表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ドリーマーズ!!〜居眠り常習犯の俺、寝れば強くなるVRMMOをしてみたらSSSランクだったんだが。ステータスが異常な件〜


「スリーピング・オンライン」

 それは「良く寝る人ほど強くなる」をコンセプトとして作られたフルダイブVRMMOである。

 名前の通り主なステータスアップに睡眠が深く関わるこのゲームは、「やり込みたくても時間が無くてやり込めない」社会人の悩みや、近代問題視されている「睡眠不足問題」を解決する為に制作された。


 ------


 俺の名前は矢野太郎(やのたろう)

 何処にでも居る至って普通な16歳の男子高校生だ。

 

 だが、そんな俺には唯一の悩みがあった。

 それは「他の人に比べて寝過ぎてしまう」という事。

 うん、分かるぜ。普通これを悩みなんて言ったら呆れる奴もいるかもしれねぇな。

 中には「いや、寝れないよりはよっぽどマシだろ」そう思ったりもするだろう。


 だが違う、違うんだよ。

 確かに俺自体寝る事が大好きだってのはある。

 だがな?とにかく生活に支障をきたすくらい寝てしまうんだ。


 ――まぁ良い。とりあえず、まずは俺の何時ものルーティンを見てもらう事にしよう。



 まず、起床時間は以外にも7時だ。

 これだけ聞けば全然寝過ぎてはいないだろう。

 しかし、昨日は18時に寝た。睡眠時間は13時間ってとこだな。


「はぁ……寝みぃな。」


 自室を出て階段を降り、リビングに入ると母が声を掛けてくる。


「あ、おはよう太郎。今日は何時もより早いんじゃない?」

「あぁ、まぁな。2度寝しても良かったんだが。」


 あくびをしながらリビングの中心にある椅子に座ると、母はすぐに朝ごはんを持って来てくれた。


「はい、朝ごはんは大切なんだから、しっかり食べなさいよ」

「へいへい」


 一説では朝ごはんは取らない方が良いというが、果たしてどうなんだろうな。


「いただきます」



 そこから数分で朝ごはんを平らげた俺は、その流れで学校の制服に着替え、7時30分に家を出た。

 そこからはまぁ別に特別な事は無い。

 何時もの様に自転車に跨ると、30分掛けて我が高校、「光岸(ひかりぎし)高校」へ向かう。


 そして難なく学校に着き、1-2組に入ったのだが――

 ここから俺の本領発揮が始まる。


 まず1時間目、始まりの挨拶を終え、席に着いた瞬間俺の意識は闇に落ちた。

 そして気が付けば4時間目が終わり、昼休みになっている。

 うん、今ので4時間、時間が進んだんだぜ?だから俺的には毎日殆どが睡眠時間だ。


「おーい、太郎!もう昼休みだぞ!昼飯食おーぜ!」

「ん〜……」


 はぁぁ……今日もいつも通り気が付けば昼休みパターンか。

 俺はあくびをしながら身体を起こすと、目の前には弁当を片手に脳天気な笑顔を見せる金髪がひとり。


「おぉ……今日も起こしてくれたのか、健司。」

「当たり前だろ?お前は俺のだちなんだし、それにこの時間逃したら弁当食う時間逃しちまうしよ。授業中に隠れて食うタイプでもないだろ。」


 こいつの名前は五十嵐健司(いがらしけんじ)。毎日睡眠ばかりで全く友達の居ない俺の幼なじみで、こうして毎日話し掛けてくれる唯一の友達だ。

 だからこいつの居るこの学校を受験したってのもあったりする。


「いや、俺はお前らとは違ってずっと寝てるから食欲なんて湧かないんだよな。」


 そう言いながらもカバンから母の作った弁当を取り出す俺。


「ほら、んな事言いながら腹減ってんじゃねぇかよ。ハハ、食おーぜ。」

「おうよ。」


 こうして毎日しょうもない雑談をしながらご飯を食うのだが――今日はここで興味をそそる話題が健司の口から飛び出して来た。


「――あ!そう言えばよ、最近俺あるゲームにハマってるんだよな。」

「ん?健司お前、ゲームなんてするタイプだったか?」


 こいつは言わゆる生まれながらの陽キャで、ゲームみたいなインドアな趣味は持って居ないと思っていたんだが。

 しかし、どうやらしているのはただのゲームでは無い様子だった。


「あぁ、俺も今まではゲームなんて全くして来なかったんだがよ――太郎、フルダイブVRMMOって知ってるか?」

「フルダイブVRMMO?確かそれって――」


 最新の科学技術によって実現された、まるで自分がその世界の中に居るかの様な気分を体験出来るVRゲームじゃ無かったか?


