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16話

第二章始まります。

かつてレッドフード…いや、アルフレッドがいたパーティーはアルフレッドが消えてから3ヶ月。高難易度依頼をこなし続けた。

その中のでもかつては苦戦していた魔物、ドラゴン等も簡単に討伐していた。


結果エステルは、アスガルム王国にて【燐光の勇者】の二つ名を得て有象無象で雑多な勇者パーティーと区別されるようになった。

そして勇者パーティー名【燐光覇】として名を上げていった。


そんな名声と引き換えに、パーティーは笑顔を失った。

アルフレッドがいる時からパーティーの皆で買おうか悩み、高額だからーと諦めていたパーティーハウス。

彼らの新築のソレの中に会話などは無い。


「なー…エステル?せっかくの休日だぜ?どっか遊びに行こうぜ?」

「…ごめんラル、気分じゃないから」

「じゃー…そうだ!ユナ気分転換しようぜ?」

「…嫌」

「ネルはぁ…」

「…ッ!?ボクに話しかけんな!!」

「っうー…どうすっかなぁ…」


パーティーの兄貴分の機動重騎士ラルは困っていた。

…誰も互いに会話をしようとしない。

頭を掻きながら悩んでいると1匹のハトが飛んできた。緊急事態の合図だ。


エステル達は軽装のまま武器を床から奪い取り駆け出す。

「おい待てよ!」


その声はエステル達の耳に入らない。冒険者ギルドの緊急テレポーターに突入し戦場にかけ戻る。


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3人の少女の想いは、同じだった。



敵は大型狼系、魔物バスクファズトウルフの群れ。

少なくとも…100匹はいるだろう。


「ウオォォォ!」

ネルは彼と同じように狂気に意識を沈めようとする。

彼とは違う狂気がネルの意識を焼き、狂武闘家として突撃する。


同時に魔導剣賢者となったユナが魔法の杖と剣が一体になった魔導剣で強大な雷の魔法を解き放つ。


ネルとユナはお互いを見ていない。視界に入ってなどいない。自己勝手に動いただけ。

だがユナの魔法はネルに直撃する事なく、ネルの道を切り開いた。


内側からネルが滅ぼし、外側からユナが焼き殺す。

ネルの拳がただの狼にしか見えなくなったバスクファズトウルフの急所のみを撃ち抜く。

…その手には痛めないようにユナの防護魔法がかかっている事をネルも、ユナ自身も知らない。無意識に行った事。だって、彼ならやっていたのだから。


「あはははは!!」

ネルは狂気の中で彼を感じる。

『後ろだっ!』

幻聴さえも好ましい。むしろ戦場じゃないと聞こえない。もっと聞かせて?


ユナは火魔法で周囲から殲滅し始める。

「あったかーい…やっと、寒くなくなった…」

火魔法に彼を重ねる。彼の暖かさを、重ねる。


撤退しようとするバスクファズトウルフの群れ。

その退路にはエステルがいた。

打ち漏れた敵を長剣2本を構えたエステルが殲滅していたのだ。

長剣としては大きめなカリバーンと身が細く若干短い市販の傷だらけの長剣。…彼の遺品。

カリバーンを左手に、長剣を利き手の右手に。


瞬時、風が吹き上がり…ウルフの首が斬り落とされる。


全員笑いながら…戦った。

その戦いを見ていたギルド職員はこう言った。

「3人しかいなかった筈なんですけど、4人目がいたように見えたんです」…と。


彼がいなくなった隙間を3人は埋めてしまった。

だから無意識うちにカバーしたり支援するような戦闘スタイルへと変貌した。

互いが互いにフォローして自己勝手に行動して…彼がやっていた事を各自が勝手になぞって真似して実行して…結果王国に認められて…


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「ぶえぇぇぇっくしょん!!」

「…汚いぞ。ジャック」

『風邪でもひいたんかアニキ?』

「…唐突にくしゃみが…んでなんだってスカーフェイス?……突っ込みたくないけどそこに突っ立てるお嬢さんはー?姫様じゃねーって…じゃないって言ってくれスカーフェイス。後生だから」

「ところがどっこい。今回の依頼者もリコ姫様だ」

「…えへっ」


場面は変わっていつものギルドマスターの部屋。

リコ姫の依頼完了から2ヶ月後。いつもの呼び出しときたもんだ……まったく…嫌な予感がするぜ…

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