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陰女子宅への訪問者  作者: 八刄あぬ
春休み篇
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新たな食事

レインは最初に何をすべきかを考えた


『勉強……いや、これは後回し。ネットやってるなら文字は多少読めるだろうし、少し算数を覚えればギリギリ生きていけるはず。となると体力作りと』


米、そして豚肉を少し染み込ませた汁だ。味は薄味の豚汁であり、細かく切った大根と人参、それとこんにゃく。レインの作った料理をショコラは見ていた。ショコラは紙に書く


《肉は入ってない》


ショコラは首を傾げた


『肉は入っていないが、豚汁だからな。と言え、聞くってことは入っててほしくない。肉に対して恐怖を抱いたのだろうか。すると、これは言わない方がいいか』


「ああ。野菜スープと米だけだ」


レインがそう言うとショコラは紙に書く


《へやから出て》

「あ、ああ。分かった。ゆっくり食えよ」


レインは言われた通りに部屋から出る。扉を閉め、見られていると食べにくいのかと考えた。ショコラは一人それを食べている間、レインは電話を掛けていた


『助っ人だ。まずは髪を切らないと』


「なーにー?」


電話の向こうから若い女の声がした


「今空いてるか?」

「空いてるけど、何?デートの誘い?レインにはラテがいるでしょー?」


レインは息衝く


「だから付き合ってない。それより、ラテの家に来てくれないか?仕事の依頼だ」

「いいよいいよ。何ー?レイン髪伸びた?」

「俺じゃない」


レインは電話を切った。女はレインやラテと同級生であり、褐色で長い金髪の女。美容師を目指しており、その腕はクラスでも披露していた。名前はアイラビュと言い、ハーフだがずっと日本住み


『アイラビュのやつが到着するまで、他に料理が得意なやつも呼びたい。しかし俺の繋がる部分に料理上手はいないし、そこはラテかアイラビュ頼みか?というか、ショコラレベルになってくると普通に医者に行くのが早い気も……いや、医者ならうってつけのやつがいる』


その後アイラビュが到着したのか、インターホンが鳴る。レインが出ると、アイラビュが手を振り立っていた。隣にもう一人、レインが呼んだ女がいる


「アイラビュ、それにアマサケも待ってた」


アマサケも同じく同級生だ。長い桃色の髪に赤い目とかなり個性溢れる二人。アマサケは医者ではないが、少し知識があるので呼んだ


「ほんとさ、今歩いてたらアマサケに会ったんだけどさ、偶然じゃなかったんね」

「ああ。お前ら二人、丁寧に電話で呼ばせてもらった」


アイラビュは高校の制服を着ており、鞄も高校の制服。更に派手な化粧もしており、ザ・陽キャ。対してアマサケは普通だ。一つ言うのなら鞄を持っていない


「とりあえず上がってくれ」


二人を二階、ラテの部屋へ案内した。そしてレインは一階に降りていく。ラテは何事かと回る椅子で方向を変えた


「騒がしいと思ったら、なんで二人がここにいるのよ。何?女子会でも開こっての?」


ラテに驚いた様子のアイラビュも返す


「聞きたいのはこっちなんだけど。何?レインと同居してるの?え、結婚とかしたの?」

「そうじゃないわ。訳ありよ。とりあえず掛けなさい」


アイラビュとアマサケはソファに座る。そしてアマサケが言う


「にして、レインが何故私らを呼んだのか気になるんだが、ラテが全く心当たり無いとは考えにくい」

「あるわよ」

『アマサケはちょっと苦手なのよね。なんか一緒にいてリラックスできないというか、どうも信頼できない』


「たぶん、妹のことね」

「妹?レインとラテじゃなく、レインとラテの妹が付き合ってるのか!?」


恋の話題にすかさず飛びつくアイラビュだが、恋の話では無い。アマサケは訳アリと察したのか面倒だったのか、その先を聞かなかった。レインが茶を入れ上がってきた


「ほんといきなり悪いな」


と言いアイラビュ、アマサケの前に茶を出した。温かい茶だ。ラテは再び本を読み始め、レインは二人の向かいのソファに座る


「よし、本題だ」

「よ、待ってました!」


アイラビュは乗り気だった。何が始まるのか楽しそうにしていた


「アイラビュ、ラテの妹の髪を上手く切ってほしい。勿論、腕相応の値段は払う」


アイラビュは笑いながら手を横に振り返した


「別にいいよいいよ。友達の妹の髪を切るくらい。逆に私でいいの?もっと腕の立つ美容師さんの方がいいし、私なんて見習いだし」


レインは頭を下げた。アイラビュはその行動に動揺をしていた。レインは教師に何を言われようと、自分に非があろうと、謝りはするが頭は下げなかった


「そういうことなら頼む」


レインは頭を上げた


「う、うん……た、頼まれた!」

「手順がある」


レインはアイラビュを連れショコラの部屋前へ向かう。そしてレイレンは小声で話す


「アイラビュ、お前の明るいノリ。あれは消してくれ」

「え、あ、うん、別にいいけど」


レインがインターホンを押す。しばらくすると光が赤く変わる。アイラビュは何度もこの家に来ており、別にインターホンには驚かない


「……その人誰?」

「こいつは友達だ」


扉が開いていく。中でショコラは座って待っていた。アイラビュは桃色の多い可愛らしい部屋だななんて思いながら部屋を進んでいく


「ショコラ、こいつは美容師だ。上手く髪を切ってくれるさ」


ショコラの机には紙が大量に用意されていた。紙が切れないようにだろう。それに、かなり多く残された昼食だが、汁は全て飲んであった


「ど、どうも、アイラビュって名前。その、よろしくね?ショコラ……ちゃん?」


アイラビュは少しテンションを落とす。慣れていないのか、少し不自然さは残る。ショコラは紙に書いた


《よろしく》


アイラビュは話せないのかと疑問に思うが、訳ありなのかと触れないことにした。そしてアイラビュがショコラの方へ近づくと、ショコラが後ろ腰に下がり、距離を取る


「あっ、えっと」


ショコラは少し涙目にレインの方を向く。アイラビュもどうすればよいのかとレインの方を向いた


『アイラビュはいつものハイテンションじゃない。何がダメなんだ?……そうか!』


「アイラビュ、たぶんその派手な化粧のせいだ」

「あ、これ?分かった、落としてくる」

「ちょ、別にそこまでしなくても」


レインの言葉を振り払いアイラビュは化粧を落としに行った。すぐに戻って来ると、化粧は落ちていた。レインは小声で言う


「ほんと、色々と悪いな」


アイラビュも小声で返す


「気にしないでって!この子、何か訳ありみたいだし、それにイベントは朝終わったから、もうあの化粧は使わないし」

『こいつパリピだが、常識とか理解力は高い方なんだよな』


アイラビュは椅子に座るショコラの後ろに立つ。ショコラは心臓を大きく鼓動させ、その大きく開く目からも緊張が伝わってくる


「じゃ、切るから動かないでね」

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