「まぁ、詳しくはねぇが大体は知ってるぜ?」


 まさか健司、そのフルダイブVRMMOをやってるって事か?

 確かにそれなら実際に身体を動かす感覚もあるし、アウトドア派の健司がハマってるってのも納得が行くが。


 しかし、次に健司が口にしたゲームのタイトルは、どう考えても普通のフルダイブVRMMOでは無かった。


「お!知ってるか!ならそこの説明は省かせてもらうぜ。

 それでだな、今俺がハマってるゲームのタイトルがスリーピング・オンラインって名前なんだがな、これがお前にぴったりなんだよ!」


 ん?スリーピング・オンライン?んだよそれ。とにかく寝るフルダイブVRMMOって事か?それなら普通に寝れば良いじゃねぇか。


「なんだその変なタイトルのフルダイブVRMMOは。名前だけしか聞いてないがもう既に面白く無さそうだぞ?」


 正直、前からフルダイブVRMMOに興味はあった。

 だってそれって今までの「ゲームは画面の中の世界」って言う当たり前の常識をぶち壊したって訳だろ?

 でも、だとしてもただ「スリーピング」するだけのゲームには興味湧かねぇって。


 ――しかし、そこから健司の説明を聞くとどうやらただ寝るだけのゲームでは無いらしく、自身のステータスに「睡眠」が深く関わって来るらしい。


「――それでよ、俺も試しに何時もより多めに寝たりしてみたんだよ。でも睡眠の質がどうちゃらこうちゃらって全然強くならないんだなこれが。」


「面白く作られてるぜほんとに!」そう腕を組みながら深く首を縦に振る健司。

 どうやらものすごく楽しいらしいな。それだけはめちゃくちゃ伝わって来たぜ。


「どうだ!?でもお前ならめちゃくちゃ強くなれると思うんだよ!!だって俺、ここまで寝る奴見たことねぇもん!!な!一緒にしようぜ?こっちもまだ始めたばかりの初心者だし!!」

「お、おう……」


 正直、ここまで押されると逆にやりずらいが……まぁ頭には「スリーピング・オンライン」というフルダイブVRMMOがあるって事は残しておくかね。


「とりあえずそのゲームをするかどうかは分かんねぇが、検討はしとくぜ。」

「っしゃ!絶対一緒にフルダイブしようなッ!」


 笑顔で米を書き込む健司。

 たく……俺はまだやるって言った訳じゃ無いんだがな……



 こうして、スリーピング・オンラインの存在を知った昼休みはあっという間に過ぎて行き、その後5、6時間目も見事に居眠りをぶちかました俺は、早くもゲームの存在を忘れかけながら家へと帰宅した。


「ただいまー」

「お、おかえり〜」


 玄関で靴を脱いだ俺は、すぐに手を洗い、自室に続く階段を上がる寸前、扉が空いたリビングの時計で時間を確認する。

 現時刻、16時30分。よし、今日は何時もより長く寝れそうだな。


「よっこいせっと……はぁ……疲れたぜ。」


 階段を上がり、自室に入るとカバンを床に投げ、制服のままでベッドに倒れ込む俺。

 今日はちゃんと朝に制服を着たが、実はこんな感じに制服のまま寝て、起きてそのまま学校に登校なんて事も結構あったりする。


 そんなんでよく高校受験成功したな。そう思う奴もいるだろう、だが、実は俺、授業中に寝ている時も何故か授業内容が頭に入っているのだ。

 だから成績的には提出物が終わってて、テストは完璧で、結果的に何時も平均くらいになる。

だから最初に悩みなんて言っておきながらも、正直無理に起きている必要もない。


 それでもこれが通用するのは学生時代までで、社会人になると本格的にヤバいんだが。

 

「とにかく今日は疲れた……寝る……」


 とりあえず、その時の事はその時決める精神で、今は意識を闇に落として行った。


 ---


 そしてそのまま翌朝――に、なると思っていたんだが、今日は珍しくそうはならなかった。


「ん……今、何時だ……?」


 何故か目が覚めてしまった俺は、ベッドから軽く身体を起こすと、壁に掛けてある時計を見て時間を確認する。

 現時刻、22時15分。

 うわ……変な時間に起きてしまったな。


「――とりあえず飲み物でも飲むか。っし!」


 身体を起こすと、自室から出て階段を降りていく俺。

 どうやら両親は2人とも寝ている様で、リビングに続く廊下は暗かった。


 この時間に俺はあまり起きないから今まで気が付かなかったが、両親も早寝タイプなのか。

 もしかして俺のこの寝過ぎてしまう体質も遺伝だったりするのだろか?


