7話
ドラゴンを倒したすぐ後にギルドマスターに呼び出しをくらったさらに1週間後。
俺はまたもギルドマスターの執務室に呼び出されていた。
扉をノックせず乱雑に開く
「こんなに何度も呼び出すなんて…なにか用か?」
「…遅刻だぞ身元不明死体」
「ジョンって呼ぶならもっと親しみをもってジャックとよんでくれないか?」
「なら次からは切り裂きジャックとでも呼んでやろう…貴様が放置した魔物の死体は全て一刀両断されていたからな。お似合いだろ?…本題に移ろうレッドフード。お前が倒したグランドドラゴンだが…」
「ん?…まて、倒したのはラースドラゴンの筈だが?」
ふぅ、と溜息と共に頭を掻きながら苦悩した表情を浮かべるスカーフェイス。
「…冒険者ギルドの元締と国は影響を考えBランク相当のドラゴンだった、と発表した」
「なるほど、大本営発表ならしかたねぇ…が報酬金はどうなるんだ?」
さらに苦虫を噛み潰したような表情になり続けるスカーフェイス。
「…討伐報酬はグランドドラゴン相当になった」
「…クソかな?」
おいおいおい…たしかに推奨ᖴランクの平原でラースドラゴンの強化個体(推奨:SSランクパーティー)が出現した影響を考えると伏せられる事情はわかるんだが…
「…あぁクソだ。偽りの報酬金が支払われる事実は冒険者全体の信頼を失う事に繋がりかねん……なのに…トップは何を考えているんだッ!!」
スカーフェイスは自身の机に拳を叩きつけた。ガンッ!と小気味のいい音が執務室に響く。
「……さらにトップ層はDランク冒険者だから、と報酬を金でなく物品で支払うそうだ。過ぎた金を持たすのはもったいないだと!?ふざけるなッ!!利権を食い物にしているクソ貴族どもが…ッ!!」
目の前で怒っている人を見ると冷静になるよね…なわけで冷静な俺。
「すまない…」
「俺達の為に怒ってくれている事に感謝しかないさ、謝らないでくれスカーフェイス」
さらに苦悩した表情で一般的には価値のないものを報酬として渡してくる。
ソレは封印の札が鞘に柄にベタベタと貼り付けられ封印紐でぐるぐる巻になっている刀。
「…大呪刀。300年前大災害を引き起こしたとされる厄災刀だと言われている」
シュルシュル(封印紐を外す音)
「絶対に封印を外してはならない…冒険者ギルド本部もコレを君に使えるとは思っていない」
バリバリ(封印札を剥がす音)
「…年々呪力が強くなりギルド本部も抑えきれなくなった…だから呪力を扱える貴様に厄介払いした…って何をしている!?」
チャキ(刀身を抜き放つ音)
妖しく光る大呪刀はレッドフードに呼びかける。
『斬れ…斬れ…斬れェ!!殺戮だ!!皆殺しだ!!そこの女を斬れェ!!』
ほう、峰は黒。刃は紅。見とれるぐらいに美しい刀。呪力は高い…これは凡人には使えんなぁ…
そっと刀身を鞘に戻す俺。
「…へ?」
『…へ?』
「とりあえず、神棚作って奉納するわ。コレ。」
「いやいやいや、それより大丈夫なのか!?」
「あん…あぁ…こういうタイプは乗っ取りや洗脳してくるが…俺にゃ効かねぇから…」
『待て待て待て!ワイは精神耐性貫通持ちやぞ!?』
「呪装狂戦士なめんな。効かんわ。…それよりコレの扱いだが、神棚だと弱いか?…神社つくって祀ったら大人しくなるから…それでいい?」
「…対処できるならそれでもいいさ…ったく寿命が縮んだぞ…」
「そりゃ悪かったなスカーフェイス…さて…ん?どした震えて?」
大呪刀はカタカタ震えて泣き出した。
『いややー!やっとシャバに出れたんや!!暴れたいんじゃー!!お慈悲をー!お慈悲をー!』
「いや、お前呪刀やん。慈悲なんてないが?」
『…どうやろ兄さん…ワイを使う気はあらへんか?…お役にたちまっせ!!な!!大呪刀やから、なっ!!』
「あんまふざけた事言ってると、こいつに喰わせるぞ?」
ちらっと腰のホルスターにあるブラッドウェポンの2丁拳銃を見せる俺。こいつめっちゃうるさい…
『後生やぁー!魔物でいい!魔物でええからワイを使ってくれぇ…後生やぁ…』
「でも俺、刀適正ねぇからやっぱ神社か餌だな」
『何を言うてはりますのん!ワイ大呪刀!!握れば刀適正なんていくらでも湧いてくるさかい…堪忍や〜!〜』
「…とりあえず試用期間っつーわけで試し切り行ってくるわ、スカーフェイス。あ、受取サインは適当に偽造しておいて」
「あ、あぁわかった…」
呆気に取られるスカーフェイスを置いていつもの平和な平原に向かう俺。
『一刀三枚おろし!』
平原につくなり妖しい刀身を光らせながら右手で抜き放ちそこら辺の魔物を解体レベルで細かく切り裂く。大量に。辻解体斬り。なお素材はその場に放置!!
『ガーハッハッハ!!コレがワイの実力や!』
「なるほど…悪くない。とりあえず試用期間延長は確定だな……ふむ、刀か…よし」
急に悪い事を思いついて右手の大呪刀を逆手で持ち、左手で印を組むフリをする。
「火遁(嘘)!焔玉!!」
口から爆炎を吹き出したように焔玉を放ってみたりする。
『忍者やないかい!!』
よし解体した一部の肉はこんがり焼けたようだ。今日の飯はこれでいっか




