5・強襲~口論と契約
なんとかかんとか、第5回目ですよ。
今回も書き始めたら、あっという間でしたが、書くための時間がなかなか確保できず、大変でした。
書いてる最中は楽しいんですが、後からの誤字脱字の修正とか大変で……今回もお楽しみ頂ければ幸いです。
※(改)とある場合のほとんどは、誤字脱字、読み難さ部分の修正です。内容に影響のある変更が行われた場合は、ここに加えて、活動記録などでも報告します。投稿後、一週間ほどは、誤字脱字、読みやすさ等の修正が多く発生しますが、内容の変更はほぼありませんので、ご安心下さい。
「神魔煌輝鵬壊撃ッ!」
「断界空双掌壁ッ!」
瞬間、周囲の全てが突き刺さるような閃光に包まれた。
ぶっきーの声に集中して耳を傾けるおーちゃん。今日は、ここしばらく週に1~2回のペースで「読み聞かせ」していた小説の内容が、いよいよ佳境を迎えつつあった。
大きく深呼吸したぶっきーは、ページをめくって、朗読を続ける。
激突した魔力が、地面を沸騰させ、幾重にも同心円状に連なる衝撃波を巻き起こす。
エーゲルナル平原の木々の半分は最初の熱線を浴びて瞬時に燃え尽き、次の衝撃波で平原にあるもの全てが燃え吹き飛ぶ。
地面がめくれ、放たれた熱で残された木々も燃え上がって消え、岩も地も、飴細工のように熔ける。
熔けた地面が衝撃波に乗り、地津波となって周囲を襲う。
フィーティアも、デルガ卿も、レップを抱えたメイナも、二人の戦いの生み出す、熱や衝撃波から身を守るために、全力を尽くさねばならなかった。
手出しどころか、二人の戦いをまともに見る事すら難しい。
周囲に無数に居たゲルン兵は、消え果てている。
あまりの熱で焼尽されたか、衝撃波でどこかに吹き飛ばされたか、地津波に飲まれたかしたのだろう。
「ぬううううううぅ!!」
「うおおおおおおぉ!!」
双方の術が拮抗する。
気を許せば、一瞬で消し飛ぶ状況の中で、ナイトは、この魔力の激突に勝機を見出し、不敵に微笑む。
が、しかし、そこから前に出ようとはせず、断界空双掌壁を維持する。
もはや音ではない、破壊的な圧力が周囲を満たし、遥か彼方の王都に至るまで、戦鼓の如く、二人の戦いを告げる音撃となって響きわたる。
激突から生じる光は、熱となって、周囲を焼き尽くすだけでは飽き足らず、平原の北に控えるエンダーの山頂にあった氷河を溶かした。
溶けたそれは、土石流となり、ゲルンの砦に襲い掛かる。
二人の魔力の激突が、フィーティアら三人と一匹以外の全てを焼き尽くし、熔かし、容赦なく吹き飛ばしていく。
エーゲルナル平原を丸く刳り、その中にあったもの、ほぼ全てを煉獄に叩き落とした頃、ついにグラファガンが放つ神魔煌輝鵬壊撃の勢いが衰え始めた。
「ぬううううう!!」
グラファガンは、歯を食いしばりながらも、暴龍ゲファルガスタを己の前に進ませる。
これで己の術の破れたときも、ゲルファガスタが盾となる。そうすれば…
…だが、ナイトの断界空双掌壁は、神魔煌輝鵬壊撃を押し潰すことも…その先に立つゲルファガスタを、焼き尽くす事はなかった。
ただ、極大魔術の生み出す破壊力を、その双掌…両の手のひらに受け止め、受け流し、消し去っているだけなのだ。
「……な!?」
グラファガンは、ナイトが何かを企んでいる事に気がついたが、ここで神魔煌輝鵬壊撃を止めるわけには行かない。
今、自分を流れている魔力の激流を、急に止める事は出来ないのだ…衰え始めたとは言え、その膨大な魔力を止めることなど不可能だ。
もし可能だとしても、その瞬間、体内に逆流した魔力で、自分の体は破裂し四散してしまうだろう。
やがて、グラファガンの両手から放たれていた光の奔流が尽き、最後の光の粒が、エーゲルナル平原であった焦土の空にシャボンのように飛び、滲んで消える。
ナイトは歯を剥いて笑う。
「このまま、ゲルファガスタを殺して欲しかったところだろう…だが、そうは行かねえ!」
ナイトは、何かを振りほどくように腕を振って、続ける。
「貴様の筋書き通りには、行かねえんだよ!!。」
「き…きさ…」
貴様、と言い放つ前に、グラファガンは、よろめいて膝をついた。苦悶の声も絶え絶えに。
夏の犬のごとく、短く浅い呼吸を繰り返す。
時々、深呼吸しようとするものの、胸に激痛が走り、うまく呼吸が出来ない。
「うぐ…」
あまりに膨大な魔力を体に受け、それを神魔煌輝鵬壊撃として放ったため、一時的に、とはいえ、魔力臓器が焼き付いたのだ。
体のダメージが大きすぎる。治癒魔法が追いついていない。
ナイトは、ゲルファガスタと、その頭上に立つグラファガンを指差す。
「お前の力の源…暴竜…ゲルファガスタの秘密は、俺が暴いてやったぜ!?、嬉しいだろう!?」
二つの術の衝突を耐え抜いたフィーティアら三人が、ナイトのところに翔び集まってきた。
今のナイトの言葉を聞いて驚く。
「ど、どういう事?!」
「ナイト様、それって?!」
ナイトは三人の方を振り向く。
「無事か…まあ、お前らなら当然だな」
「…心配してた素振りくらい、見せてくれてもいいじゃん!」
デルガ卿が身を乗り出し、不満げなフィーティアや、黙ってふくれっ面でレップを抱えたままのメイナを押しのけて、ナイトに問いかける。
「な、ナイト殿…ゲルファガスタの秘密を暴いたとは…一体?!」
「ああ!」
ナイトは再度、グラファガンに向き直る。
「グラファガン!、お前の、無限の力の源『暴龍ゲルファガスタ』の正体は、転移者たちの集積体…
飛剛竜の魔力臓器に、転移者たちを詰め込んで、元の世界に戻るための次元力を吸収する…
転移者たちから力を奪い取り続ける術を施した、次元力収奪装置だ!」
それを聞いたデルガ卿は、ナイトとゲルファガスタの両方を代わるがわる見て、愕然とする。
「そ!…あれは…そんな…まさか…!」
一方、それを聞いたグラファガンは、立ち上がれぬままに、歯を食いしばり、浅い息を繰り返しながらも、目を向いてナイトを睨めつけ、憤怒と苦悶の声を上げた。
