赤いバラ
悲しいお伽噺です。誰も救われません。
また、別の作品でハッピーエンドを書く予定です。
とある方からお題をいただいたので、書いてみました。
白ユリの王女。僕は彼女に恋をした。けれど、よくある話で、僕は赤バラの王子。彼女は敵国の王女だ。結ばれるはずはないのだ。……まるで『ロミオとジュリエット』だ。
あぁ、そうだ。良いことを思いついた。
彼女の白いユリを赤く染めてしまおう。そうすれば彼女は、こっちの国の人のなれるんだ。
そうだ。そうしよう!
☆
これは、とある悲しいお伽噺。
あるところに赤い国と白い国がありました。お互いの国は仲が悪く、いつも喧嘩ばかりしています。赤い国は他に橙の国と黄の国が仲間で、白い国には黒い国が仲間についていました。しかし、白い国も黒い国も本当は喧嘩なんてしたくないのです。全ての色に染まることが出来る白と、全ての色をその色に変えてしまうことが出来る黒に敵意はありませんでした。白の国が敵意を持てば、全ての色を飲み込んで黒になり、黒の国となってしまいます。そして、黒の国が敵意を持てば、全ての国を飲み込んでしまうことでしょう。
「もう、やめにしないか」
何度も何度も提案しますが、赤も橙も黄も受け入れてくれません。
とうとう、赤い国の騎士団『赤いバラ』が白い国に攻めてきました。先陣を切っているのは、赤バラの王子。彼は白バラの王女を誘拐すると、兵を撤退させました。これに激怒した白い国は、とうとう兵を組織して、挙兵してしまいました。もうどうすることも出来なくなった黒い国も挙兵することになりました。白い国の兵は『白いユリ』と名付けられ、黒い国の兵は『黒いコスモス』と名付けられました。
そうして、世界は黒色に染まってしまいました。
☆
あぁ、僕の腕の中で彼女が赤に染まっていく。これで、これで……。
「僕は……僕は、永遠にあなたを愛します」
僕だけのものに。
彼女は、虫の息でかすかに呟く。
「あ、りが、とう……。先にいってしまう、わたしを、許して、ね……。百年、たっ、たら……、また、あい、ま、しょう――――」
彼女の息遣いが途絶えた。ぐったりと僕の腕の中で、彼女の重みを感じる。
百年、百年か……。
うん。待ってるよ。ずっと、ずっと――――
僕の体も赤く染まっていく。彼女の手に握られている赤いバラ。僕も彼女と手を取って、赤いバラを握る。
寄り添うように、彼女の隣に寝転がった。ゆっくりと目を閉じる。
今度、目が覚めるのは百年後かな。その時には、きっと隣には彼女が居るんだ。大好きな彼女が。ずっと、愛してるよ。ユリ……。
あぁ、どこもかしこも真っ赤だ。
参考・花言葉
バラ・・・あなたを愛します、愛、恋
ユリ・・・威厳、純潔、無垢、貴重、純愛
コスモス・・・乙女のここ、美麗、調和
こんにちは、はじめまして。無月華旅です。今回は、前書きでも書いた通り、とある方、バイト先の先輩からお題を頂いたので、それで一本作ってみました。1時間ぐらいで書き上げたので、とてもシンプルな話になっていると思います。でも、誰も救われないのは、私としても不本意なので、別の話でハッピーエンドを書きたいです。
最後になりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございます。先輩様、またお題を待ってます。
ではでは、またどこかで会えますことを。