23/42
衝撃
拓海は全身で、その衝撃を感じ取った。
黒いハンマーは自身の頭蓋骨を陥没させ、脳内から容赦なく内出血を始める。
その痛みも束の間、自身の体の自由が効かなくなり、瞬く間に意識が薄らいでいく。
はずだった。
「……!?」
痛みはなかった。
何が起きたのかわからない拓海は、目を丸くしたまま再び視線を上げた。
彼女の方も吃驚した様子で、その表情には焦りがありありと滲み出ているのがわかった。
はっと我に返ると、蒔絵はもう一度ハンマーを拓海の前頭葉に直撃させた。
よける間もなかった。
「カコーン」
という想像以上の軽やかな音とともに、鉄槌は勢いよく跳ね返された。
両者の目が合った。
二人ともが、呆気にとられた表情だ。
蒔絵は動揺を必死に掻き消すかのごとく、今度は立て続けに三回連続で拓海の頭頂部を力一杯殴打した。
結果は同じだった。
反動で押し返された蒔絵は崖の際でバランスを崩しかけ、慌てた表情で思わず両脚を踏ん張った。
その時だった。
「ジャストフィットォォォォォォォ――――――」
どこからともなく大声が頭上から聞こえてきた。