「うう…ぬ…ぬうううぁッ!」
ナイトは、グラファガンを改めて指差して、歯を剥いて笑い、そして叫ぶ。
「俺の誓いは、天の上にも地の底にも届かねえ…だから俺は…俺に誓って、お前を、倒すッ!」
ぶっきーは、ここまで読むと、大きく深呼吸をする。
「ぷひー」
大きく息をついて、本をテーブルに伏せた。
「今日は…ここまででいい?」
おーちゃんが、ちょっと残念そうにだが、首を縦に振る。
「うん!、うん!、ナイトの決め台詞出たし、クライマックスだから、もうちょっと聞きたいけど、全部聞いたら…終わっちゃうし!!」
今日、ぶっきーがおーちゃんに読み聞かせていたのは、おーちゃん自身が、読んで欲しいと買ってきた、ラノベの中の一冊。『転移者が次々行方不明になる世界で、俺ひとりだけが勇者になった!』だ。
身も蓋もない、しかも長い題名だな、と、コウガは思ったが、ラノベ=ソシャゲと呼ばれる物語の分野の一つで、全盛期に出た作品は、だいたい、そういうものらしい。
「うーん、次が楽しみー!!、どうなっちゃうんだろう!?、あーん!、気になるー!」
おーちゃんは、自分が座っている専用の座布団を掴んだまま、興奮で体を前後に揺すっている。
自分で本を読むのは嫌いだが、本の読み聞かせ…朗読を聞くのは、大好きらしい。特にぶっきーのそれを聞くのが。
一方のぶっきーは、朗読でよほどの体力を使ったのか、そのまま横たわって、ぐたっと伸びている。
「ぶっきー、疲れた?、大丈夫?」
「んんー、クライマックスは読むの疲れるー、たいへんー」
おーちゃんは、テーブルの上のマグカップを取ると、ぶっきーの方に置き直す。
読み聞かせが始まる前には熱かったコーヒー牛乳は、今はもうすっかり冷めていた。
「たいぎであったぞー!、よはまんぞくじゃー」
それから、今度は体を横にゆすりだす。
「ホント、ぶっきーのコレが無かったら、もう、世の中の楽しみの半分くらいがなくなっちゃうんだからー。ありがとー!」
ぶっきーがノロノロと体を起こす。
「大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃないよー、部活でも、この時期、全然泳げなくて、つまんないし、ゾンビも、でろでろも、相変わらずだし、家に帰ってもやる事って言ったら、宿題くらいしかないし。
ほんと、お小遣いの日と、ぶっきーに読んでもらう小説だけが楽しみなんだから!」
「…やっぱ、お小遣いの日は大事?」
ぶっきーが笑う。
「もっちろん!、大事だよぉ!!、すッごい大事!!」
二人は声を合わせて笑う。
笑いの一段落ついた後、コウガは少し神妙な面持ちで口を開いた。
「ところでぶっきーよ……」
「ん?、何、コーちゃん?」
振り返ったぶっきーは、真面目な顔で問いかけてきたコウガに驚く。
「?、どうしたの?」
「この物語で出てくる、おそらく呪を操るための、言葉は、これは一体なんなのだ?」
ぶっきーとおーちゃんは顔を見合わせた。
「言葉?」
少し考え込んでいたぶっきーは、気がついた様にコウガを見る。
「ああ、呪文のこと?」
「じゅもん?」
ぶっきーは、伏せてあった本をひっくり返して指差す。
「そう、呪文。小説の中とかの登場人物が、魔法とか使う時に、唱えなきゃならないのが呪文。
本の中には、コーちゃんみたいに呪文を唱えなくても、魔法が使える登場人物も居るけど、だいたい唱えてるよね。
どんな呪文を使ったか、分かりやすいし!」
「ふぅむ…その本を見せては頂けぬか?」
「読むの?、はい」
コウガは、ぶっきーが差し出してくれた本を手に取り、呪文の部分を抜き出して読む。
「ふむ…神魔煌輝鵬壊撃…治癒魔法…浮遊魔法…炎雷撃…ふむぅ…」
ぶっきーとおーちゃんは顔を見合わせる。
「コーちゃん、どうしちゃったんだろう…?」
おーちゃんが、小声で話す。
「私も、あんな真剣な顔のコーちゃん、初めて見たかも」」
ぶっきーもまた、驚いたような顔で見つめる。
その後、二人は、いつもどおり色々な本を引っ張り出して感想を話したり、今日の事を笑いながら話したりしたが、コウガはその間もずっと、小説の中の呪文に掛かりきりだった。
おーちゃんが家路につき、夕食の終わったあとも、コウガは、小説の中の呪文をずっと調べ続けてた。
宙に浮きながら、時にフローリングに寝転び、時にテーブルの上に乗って、注意深く読み進め、時に深呼吸してまた読み進める。
寝る前のひととき、宿題も復習も一段落したぶっきーは、机の椅子に座ったまま、衣装棚の上のモニタでアニメを見ている。
パジャマに着替える前のこの時間は、だいたいピンクのスウェットと、灰色のドルフィンパンツ。色は日によって変わるが、暑くも寒くもないこの時期は、だいたいこの格好だ。
「コーちゃんさ、なんで小説の呪文のところだけ、ずーっと見てるの?」
ぶっきーが、コウガの方を見て尋ねる。
コウガは、テーブルの上に置いて読んでいた小説から目を放し、ぶっきーの方を見た。
「…うむ、この、彼ら…作中人物の呪を扱うに当たって用いる、呪文と呼ばれるもの…
これは、非常に興味深い…我の呪を為すにも、大いに参考になる」
「ええ?!、コーちゃん、あんなにすごい事できるのに!?」
椅子から少し身を乗り出して驚くぶっきー。
「…ぶっきーよ、我にとって、呪を操ることは、耳目で周囲を見聞し、手足を操って動くのと同じ。
我の在る中で、自然な事であって、そこに何の苦労もない。」
コウガは、手にしていた小説を指差す。
「しかし、これら物語の、作中の登場人物たち…ほとんどの登場人物は、そうではない。
呪を学び、呪文という形で扱う事を知る。
そして、使いこなせるように、修練していく…これは、非常に興味深いことだ。それに…」
「それに?」
「我の、現界での呪の扱いに、役立つやもしれぬ。」
ぶっきーは小首を傾げる。
「コーちゃん、今、呪文を唱えなくても、魔法…じゃなくて『自由に呪が使える』って、言ってたじゃない?
