだろうか。
九条はそんな俺の疑問を見透かしたように付け加えた。
「普段は攻撃を受けてもガードをしたり、急所を外して致命傷を避けるものだけどね。どうしてもまともに受けてしまうことだってあるわけだ」
「それが会心の一撃ってやつか?」
俺が確認すると九条は口角を上げて頷いた。
一回戦全ての試合が終わったわけだけど。
スピードの重要性はあると云えばある結果になった。
能力値の合計がみんな同じである以上、スピードに極端な差が無ければ、スピードが高い方が圧倒的に有利であると結論が出た。
極端な差があると攻撃力や防御力の高さがその差をカバーして、スピード差の不利をひっくり返してしまう。
「2回戦を始める前にスピードの重要性が解ってしまった。結論としてはスピードの差は他で補えると。どうしようか」
九条が眉間にシワを寄せて考えている。
「九条。貸してくれ」
俺はパソコンに思いついたキャラクターの設定を入力した。
攻撃君
攻撃力200
防御力132
スピード135
体力133
防御君
攻撃力134
防御力200
スピード133
体力133
スピード君
攻撃力134
防御力132
スピード200
体力134
体力君
攻撃力134
防御力132
スピード134
体力200
「この四人でリーグ戦と云うのはどうだ?」
「スケ君にしては面白い」
「元々はどれに特化した奴が一番強いかという話しだったわけだしね」
「なら貞介の案で進めてみようか。最強が解らなくても相性くらいならわかるかもしれないしな」
珍しく誉められたような気がした。
「やっぱり賭けるよな?」
ハルさんが俺と九条の肩に手を置いて言う。
これの勝敗でさっきの賭けを無かったことにするつもりだ。
「私は攻撃君だね」
「じゃあ僕は防御君」
「なら俺は……体力君かな」
消去法で俺が選べるのは体力君しか残っていなかった。
恐らく本命は攻撃君になるだろう。
あの破壊力は恐ろしい。