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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

【読切】森のUMAと戦った話

作者: 虫土土
掲載日:2026/02/18

微グロ・ホラー・ 少し汚い描写あります

(本編5000文字)

11月の朝、1-1の教室にて


「リョーマ!おっす」


もうとっくに夏は終わったってのに元気だな、そう思いながらもいつもより早い親友の登場に少し心が弾んだ。


「今日早いじゃん、なんかあった?」


「ふっふっふ、、、 これを見ろ!」


「ええええ!!!!」


そこには黒帯を締めたタイガの写真があった。

ドヤ顔わかりやすっ


「まじかー、やったじゃん!」


「まぁな! でもそういうお前もなんかあったんだろ?ずっと頬が上に伸びてるぜ」


「実はね、、」


そう言ってタイガに一枚の紙を見せびらかす。


「うおおああああ!!!!!!!英検準一級!?!?」


声デカいな。


「やったな!俺ら絶対立派な警察になれるって!!」


「そうだね」


そう言って熱を帯びたグータッチを交わす。



「あ~、授業おわったー、、」


「ね~、どっか行く?」


「でも今日は疲れてるんじゃないか?」

「リョータが授業中の問題を間違えてるとこなんか初めて見たぜ」


「いや、全然大丈夫だよ。少し難しかったからね」


「そっか。ならいいけど」


「なんかあるの?」


「実はな、、今日行きたいところがあるんだ」


「いつもどっか行ってるじゃん」


「違くて」

「これ行こうぜ」


タイガのスマホにはとある記事が映し出されていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【開発予定地 突然の封鎖 原因は怪奇現象?】


2005年10月29日 16時7分


川俣市ホームページにて公開されたイメージ画像

「長野県の新都市」を謳い文句に、大規模な工事が始まっていた川俣山が突然封鎖されることになった。

原因は不審な行方不明事件が相次いだなどと語られていますが、実態は未だ不明です。


行方不明となっている工事関係者の一部

・佐藤 栄吉(51)

・新倉 哲郎(48)

・大山 大吾(32)


川俣市民は落胆、疑惑などの声を示していました。


「ここに都市ができたら家賃上げて稼ごうと思ったのに」50代男性 大家


「あの山は昔っから不気味なうわさが絶えないだで、いろいろ勘繰っちまうなぁ」70代女性 年金生活者

                             続きを読む


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「わ~こんなことあったんだ、って20年前の記事なんかよく見つけてきたね」


「これ!今から行こうぜ!」


「いいよ~ ここ僕も行きたい用事あったんだ」


「……その感じで度胸あるの、16年一緒にいても慣れないわ」


「なんでだよ笑」



「てか、あの山がそんないわく付きだったとはな。」


「ね〜。」


「そういや、さっき言ってたリョータの用事ってなんなんだ?」


「聞いた話によると、なんかこの辺だけ生態系の構造が特殊で、まれに鳥の羽が生えたカブトムシの死体とかが見つかるらしいんだよ。」


「なにそれ、めちゃ怖いな」


「でも体に合ってないものが付いてるからすぐ死んじゃうんだって。」

「それで研究したいって前から思ってたんだ〜」


学校から歩いて30分、件の川俣山に到着した。


「流石に見た目は普通だね」


「…入るか」


「うん」


五分ほど歩いたが、未だ何も不思議なことはない。

むしろ、そよ風と秋の野鳥の声に囲まれていて心地いいとまで言える。


「…」


「!リョーマ、どうかしたか?」


「いや、紅葉のピーク少し過ぎちゃってるなぁ、って」


「なんだそれ笑」


「笑笑」



しばらくした後、突然風や鳥の音が止んだ。

風すらもここに来ることを拒んでいるかのようだ。


近くで聞こえるゴーゴーとした水の音や、砂利を踏む音ですらとても頼もしく感じる。


「…..なぁ」


「…..うん」


何かがヤバいと思い、何を言うでもなく二人で帰ろうとしたその時、少し奥の人影に気づいた。


「….だ、大丈夫ですかー?」


タイガが様子を伺いながら声をかける。本当に困っている人だった場合、警察官志望として見逃すわけにはいかない。



「……っ!!」


よく見ると片方は死体だった。

この辺りの気候なら1か月前の死体ってところか?

