スピードと攻撃の成功率
「じゃあ敏捷性て何?」
ハルさんが俺の聞きたいことを代弁するように訊いた。
俺のことをバカだ無能だと罵るくせに自分だって解らないではないか。
俺は彼に対して親近感と同じくらいの腹立たしさを覚えた。
「俊敏性を純粋な速さとするなら、敏捷性はそれに正確さを掛けたものだと思う。この場合はそうだな、命中率に影響を与えるものだと仮定しよう」
九条は楽しそうに説明してくれた。
俺のバカみたいな提案をこれほど楽しそうに考えてくれるのだ。
多分、俺と彼はだからこそ友達でいられるのだと思う。
この企画に乗ったハルさんも同類である。
俺たちは下らないことが好きなのだろう。
「命中率があるなら回避率もあるのか?」
俺は当たり前といえば当たり前のことを訊いた。
訊いた直後に後悔した。
「スケ君はバカだな。あるに決まっているじゃないか」
予想通りハルさんに罵られた。
「そうだな。回避率は反応速度に依存するものだと思う。この反応速度と敏捷性と俊敏性をまとめてスピードと呼ぼうか。攻撃の成功率はこのスピードに依存すると言っても過言じゃないな」
「ということはスピードはかなり重要なんじゃないか?」
九条の説明を聞いたハルさんがドヤ顔で言った。
同じことを考えていた俺もこの人と同じ顔をしていたのかと思うと恥ずかしい。
顔の作りで云えばハルさんはかなりのイケメンだから、そういう意味では同じ顔という訳でもない。
「先にスピードの重要さを検証してみるのも良いな」
九条はハルさんに同調するように頷いた。
「命中と回避があるなら、攻撃の成功率はどうやって決まる?」
俺の問いに九条は“待ってました”と言わんばかりの勢いで答えた。
前提として命中率はスピード値によって決めるらしい。
260から196が90%
195から131が80%
130から66が70%
65から1が60%
九条曰く、全ての能力値の上限は260らしい。
何を基準に決めたのかは教えてくれなかった。
「攻撃成功率=100-(100-攻撃側の命中率)×{1+(受ける側のスピード/攻撃側のスピード)/2}こんなもので良いんじゃないか? 攻撃側のスピードが200で受ける側が100だったら攻撃の成功率は92%だ。逆だと55%になる」
益々スピードが重要なものに思えてきた。