 まぁ、とりあえず今は良いだろう。

 薄暗い廊下を歩き、リビングの扉を開けた俺は中に入る。

 するとどうやら誰かが消し忘れていたらしく、テレビの電源が入ったままだった。


 画面にはその日の話題を取り上げ、芸能人や政治家などがその事について話し合うよくある情報番組。


「こりゃまた堅苦しい話題を話し合ってるなぁ。俺なら仕事でもしたくねぇよ。」


 こういう仕事をする人たち、シンプルに尊敬するぜ。

 俺には絶対無理だ。それこそ100パーセント寝てしまう。


 そんな事を考えながらリビングとくっ付いている台所まで行き、冷蔵庫を開けて麦茶の入ったペットボトルを取り出す俺。


 キャップを開け、そのまま滝飲みで喉に麦茶を流し込むと、乾き切った身体全体が一気に潤された。

 はぁぁぁ!うんめぇ!


「やっぱり喉が渇いてる時は麦茶に限るな!あぁ満足満足!」


 そのままリビングを後にし、すぐに寝ようかと思ったのだが――


「あ、そう言えば」


 まだテレビが付いていた、消すの忘れてたな。

 リモコンを手に取り、すぐに電源を消そうとする。

 しかし、そこで情報番組の話題が切り替わった。


『では、続いては今話題のフルダイブVRMMO、スリーピング・オンラインについてです!』


「お、これ昼休みに健司が言ってたやつか。」


 もう既に忘れかけてたぜ。


『なんとこのゲーム、発売開始から今日で1ヶ月になるのですが、もう既に国内プレイヤー人数が1000万人を突破しました!』


「おぉ、そりゃすげぇ。」


 どうやらこのゲーム、1週間前から一気にプレイヤー人口が爆増したらしく、その理由は某人気インフルエンサーが紹介したかららしい。

 そしてその後は、プレイヤーの声をインタビュー形式で聞いている映像が、ハイライトで流れていた。


 やはり、ゲームをやり込む時間が無い社会人も睡眠が実質プレイで、もちろんゲーム内の強化要素も充実しているが、だからと言ってそこまで時間を割かないで十分楽しめるという点が大きい様だ。


 更に、実際のゲーム画面映像を見る限りでは内容も普通に面白そうなフルダイブVRMMOで、俺はだんだんと興味が出てきた。


「これなら別にそこまで睡眠時間は割かなくて良さそうだし、普通に楽しそうだし――」


 と、友達も出来たりするかもだし……

 とにかく!!やってみたいな。


「よっしゃ、」


 ピ。

 俺はテレビの電源を切るとスキップ混じりにリビングから出て自室に戻った。



 部屋に入った俺は、すぐにもうしばらく使っていなかった勉強机に座る。

 もちろん勉強をする訳では無い。


 真ん中に置かれたノートパソコンを開くと、久々に電源を入れた。


「よし、『スリーピング・オンライン 購入』と……」


 果たしてこんな感じの検索ワードでヒットするのだろうか?

 だが、調べると案外直ぐに、公式サイトが1番上に表示された。


「スリーピング・オンライン公式サイト、これか。」


 すぐにカーソルを合わせ、クリックする。

 するとサイトが開き、真ん中にデカデカとタイトルロゴが表示された。

 画面右側には、公式トイッターや、公式スタンプ。最新情報や購入などと書かれたバーが並んでいる。


 すぐに俺は、「購入」と書かれたバーをクリックした。

 すると、今度は画面にメガネの様なデバイスが表示される。

 どうやらこれが、スリーピング・オンラインの世界に入りプレイする為に必要な物らしい。


 なるほど……やっぱりこんな感じの物を装着するのか。

 なんだか変身するみたいでかっこいいじゃねぇかよ……!