私も凄い魔ほ……呪を使うの、何度も見てるし。
なのに、何で呪文が役に立つの?」
コウガは、ぶっきーの机の上に降り立つ。
「ハッキリ言えば、ぶっきーよ、契約の…ぶっきーとの契約の齎した、過大な力のためだ。」
ぶっきーは驚いて、コウガを見る。
「契約って?、コーちゃんと私の?!」
「然様。契約によって、我に齎された力が、余りに強すぎるのだ。」
「強すぎる?、の?」
「いささか……それに、今も、この力は増大し続けている……」
コウガは、少しうつむく。
「我の力は、この現界にあっては、扱いに困るほど強い。
現に、以前、駅前の公園で外界獣と相対した時も、我自身、呪の強さに驚いたほどだ…」
「…そうだったんだ…」
ぶっきーの方を振り向いて続ける。
「我に必要なのは、我が呪の力を適切に制御する…抑える手段。」
「それで、呪文が必要なの?」
コウガは、頷いた後、しゃがんで本を手に取る。
「ぶっきーの読む本…ラノベ=ソシャゲに、よく見られるこれら呪文が、果たして、我の役に立つかは分からぬが、しかし、試す価値はある。
そも、今のままでは、用に対して、現界に与える、余計な影響が大きすぎる…そうだな『隣の家を尋ねるのに、月ロケットを使うようなもの』なのだ…」
ぶっきーは、椅子から降りて絨毯の上に座ると、コウガの立つテーブルの上に身を乗り出した。
「ふぅん…でさ、でさ、呪文って、どんな呪文にするの!?」
『コウガは、どんな呪文を使うんだろう?』。そんな期待からか、ぶっきーは目を輝かせている。
ぶっきーの姿を見て、コウガは、はにかんで微笑む。
「ふむ、例えば…」
縫いぐるみの様な両腕を前に出し、手のひらを広げる。その手のひらで、何かを包むようにして、コウガは呪文を試す。
「輝光源」
小さな破裂音と共に、コウガの手のひらの間に閃光が走り、部屋中が強力な投光器に照らし出されたような、部屋の中に太陽が出てきたような…そんな強烈な光で満たされる。
「わ!?」
ぶっきーは、慌てて手で目を覆い、顔を伏せる。
「コーちゃん眩しい!、眩しいって!!」
コウガは呪を解くと、ため息を付いた。
「び、びっくりしたー…コーちゃん、今の、うまく行ったの?」
「否、残念ながら…やはり…難しいな。呪を…ふむ、呪を簡略化し、現界の言葉に移し、練り込み…」
そんなコウガを見て、ぶっきーが声をかけようとした瞬間…突然コウガは、窓の方を振り向く。
数瞬遅れて、駅前の方で何かが、雷が落ちたかのように光る。
何が光ったのかは、建物の影でわからない。
それに数秒遅れて、窓が一瞬だけ空圧で揺さぶられ、ついで地震のような揺れで、部屋が一瞬だけ上下する。
ぶっきーは、窓の方を振り向く。
「今の何?!、何?!…すごい変な!!、変な感じ!!」
コウガはぶっきーの言葉に違和感を感じたが、今は突然現れた危険な『存在』の気配の方が重要だ。
「外界獣…か、それに近いものが、駅の近くに現れたようだ…かなり強い。」
「行くの?」
「無論。」
ぶっきーは、着ているスウェットの裾を引っ張った。
「でも私、コーちゃん、私こんなだよ?、それにもう夜遅いし!、勝手に外に出たら、私叱られちゃう!」
当然、コウガに付いていくつもりのぶっきーに、コウガは心の中で頭を抱えた。危険に近づけたくはないのだが。
「致し方あるまい…」
コウガは、ぶっきーの額に、自分の額で触れる。シロの…南口第三公園の時も施した、お互いの声を届ける呪だ。
それから眉間に左手の指を当て、僅かに考えてから、ぶっきーの方に薙ぐように指を振った。
「隠身」
そして、もう一回指を薙ぐ。
ぶっきーの右の下腕が、突然光り始めると、スウェットを通り抜けて、青緑の幾何学模様を編み込んだ、光る帯のようなものが現れる。
コウガの契約体を包む、帯のようなそれと同じだ。
「え!?、うわ?!」
「以前、箱の中の世界に赴いた時に掛けた、緊急脱出…む…守護結界呪?、そのようなものだ。
これでぶっきーを浮遊させ連れて行く。」
その光の帯は幅と数を増し、ぶっきーを囲むような…回転する三つの帯となった。
昔の図鑑に載っていた、電子の軌道みたい…ぶっきーは、頭の中で一瞬そんな事を考えたが、それは次の瞬間の驚きで、あっという間に流れ去った。
体が浮いたまま、窓の外に引っ張られていく。
「わぁ!?」
窓の外に飛び出すと、そのままコウガとともに夜の街を飛びだす。
「念の為だ。」
コウガは振り返ると、指に呪を込める。
そしてやはり少し考えてから、振り返って部屋に向かって指を薙いだ。
「偽装体」
部屋の中には、コウガとぶっきーが現れた。
「あれ?!、私とコーちゃん?!」
驚くぶっきー。
「帰ってくるまで、我らの代わりを務めてもらう。簡単な応対もできる。見破られることはない。」
コウガにとっては、以前《審美眼》と相対したときに、封呪界の中で囮を作り出した時の呪の応用だが、ぶっきーは、初めて見るのだから、驚くのも当然だろう。
それから二人は、空高く舞い上がる。
ぶっきーは、こんな街は見たことがなかった。
空から見る夜の街は、今まで見たどんな夜景やイルミネーションよりも幻想的で、信じられない光景だった。
「わぁ…」
自分が空を飛んでいるという興奮すら忘れ去るような、街の夜景の美しさに飲まれる。
両親との旅先で見たイルミネーションや、観光地の夜景に比べれば、地味で寂しい光景だ。
でも、普段見慣れているはず街が、見る場所と時間が違うだけで、ここまで綺麗に見えるものなんだろうか…?
ぶっきーは、コウガに引っ張られるように夜の街を飛びながら、そう思った。
再び光が走り、一瞬遅れて衝撃が訪れる。空気の壁のようなものを突き抜ける。視線をコウガの行く先…駅前の方に向ける。
断続的に聞こえてくる、重いものがぶつかり合う、鈍い音。
近づくに連れて、大きくなる。
駅前から伸びる南中央通り、南口商店街から、少し離れたあたりに、騒ぎの中心があった。
周囲は人だかりができているが、地震で出来たような地割れやめくれ上がった舗装、ひしゃげたガードレールや電柱もあり、野次馬も、そこそこの距離にしか近づけていない。
その中で人間?…男?と巨大な何かが争っていた。
「…まったく」
コウガは呆れて、溜息をつくように呟く。
「ぶっきーよ、降りるぞ」
そう言うと、二人は、ゆっくりと地上に降りていく。
「空から突然降りて大丈夫なの?!、見られたら大変じゃない?!」
慌てたぶっきーが、そう言うと、コウガは事も無げに答える。
「問題ない。我らの姿は、余人には見えぬ。少なくとも現界の、ほとんどの者には。
無論、『映像』とやらにも、映らぬ、残らぬ。」
そしてぶっきーは地上に降り、コウガもいつもの高さまで降りてきた。
確かに、人混みの目の前に降り立ったのに、誰も気がつく様子はない。
それでもぶっきーは、ドルフィンパンツのヘリを掴んでシワを伸ばし、スウェットの裾を掴んで伸ばして、恥ずかしくない程度に…見えたら困るところが、なるべく見えないようにする。
路上では一人の人間…男と、その数倍…3~4メートルはありそうなヒグマのような、毛のない筋肉質のバケモノが組み合っている。シロと違って上半身らしき部分には巨大な腕、下半身には短く筋肉質の足があり、尾はない。
首は太すぎて頭と区別できず、円錐形に近く、目鼻の代わりに、橙の光を放つ切れ込みが何箇所か入っている。体にもだ。
その姿は、どう見ても現界の動物ではない。
アニメやマンガで登場するような、現実離れした怪物。
それは、ぶっきーにも、この世のものではない存在、外界獣…あのシロと同じ…だろうと感じさせた。
「ぶっきーよ…良いか?」
「え!?、あ、うん!!、良いよ!!全開で!!」
突然コウガに言われて、少し慌てたものの、ぶっきーは、コウガが全力を出す事に、同意する。
「御意!」
光輪が現れ、コウガは縫いぐるみのような体…拘束体から、契約体に戻る。
そのまま地面に降りたコウガは、男と外界獣の戦いに目を向ける。
「もう少し、静かにできんのか…?」
