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15話

姫の渾身の一撃を喰らったラースドラゴンは土に戻り、塵になり散っていった。


「勝った…やりましたねっ!」

姫様が勝鬨を上げた。場の緊張は解かれ、傷だらけの護衛兵達はその場で座り込む。


『あ~あ…倒されちゃったァ…ざーんねん』

瞬間、脳内に響くような声。


ラースドラゴンを操っていたであろう黒幕が姿を現した。光の人影。その正体は精霊。…王家の試練最奥に存在する精霊。

姫達…いや、俺達はコイツに会いに来た。吐き気がするようなこの精霊(クズ)に。


「…精霊様…ですか?」

姫様が恐る恐る声をかける。

『そーだよー?君たち王家が認められたい精霊ナンバーワンのボク様ダヨー?君たちの頑張り見てたよー?』

「では!?認めて」

『うん!不合格!!』

「……え…」

かぶせるように不合格の通達。

絶望から声を失う姫様。


あぁ…コイツはやっぱり…

『だってぇラスアタとったのは姫らしいけど?致命傷を与えてたのは彼じゃん?…ぜったいおかしいじゃんさぁ〜!あはははは!絶対に勝てない相手だったんだから逃げる事も勇気の示し方の一つだったんだよー?部下を皆殺しにでもするつもりだったのー?君の、無謀で、無茶で、不合理な選択で、何を成し遂げるつもりだったのカナー?あはははは!』

その通りだと言いたげな表情で。

悔しさ溢れる顔、涙を堪えて。耐える姫。


ひと粒の雫が、地面を濡らした。


その理屈は理解できる。…出来る…が。


「一応質問だが?」

『何かな?ラースドラゴンも倒せなかった雑魚クン?…まぐれで倒せただけなんじゃなーい?』

「………ふぅ…俺達が逃げてたらどうしていた?」

『勿論認めて勇者にしてあげるよ?…でもぉ逃げたんだからぁ…さっきのドラゴン解き放っちゃっても良かったかもねぇ…!あはははは!だって逃亡したんだからさ!試練は合格だよ!…その後の被害なんてあったとしても仕方ないよねぇ…だって逃げたんだからぁ!!』


高笑いが響く。


「そうか」


俺は納得はしない。

ムカついたわ。


()()()()()()()()()()()()()


俺はロックされたインベントリから無理矢理アイテムを引っ張り出す。

聖闘気を纏っている今だからこそ出来る裏技だ。

出来ても今回限りのとっておき。


取り出した小瓶。その中の液体を一気に飲み干す。

たかだか中身はただのエリクサー。

なんてことはない。失った血を補給するぐらいのモンだ。


すぅと息を吸い込み。

この目の奥を、狂気に染める。

身体は冷静に、聖闘気を高める。


指から流れ出した血が刀を伝い、刃を染める。


黒に。



唐突に風が吹いた。

白い風に黒い一閃が混じっていた。


瞬間切り落とされる、精霊の両手足。


『あはははは…?ぎゃぁぁぁ!僕の手足がァァ!キサマァァ!不敬だぞォォォ!』

高笑いから一転。その声は悲鳴に変わる。

やっと精霊っぽい見た目になったじゃん?


「姫サマー?コイツ倒しきれば…次からの被害なくなるぜ?」

呆気にとられていた姫サマは一瞬考え、決意する。

「ここで災害精霊を討伐します!」

「了解!」


精霊は両手足を再生し、ドラゴンを再度土から生み出そうとする…が、あめぇよ。

ずんばらり。土のまま細切れ。

ついでに精霊の両手足も切り捨て。


やっぱりそっちの方が似合ってるよ?


ドラゴンの数を増やす?ずんばらり。

沢山の魔物?ずんばらり。


「姫サマ!こいつにゃ聖闘気を纏ってねぇと切れねぇからな!」

「わかりました!」

いつの間にか自身の力として取り込んだ聖闘気。完全にコントロールしてやがる…ははっ!最高!


俺は脇役。必死に生み出される魔物擬きを切り捨て、道を開く。


姫は跳んだ。

「ファイナルぅぅ!ストラァァァイク!!」

クソダサネーミングと共に振り下ろされる大剣。


しかしそれは直前で止められた。

『そこまで、でございます』

老木のような精霊が現れて姫の剣を止めていた。

『じーちゃん…』

『この度は孫精霊がすみませぬ…ワシから代替わりしたばかりで勝手も知らず1人で試練を与えるなどと…』

『じーちゃん!僕だけで出来るって!』

『うるさいぞ!馬鹿弟子が!!…いったいワシから何を学んだのか…あまつさえワシを干渉不能にしおってからに……今度という今度は許さん!!』

老木の精霊が指パッチンした瞬間、光の人影は消え去る。

『此度はワシの責任…深くお詫び申し上げます……あやつは小さな精霊からやり直させますじゃ…おほん!試練の精霊に代わって、大地大樹の大精霊たるワシが此度の試練の突破を認めましょう…よくぞ頑張りましたな…』


「…大精霊様!?」


大精霊っておま…精霊よりも位が違いすぎんか?

冒険者ランクで示すとさっきの精霊がBランクとすると…SSランクとかあるぞ…


『お詫びにワシの力と大地の恵みを与えましょうぞ…』

無事、試練を突破し祝福を受け勇者となった。

更に大精霊の力の一端を受け取った姫様。その姿は凛々しく…


「う〜!やりましたー!!」

両手を上に上げて喜ぶ姿は…歳相応の少女に見えた。



なにはともあれ…依頼、完了だな。


【第一章:クエストクリア】

これにて第一章完結でございます。

第二章からはもっと人の心と思いっきりお話し合いを頑張ります!

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