「えっと、値段は――」


 5万円。メガネ型デバイスの下に赤文字でそう書かれていた。

 横には通常価格20万円と書かれているから今はセール中の様だな。


「よし、5万円ならずっと貯めてたお年玉で余裕だ。別に他に欲しいものがあるって訳でも無いしな、ここは覚悟決めて買うとしますか……!」


 こうして俺は値段の下にある「購入ボタン」をクリックし、スリーピング・オンラインを始める事を決意したのだった。


 ---


 次の日、いつも通り昼休み以外全て睡眠を決めた俺は、あくびをしながら家に帰ると、玄関に入ってただいまの挨拶をすると、早々に母から声を掛けられた。


 内容は、「俺名義で荷物が届いたから部屋の前に置いておく」との事。

 実は昨日、注文をした後にコンビニまで代金の支払いをしに行っていたのだが、まさかここまで早く届くとはな。


 予想より遥かに早いブツの到着にテンションの上がった俺は、すぐに手を洗い、スキップ混じりに階段を上がって自室の前まで行った。


 すると、母の言った通り扉の前にはひとつのダンボールが。

 大きさ的にはそこまで大きく無く、持ち運びの出来るゲーム機がちょうど入りそうなくらいの大きさだ。


「よし、じゃあ早速部屋で開封しますかね。」


 俺はそれを持ち上げると、扉を開けて自室へと入った。



 それから俺は部屋に入るとベッドに腰掛け、ダンボールを開けていく。

 そうすると中から出て来たのは、黒を基調とし、所々にセルリアンブルーの彩色の施された近未来を感じる箱だった。


 上の面の真ん中には、大きく「スリーピング・オンライン」というタイトルロゴ。

 その右下には「プレイ用デバイス[スリープズグラス]」そう書かれていた。

 どうやらこの中に入ってるデバイスはスリープズグラスと言うらしかった。


「とりあえず開けてみるかね。」


 俺はシンプル過ぎるデザインに少々怪しさも感じながら、箱を開封する。

 すると、中に入っていたのは箱の怪しさからは打って変わって、ものすごくまともなメガネ型のデバイスだった。


「すげぇ、これマジで映画とかで見るやつじゃん……」


 いや、まぁ正規価格20万って位だからそりゃこれだけしっかりしてないとダメだって話なんだろうけどよ、

 それでも、あまりの造形のカッコ良さに俺は感心してしまった。


 やばい……今すぐやりたい……

 でもこれ、どうやって起動するんだ?


「って言うか、そう言えばこれ充電とかないのか?」


 そこで俺は本体の下に説明書が入っている事に気が付き、それを手に取ると1ページめくって目次を見た。


「えーと、充電充電――と、あったぞ、3ページ。」


 って言うか、こういうのはめちゃくちゃ説明書が分厚いイメージだったが、めちゃくちゃ薄いな。イラスト集の同人誌くらいだなこりゃ。


 すると充電方法、充電は必要なのかという欄には、小難しい文章が並んでいた。

 どうやらこのデバイスは、人間が装着している時に脳から放たれる脳波からエネルギーを摂取するらしく、充電は必要無いんだとか。


「なるほどなー。まぁ細かい事はよく分かんねぇや。」


 次に俺は再び目次に戻ると、デバイスの起動方法が書かれたページを確認して、そのページを開く。

 そこには、次の文章が書かれていた。


『まず、本デバイスを通常のメガネと同様にかけて下さい。かけましたら、本デバイスが脳波を自動的に検知して起動致します。その後の説明は起動後、本デバイスにより行われます。』


 ふーん。まぁ要するにかけてみりゃ良いって事だろ?

 っしゃ!やるかね!


 俺は説明書を机に置くと、スリープズグラスを手に取り、気合いを入れてベッドに寝転ぶと、説明書通りかけた。


 するとその瞬間、スリープズグラスは小さな起動音を放ち、続いて身体全体が浮遊感に包まれた。


 そのまま俺は目を瞑り、完全に起動するまで待つ。

 いや、正直今結構怖いぜ!?だっていきなり身体がふわふわするんだもん!