片膝をついたコウガは、右の拳でアスファルトの地面に触れる。
と、周囲の野次馬が消え失せる。
コウガとぶっきー、そして路上で争う一人と一体以外の全ての色が、青と白と黒のモノトーンに変わる。
これ以上被害を広げないため…騒ぎを大きくしないために、封呪界を展開したのだ。
「まったく以って…暴れるにしても、相応の気遣いが必要だ」
外界獣と組み合っていた男は、己の数倍はあろうかという、その青白い巨体を掴み持ち上げると横殴りに投げ飛ばす。
爆発音のような音と、衝撃が響く。外界獣を叩きつけられた封呪界の地面が砕け、飛び散る。
散った大小の破片の幾つかがぶっきーにも向かう。
「きゃ!!」
が、ぶっきーを囲む光の帯が即座に反応し、太さと明るさ、回転速を増し、全て弾き飛ばす。
外界獣は、太い咆哮とともに立ち上がり、ゴリラをさらに極端にしたような、アンバランスな上半身の左手を付いて、右手を振り上げる。
目のない頭を男の方に向け、そのまま腕を振り下ろす。
肘を曲げ両腕を前に出し、少し腰を落とし気味にした、ボクシングのブロッキングの様な姿勢をとった男は、避けもせず、外界獣の振り下ろした腕の直撃を受ける。
男は路面に沿って真横に吹き飛ぶが、姿勢は変わららない。足を踏ん張って、体を止め、身を捩って、再び外界獣を正面に捉え、足を蹴り出す。
男の体も、よく見れば、人間離れしてアンバランスだ。
ぶっきーの腰ほどもある腕、その先についた巨大な拳、腕を支える肩は巨大で太く、それが、何故か破れも千切れもしない、古風なダブルのスーツの中に収まっている。
足腰も相応に太く、その巨大な上半身を支えるのに十分な重心を感じさせる。
真正面から突っ込んだ男は、その一歩一歩の加速で、外界獣の再び腕を振り上げるより速く、その懐に潜り込むと、左足だけで跳躍し、自分の背丈ほどの位置にある外界獣の腹を深く蹴り上げる。
鈍く潰れるような音。
外界獣は、口から破裂するような咆哮と、白い何かを撒き散らす。
しかし、すぐさま体制を立て直し、男を掴み上げると、そのまま地面に叩きつけた。
さらに、叩きつけようと男を掴んだまま腕を振り上げる。
男は、自分を掴んだ外界獣の指…二本の親指の間に腕をねじ込んで、無理やり引き剥がす。
それでも、叩きつける動作を止めない外界獣の腕にしがみつき…いや、両手両足で挟み込む。
外界獣が、その拳を地面に叩きつけても離れない。
「ぬおおおお!!!」
歯の間から苦悶に近い叫びを上げながら、男は全身の筋肉を絞り上げ、外界獣の左肘を全身で逆関節に捻る。
外界獣も咆哮を上げながら、男を二度三度と地面に叩きつけるが、それでも男は全身で挟み込んだ肘を捻り続ける。
「があ!」
肺から飛び出したような叫びとともに、不気味な低い音が響き、外界獣の左の腕があらぬ向きに捻じれ曲がる。
激痛に耐えかねた、外界獣の咆哮…絶叫の様な叫びが続く。
「うおおおおおお!」
動きの鈍った外界獣を、男はその両手両足で、上に、下に、右に、左にと、殴り、叩き、蹴る。
男の打撃のたびに、だんだんと動きの鈍くなっていく外界獣。
やがて、自分の体すら支えられなくなったのか、よろめいて地面に両膝を着いた。
前屈みとなって、倒れ伏す寸前だ。
男は、その、首と区別のつかぬ先丸円錐の様な頭の上に、組んだ手を振り上げ、それを鉈のように渾身の力で振り下ろす。
「ぬぅああ!」
爆発のような音と衝撃。
外界獣の上半身が深く地面にめり込む。その、先丸円錐の様な頭の後頭部は、男の組んだ手の大きさで凹んでいる。
……だが、それでもまだ、自由になる右腕で体を支え、立ち上がろうとする。
とぎれ途切れの。低い唸り。
男は、大きく上半身を捻り、両足を踏ん張って力を溜めると、外界獣の頭に、真正面から右の拳を打ち込んだ。
外界獣の頭がひしゃげる。頭の、橙の光を放つ切れ込みが一つ、大きく割れて、中の光が消える。
今度は、声一つ上げることなく、倒れ伏した。
そして、その巨体は、風呂の底の栓が抜けたように、ズルズルと地面のどこかに吸い込まれ…そして消え失せた。
「おおおおおおお!」
男は勝利の雄叫びを上げる。
「すっごい…」
ずっと息を呑んで見つめていたぶっきーは、深呼吸とともに、ため息のような感嘆の声を漏らす。
男は、肩で息をしつつ呼吸を整えて、振り返ると、コウガとぶっきーの方を見る。
「小賢…」
振り乱れた乱れた髪の毛もそのままに、拳を強く握り、左腕を大きく振り上げる。
「しいわッ!」
雄叫びの様な声とともに、そのまま巨大な拳を地面を叩きつける。
ガラスが砕け散るような音。青と黒、白のモノトーンの世界が割れ、一瞬にして風景が色を取り戻す。
周囲には人だかりと救急車両が集まっている。突然男が再び現れたためか、野次馬たちはどよめき、何歩か後に下がる。
警察官たちは、危険だと避難を促しているが、聞くものは多くなさそうだ。
「ほう!」
コウガは、自分の封呪界を力任せに破砕されたことに、控え目ながら驚きの声を出す。
ぶっきーは、突然元の世界に戻されたこと、野次馬たちが周囲を取り囲んでいる事に驚き、周囲を見回した。
「だ、大丈夫なの、コーちゃん!?、これ大変じゃない?!」
既に指先に呪を込め、腕を前に突き出したコウガは、溜息をつくように答える。
「大丈夫、ではないな…多少大袈裟だが、今回は仕方あるまい」
呪文抜きで、そのまま呪を込めた指を振る。
指先から、幾何学的で回路図にも見える、数多の平行線、角張った文様のような象形文字のようなものが、帯のように流れる。
指先から放たれた帯が、コウガを軸にして円を描き、眩しいほどの輝きを放ちながら一瞬にして広がる。
コウガは、拍手するようにして、一回だけ手を叩く。その音は奇妙なほど遠くにまで響き渡った。
それから、叩いた両手を広げて、外の野次馬たちに向かって呼びかける。
「ここは危険です、今すぐ、急いでお帰りください。くれぐれも気をつけて。
このそばに、仕事や家のある皆さんも、今すぐ避難してください。」
拍手の音と同様に、その声は、不思議なほどよく響き渡り、遠くにまでハッキリと聞こえ届く。
すると野次馬たちは、一斉に帰り支度を始めた。
口々に「ここは危ない」「離れないとダメなんだ」などと話し、小走りに離れていくものも居る。
警察官や消防隊員も、距離を置き始める。
「とりあえず、これでよか…」
コウガがそう言いかけたところで、男が叫んだ。
「貴様ラァ!!、何者かァ!?」
ドカドカと近づいてくる。
「コーちゃん、あの人、私達が見えてるの?!」
「そのようだ。やはり、現界の者ではないな。」
ぶっきーは改めて男を見る
確かに人に近い…が、人にしては腕も足も太過ぎる。背も高く、2メートルほどはあるだろう。肩幅は極端に広い。
年の頃としては、ぶっきーの父親と同じくらいに見えなくもない。
顔には、目尻の更に横まで覆い隠すような、フルカバーのサングラスを掛けていて、その目を見ることが出来ない。
男は、引き続き二人に怒号を投げつけてくる。
「さっきから、我を封じようなどと、小賢しい!」
それからコウガら二人の前に立ち、拳を突き出して見せつける。
「覚悟せい!、貴様らも、この拳のもとに調伏してくれるわ!!」
拳を開いてコウガを指差す。
「私と…戦えッ!」
コウガがそれに答える前に、視界の脇に何かが動いた。
何かが動いた方…ぶっきーの方を見る…と、男の方に一歩前に出ている。
さすがのコウガも、一瞬動揺する。
ぶっきーは男に向かって、大声を出す」
「ちょっと待って!、待って!」
男は、コウガの方に顔を向けたまま…おそらくはサングラスの下に隠れた目だけでぶっきーを見ている。
「何か、貴様は!?」
怒号で一瞬たじろいだものの、ぶっきーは男に向かって背を伸ばす。
「突然、勝手なこと、言わないでください!、なんで私達が、おじさんと戦わなきゃならないんです?!」
「うぬぅ!?…お、おじ…ッ?!、おい!、小娘!、退け!、私は、お前などに用はない!
