検証スタート
「体力はHPだな。ダメージ量を減算していって0になったら戦闘不能だ」
九条は説明を終えると物凄い勢いでキーボードを叩き始めた。
彼曰く、今まで説明した限りスピードはかなり重要だという空気が出来つつあるので、そのスピードがどれだけ重要なのかを検証するために複数のキャラクターを作っているらしい。
攻撃力、防御力、スピード、体力に数値を割り振る作業が続く。
全てのキャラクターは四つの能力値合計が600になるように設定されていて、16種類のスピード値を元に他の項目はそれぞれ均等に割り振られている。
「出来たぞ。今からそれぞれのキャラクターを戦わせてみる。トーナメント戦だ」
こういうのは俺も好きだ。そしてハルさんも好きなのだ。
ハルさんはニヤニヤしながら提案する。
「ただ見るのは味気ない。賭けをしよう」
「賭けるって何を?」
九条が呆れながら聞き返す。
「多分、今日一日では結論は出ないだろうから明日も集まろう。その時に三人分のジュースを買ってくる! スケ君は貧乏だから何かお菓子でも作ってこい」
俺が貧乏なのは放っておいて欲しい。
ハルさんは続けて言い放った。
「私は勿論、スピードが一番高い奴が優勝すると思う。スケ君はどうだ? どれに賭ける」
ハルさんの提案はいつの間にか確定したものとして話が進みだしていた。
「俺はそうだな……何だかんだいっても他の能力も必要だと思うんだよな。全ての能力値が均等な奴に賭けようかな」
俺が自分の考えを述べるとハルさんは鼻で笑いながら“つまらん”と切り捨てた。
「九条は?」
「僕は司会進行役だから賭けには参加しないよ」
「研太郎ズルい! お前は大穴のスピードが一番低い奴で決定だ」
「シュンは相変わらず横暴だな。まあ良いだろう」
九条は賭けには乗り気では無さそうだ。
「じゃあ、早速一回戦第一試合を開始しようか」
九条が作った組み合わせを見て思わず吹き出した。
いきなりスピード値最高のキャラと最低のキャラがぶつかったからだ。
A君
攻撃力114
防御力114
スピード258
体力114
P君
攻撃力164
防御力164
スピード108
体力164
ハルさんが賭けたキャラはスピードは高いが他が低い。
九条が賭けさせられたキャラはスピードは低いが他がそこそこある。
「負けないぞ研太郎。攻撃力なんていくら高くても当たらなければなんて事ない」