 だが、そのふわふわとする浮遊感は次第に消え、そこで俺が目を開けると、なんともうそこは自室では無かった。


「って、なんだここ?」


 身体の周りには青色の霧が掛かっておりよく見えず、自分の身体も宙に浮遊している。

 しかし、下に落ちている感覚は無かった。

 するとそこで、ある声が聞こえて来る。


『はじめまして。スリーピング・オンラインをご購入頂きありがとうございます。』

「だ、誰だ?」

『私は貴方様がこれからスリーピング・オンラインの世界に無事に入れる様、お手伝いをさせて頂くアシスタントです。』


 なるほど、さっき説明書に書いてた「説明は起動後、本デバイスにより行われる」ってこういう事か。


「よし分かった。じゃあまず俺はどうすれば良いんだ?」

『まずはプレイヤーネームを決めて頂きます。』


 プレイヤーネーム――ゲーム内の名前だな。


「分かった。じゃあ名前はええと――」


 こうして俺は、しばらく続いたゲームの初期設定を進めて行った。


『――では最後に今決めて頂いた情報を確認し、了承していただいた後、ゲーム内にダイブさせます。』

『プレイヤーネーム、寝太郎。見た目、実物と同じ。初期装備、鉄の剣。お間違え無いですか。』

「あぁ、大丈夫だ。」


 やっぱり名前が太郎で寝るのが好きだから寝太郎はベタ過ぎたかな……?ま、まぁ良いか。


 すると次の瞬間――


『寝太郎様の了承を確認しました。これよりダイブ致します。世界に入ってからは自分のステータスを「ステータス」現在地・マップを「マップ」と言う事で確認する事が出来ますのでお使い下さい。』


 アシスタントがそう言った途端、今まで青色の霧が掛かっていた周りが白い光に変わり、俺はそのまま吸い込まれて行った。


 ---


 それからどのくらいたったのだろう。しばらくすると自分の周りを囲んでいた白い光が消え、気が付くと俺は異世界ファンタジー物の作品でよく見る様な村の真ん中に立っていた。


「お、おぉ……!!すげぇっ!!」


 そして、俺の服装も気が付くと変わっており、村人みたいな質素な服に腰には小さめの剣を携えている。

 これがアシスタントの言ってた初期装備か。


 おそらくこの場所がリスポーン地点なのだろう。円形の広場で、真ん中には噴水。そして正面と左右に計3本、道が続いておりそれぞれに転送用ポータル?というのだろうか、巨大な鏡の様な物が設置してあった。


 そして当然、そこら中に自分と同じプレイヤーたちがそれぞれのパーティーで集まって談笑をしたり、「次のミッションどうするか」や「あの装備が買いたい」等の会話をしている。


 さらに、それぞれの見た目も特徴的で、様々な髪色がいるのは当たり前。中にはケモ耳やツノ、しっぽが生えている人もいるというのが印象的だった。


 これ、全員が世界のどこかに居るプレイヤーだって事がすげぇよ。


 ――だが、しばらくリスポーン地点から動かないまま棒立ちをしていると、そこでひとつの問題が俺の頭の中に生まれた。


 そう、何をすれば良いのかが分からないのだ。


 (なんだっけ……確か『ステータス』って言えば自分のステータスが分かるんだっけ。)


 とにかく、何をしたらいいか分からないならさっきアシスタントから教えてもらった事を実践してみよう。


「す、ステータス!!」


 すると、その瞬間自分の目の前に文字が浮かび上がった。


 

【ステータス】

 名前: 寝太郎

 ランク:---

 職業:剣士

 レベル:1

 攻撃力:4

 防御力:3

 魔攻:2

 魔防:2

 睡眠レベル:100

 睡眠ボーナス:全ステータス値プラス200

【ユニークスキル】

睡眠賢者(スリープマスター)

 効果:常に魔力が回復


 

 うーん、正直なにがなんだかよく分かんねぇな

 でも、この睡眠レベル?ってのが高いのと、ユニークスキルをひとつ持ってるって事はよく分かったぜ、うん。(全然分かってない)