私が用があるのは、お前の横にいる、その者だ!」
ぶっきーは、もう、たじろがなかった。背筋を伸ばしたまま、男を見据える。
「突然、そんな事言われても…困ります!、おじさん、一体誰なんです?!、どうして戦わなきゃならないんです!?」
「おじ…ッ!、二回も…ッ!…おい、小娘!。名を問うのであれば、まず、自らが名乗りを上げるのが、礼儀であろう!?」
ぶっきーに手を出そうなら、即応できる状態を保ちながらも、コウガは、この二人のやり取りが面白くなってきた。
「小娘じゃないです!。名乗れば良いんですね!?。私の名前は天外さくらです!。
ちゃんと言いましたよ!、さぁ、貴方のお名前は!?」
「…!?」
俯いて笑いを隠すコウガ。
「…お…ま、まさか…真名…?」
「ちゃんと本名です!、生徒カードにだって書いてあります!」
さくらは、スウェットのポケットから財布を取り出す。
そこから生徒カードを取り出してから、コウガに尋ねる。
コウガは腕組みをして、ぶっきーの脇に控えている。
「コーちゃん、この人に見せても大丈夫かな…?」
「問題ない、あったとしても我が何とかしよう」
さくらは、じゃぁ、と言って生徒カードを見せる。
カードには、さくらの名前が明記され、写真も貼ってある。
「!!」
男は、驚きのあまり言葉を失う。
「真名を、そんな…」
コウガは、うつむき、笑いをこらえて、震えている。
「ちゃんと自己紹介したんだから、貴方の名前も教えてください!。
ちゃんとした、本当のお名前を!、私にも呼べるお名前を!」
「ぐ…!、うッ…わ、私の…私の名前は、マ…マキ=グレム……」
威勢の良かった声が、段々と小さくなっていく。
「グレムさんですね?、じゃあグレムさん、なんでコーちゃんに、いきなり『戦え!』なんて言うんですか?!」
「そ、それは…彼奴…私の…その…」
「分からないです!、人に言えないなんて、都合の悪いことなんですか?!」
「いや、そういう訳ではない。都合は、まったく悪くない。だが…あの…」
「じゃあ、なんで突然コーちゃんに『戦え!』なんて言って、その理由を、ちゃんと教えてくれないんですか?!」
コウガは、もう爆発寸前だ。
「コーちゃんは、貴方たちが暴れたせいで、物を壊したり、みんなが怪我したりしないように、わざわざわざ封呪界を作ったのに、なんでそれを壊しちゃったんですか?!」
「いや、その、それは私が…あの、バケモノの仲間の罠かと思って…」
グレムは、ぶっきーの勢いに気圧されて、一歩二歩と引く。
「何で、そんな事、勝手に決めるんですか?!」
「いやつまり…その、小むす…其方…天外殿の脇に控える、外界…」
男…グレムの大きな両手が、居場所もなく上下左右前後にフラつく。手首もよく回っている。
「『コーちゃん』と呼ばれている者が、その」
グレムは、額に右手を当てて、うつむき、どう説明すべきか悩んでいる。
「あの、私が…いや、『私が』じゃなくて、なんと言えば…主従の…外界の、もの…?」
動いては止まる両手。
頭の中でまったく整理できていない思考が、適当に手を動かしている様は、奇妙なダンスにも見える。
「?」
「あの、その者というか『コーちゃん』が…我は」
まるで要領を得ない。
「つまり、我が疑問が…不可解で…強力な…」
あまりにグダグダで、まるで説明の体をなしていない。
さすがに、ぶっきーも不安になってくる。
「あの…何、言ってるのか、全然分からないんですが…?」
グレムは、右手の指を額に当てたまま、左手を振る。
頭の中を整理するのに苦闘している。
「少し時間を頂けぬか…その、戦わねば…だから…」
言葉に詰まった男は、突然キレた。
「ぬがああああああ!、黙れ小娘!…じゃなくて、天外さくら!!」
再びコウガを指差すグレム。
「私は、この男を倒す!、調伏しなければならん!!」
ぶっきーは、コウガの方を見た。
うなずくコウガ。
「じゃあ…コーちゃんと、戦ってもいいですけど、みんなの迷惑になるところは、絶対ダメ!!」
「何でもいい!、この男…こ、コーちゃん?、コーちゃんと、戦えれば私はそれで良いのだ!」
再びコウガの方を見るぶっきー。
コウガは、やれやれと言った具合で、片膝を着いて、拳を地面につけた。
再び封呪界が周囲を包む。
「今度は、勝負がつくまで、ここから出たらダメだから!、いいですね?!」
「私は、奴…『こーちゃん』とやらと、戦えるのなら、それで良いのだ!」
腕を振り上げ、大きく構える。
「コーちゃん!」
ぶっきーがコウガを見据える。
「わたし、怒ってるんだから!」
コウガは笑顔で応じる。
「御意!」
呪文を試すには、これ以上の状況はない。そして、まず試すべきは……
「自己呪力制限」
その瞬間、グレムの振り抜いた右拳がコウガを捉え、コウガはそのまま横殴りに吹っ飛んだ。
「コーちゃんッ!?」
ぶっきーは驚いて叫ぶ。
コウガが、こんな風に吹き飛ばされる事など、これまで無かったことだ。
と、頭の中でコウガの声が響く。
『ぶっきーよ、問題ない。心配には及ばぬ。』
それでも、横滑りに吹き飛んでいくコウガを見て、ぶっきーは、胸の前で祈るように両腕を合わせる。
「ふむ、さすがに、これでは無理だったか。」
コウガの体は、突然空中にピタリと止まる。拳の直撃した時の傷は、全く無い。
「自己呪力制限清浄」
自分の能力の上限を、少しだけ上げる。
グレムとの距離は、40~50メートルといったところか。
コウガはツカツカと歩き、男に近づく。
グレムの方も、ぶっきーの側から走って突っ込んできた。
今度は、左腕で殴りかかってくる。コウガの手前で右足を踏み出し、振り上げた拳を叩きつける。
腰を落とたコウガは、足を軽く踏ん張って構え、右腕の肘を曲げて体に沿って振り上げる。
ちょうど、頭のあたりを肘で防御する形になる。
コウガの右腕にグレムの拳が激突する。グレムはそのまま拳を振り抜く、が、力が逸れた事もあって、今度は吹き飛ばせない。
「ぬぅ!」
全力で振り抜いたために、ガラ空きになったグレムの脇腹に、踏み込んで上体をひねり、左肘を打ち込むコウガ。
そこから更に左足を軸にして、後ろ回し蹴りを狙うが、今度はグレムが体を捌き、距離を取る。
コウガが跳躍し、グレムの頭上から、左こめかみに向けて飛び蹴りを狙う。
グレムは素早く左腕を振り上げブロック。
そこからコウガの足を掴もうとするが、コウガもブロックされた足を蹴り出し、再び跳躍してグレムと距離を取る。
再び突っ込んでくる、グレム。
