君だけの、笑顔の呪文
以前あるHPに載せていたものです。
そして、
短編ですが、まだ完結していません(*_*)←
ちょくちょく更新していこうと
思ってます(^o^)
窓の外の景色が、前から後ろへびゅんびゅんと流れていく。
8月の初め、平日の午後の高速道路はいつになくすいていた。
かさり、と手元で封筒が乾いた音をたてる。
それを包み込むように指に力を入れ、想い描いたのは、夏のひまわりのように笑う1人の少女。
…本当は、不安だ。
だれも知っている人のいない中に飛び込んでいくのは、本当は辛くて嫌だ。
それに、
…寂しい。
もう滅多にあのひまわりが見れないなんて、考えただけでしんから震えあがるように心が冷たくなる。
けど、そんな気持ちとは裏腹に、自分のこころは日だまりのように温かかった。
『絶対に、帰ってきてね』
泣きながら笑って、手紙を差し出した彼女。
オレンジのペンで「秀介へ」と書いてある手紙は、なぜだか自分の奥底を温めてくれた。
不思議な、今まで経験したことのない温かさ。
今の自分にはまだこの感情が何なのか分からないけど、
きっといつか、分かる気がする。
「麻奈…」
太陽が、眩しい。
だけど、次第にその光もぼんやりと滲み始めた。
「……っ」
…空は、曇一つない晴天。
みずたまりを乾かすように、
自分の頬も、きっと乾かしてくれるだろう。
#1
ミーーンミンミンミン…
真夏の公園は、そんな蝉の声に包まれていた。
「麻奈!」
名前を呼ばれたわたしは、怖い顔をして後ろを振り返った。
「秀介っ、遅いよ!!」
秀介は、ぜいぜいと肩で息をしながら手をあわせる。
「本当ごめん! そこの信号が…」
…まったく。
「言い訳はいいから、ジュースおごってよ。暑くて倒れそう」
「しょーがねーなぁ」
「やった!」
わたしは自販機で買ってもらったスプライトをおでこにあてる。
実は、暑さのせいか割りと本気で頭が痛いのだ。全部、秀介のせい。
「大丈夫?」
全然大丈夫じゃない。
けど、心配された嬉しさからわたしは笑って首をふった。
「ねぇ、もう11時だよ。早く映画行こうよ」
「そーだな」
にかっと秀介が笑う。
その笑顔が、わたしは大好きだった。
その笑顔を見ていると、それだけで優しい気分になれた。
笑いながら隣を歩く秀介と、スプライトを飲むわたし、麻奈。