8話
忍者ごっこを続けて1週間。またもギルドマスターに呼び出される俺。
すっごい、こうすっごい溜息といやそーな顔をしたスカーフェイスが目の前で切り出す。
「…盛況だな、ジャックザリッパー。肉屋を始めたと聞いたぞ?しかも、無料で配っているとも聞いている。聖人にでも憧れたか?」
これはちょっと怒ってるヤツだな…大方辻解体放置したのを駆け出し冒険者や低ランク冒険者がリアカーで勝手に回収して報酬を得てる事にちょっと思うところがあるんだろう…でもなぁ…
「そう怒るなよスカーフェイス。コイツを試すのに辻解体して放置するのが一番なんだ。それと貴重な素材は拾ってきているだろ?少ないインベントリを潰してまで拾ってきてるんだ感謝してほしいぐらいだ」
『せやで嬢ちゃん!わいはわいで持ち運ぶ為の両手がないからなぁ!』
HAHAHA!と大呪刀と笑う俺。
「……はぁ。その件は置いておこう…お前が正当な権利を放棄するのも自由だからな!……それはそうと、ダンジョンに潜る気はないか?」
「正気か!?スカーフェイス!?」
思わず声を荒らげる俺。
「…この2丁拳銃は火力を絞ってもダンジョンで使うには過剰だ。最悪ダンジョンが崩落する。…コイツ(大呪刀)は小回りが効くが疾さがウリなんだ。ある程度以上は対応出来るが…それ以上に近接戦闘だけじゃ分が悪い。ガス欠で屍の仲間入りするのがオチだな」
腰の大呪刀を弄りながら答える俺。集団の敵相手じゃ分が悪い。魔法でカバーしても速射タイプじゃないから隙が出来る。疾さで辻解体し続けるには無限のスタミナが必要。ブラッドウェポンでない以上血の盟約は発動せず、狂化状態の維持コストや呪術のコストは賄えてもスタミナや魔力が枯渇してしまえば…
「…そうだな。そうだよな……はぁ…」
「?」
スカーフェイスは大きな溜息と共に1枚の紙を手渡してくる
「げっ…王国からの指名依頼…」
スカーフェイスは俯いたまま頷いてくる。つまりダンジョンに潜れというのは…
「…そう、第二王女様からの指名依頼だ。…王女の試練という名のダンジョン攻略を行うそうだ…その攻略にドラゴン刈りの聖人レッドフードをご希望だとさ…」
「すぅー……いや、あのー…悪いが断れないか?王女の前じゃコイツも使えない…ぞ?」
何度も大呪刀を指差して確認する。呪いの武器を王族の前で使えるかぁ!?いや、大逆罪になる可能性だって否定できんぞ!?狂化で巻き込む事も考えたら…無理!!狂化すら出来ねぇ!俺の戦闘力ほぼ否定じゃんね!
「…王女たっての望みだから無理、だそうだ」
ガッテム!!
…この様子じゃ本当に無理だし、スカーフェイスもわかった上で何度か断ってくれていたのだろう…
「依頼は2週間先……用意だけはしておいてくれ…」
「あいよ」
俺は残り6スロットぐらいのインベントリに大呪刀と2丁拳銃をしまい、手頃な剣と中級魔法の魔導書に大枚をはたき残った金をマナポーションに変換。残ったアイテムインベントリに突っ込んだ。
魔導書それは魔法の発動を軽減する為のもの。普通、
初級魔法使いが中級魔法の魔導書を持っても発動できないが俺は例外。魔導書はスクロールと違って1回消費型じゃないが回数制限はある。それがあと何回なのかはわからない…さてどこまで持つかな。
不安要素を抱えながら俺は集合地点へと向かった。