コウガの前で、体を落とし低く構えると、左右に細かく拳を繰り出す。
コウガは体を捌き、ブロックし、あるいは、グレムの下腕を自分の拳で突き上げ、横に薙いで凌ぐ。
圧倒的な体格差からくるリーチの差で、コウガの拳はそのままではグレムに届かない。
グレムの繰り出す拳は、段々とその速さと数を増し、繰り出されるたびに、軽い破裂音が聞こえるようになってきた。
拳速が、音速を超えだしているのだ。
コウガの防御も、それに伴って加速され、二人の生み出す連続した破裂音が、エンジンの排気音のように周囲を突く。
その、あまりに速い連撃の中で、一瞬の隙を見出したコウガは、身を低くしてグレムの両の腕の間に入り込み、そこから跳躍。グレムの喉元に蹴りで一撃を加える。
グレムは連撃を止め、よろめいたものの、倒れるには至らず、しかしその手にコウガを掴むことも出来ず、再び距離を取られる。
喉をさすりながら、コウガを睨めつけ、そして満面の笑みを浮かべる。
「ははは…はーははははは!、素晴らしい!、戦いとは、こうでなければな!
嬉しいぞ!、嬉しいぞ!!」
グレムは豪快に笑うと、拳を握りコウガにその甲を向ける。
「貴様は、我が秘技を以て調伏するに相応しい!、さこそ正しく名誉と知れ!」
握った拳を数回、空に打ち込む。
と、拳、いや、グレムの腕の軌跡を陽炎の様な揺らめきが追う。
「行くぞ!」
何歩か踏み込んだグレムは、間合いに居ないコウガに向かって拳を放つ。
破裂するような音。
と、コウガは素早く両腕でブロック。
間合いの外から放たれたはずの拳の衝撃が、コウガの腕を打ち、全身を揺さぶる。
「…なるほど、衝撃波、などでは無いな」
グレムは、鼻を鳴らす。
「我が拳は、一度力を纏えば、間合いも拳撃も拳速も、数倍、数十倍となる。だが…それだけだと思うな?」
コウガは、グレムの言葉が終わる前に、バックステップ。
その次の瞬間、コウガの頭のあった位置にグレムの拳があった。
ついで2回の破裂音が続き、更にコウガの退いた位置にグレムの足。
コウガは、更に引いて体制を整えている。
「うむ…それでこそ、私も本気になった甲斐があるというもの…!」
確かに桁違いに速く強い…ならば、コウガはさらにもう一段、自分の上限を上げる。
「自己呪力制限刹那」
もうすでに、二人の一挙手一投足が、音の速さを越えている。
ぶっきーには、もう二人の姿を目に捕らえることができない。
残像のような姿や、爆発のような破裂音、エンジンのような連続した拳撃の音だけで、二人がまだ戦っている事が分かるだけだ。
また、突っ込んでくるグレム。猪突猛進という言葉こそ相応しい。
先程の呪に近い力で、遠方から拳撃を放たれるのに備えて、コウガは構える、が、何かに気が付き、途中で構えを解いて後にバク転。
頭上からコウガを狙っていたグレムの蹴りが、地面に刺さり、割る。
グレムはそのまま跳躍。
コウガはその姿を追うが、やはり何かに気がついて、今度は前に突っ伏す。
立ち上がって振り返り、体制を整えると、コウガの立っていた位置にグレムが居る。
「ならば…」
コウガはグレムに向かって指を薙ぐ。
「炎雷」
指から放たれた鋭い炎の切っ先がグレムを切るが、グレムは身じろぎもしない…いや、グレムの体にそのまま穴が空き、紙くずが散るように崩れ、溶け消える。
「なるほど」
グレムは、限定的だが、自分の居た位置に囮を発生させ、自分は姿を消して移動することができるのだ。
無論、隠し玉はこれだけでは無いだろう。
「だが…」
姿を消していたとしても、逃げぬ限り、どこかに必ず居る…
「炎嵐」
コウガの周囲が炎に包まれ、それが渦を巻いて、封呪界の上端にまで届く炎の柱となる。
「ぬぅあ!」
炎に巻かれたグレムが転がり飛び出してくる。
姿を消し、近づいていたのだろう。
さて、これで囮を出しても、姿を消しても、コウガを間合いに捕らえることは、出来なくなったわけだ。
「ぬぅッ!」
それでも正面から突っ込んでくるグレム。
拳から呪力を放つ攻撃は、確かに強力だが、放つ姿が見えるなら、容易に対処されてしまう。
どうしようというのか。
「炎雷」
コウガは、グレムめがけて炎の切っ先を放つ。
「ぬん!」
グレムは自分を狙う炎雷に向けて、拳を打ち付け、コウガの呪を砕いた。
「!」
驚くコウガに向け、走り寄りつつ、続けざまに拳を放つ。
グレムの拳から放たれた『それ』は、コウガの放った炎雷を砕き、炎嵐を吹き飛ばす。
「外法術!」
あらゆる呪…魔法といったものを無効化する秘術…
この術の前では、呪を使う者の殆どは、グレムの前には無力だろう。
相手の呪は外法術で無効化し、囮を使い、姿を消して撹乱し、近接では速さと強さを兼ね備えた圧倒的な物理的攻撃力で、ある程度の遠距離であっても、拳に込めた呪力を以て打破する。
なるほど、隙がない…これは強い。
コウガは感心する。
グレムが、コウガの封呪界を打ち砕いた事も、説明できる。
そしてグレムの外法術の鍵となっているのは、打撃。
その拳足で打ったもの…触れたものの術は無効化、解除できるが、触れていないものは、解除できない…これまで見た限りでは、そう判断して良さそうだ。
「自己呪力制限須臾」
右手を伸ばし、指を揃え、手のひらをグレムに向けて広げる。
左手でその手首を支え…指先に、真正面から迫るグレムを捉える。
「徹甲呪弾」
コウガの右手が一瞬閃光に包まれ、周囲に衝撃波が走る。爆発音。
その爆発音と共に放たれた呪弾を追って、コウガは走り出す。
一方、グレムは、己を狙って放たれた呪弾を、気に留めてはいなかった。
呪に依るものであれば、外法術の元に叩き伏せれば良い。
あとは、あの者…コーちゃんとか言う男に、渾身の一撃を加えることができれば、勝負は決まるだろう。
『それにしても、あの男…大したものだ。』
グレムは、近づく呪弾を見定め、叩き落とす為に拳を握りしめながら思う。
これまで、如何な怪物であれ、さほど苦もなく、我が秘術を使うまでもなく、叩き伏せてきた。
だが、あの男は違った。最初こそ我が拳の前に吹き飛んだが、そのまま潰れることもなく、立ち上がり、次々と新しい手を繰り出してきた。
組み討ちになってすら叩き潰すことは出来ず、いよいよ我が秘術を以て調伏せねば、ならなくなった。
素晴らしき力…余程の手練。
彼奴には、この『戦い』を与えてくれた事に、感謝せねばなるまい。
なぜ、それほどの強者の在ることが、我が耳に届かなかったのだろう…?
