10話
大きな溜息をなんとか我慢する。
冒険者とは自己責任の世界に生きている。ダンジョンに潜って死んでしまってもよくある事として処理される。それほどまでに危険なのだ。
だから俺みたいな刹那主義の大馬鹿バトルジャンキーならともかく…王族が冒険者を見習って軽装なのは自殺志願者なのかと思わざるを得ない。
ダンジョンの中には何が仕掛けられているのかわからない。そう俺みたいに他の高ランクダンジョンに飛ばされるかもしれないからな!!そう俺みたいに!!
…まぁあいつらと過ごす日々も悪く無かった。
「…おや?軽く微笑んでます?」
王女サマに指摘され気づく。
おっと、無意識のうちに頬が緩んでいたか。きっちり締め直さないとな…
…にしても、だ。
「…そんな装備でダンジョンに潜ろうとするかねぇ…」
「…え…?」
あ、ヤバ。声出てたわ。
「貴様ァ!!」
先程掴みかかってきた護衛兵が俺の胸ぐらを掴む。
「ジーク!やめなさい!」
直後王女サマがジークと呼ばれた護衛兵にやめるように指示し、ジークは渋々引き下がった。
「無礼をお詫び致します。…先程の言葉の意味を教えて頂けますか?」
うーむ、カリスマはあるようだが…溜息をつきつつ渋々口を開く俺。
「…ダンジョンの狭い場所で取り回しの悪い大剣。防御魔法が切れたら最低限の防御力もない軽装…ダンジョンを舐めた想定してるとしか思えないが?」
「ふんっ…何をバカな事を…!この装備は王家代々の装備でSランクパーティー白銀に見てもらったお墨付きだぞ!Dランク風情が何処の目線で言ってやがる!」
ジークが吼える…だが俺は言いたい。
「…そいつらは化物だぞ…潜り慣れてるプロと一緒にするな…死ぬぞ?」
殺意、殺気、呪を混ぜながらそう警告する。
「…だったら貴様の装備は何なんだ!全身ローブで軽装じゃないか!」
慄きながらも、こちらを軽蔑するジークにローブの内側からジークに見えないように剣を取り出し不意打ちでその首目がけて切りかかる。
「…んな…!!」
寸止めしなければ、ジークは死んでいただろう。
「全身ローブは手や脚の動きを隠して相手に読ませない。これでわかったか?俺はこれでもプロだ。見えないだろうがな…まぁ絶対に生きて帰るタイプのプロじゃなくて、刹那主義殺し合い上等のバトルジャンキーだがよ…」
「…狂ってやがる…!」
「光栄だね…!これでわかったか初心者?王女様御一行と冒険者風情のダンジョンに対する温度差が?…ダンジョンは遊びじゃねぇんだよ!俺達は死ぬ気で潜ってんだ!」
殺気を纏いながら俺は警告する。このままなら死ぬぞ、と。
「…たしかに、私達はダンジョンを軽視していました」
「姫様!」
「黙りなさい、爺や。まずはその剣を下げて頂けますか?」
「わかってもらえたら良いんだがね」
俺は剣を下ろす。もう不敬罪とか知ったもんか…カッとなってやっちまった後だからな…




