13話
例え希望的観測で劣化コピーだとしてもラースドラゴンは攻撃力、防御力共に最高峰。
元がSランクパーティー推奨の存在。つまりパーティーとしての練度すら求められている、ということ。
対して姫様達は…いいとこAランクパーティー程度の練度と戦闘力。今の俺が参加しても焼け石に水どころか足を引っ張るだけだろう…
…死に物狂いの刃はドラゴンの肉に届かず鱗で止められ、ドラゴンの火炎は盾ごと焼き尽くす。
俺は初級魔法で回復、防御力向上、ブレス軽減を重ねがけを気配を殺しながら魔力がつきるまで行う。…行った。
やがて陣形が崩壊した。盾役の護衛兵2名がふっ飛ばされ壁に激突。動かない。
あれは気を失っただけですんだようだ…
盾役がいなくなった事で前衛の護衛兵ジークに横フリの尻尾が直撃。剣を盾にして衝撃を和らげたが地面を転がりヘルメットが脱げ、立ち上がれない。
後衛魔法使い護衛兵はその光景に心が折れ、立ち尽くす。
残るは姫様ただ一人。
勝利を確信したドラゴンが笑いながら、嘲笑いながら、決死の覚悟で特攻した姫様に火炎を吐いた。
城すら塵も残さず焼き尽くす本気の火炎。その火炎が姫を包み込む。はい、ゲームオーバー。
これがゲームならセーブポイントからやり直しなんだろう。クソゲーって言ってレベリングからやり直せるんだろう。
ここがゲームなら、姫様の覚醒イベントが開始してドラゴンをめった斬りにしてハッピーエンドを迎えるんだろうな、だがここは現実だ。
覚醒イベントなんて起きなかったし、ご都合主義展開も起きない。ジークが実は最強で力を隠してた、なんてこともない。
だから、不条理を力でねじ伏せるのが楽しいんだ。
破綻してるって?知ってる。じゃなきゃ狂戦士なんかやってないさ。
「起きろ、クサナギ」
『あいよ』
ブレスが吐かれる直前、持っていた剣が砕け中から大呪刀が現れる。
「呪いは反転する…!!呪いは願い、祈りへと戻り祝福にならんや!」
白い闘気を身に纏った俺がブレスに直撃寸前の姫様の前に立つ。
…だからブレスは好きなのさ。だってメタ張り放題だからな!
吐かれたブレスは全て俺と姫を避け後に流れたと思いきや大呪刀だったクサナギに全て集まり吸収される。
「……聖闘気…」
姫が呟いた。大正解。これは聖闘気。
呪いとは逆の力。反転した結果得られる力だ。
俺はこの場、ここ限りで自身に溜め込んだ呪いを狂気を対価に聖方面にシフトする。
むこう1ヶ月。俺は狂気を使えんし呪い武器に触れられん…正直使いたくは無かった。
もう一つ条件として魔力が空である、といった些細な条件があるがそれはどうでもいい。
ド安定に強い聖方面の力よりピーキーでアンバランスな力の方が好き。
そう思わないか?クサナギ?
『どっちでもええわ!!いくでー!』
反転したのは俺だけじゃない。
大呪刀の呪いは全て反転した。神刀に似た祝福刀へと成り、その名が示す通り神剣草薙ノ剣の逸話にある炎を操る能力を持つわけだ。
「さて。一刀の元、切り捨てる…もっとも、ひと振りでは終わらんのが残念だがなぁ」
ブラッドウェポンなら一射で終るのに…ほんと火力不足だな。火力は浪漫。