やはり、彼奴こそが、『狂乱の堕天使』なのだろうか?、しかし?
戦いの中にあって、余念の過ぎるか…
グレムは、今は、ここまで戦い抜いた、あの男への敬意とともに、全力で叩き伏せる事に、専念する。
己の間合いまで近づいた呪弾に、グレムは握りしめた拳を放つ。
呪弾はグレムの拳に触れ…消えなかった。
「ッ!」
グレムは驚愕した、外法術の効かぬ呪など、ありえぬ…!
「ぬッ!?」
消えない呪弾が、グレムの拳を削り抉った。
否!
グレムは気がつく。この弾は実体…物質から成る弾!。
呪で物質的な弾頭を作り出し、空気抵抗も重力も無視するような呪を纏わせ、それを呪を以て放つ…!
確かにグレムの拳は、弾が纏っていた…弾に掛かっていた呪を消し飛ばした。
が、『すでに物質となった弾』は、外法術では消すことが出来なかったのだ。
真正面から拳を打ち付けるのではなく、避けるか、角度を浅く取り、弾を逸らすべきだったか!
グレムの拳は、この程度の弾で砕け散りはしなかったが、徹甲呪弾で削られた拳は、この戦いの中で治るようなものではない。
己の判断ミスに悔やむ間もなく、弾に集中して見えていなかった真正面…己の拳の死角から、こちらに突っ込んでくるコウガの居ることに気がついた。
今から減速するのは無理だ、と判断したグレムは、コウガの攻撃に備え、両腕を前で交差させてブロッキングの構えを取る。
できるなら、そのまま走り抜けコウガを跳ね飛ばしたい。
だが、コウガは、グレムの手前で跳躍する。
「!?」
飛び蹴りなら、と、ブロックを上段に上げるグレム。
コウガはさらに上…グレムの頭上を飛ぶ。
彼奴が背後を取る気なら、そのまま走り抜けて距離を取り、体勢を立て直せば良い。
グレムが意識をコウガから前に向ける。
と、コウガは空中で突然減速し、グレムの背後…背中すれすれに落ちてきた。
「しま……ッ!」
コウガは落下しながらグレムの腰を両腕で掴む。
グレムのそれと比べれば、細く頼りないはずの腕が、恐ろしいまでの力でグレムを締め上げる。
呪力も重なった力は、グレムのそれに匹敵した。
グレムの外法術も、直接拳足で触れていないものには効果がない。腕を背後に回さねば……
「か」
絞り上げられた腹部が肺を押し上げ、肺から押し出された空気でグレムは意味のない声を上げる。
コウガはそのまま反転…呪力も重ね、凄まじい速度で回転させ、グレムの後頭部を地面に激突させる。
抱えた丸太を地面に叩きつけるように。
グレムはコウガに叩きつけられた勢いに加え、自分の走ってきた速度も加わって、自らの後頭部で地面を削り、長く深い直線の溝を刻む。
グレムの意識が、白く遠のく。
しかし、その心には感嘆と歓喜が残った。
「ど、どうなっちゃったの……?」
ぶっきーは、コウガの方を向いた。
コウガとマキ=グレムが戦いをはじめて、最初にコウガがグレムに殴り飛ばされた後は、ぶっきーは、その戦いを目で追うことが出来なかった。
時々、二人が停まって話したり、そっちこっちに現れるのは見えたものの、そこからまた爆発音や光が飛び交ったり、火柱が立ったりで、二人がどんな戦い方をしているのか、全く分からないまま。
そして、二人の戦いが始まってから、多分2分も経たない間に、コウガがグレムの頭で地面をゴリゴリ削って…終わったらしい。
「勝負はついた。この者…マキ=グレムがどう思うかは、別だが。」
心配そうにグレムを見たぶっきーは、コウガに恐るおそる聞く。
「し、死んじゃったの…?」
コウガはぶっきーの方を見て微笑んだ。
「この男は、この程度で死ぬほど、ヤワではない。我から見ても、相当に頑丈だ。」
安心して溜息をつく。
「よかったー…すっごい変な人だけど、悪い人じゃなさそうだったし…」
「傷はさほどでもないが、体力が尽き果てているから、当分、身動きは出来ないだろう」
ぶっきーは、倒れたマキ=グレムに近づいていく。
コウガも、それに従う。
「…ふむ、そろそろ意識を取り戻しそうだが…さて、負けを認めてくれれば良いのだが…」
ため息を付きながら、そう呟いて、ぶっきーと共に、グレムの顔を覗き込んだ。
「う…」
グレムが目を開く。しかしその目は虚ろで、視線が定まっていない。
呻きのような呟きのような、意味の分からない吐息のような声を出しつつ、ゆっくりと意識を取り戻していく。
「…我は…敗れた…?」
コウガはそれに答えず、ただグレムを見下ろしていた。
やがてグレムは、倒れたままボロボロと涙を流し始めた。
最初は一粒二粒、やがて滝のように……
嗚咽には至らないものの、口から悲しみの様な声が漏れる。
ぶっきーは、その涙に驚くが、どうして良いのかわからない。
オロオロとしていると、やがてグレムの悲しみの泣き声が大きくなり…哄笑となった。
訳が分からず、驚きで動けなくなるぶっきー。
一分は笑い続けたか、やがて、グレムは、自分の後頭部で掘り進めたられた地面の穴から、ゆっくりと体を起こす。
それからコウガの方を向くと、体を引きずるように立ち上がり…両膝を付き、拳を地面に付ける。
「私の…負けだッ!」
声には無念さがにじみ出て隠せない。しかし、そこには、何の後悔もない爽やかさもあった。
「『コーちゃん』よ…、私は負けた。お主に負けた。
今や、私の生殺与奪の権は、お主の手の上にある…如何様にもするがよい…」
膝をついて、やっと自分が少し見下ろせる高さになるグレムの顔。
視線を落とし、地面を見て沙汰を待つグレムから目を放し、ぶっきーの方を見た。
「さて…ぶっきーよ。ぶっきーの決断こそが、我が決断。
この者、如何にすべきか、と思う?」
いきなり話を振られたぶっきーは、驚いて困る。
「…ええー……変な人だし…でも悪い人じゃなさそうだし…難しいなぁ」
ぶっきーは腕を組んで悩む。
一方の、グレムはコウガの言葉を聞いて、驚いて顔を上げた。
「お、お主、今なんと…?、この小むす……いや天外さくらの決断が、お主の決断…と?」
「如何にも。
我が主、天外さくら…ぶっきーの決断、判断がこそが、全てに優先する。
ぶっきーを護る事こそが、我が務め。
それが我と、ぶっきーの主従の契約。」
グレムはぶっきーを見た。
「…何故、この娘……天外さくらと契約を…?」
「グレムとやら、主従の契約は、必ずしも、力の優劣で決まるものではない…それ以外の理由も、存在しうる。」
コウガは、どちらかと言えば『貰い事故みたいな状況で、契約を交わす事になった』という点については、触れなかった。
「その契約の証…私に一目見せては頂けぬか…?。
力の優劣で決まらぬ契約、信じがたいが、在るとするなら、是非にも…」
コウガは考え込んだ。
「我とぶっきーの契約の証を見れば、お前もまた、契約に縛られる…それで良いのか?」
「私は敗れた。既に私の生命は、お主の手のひらの上。何の躊躇のあろう?」
グレムは即答した。
「…よかろう」
コウガは左腕を上げると、宙に指で横に一本線を描く。
すると、その線が紫色の炎と共に輝きを発し、そこからぶっきーとコウガの契約の文書が、するりと下に伸びてきた。
その契約の文書を目にしたグレムは、突然、身を固くした。
「これで、お前も…」
コウガの言葉を割って、グレムが声をあげる
「おお…おおおおおおおお…!」
感嘆…感激の声を漏らすグレム。
「?」
訝しむコウガをよそに、震える手でその契約の文書を、掲げるように、ひらで包むように両手を差し出したグレムは、再び泣き出した。
「おおお…あなた…あなたさまは……」
それから、改めてコウガとぶっきーに向き直ると、再度両膝を付き、両手の拳を地面につけ、再び深々(ふかぶか)と頭を下げた。
「天外様…天外さくら様…!
