遊園地
ショコラからすれば人は多く、行く人来る人全てが緊張の対象。アマサケはショコラの頭に手を置く
「いつか慣れる。今が大切なタイミングだ」
ショコラは声も全く出ない。ショコラからすればアマサケ、アイラビュ、フラッショの三人が最大の環境であり、加えて室内という外より落ち着ける場所。しかし全く慣れない外に加えこの人の数
「おい、大丈夫か?」
フラッショは声を掛ける。ショコラは金縛りに遭っているかのよう、少し震えることはあっても動くことはない。アマサケはショコラの膝裏と背中に手をやり、横抱きした
「歩けなくてもいい。とりあえず此処に居て、この環境に慣れることが大切だ。見てるだけでもいい。お前らは遊んできていいぞ?」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
フラッショに続いてアイラビュも行く
「ショコラちゃんも遊べそうだったら何時でも来てね〜!」
二人はそう場を去っていく。アマサケはベンチに腰を掛け、ショコラを膝枕している。持ってきていた懐炉を服下、ショコラの腹下に貼る
『いくら暖かい格好をしてると言え、これの有無で話は大きく変わる。加えて暖かいと落ち着き、緊張も少しほぐれやすくなる』
アマサケは鞄から持ってきていた暖かい茶を取り出す。そして寝かせたまま、ショコラに少し飲ませる
『こいつは自分の部屋の扉越しなら初対面の相手とでも話せる。そして安心できる相手と分かれば緊張が消え話せるようになる。つまりこの遊園地という大舞台で家のような安心感を与えつつ、どうにか人に慣れさせる。これが勝利条件だ』
ショコラは震えながら小さく呼吸を始めた。呼吸すら全くする動作も無く、あのままでは呼吸ができず気絶でもしていただろう。そしてアマサケも一つ考えていた
『ショコラには高校に行かせる。卒業なんて学力的に不可能。目的はそこじゃない。人に慣れさせ、社会に出てもある程度やっていけるよう成長させること。その先もある程度考えてはいるが、レインのやつも同じく考えているんなら私が口を出すまでもない』
そんなアマサケの頭を撫でていると、日が暮れる。半日そうしているとショコラも座り呼吸も普通にできていた。しかし体は全く動かない。映る画面が似通っていても来る人は全員違い、画面の中ならば緊張することも無いが、実際いると一人一人に対し緊張が起こる
「ショコラ、帰るか。よく頑張った」
アイラビュとフラッショは時々様子を見にきつつ、少ないアトラクションを何度も何度も遊び尽くしていた。この遊園地の全てを把握したと言っても過言ではない二人。そして帰りの車、ショコラは一気に気が抜けたのか眠りにつくまでは早かった
「ショコラにとっても大切な一日となる」
「そう……なのか?」
フラッショは疑問を含んだように返す
「何もできなかったが、外を知れた。その第一歩が大切でないわけないだろ?」
「確かに、それもそうかー」