シルエットはまだ人間だが、明らかに生気を感じない。


そしてなにより、左の脇腹が大きく裂けている。



そしてもう片方は…



シルエットだけが人間のナニカだ。


アイツはその死体を輪郭を確かめるように、モニュモニュと奇妙な動きでそれを抱いていた。


そして一番おかしいのは色だ。服も肌も全部真っ白なんだ。


頭にはヘルメットの"ようなもの"がついている。

両脇には腕の"ようなもの"がついている。


左脇腹は死体と同じように裂けている。



僕らが固まっていると、怪異が喋った。


「「アアアアア!!!!!!!」」

「「ャメ テ ク  ダシャ ィタスッケ ェ」」


人間とは似ても似つかない声だ。そもそもの発声方法が違うのだろう。


そしてなんでそっちが助けを乞うんだ…?


ソイツは僕らが警戒マックスなのを感じ、怪異の姿に変身した。


変身といっても、魔法少女のようなものではない。

力んだ力こぶを弛緩させるように、ぬるっと姿を変えた。


変身というか、"擬態をやめた"のだろう。



怪異は正面のようなものをこちらに向けている。


怖い。泣き出したい。跪いて許しを請いたい。今すぐ逃げ出したい。


でも体はのんきなもので、僕の言うことなんかまったく聞かずに硬直している。


すると怪異が右腕を大きく振りかぶってきた。



やばい、死ぬ_____




すると目の前にタイガが現れ、僕を突き飛ばした。



「「「逃げるぞ!!」」」


その瞬間、目が覚めた。




その直後のことはあまり覚えていない。


全力で泣いたような___

鼻水を垂らしたような___

枝にぶつかったような____


とにかく全力で走る。走る。走る。



そんなとき、我に返った。


「「この辺に滝があるはず!!そこに行けば助かる!!!」」

タイガに向けそう叫んだ。


タイガは頷き、辺りを見回し始めこう言った。


「「「リョーマ!!あれが滝だ!!!!」」」


そうして僕らは滝の下へ逃げる事に成功した。


滝が近づくにつれ怪異は勢いを失い、果てには明後日の方向へ歩き出した。


改めて見ると不気味な身体だ。体色は全身真っ白で、人間のような胴体と頭部、触手のような腕。そしてなにより膝が三つずつあるのが地味に一番怖い。歩き方も奇怪だ。


その怪異には枝にぶつかった跡がいくつも残っていて、右腕に限ってはひび割れたような古傷もあった。そこからは不気味な色の血が流れていた。



僕らは沈黙し、早くて荒い息遣いと滝の轟音だけがその場に流れる。


先にその沈黙を破ったのはタイガだ。


「….なんでアイツはどっか行ったんだ?」


まじか、理由もわからないまま僕に従ってくれてたのか。


「….アイツはっ 目が見えな..い代わりに 鼻や耳が強いんだ。ごほっ」

まだ息が荒くて、少し苦しい。

三回深呼吸をしてから、不器用に言葉を紡ぐ。


「あいつの擬態は色が明らかにおかしかったでしょ?それはアイツには目の機能がないからだ。」

「殺した人を触ることで、ヒトの輪郭だけを認識していたんだ。」


「….ヘルメットを被っていたのは、、!」


「そう、工事現場の人を多く襲ったんだろうね。」


再び気まずい沈黙が続く。

が、タイガは何かに葛藤しているように見えた。


次に沈黙を破ったのは僕だ。

「…これからどうする?」

「アイツのスピードなら、逃げ切れる気もするけど、、」


「…倒す」


「タイガ、今なんて?」


「アイツを倒すんだよ!!」


「いや、でも」


タイガは震えながら食い気味に答える。


「「俺たちはなんだ?警察官志望だろ!?」」

「「こんな危ないやつを野放しにしていい訳ないだろ!!」」

さらにヒートアップするタイガ。



…滝の真下といえど、こんな大声だとヤツにバレるかもしれない。

大声を出して今体力を消耗するのもリスキーだ。


止めたほうがいい。


でも今はただ、


この男の熱い想いをまっすぐ受け止めたい。


なによりそう思ってしまった。


そうだ、僕らは警察官になるんだ。


「だからっ リョーマ…」


「「アイツをぉっ ぶっ殺す!!今っ!ここでっっ!!」」

言葉を絞り切り、満足そうな顔をしてむせるタイガ。


「…やろう、相棒。」


そう言うと、意外にもタイガは不思議な顔をした。

嬉しがっているような、驚いているような、恐れているような。


もしかしたら、キッパリ断ったほうがタイガも内心嬉しかったのかも。


でも僕らは運命を共にする相棒だ。


「作戦を考えよう。」

「アイツには四つの弱点が___




作戦が決まった僕らは、早速準備に取り掛かった。


