2(両想編) リアン~side~
リアン ~side~
図書室で、ゆるく波打つ柔らかそうな髪の女の子を見つけた時、目が離せなかった。
華奢なのに、あんなに重そうな本を抱えて、大丈夫なのだろうか。
ルキに、あの子誰?と聞くと、
「あの子?あぁ…あのホワイトブロンドの子?ルパルト伯爵令嬢のミリオン嬢だね。」
「へぇ…、次席の子か。」
「可愛いよね。リアンが女の子を気にするなんて、めずらしいじゃん。」
ニヤニヤしながらそう言うと、彼女に同席していいか聞きにいってしまった。行動が早すぎる。
「はじめまして。ミリオン・ルパルトと申します。」
「私は、ルキ・イブスタイン。こっちは、親友のリアン・コール。みんな同級生なんだから、堅苦しいのは無しね。」
「はい、ありがとうございます!」
ミリオン嬢のバイオレットの瞳は輝き、ルキは優しく微笑んでいる。それから、2人は色々なことを話し、意気投合していた。俺は、相槌を打つだけで精一杯で、ミリオン嬢に何を話せばいいか分からない。
それが、5年も続くだなんて…ミリオン嬢を前にすると成す術がない俺は、本当にヘタレだと思う。
自分は、何事にも器用な性格だと思っていた。嫡男として騎士団長になるべく、努力は惜しまないし、結果として、座学も武闘も恙なく人並み以上にできた。
王立学園では、幼馴染のルキが良いライバルなこともあり、切磋琢磨し、在学中に第一騎士団に所属することを許された。成績も首席を維持できていたが、次席のミリオン嬢に抜かされるのが怖すぎて、正直、かなり必死な思いだった。
燃えるような髪で、目つきが悪いのにも関わらず、学園では女生徒に話しかけられることも多い。ミリオン嬢とうまく会話をするための練習だと思い、とにかく丁寧に、傾聴を心がけ、言葉を選んで会話の鍛錬に励んできた。
しかし、増える釣書を尻目に、ミリオン嬢に未だに「…あぁ。」しか言えない俺は、卒業まで時間が無いのにどうするんだ!と心底焦っている。