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グッピーの記憶

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/09/18

小さなガラス越しに出会う、言葉を持たない小さな生命。

静かな水底で揺れるひかりと、指先越しに通い合う微かなぬくもりの記憶を詩に託しました。

世界観と情緒を際立たせる前書き

外の世界がどれほど慌ただしく過ぎ去ろうとも、水槽のなかには静かで美しい時が流れています。

揺れる尾ひれが織りなす「無言の言葉」と、胸の奥に残る淡い虹色の余韻を感じていただけたら幸いです

『グッピーの詩』

小さな硝子の宇宙で

あなたはネオンの微粒子を散らし

夕暮れ色の尾ひれを揺らす

水草の影をくぐり抜けるたび

ひらりとひるがえす一枚の絹

それは声を持たないあなたの

たったひとつの言葉

水槽の外では

大きな時間が音を立てて崩れても

あなたは静かな水圧を愛し

ただ光の束を泳いでいる

胸びれが刻む微かなノック

ここにおいでと誘うように

わたしは指先をガラスにあてて

冷たい水底のぬくもりに触れる

あなたは小さな水泡をひとつ吐き出し

光の影へ消えていった

わたしの胸に

淡い虹色の余韻だけを遺して

ふと立ち止まった部屋の片隅で、水槽の中をゆらゆらと泳ぐグッピーを眺めていたときに生まれた詩です。

わたしたちが生きる現実の世界は、いつも目まぐるしく変化し、時に大きな音を立てて崩れていくような忙しさに満ちています。けれど、ガラス一枚を隔てた向こう側には、まったく異なる時間が流れていました。光を纏って静かに揺れる尾ひれや、胸びれの繊細な動きを見つめていると、言葉を持たない彼らから「ここにおいで」と静かに語りかけられているような心地がします。

触れることのできない冷たい水の中にある、どこか温かい光の感覚。この短い詩を通して、水槽の底に広がる静けさや、胸に残る「淡い虹色の余韻」を少しでも感じていただけたなら幸いです。

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