この私…マキ=グレム・レクスガルグラムを…あなた様との契約の末席に…あたな様とコーちゃん様の、忠実なる下僕として、お加え賜りますよう、お願い申し上げます!
…何としても…何卒…ッ!」
泣いたかと思えば笑い出し、また泣き出して、今度は契約に加えろ、と言い出したグレム。
ぶっきーは、引き気味に唖然としている。
「えーと、あの、こ、コーちゃん?」
コウガは苦笑して、両手の平を上にして首を振る。
『好きにすればよい』というジェスチャーだ。
「…あ、あの、グレムさん?」
「はッ!」
「あの…人に迷惑かけたり、怪我させたりしない?」
「主命とあらば!」
「…物を壊したりしない?」
「主命とあらばッ!!」
ぶっきーは、首を落として暫く考えていたが、やがて、グレムの前にしゃがむ。
巨体を前に、グレムの顔を見上げるようになる。
「じゃあ、契約する。コーちゃんとも、仲良くしてね?」
「む、無論であります!…あ…ありがとうございます…ありがとうございます…」
そこまで感激する理由があるのか、と思えるくらいに感極まり、滂沱として涙を流し続ける。サングラスの下の目は、とんでもないことになっているだろう。
嗚咽もあって、顔がぐちゃぐちゃになったグレムは、そして、ぶっきーとコウガの契約の文書に自らの名前を書き加えた。
コウガは封呪界を解いた…
駅前の騒ぎの後始末を終え、無事、ぶっきーの部屋にたどり着いたものの、グレムの体は、やはりぶっきーの部屋には大きすぎた。
入れなくはないが、身動きが取れない。
そこで、コウガは、自分同様、グレムにも拘束体…縫いぐるみの様な体を与えることにした。
「ふむ、こんなものでどうだ?」
グレムは、今は縫いぐるみのような…コウガよりも一回り大きな、ゲームかアニメに登場する岩の巨人のような姿になっている。
手足も胴も太く、頭も大きい。頭は、なぜか植木鉢となって、草…観葉植物が生えていた。
「ありがたき、幸せ…ッ!」
コウガが何をやっても、感謝しかなさそうなグレムは、やはり感極まっていた。
ぶっきーは、グレムを見て、苦笑しっぱなしだ。
それに…
「姫!」
「グレちゃーん、姫!って呼ばなくていいよー。『ぶっきー』でいいからー!、恥ずかしいしー!」
「姫…!、姫を…あなた様を…我が主である、あなた様を…その様に、気安く呼ぶ事は、私には、あまりに畏れ多く…何卒、あなた様を、姫と呼ぶことを、お許しください…!」
「本当もーッ!!」
ぶっきーは頭を抱えた。
深夜…朗読の後の一騒動と、疲れ果てたぶっきーが、パジャマに着替えるのもそこそこに、深い眠りについた頃…グレムは、コウガに話しかけた。
グレムは、ぶっきーの机の上、本棚の横に置かれて、部屋の中を浮くコウガを見上げるような形だ。
「王よ…我が王よ…現界にあって、再び相まみえる事のできた幸運を…
再び主従の契を得ることの出来た僥倖を…姫と王に感謝申し上げます…」
コウガは訝しんで聞く。
「王…?、再び…?」
グレムは、続ける。
「お忘れになっていたとしても、仕方ありませぬ…
しかし、現界でない、その時と場所に於いても、我らは、やはり主従でありました。
そして我は、王として、あなた様を戴いておりました…」
コウガは改めて、封印される前の事を思い出そうとした…
何も思い出せない。
封印される前の事を…己の名前以外、何一つ思い出せないことを、再び思い知らされた。
もし記憶に封印が掛けられているとしたら、その封印は、その姿の見えぬほど強固なものらしく、手がかりすらつかめない。
「そうか…だが残念なことに、我には、その記憶がない。
グレムよ、お前と交わしたという契約、主従であったという記憶が無い…思い出せぬのだ…」
「それでも構いませぬ。これは、私さえ覚えていれば、それだけで十分なのです…」
「……」
「このまま、姫の命に従い、現界の者に仇為す外界のものを調伏し続ければ、いずれ『狂乱の堕天使』とも相まみえましょうぞ…それまでは…」
『狂乱の堕天使』。
あの箱の中の異界で出会った、少年のような『超越』も、言っていた。
それが、一体何者なのか、グレムの言から考えれば、コウガもかつて相対したはず。
しかし、コウガには、その記憶が全く無い。
封印される前、自分に一体何が起きたのか…何があって、何者に封印されたのか、あるいは、あの異界の『超越』の如く、自ら封印の中に収まったのか…?
答えの見つからぬまま…コウガは…眠りに落ちた。
(続)
さて、だんだん人数が増えてきて、にぎやかになってきた、さくらの部屋ですが、今後どうなるのか、書いてる方もどうなるのかサッパリです。
前回「短くする」とか言っておきながら、今回も微妙な長さになりましたが、飽きずに読んで頂けた皆様に、海より深く感謝ー
これから、果たしてどうなりますやら、もっと短い期間で、読みやすく仕上げられればよいのですが。
では次回を楽しみにして頂ければ良い感じです。
挿絵も入れたいー
デザインだけでも、載せようかな?




