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【祝!1万PV突破!】没落令嬢は農業で成り上がる!〜転生教師の魔導農園改革〜  作者: 星川蓮
第7幕『魔導農園への飛躍 - 防御から反撃へ』

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第61話『調査団迎撃 - 言葉の戦い』

第61話です。

今回は剣も魔法も控えめで、主役は「言葉」と「理屈」。

オルターナ領を巡る攻防は、ついに表舞台へと引きずり出されます。

静かな会議の裏で交錯する思惑に、注目してもらえたら嬉しいです。

調査団がオルターナ領に滞在して三日目の朝、領主館の大広間では最終審査会が開かれることになっていた。これは、調査団が領地の技術と安全基準を最終評価し、王国への報告書を作成するための重要な場である。


「全ての準備は整っておりますか?」


ミレーヌは、広間に設えられたプレゼンテーションエリアを最終確認していた。壁には拡大されたデータ図表が掲示され、中央の長机には土壌サンプル、作物サンプル、そして各種測定器が整然と並べられている。


ゴドウィンがうなずく。

「安全性データは全て揃いました。エネルギー出力の安定性、環境への影響、生体への作用──いずれも王国基準を大幅に下回っています。問題は……」


「調査団内の私兵たちの動きですね」


ミレーヌの懸念は正しかった。前夜、ガルム配下の護衛が、調査団宿泊施設の周囲で不審な動きを捕捉していた。私兵風の男二人が、深夜に密かに外へ出て、何者かと接触した形跡があった。


「今日の審査会で、何か仕掛けてくる可能性が高いです」

ガルムが警戒を強める。

「証拠書類の改ざん、あるいは突然の『事故』を装った妨害……いずれにせよ、彼らの目的は調査団に悪い報告を書かせることです」


「ならば、私たちも準備をしておきましょう」

ミレーヌはある計画を思いついた。

「エルマー技官に、密かに協力を依頼します。彼が開放派なら、私たちの意図を理解してくれるはずです」


午前九時、審査会が始まった。


レオンハルト・フォーゲル官僚を中心に、調査団全員が厳しい表情で着席する。ミレーヌ側には、ゴドウィン、カイル、そして主要な技術者たちが同席した。


「では、最終審査を始めます」

レオンハルトが宣告する。

「まず、魔導農園システムの安全性に関する最終データの提示を願います」


ゴドウィンが立ち上がり、詳細なデータを提示し始めた。

「こちらが、過去三ヶ月間の連続モニタリングデータです。エネルギー出力は常に安全範囲内に収まっており、暴走や不安定な変動は一度も記録されていません」


データは圧倒的だった。数百ページに及ぶ連続記録、毎日採取された土壌と水質のサンプル分析、労働者の健康診断結果──全てが完璧に近い数値を示していた。


「しかし」

私兵の一人が突然口を挟む。彼は「補助調査員」という肩書だったが、その口調は明らかに尋問調だった。

「これらのデータが改ざんされていないという保証は?オルターナ領には、データを操作するだけの魔導技術があるのではありませんか?」


広間の空気が一瞬で張り詰める。これは明白な挑発だ。


ミレーヌは冷静に対応する。

「では、独立した検証を行いましょう。調査団の皆様の中から、任意の者に検証を委ねます。どのデータでも、どのサンプルでも結構です。今、ここで再検査を行ってください」


エルマー技官が立ち上がる。

「私が引き受けましょう。魔導技術管理局の標準測定器を持参しています」


彼はカバンから最新式の魔導測定器を取り出すと、無作為に選んだ土壌サンプルに向けた。測定器の表示盤に数字が現れる──ゴドウィンが提示したデータと完全に一致する。


「……確認しました。データに誤りはありません」

エルマーが報告する。彼の目は、私兵たちを一瞥し、わずかに警戒の色を浮かべていた。


次の議題は、古代遺物「ヴァーミス・ルミナリス」の制御システムだった。


「最も危険とされる部分です」

レオンハルトが指摘する。

「過去の災害は、まさにこの種の遺物の暴走によるものでした。貴方たちの制御システムが、本当に完全かどうか」


カイルが前に出る。彼は、自らが製作した制御装置の模型を持ち、説明を始める。

「この装置の核心は、三重の安全システムです。第一に、出力が規定値を超えた瞬間に作動する自動遮断。第二に、エネルギーの流れを常時監視するフィードバック制御。第三に、万一の全システム故障に備えた物理的な緊急停止装置です」


