第2話 異世界人
今日も今日とて冒険者ギルドの2番カウンターを司っている女神、高坂サラです。
冒険者ギルドの受付嬢として早3年の月日が流れましたが、私はいつまでこの仕事をやればいいのでしょうか。早速聞いてみましょう。かみさまぁー?
なんて、こんな茶番をしてもあのひげもじゃ神は答えてくれません。
しかし、ひげもじゃ神から何か要望があるときは、神託がおりてきます。
神様のお告げの事ですね、昨日もあったんですよ。
それは昨日の夜の事でした。
私はギルドの宿舎で温かい毛布にくるまって寝ていたんです。
そしてそれはそれは幸せな夢を見ていました。
私は没落した貴族の娘、見目は麗しいですが家柄が悪い。
私は乱暴な男爵の家に嫁ぎに行くことが決まっていました。
しかし、そこに運命の王子様が現れたのです!
王子と男爵は私を取り合って決闘を始めました。
『もうやめて!私のために争わないで!』私の必死の叫びに二人が同時に振り向きました。
その顔はどちらもひげもじゃ神の顔だったのです。
「あ、サラちゃん!今ちょっといいかな?」
良いわけねぇだろうこの野郎。
私の数少ない幸せな時間を返せ。
あと二人とも同じ顔にするの怖いからやめて、せめてどっちかにして。
「あ、はい。大丈夫です。」
負けました。そんなこと言えるわけありません。
文句を言ってもいいことなんか起きるはずないんです。
上司には逆らっちゃいけないんです。
これ社会の原則ですから覚えて帰ってください。
「ええとじゃあ、明日なんだけどぉシフトあるでしょ?」
「はい、午前中から夕方まで受付にいます」
「オケオケ!じゃあ明日、転生者の人来るからぁ
対応よろしくね!」
「はい、わかりました」
ジジィがギャルみたいに話すな、気持ち悪い。
まって、今なんて言いました?
転生者?また来るの?
めんどくさい・・・
って、もういなくなってるし!
「「サラ!!俺たちはもう争わないことにしたんだ!
これからは二人で君を共有することにするよ!」」
もうええよ。
寝てるのに疲れたし
王子はパッせぇへん
男爵はなぁ・・・顔がアカンわ
っていうことがあったんですよ。
まあそんな事は置いといて、そろそろ転生者が来るはずです。
このギルドにはたまに転生者が来ます。それも大抵、チート級のスキルとか武器を持ってて、周りの冒険者たちがざわざわしだすんです。一応私も平民という設定なので、転生者がすごいことをしたら驚かないといけません。あ、来たようです。
「ここよ!リュウト!ここで冒険者になるの!
強い魔物とかを倒して、お金を稼ぐの!」
「まあ、お前の頼みだしな
しょうがないからやってみるか」
ほう、ヤレヤレ系の主人公ですか。今年に入って三人目ですね。自分の力に過信して強い敵にボコボコにされてほしいですが、彼もこの世界の主人公なのでそんなことにはなりません。残念です。
「冒険者の新規登録ですね。
まずは貴方の実力を測るのでこちらに手を置いてください。」
こういうヤツには、この魔力測定の水晶を使います。触れた人の魔力量を調べる装置なんですけど、水晶の発光具合で強さを見れるんです。そしてこういう転生者向けの特別モードも搭載している優れモノでもあります。
あくまで私は転生者を盛り上げる平民なので、転生者に恥をかかせるようなことはありません。いざとなればキャラ崩壊を起こしてでも転生者を盛り立てます。さあ私の演技の才能をご覧ください。
水晶の特殊モードスイッチを入れてっと
「な!何ですか!これは!
こんなに光ることなんてありえません!」
ギルドにいる皆さんに聞こえるように大声で叫びます。そして、部屋中の注目を集めたところで・・・
バリィン!!!
水晶が自動で割れます。
「水晶が割れた・・・?
ギルマス!誰かギルドマスターを呼んでください!」
決まった!決まりました私の決め台詞!
ギルマスは多分外で飲んだくれているので来ないでしょうが、ギルマス案件の大事件だということを、ギルドにいる人たちには印象付けられました。
「あれ、また俺なんかやっちゃいました?」
来ました!こちらもお決まりのヤレヤレ系セリフ!
熱いコンボが決まりましたね!前回来たヤレヤレ系転生者も同じこと言ってましたよ!
あとはS級の冒険者手帳を用意して、粉々になった水晶を片付けたら、今回の神の頼み事は完了です。
正直、私が頑張ってギルドの受付嬢している間に、他の転生者入れてるんじゃねぇよと思うこともあります。でもこのヤレヤレ系転生者さんが笑顔になれるなら、この仕事もやっぱり悪くないなって思うんです。明日ももっと多くの人の笑顔が見れますように。おやすみなさい。
「あ!サラちゃん?今日ありがとね!
これからもよろしくぅ~」




