3話
治療師から1ヶ月の絶対安静宣告を受けてベットに縛られていた俺。
その間にスカーフェイスとのお話し合いがあり
「つまりなんだ…隣国【アスガルム】で勇者パーティーにいたお前は、転移の罠にかかりこの他のダンジョンに飛ばされた、と」
「yes!」
「…そしてお前はこの国、【ヴァンライア】の【人狼の洞穴】の最奥部に飛ばされ生きて帰還した、と」
「yes!!yes!!」
「…おそらく、勇者達は高ランクダンジョンに飛ばされた事しかわかっておらず生き残れるとは思われていないから死亡届が出ているかも、と」
「yes!!yes!!yes!!」
「………勇者パーティーの重騎士が罠をしかけた犯人かもしれない。生きている証拠は残ってないが、展開時の構成魔力は重騎士のものと同一であり転移先に転移のスクロールの切れ端があった、と」
「yes!とてもyes!!」
「…そしてこのスクロールがその転移のスクロールの切れ端、と。解析の結果、このスクロールの転移先を書き込み、発動させた者は重騎士で間違いないそうだ……………それに、死亡届は確認した。間違いなくお前は死人になっている。お前が生きていてもこの死亡が覆る訳ではない…お前が生きるには……」
「わかってたことよ。後悔はあんまりないさ」
あーやっぱりかー、と俺は笑い飛ばす。
重い面持ちのスカーフェイスは深く息を吐き出し、顔を抱えながら小さく言葉を吐き出した。
「…すまない」
「…なんであんたが謝る必要が?」
「…君の言っている事が事実だとしても…我々は動けん……動く事さえできない…無力だ…」
「公表も出来ないからな…」
「出来る訳ないだろっ!!」
声を荒らげるスカーフェイス。
「勇者パーティーが…勇者パーティーが追放する為に別の高ランクダンジョンに飛ばしました!?…ダンジョン法を犯している!!重騎士は罪を犯したんだ!!…それを追求することさえ出来んとは…」
「それだけ勇者パーティーが特別…いや、勇者が特別だからなぁ…汚点は許されないさ。証拠がないなら尚更ね…死人の証拠は証拠にならない。死人に口なし。偽造されてるって主張されれば証拠として扱われないってのは大きい。…しかもスクロールそのものじゃなくて切れ端に過ぎないのも…ふつースクロール使ったら全部消失するのが当たり前だからね…俺が即座に出てこれれば…いや、無理かなぁ……」
「…すまない…すまないっ…‼」
その後は声を殺して泣くスカーフェイスを宥め、療養の日々を送った。
その間の住処、金銭や治療費などはスカーフェイスが個人的に提供してくれたのは助かった。
それから1ヶ月後。俺、大地に立つ。
冒険者クラス最低のᖴランクから再スタート。ゆえに初心者御用達の草原地域【平穏の平原(推奨:ᖴランク)】で腕慣らし。
前はBだったから…まぁ結構さがったなぁと楽観的に考える俺。
レッドフードの名の通り真紅に染まった赤いローブを羽織りフードを被りつつ、手にあまり馴染んでない柄が長槍のように長く先端に鉄塊がついたバトルハンマーを武器にダンジョンの外に闊歩する魔物を討伐していた。
「チェストォぉぉ!!」
【■■■■ノ輪舞曲】
あたりの魔物をとりあえず手当たり次第にぶん殴る。
別武器の術技を無理矢理バトルハンマーに適応しぶん殴る。
「初級火魔法に■術…■火を合わせて…合成術技《焔玉》…さらにこれをバトルハンマーの鉄塊部分に纏わせて疑似付与ォ!!」
さらに疑似付与を行ったバトルハンマーでそこらにいたウォーベアー(推奨:Aランク)をぶん殴る。
そう俺は小技を一切使う気がなくて殆ど取得していない、火力お化けの前衛職ロマンアタッカー!!
ゆえにVRMMO時も最高峰のアタックホルダーとしてあまりのダメージの高さにサーバーダウンまで成し遂げた男!!
「んま、こんなもんか…」
ぶっ飛ばしたウォーベアーの姿を見て満足する俺。
適正以外の武器でここまで火力でればまぁ及第点だろう…
しっかりと格上狩りを成し遂げるが、いかんせん燃費がアホのようにわっるいのが欠点かぁ…今のままじゃさっきの大技は1日3発が限度だな…
「しっかしなんでこんなところに熊がおるんや…?不思議だなぁ……とりあえず牙と爪だけはぎ取っとくか…アイテムインベントリちいせぇのがつれぇよなぁ…金がほぢい……」
悲しみに暮れながらちょっとだけ剥ぎ取りする俺。
まさか草原地域であんなことが行われてたなんて、今の俺には知る由もなかった。
「ウォーベアーの爪と牙でしゅぅぅぅぅ!!」
「君ってやつは…」
討伐したウォーベアーの素材を見せたら受付嬢に騒がれた。なぜなのか…