彼は模型を分解し、内部構造を見せる。

「それぞれのシステムは独立して動作し、一つが故障しても他の二つが機能します。さらに、これらの装置はすべて『蔓』ネットワークの職人たちによって分散製作されています。一か所で全てを制御することは不可能な構造です」


「分散製作?」調査団の一人が尋ねる。


「はい。部品Aは自由都市の職人、部品Bは旅の技術者、部品Cはここオルターナ領の工房──こうして、完全な設計図は誰の手にも渡らないようにしています。これは、技術が悪用されるのを防ぐための措置でもあります」


私兵たちの表情がわずかに曇る。彼らの目的の一つは、この技術を入手することだったが、分散製作ではそれが困難になる。


審査会は昼食を挟んで午後も続いた。議題は、環境への長期的影響、経済的持続可能性、そして最も重要な──この技術の「所有権」と「利用権」についてだった。


「仮にこの技術が安全だと認められたとして」

レオンハルトが核心に触れる。

「誰が管理し、誰が利用する権利を持つのか?古代遺物は王国の財産です。私人が独占すべきではない」


ミレーヌはこの質問を予期していた。

「私たちは、この技術を『オルターナ農法』として体系化し、王国に寄贈する用意があります」


調査団内にざわめきが走る。


「ただし、三つの条件付きで」ミレーヌは続ける。

「第一に、この技術は『生命を育むため』にのみ使用されること。兵器への転用は永久に禁止する。第二に、技術の普及は、荒廃地の再生と民衆の福祉を目的とするものに限る。第三に、管理は独立した委員会が行い、特定の貴族や商会が独占しないこと」


エルマーがうなずく。

「賢者の塔の開放派も、同様の提案を検討していました。技術の公開と、倫理的な使用規範の確立です」


その時、一人の調査員が突然立ち上がり、激しく反対する。

「荒唐無稽だ!こんな危険な技術を広めるなど、王国の安全を脅かすものだ!」


彼はレオンハルトを見つめる。

「フォーゲル閣下、我々は既に十分な調査を終えています。この技術は危険であり、直ちに使用停止とすべきです。報告書にはそう記すべきでしょう」


ミレーヌはその調査員を観察した。彼は三日間、ほとんど発言せず、常に私兵たちの近くに座っていた。明らかな侯爵派の手先だ。


「では、最後の検証を行いましょう」

ミレーヌは静かに言った。

「実際に、この技術がどれほど『危険』か、あるいは『安全』かを、実演でお見せします」


彼女はゴドウィンに合図を送る。ゴドウィンが小さな装置を操作すると、広間の一部がスライドして、外の実験区画と直結した。


「ここは、魔導農園の小規模実験区画です。今から、三つの実験を行います」


第一の実験は「浄化能力」の実演だった。事前に用意された汚染土壌の容器に、魔導農園のエネルギーを照射する。汚染物質の数値がリアルタイムで下がっていく様子が、大型の表示盤に映し出される。


