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2話

息も絶え絶え、死に体を引きずりつつな状態でなんとか近くの冒険者ギルドにたどり着く。

ここが元いた国とは隣の国の大きい街にある冒険者ギルドでござるか~。テンションあがるなぁ~!!

「ひっ…」

ギルドハウスに入った瞬間ギルドの受付嬢がこちらをみて小さく悲鳴を上げる。

血まみれの顔、怪我だらけの身体、折れ曲がった右腕…そりゃ悲鳴もあげるわ、と一人納得する俺。


受付嬢がカウンターから離れるといきなり建物内が騒がしくなった。騒がしいと傷に響くんだけどなーと思いつつ入口で突っ立っていると俺の前に強面の女性が現れた。

30代女性。高身長ブロンドの長髪を後ろで束ねておりスレンダーな体付き。美人な顔には見合わない大きな火傷跡。怪我人の前だが紙巻きたばこを加え紫煙をその口から吐き出している。

「ルーキー…見事な傷だな?名声が欲しくて逸ったか?はんっ…棺桶でも買っておいた方がいいんじゃないか?…失敬、あまりにもその姿が滑稽だったもんでな?…私はここのギルドマスター【スカーフェイス】、お前は誰だ?」

こちらをあざけ笑いながら自己紹介をするギルドマスターことスカーフェイス。

「希望に添えなくて悪いが、英雄症候群罹患者(ドン•キホーテ)じゃ無いさ。せいぜい不運体質なだけさスカーフェイス」

「じゃあお前は誰だ?ルーキー?」

「今から名前を捨てようって奴に名前を聞いても仕方無くないか?……俺はただの冒険者登録希望者だよ」

スカーフェイスは片手で頭を掻くように頭を抱えた。

「……その意味をわかって言ってるんだろうな?」

「勿論」

重い言葉に即答する俺。

冒険者登録は紹介状なしで登録する場合、市民権を失い、今の名前を含む過去の一切を失う事を意味する。

市民権がなければ例え他の誰かに暴力を振るわれても、暴力をふるった誰かは罪に問われず、逆にこちらが手を出した場合は理由があってもこちらが処罰される。理不尽極まりない制度だ。

しかし、この制度があるから救われている人々もいる。俺もその仲間になるだけだ。

財産権とか銀行に預けてあった金とか全部消え失せるわけだが、俺はインベントリ格納派だったからノーダメージ。土地?持ってるわけがないだろ?元Bランクパーティーだぞ?

…名前は…まぁいいさ。名前ぐらい。だって転生してから名前、変わってるんだぜ?今更さ。


「…冒険者に何を望む?」

「見ての通りポーションの購入よ!素材の買い取りで金を作りたい。その2点だ、それ以外あると思う?」

冒険者でなければ素材の売買とポーションの購入はほぼ違法だ。こんなボロボロになった身体をポーション抜きで治せるわけもなく、つまり選択肢は最初からなかったってワケ。


「…わかった。手続きを進めよう…エムル、手続きを」

「ひゃっ…ひゃい!!」

はぁ、と重いため息をつきつつ了承したスカーフェイス。

「ありがたい…が、先に換金分と交換でポーションを手配してくれると助かる」

折れて曲った右腕をプランプランさせながら指差す俺。スキルで鈍痛化してるけど痛いものは痛い。早く治したい…


桃髪ボブのエムルと呼ばれた受付嬢がカウンターでおいでおいでしてくれたので、足を引きずりながら向かい、アイテムインベントリからハイウェアウルフ…人狼のボス個体から剥ぎ取りもとい入手した牙や爪をカカウンターに置く。

「お前…これをどこで…」

「詳しい話は後の個室でね?おっと勘違いしないでくれ?ただ話をするだけさ。いいお茶でも用意しておいてくれよ?」

驚くスカーフェイスを横目にポーションを催促する俺。

「おまたへひましゅたっ!」

「おっ…きたきた」

エムル受付嬢が、上級回復ポーションを運んできたのでビンの蓋を開けていっきに飲み干す。うーん、まずい。草と鉱石の味がする。


「手続きの続きと行こう。冒険者名は決まってるのかルーキー?…ふん、私が対応している事を光栄に思ぇ……っ!?!?」

直後血の噴水になる俺。

ダメージ食らいすぎてたかー。ポーションの回復が始まり緊張状態と魔法による止血処理を解いてしまったからもうね?こうなっちゃったらね?

「急いで治療師を連れてこぉぉぉぉい!!」

「ひゃっ…ひゃいぃぃぃ!!」

目を回しながら倒れる俺。真っ赤に染まる床。

叫ぶスカーフェイス。あたりでグルグルするエムル受付嬢。

着ていたローブが血で真っ赤に染まる。


その姿を見て、誰が言ったか

赤頭巾レッドフード


治療の為、冒険者名と登録が可及的速やかに必要となった為

俺は冒険者名:レッドフードとして登録されたのだった…


ドウシテ…ドウシテ…

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