その1
2011年3月31日の事。自分の名前は安川健太。この日の朝、故郷の福岡県から飛行機に乗って、東京の羽田空港に着いた。つい最近まで福岡の某大学に通う大学生だった。
健太「入社式にわざわざ東京でしなくてもいいのに・・・。」
明日行われる入社式の為に、僕はここにやって来た。一応しっかりした名のある会社だ。支社が全国に広がってる。でも会社としては東京にある本社で行うとの事で、自分みたいに上京してくる者たちの為に、この日宿泊できるホテルを用意していたのだ。さすがと言うか、景気の良い話と言うか、とにかく今自分は、そのホテルへと向かっている途中だ。
健太「・・・まぁ、費用は会社持ちだから、贅沢っちゃあ贅沢かな。」
そもそも一流の大学を卒業した訳ではないので、自分としてはこんな会社に入社できただけでもラッキーだ。しかし多少の不安はある。それは入社して、やってみない事にはわからない。
健太「・・・それにしても、久しぶりだな。いつ以来だろう。」
東京へは何度か来た事がある。だから今、空港からモノレールに乗って都内に向かっている。ホテルの場所も何となくあそこだなって健闘がついてる。迷ったらそれも何かの笑い話になるだろう。
健太「・・・どうせ地方に配属されるんだろうな。・・・あっ!?」
たった今窓からの景色で、とある競馬場の様子が見えた。でも単なる地方の競馬場だと思う。東京競馬場の所在地からしてその場所は違うし、何よりその競馬場はあんまり広くないように見えた。
健太「・・・ダービーが行われるには、あまりに小さ過ぎるな。」
日本ダービーは東京競馬場で開催される。その時は何万人もの人たちがやって来る。見えた競馬場の広さじゃあ、いくら何でも狭いよな。しばらくしてその競馬場の風景は過ぎて行った。
健太「・・・そうか。・・・だったら、宮崎でも良いかな?」
とふと呟いた。それには理由がある。それは2010年、去年の事だ。