「第二は『成長促進』です」

通常の三倍の時間がかかる「鋼鉄豆」の種を植え、エネルギーを照射する。数分後、種が発芽し、目に見える速さで成長を始める。


調査団から驚嘆の声が上がる。


「そして第三──これが最も重要です」

ミレーヌの声が厳しくなる。

「『安全性の限界テスト』です」


彼女はゴドウィンに合図を送る。ゴドウィンが制御装置の安全限界を故意に解除し始める。


「今、システムの安全装置を解除しています。通常なら、これで暴走が始まるはずです」


エネルギー出力が急上昇する。表示盤の数値が危険域に近づく。調査団の何人かが身を引く。


「しかし、これが私たちの技術の真髄です」

ミレーヌが宣言する。

「第二、第三の安全システムが自動的に作動します」


カイルが別の装置を操作する。暴走しそうなエネルギーが、瞬時に別の回路に迂回され、無害な光と熱に変換される。数値は安全域に戻る。


「これが、完全な制御です。一つのシステムが故障しても、他のシステムが補完する。これこそが、過去の失敗から学んだ教訓です」


広間は静寂に包まれた。データだけではなく、実際の実演によって、技術の安全性と有効性が証明された瞬間だった。


レオンハルトが深く息を吐き、ゆっくりと立ち上がる。

「……私は見た。データも、実演も。この技術は、確かに驚異的であり、かつ安全だ」


彼は調査団全員を見渡す。

「報告書には、この技術が王国にとって有益であること、ただし厳格な使用規範の下で管理されるべきことを記す。異論はあるか?」


侯爵派の手先の調査員が、顔を紅潮させて反対しようとする。しかしその時、エルマーが行動に出た。


「実は、もう一つお見せしたいものがあります」

彼はカバンから一枚の書類を取り出す。

「これは、ダンロップ侯爵家が、賢者の塔の統制派に送った密書の写しです。ここには、『オルターナ領の技術を奪取し、兵器として利用する計画』が詳細に記されています」


広間が騒然とする。私兵たちの顔色が一変する。


「この文書は、塔の開放派が入手したものです」

エルマーは続ける。

「ダンロップ侯爵派は、調査団に圧力をかけ、悪い報告を書かせようとしています。その目的は、この技術を『危険』と認定させ、王国が没収した後、自分たちが横取りするためです」


レオンハルトの表情が怒りに変わる。

「それは本当か!?」


「証明しましょう」

エルマーが私兵たちを見つめる。

「彼らの所持品を検査すれば、侯爵家からの指示書が見つかるはずです。おそらく、今日の審査会で何か『事故』を起こすよう命じられているでしょう」


ガルムが一歩前に出る。

「では、検査させていただきます」


私兵たちは抵抗しようとするが、他の調査員たちの視線に押され、ついに諦めた。彼らの所持品から、確かにダンロップ侯爵家の紋章が入った封筒が見つかり、中には「審査会を混乱させよ」という指示が書かれていた。


レオンハルトはその文書を手に取り、震える声で言った。

「……これは、調査の冒涜だ。王国官僚として、絶対に許せない」


彼はミレーヌに向き直る。

「オルターナ当主。この調査は、不当な政治的圧力によって歪められようとしていました。私たちは、真実を報告します。そして、ダンロップ侯爵家のこの行為も、併せて報告することをお約束します」


審査会は、ミレーヌの完全勝利に終わった。しかし、彼女は安堵よりも、むしろ警戒を強めていた。


侯爵派がここまで露骨な手段に出るということは、彼らが追い詰められている証拠だ。そして、追い詰められた敵は、より危険になる。


調査団が領地を去る翌朝、新たな報告がガルムからもたらされた。


「西で目撃された武装集団が、領地の境界から十キロの地点で待機しています。数は五十人以上。どうやら、調査団が去った後の襲撃を計画しているようです」


ミレーヌは窓の外の豊かな土地を見つめた。


言葉の戦いは勝った。次は、武力の戦いが待っている。


「要塞農園の準備は?」

「ほぼ完了しています。あとは、起動するだけです」


「では、準備を整えましょう」

ミレーヌの目には、決意の光が宿っていた。

「私たちの土地を守るために」


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

言葉の戦いは一応の決着を迎えましたが、これはまだ「前哨戦」。

相手が引かない以上、次に来るのはもっと露骨な手段です。

ここから物語は、防御から反撃へと大きく動き出します。

感想やブックマーク、励みになりますので、もしよければぜひ。

引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

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