17話
頭痛と溜息の波に押し流される俺。
まだ呪いのアイテム収集してないし呪装も使えないし…■黒闘法は身体への負担も凄いし…巨大な炎が無ければ祝福刀も棒きれみたいなモンだし…
「嫌なんですけど?依頼とか、断らせてもらっても?」
「…一国の姫に面と向かって言えるのはお前ぐらいだよ……」
「あはははは…」
そんなに褒めなくても…
「実は依頼者は私じゃなくて…」
「俺だ…いや、私なんだ」
めったに開くことのないギルドマスターの部屋直結の来賓室の扉が開き見覚えの無い青年が出てくる。
「…どちら様?」
「!?……不敬だな…一応王子なんだが。改めて自己紹介をしよう。隣国アスガルム王国、第二王子のジーク•フォン•アスガルムだ」
「あー…声でわかった…あの護衛兵に混じってた……」
「…その認識で間違いないが……間違いじゃないんだが…」
不服な表情をされてるジーク王子だが…すまん。王族に興味なくて…ほらアレだ。歴史とか地理とか聞いても覚えられないやつに近い。
「…まぁいい。私から依頼がある…と、その前に貴殿に謝罪したい……冒険者としての貴殿の実力を下に見て無礼極まりない態度をとって申し訳無かった!」
腰を折って頭を下げてまで謝罪するジーク王子…ぶっちゃけ言うと
「…気にしてないんだが」
「っ!?」
驚くジーク王子と笑いを堪えるのに必死なリコ王女。そして頭を抱えるスカーフェイス。三者三様の姿に思わず笑う俺。
「…とりあえず、だ。私から依頼がある」
「嫌なんですけど?」
「王族特権で強制だ。諦めろ」
ホリシートー!!これだから王族ってヤツは…
「…まず依頼に至った経緯から話そう」
ぶっちゃけトップシークレットなんて聞きたくねぇなぁ…
「ご存知の通り…いや存じ上げてない人もいるかもしれないが大半の人はご存知の通り私とリコ王女は婚約者だ…正確に言えば婚約者だった、が正解だ」
「…此度の王家の試練を越えた私に釣り合わないとジークが辞退したのです」
「…あぁそうだ。両王国の関係性を重視した政略婚約だった…が、私は弱すぎた……文字通り、弱すぎた。強いと自惚れ、身分を伏せてヴァンライアの兵士たちに模擬戦を挑み無敗。国一番とは言わないが強さには自信があった…が結果は。愛すべき人を護れず…剣になる事さえも出来なかったッ…!!なんと無様か!たわけが!!クソッ…クソッ!!」
「…3年前から王家の試練に随伴する為に彼はわざと身分を伏せて新兵としてヴァンライア王国護衛騎士選抜試験に参加し、今日まで私を守りつつ力をつけようとしてくれていたのですが…」
悔しさのあまり涙を滲ませ言葉を綴れないジークの代わりにリコが続ける。
「絶対的な力量不足。それを感じた彼は自ら婚約解消を申し出て両王国が了承。慰謝料はジーク王子が全て背負い冒険者稼業で稼いだ金品にて支払い事になりました」
つまり手伝えって事か…?
はぁーあ…王子の道楽に付き合うなんて…
「…クッ!…そこで頼みがある……俺を鍛え上げてくれ…!!もう一度、彼女の隣に並び立てるように…!彼女の隣が空いていなくとも!!俺はァ!王子として負けたくねぇ!」
…なんと汚い男の子の意地か
あぁ幼い幼い…だが、嫌いじゃない
「…ついでに2ヶ月後の我が妹のワガママに付き合ってくれ…」
そ っ ち が 本命 か !!