まず、タイガの服と体にこれでもかという程の土を付けた。

アイツはおそらく鼻と耳で空間を把握しているため、こうすれば効果抜群の簡易的ギリースーツができるというわけだ。

これが一つ目の弱点だ。


一方、僕の服にはありとあらゆる体液をかけた。

汚いどころの騒ぎではないが、アイツ相手には最強の囮と化す。


よし、準備完了だ。




「「うああああああ!!! 出てこい!!! 敵は僕だけだあああ」」

穴という穴から水分を出しながらそう叫んだ。小便はさっき漏らしたのでもう出ない。


自身の心音がとてもうるさい。


その後も何度か叫び、ヤツをおびき寄せることに成功した。


「うおおああああ! 来い」


怪異はまっすぐ向かって来る。


今にも逃げ出したいが、絶対に動いてはだめだ。


怪異は僕の目の前まで来た。


【【ヤツは絶対に獲物を狩れる時、右の大振りを使う。僕もそうされたし、あの死体や擬態後の姿も左側が裂けていたでしょ。

皆、何もできないまま向かい合って死んだんだ。これが二つ目の弱点。】】


予想通り怪異が使ったのは右の大振り。

腕から血を吹き出しながら襲い掛かってくる。


「「「うああああああああ!!!!!!」」」

喉を使い切るつもりで大声を出す。




そこへ、タイガが物陰から飛び出した。僕が叫びまくっているのは、この時の音をかき消すためだ。


「「ぐああああああ!!!」」

そう言いながらタイガが怪異に大きく振りかぶる。


もう避けられる姿勢ではない。


【【アイツは体が脆い。アイツの体、枝に当たっただけで血だらけだったでしょ?だからアイツの腕をタイガの力で殴れば、致命傷になり得るよ。

それに、右腕だけ大きな古傷もあった。体の耐久力を、右の大振りの威力が上回っているんだ。そこでその二つの弱点がある事を相互に裏付けしているんだ。これが三つ目の弱点。】】




その攻撃を、ヤツはスッと躱した。

タイガが叫んでしまったせいだろうか、タイガの存在に気付いた後、ヤツの三つの膝による変な可動によって躱されてしまったのだ。


ヤツはタイガの臭いをもう学習してしまったようだ。

標的がタイガに代わった。


まずい、なぜ失敗した場合の作戦を用意していなかったんだ。ありえない。

やっぱり今日は頭が回っていないのかもしれない。


膝三つと両腕の触手によるトリッキーな動きがタイガを襲う。

タイガは流石といったところか、どうにかヤツの動きを捌いている。


タイガは僕を信じて戦い続けている。

でも劣勢には変わりない。


何かないか…..何か……

ステップを踏みながら怪異討伐の討伐の糸口を探す。




ふと糸口を見つけた僕は、服をすべて脱ぎ、一気に怪異の背後に投げる。


僕とタイガは視線を交わす。流石相棒、全て察してくれたようだ。


【【アイツは恐らくあまり頭がよくない。「助けて」などの言葉を和解の意と勘違いしている。きっとあの時も友好的な人間のフリをしたかったんだ。それに、右の大振りを乱用するのもとても賢いとは言えない。

これが四つ目の弱点だけど、信憑性は薄いから囮にかかるかは賭けだ。】】


ヤツの頭が悪いことは、あんな囮にまんまと引っかかったことで確信に変わった。


てことは、ヤツは投げた僕の服を"硬直した臭い人間"だと勘違いするかもしれない。


タイガの強さを認め諦めた怪異は、すぐ殺れそうな"硬直している気配"へ向かう。


服の目の前まで来た怪異はやはり右の大振りだ。


だがそこには誰もいない。怪異は大きく空振った。


そこへタイガが会心の一撃を食らわせた。


ヤツは不気味なうめき声を出しながら倒れた。


…まだ生きている。

そう感じたタイガはヤツに三発ほど食らわせた。


ボンッ


ゴチュ




ヌチャァ


僕らは呆然としていた。


生死の判断をくだすまでもなく、ヤツがすごいスピードで腐っていっているのだ。


「なんだこれ…」

タイガが不気味がって呟く。


「十脚目かな… 十脚目は死後急速に自己消化するんだ。」

「外骨格のないエビのような存在なら、そりゃ脆くなるよね」


「こいつも奇妙なキメラだったのか…」



その後、やっとの思いで山を出た。


空はすっかり薄暗くなっていた。

なんてことない、ありふれた空だけど、


この空は人生で見たどんな景色よりも綺麗に見えた。



「この服どうしよ(笑)」


「あー… 俺ん家寄ってけ」

山の怪異に立ち向かう王道ホラー、どうでしたか?

人生初の執筆でしたが、中々楽しく書けたのでまた書きたいと思います。

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