散髪される陰女
アイラビュは鞄からハサミを取り出し、下にゴミ箱を置いた。アイラビュはその髪を触っていると、心震えた。その長い黒髪は無数に絡まっており、埃なども被っていた
「ショコラちゃんさ、最後にお風呂入ったのはいつ?」
ショコラは少し考えた後、紙に書いた
《3かげつまえ》
レインも驚きを隠せない。アイラビュは分かっていたかのように頷く
「分かった。それで、どんな髪型がいいとかある?」
《ない》
「ならアイラビュのお任せで頼む」
「分かった」
レインの言葉に了承の返事をした。そしてアイラビュ本人も緊張をしていた。初舞台がここまで難易度の高いもの。とりあえずとアイラビュは肩より下の髪を全て切り下ろしていく
『髪の絡まりは下の方で起こりやすい。下さえ切ってしまえば、上の絡まりも取りやすくなる』
全て切り下ろし終わると、別人のようにさっぱりとした。ゴミ箱は溢れんばかりの髪。レインはゴミ箱を持ち
「一度捨ててくる」
と捨てに行く。そして空のゴミ箱を持ち再び戻ってきた
「お疲れ〜!」
「疲れましたよっと」
謎のノリだ。そしてアイラビュは細かい部分を切り始める。それから十分ほどすると、髪も整いショコラは物凄く可愛らしい髪へなった。と同時に髪に腕や足など体全体の細さがより際立つ。少し捻れば折れるような細い腕
「ショコラ、似合ってるぞ」
『ふーん、レインって年下相手だとこんな感じなんだ』
切り終わると、アイラビュはハサミを片付け、黒いピンでショコラの前髪を左右で止めた。デコの出るヘアスタイルに変わった
「流石、センスいいな」
「あんがと。あと風呂には私が入れるよ」
レインは疑問に思う
「風呂くらい一人で大丈夫じゃないのか?三ヶ月前は自分で入ったってことだと思うし」
「ダメダメ。私が入れて上げる。はい、こっちですよー」
アイラビュは二階、ショコラの部屋前にある浴室へ連れて行く。レインはラテの部屋に戻り合ったことを話した。アマサケはラテの下に座っており、ラテはその膝の上に座っている。アマサケは話す
「ま、九年籠もってるやつが一人で風呂は普通に危ない。一度転んだら体弱すぎて重傷、立ち上がれますか?無理、さよなら。だろ?」
「なるほどな、それもそうか」
レインは納得したのと同時に
「アイラビュって意外と頭いいのかもな」
「いや、あいつは母親の介護してるから慣れてるんだろ」
「はえー、そうなのか」
続けてレインは聞いた
「そんで、お前ら何してんだ?なんでアマサケがクッションみたいになってんだ?」
ラテは言う
「知らないわよ。こいつ、急に私の椅子に入り込んできたから、ムカついて上に座ってやったのよ。そしたらこうなったわ」
「問題ないだろ?私がクッションになると同時に、ラテは私の掛け布団になっている。実に効率のいい温め合い」
アマサケは楽しそうに話す。レインは呆れ溜息を吐く
「そんなアマサケさん、次出番ですよ」
「はいはーい。じゃ、ラテ、どいて」
「ったく」
ラテが立ち上がると、瞬間にアマサケがラテの背筋をなぞる
「ひっ!」
ラテは顔が赤くなり不意にも抜けた声が出た
「ちょ、アマサケ!」
「そんじゃ、私は行ってくるからな」
アマサケは部屋を出ていく
「ちょ、待ちなさい!」
怒り狂うラテを後にレインは扉をそっと閉め、部屋の外に出た