20話
「…修行中の事は、その…忘れて下さい…」
馬車のようなものでアスガルム王国に移動中、同乗しているジークが恥ずかしそうに言ってきた。
「…まぁ暗黒闘法を使い始めた時期は多少なりとも精神がぶれるモンだから仕方ねぇさ…しかしお前さんが暗黒闘法を選ぶなんてなぁ…」
ジークはあれから暗黒闘法第一段階、暗黒闘気の習得に成功し第二段階の武装化の練習中。
余剰魔力を体外に放出。形状変化させ武器や盾、鎧を瞬時に創り出し戦う。それが暗黒闘法の真髄であり、身体やそもそもの武装強化のみの聖闘気と違う。
ゆえに暗黒闘気ではなく暗黒闘法。
…俺としては暗黒闘法で身体の芯から鍛え上げたら聖闘気に反転させるつもりだったのだが、ジークは受け継いだ力を無駄にはしない、と反転を拒否し修行を続けている。
「私は護る盾でありたい。しかし、身体一つでは多くの民を護りきれない。邪悪だろうが嫌悪されようがより多くの民を護れる力が欲しいのです…隣に立てるようにも、なりたいのです」
仕方ねぇな、と面倒を見続けている俺はなーんて優しいんだろうな。
「…ところで師匠、アスガルムは初めてですか?…よければご説明を」
そう言いかけたジークにひらひらと手を振り、止める。
アルフレッドであった俺はアスガルムを識っている。だがレッドフードの俺は知らない振りをする。
アスガルムに近くなる。嫌な感覚が強くなる。
コトコトと車輪の音だけが馬車に響く。
王国の首都。城下町のハズレに付き馬車を降りる。
脚が重い。やれやれ…
王城への登城中、城下町で馴染みだった宿をみかけ足が止まる。
「…やはり師匠は…」
俺は人差し指を自分の口に当て
「しー。言うんじゃない…俺はレッドフード。死人とは無関係。いいね?」
「……わかりました」
あ~あ。足を止めなければ良かった。
俺は深く後悔した。
馴染みだった宿から出てきた冒険者パーティー1行。雰囲気は変わったが見覚えがあり過ぎる顔ぶれ。
「…アルフ…?」
深くフードを被った俺をアルフレッドだと認識する一人の少女と出会った。出会ってしまった。
少女はこちらに走ってくる。駆け寄ってくる。
「ねぇ!?アルフだよね!?アルフなんだよね!?…生きててくれたの…!!夢じゃないよね…!!!アルフぅ!!……アルフ?」
無言を貫く俺に不信感を抱く少女。
あぁ…元アルフレッドだと。生きていた、と伝えられればいいのだろう。伝えるだけで目の前の子たちは救われるのかも、しれない。いや、確実に救えるだろう。
「なんだお前…生きてたのか?…連絡ぐらいしろよ、バカ野郎」
そう言って小突いてきた重騎士の眼を見た。
周りから見れば普通に旧友を心配する普通のヤツだ。
だが…
…鑑定スキルはない。ただの勘だ。
正気じゃない。普通じゃない。
……やはり、おかしい。…いったいいつからだ?
一瞬、目の色じゃない色が眼に見えた。
…俺は…
「スミマセン。貴方達はダレですか?」
記憶喪失のフリをする。今は駄目だ。バラす訳にはいかない……予想はほぼ外れないだろう…
第三者が介入している。
「え…アルフ…だよね…?」
「スミマセン…わかりません。私は聖闘気使いの剣士レッドっていいマス。貴方は?」
絶望しうなだれた少女は言った。
「…エステル」
さて…いったいどうしたもんかね…