「お?なんだなんだ?さっきから棒立ちしてると思ったら、お前、初心者か?」

「へ?」


 すると、そこでひとりの男が俺に声をかけてきた。

 金髪で全身に鉄の鎧を纏い、大剣を背負っているというThe冒険者という様な風貌だ。


「自分じゃないみたいな顔してるが、お前だから。」

「な、なんすか?」

「いや、なにをしたらいいか分からない。みたいな動きしてたからよ」


 確かに、なにをしたら良いかは分かんねぇけどよ。


「おいおい、そんなに警戒しなくてもよ。俺はただアドバイスをしてやろうと思っただけだ。」

「アドバイス?」

「あぁ、とりあえず。ここから見て正面のポータルを通ってみろ、チュートリアルも兼ねた戦闘が出来るからよ。」


 なるほど、戦闘にもちゃんとチュートリアルがあるのか。


「チュートリアルが終わったら、それに見合った魔法も使えたり、初期ランクが決められたりするから、受けるのは必須だぞ。」

「なるほど」


 あ、だからステータスを見た時、ランクが表示されて無かったのはそういう事か。


「ありがとな、とりあえず行ってみるぞ。」

「あぁ、まぁ初期ランクは普通Eからどれだけ高くてもCとかだから低くてもへこむなよ〜」

「へいへ〜い」


 ってか、ゲームなんて所詮息抜き程度なんだから、へこむも何も無いだろ。


 そうして俺は金髪の男に手を振り別れると、言われた通りに正面のポータルへ向かい、中へ入る。


 まぁ、とりあえずは教えてくれたあの男に感謝だな。(なんかチャラいし、あんまり気は合わなそうだが)



 それから、ポータルに入った俺は今度は草原に立っていた。


 ほんとさっきからポンポン色んなところに瞬間移動してるけど、ほんとすげぇ機能だよなこれ。


『これから、チュートリアル戦闘を開始します。』


 すると、そこで先程のアシスタントと同じ声が天から聞こえてきた。


『このチュートリアルでは、ゴブリンを3体討伐してもらいます。諦めたい場合は『リタイア』と発言して下さい。』


 なるほど、リタイアも出来るのか。確かにこれは完全に初心者向けに作られてるな。


『準備は良いですか?』

「お、おう」


 俺は腰から剣を抜くと、構え、そう呟く。

 やべぇ……既に楽しくなってきたぞ……!!これから始まるんだな……!!


『それでは、開始致します。』


 するとその瞬間、目の前に言っていた通り3体のゴブリンが出現した。


「ギャギャギャ!!!」

「……ッ!!」


 緑色の身体を奇妙に動かしながら、ゴブリンたちは赤い目でこちらを睨み付けてくる。


「しゃっ!!やってやるよ!!」


 だが、怖くなんてねぇ!!これはゲームだ!!現実じゃない!!


「ふんっ!!」


 そこで俺は牽制代わりに一度剣で空を横に切ってみた。――――っと、次の瞬間、


「ギャギャギャ!?!?」


 なんと俺の一振りは凄まじい衝撃波を生み、一瞬にしてゴブリンが吹き飛んだ。


「え、えぇ……?バグか……?」


 いや、流石に今のは不具合か何か、だよな?


 しかし、そこで目線の先に文字が浮かび上がる。


『戦闘終了。討伐時間:2秒。初期レベル:SSS。推奨魔法レベル:超級。』


「え、Sが3つ……?しかも推奨魔法レベル超級って、んだよこれ……なんか怖くなってきたよ……!?」


 と、とりあえずきょ、今日は終わるとしよう。明日健司にこれがどのくらいの強さなのかを聞けばこれがバグかどうかも分かるだろうしな。


 そうして俺はそのままログアウトし、眠りに着いた。


 ---


 翌日。

 俺はその日もいつも通り学校へ向かう。


 (昨日のあれは一体なんだったんだ……俺とした事があんまり寝れなかったぞ。)


 まぁでも、多分バグだよなバグ。


 そうして何気なく光岸高校の校門を潜ろうとする。

 しかし、そこで何故か校門前で立っていた数人の集まりに俺は止められた。


「――ちょっと貴方。」

「ん?なんだ?」


 いきなり声を掛けてきた黒髪ロングに鋭い目の彼女は、一緒に居た男子生徒と「間違いない」などとよく分からないことを話している。


 なんだよ、しかも多分上級生だろこの人?俺なんかに何の用が――


「貴方、スリーピング・オンラインをしているわね?」

「え?ま、まぁ。」

「見つけたわ。貴方を我が部活に歓迎します。」

「……へ?――って、ちょ!?」


 するとその瞬間、彼女と一緒にいた生徒たちが強引に俺を持ち上げる。って、んだよこれ!?


「な、なにすんだよ!?下ろせって!?」

「分かってるのよ。貴方が昨日、チュートリアルで初期ランクSSSを叩き出した人間だってね。ほんと凄い騒ぎだったんだからねあの後。」

「な、なんでそれを……!?」

「まぁ、詳しい事は我が部の部室で教えてあげるから、大人しくしてなさい。」


 いや、大人しく出来るかよ!?さっきからなんなんだよこれ!?


「さっきから我が部って、まずなんの部活なんだ!?」


 俺は持ち上げられた身体をブンブンと振りながらそう叫ぶ。

 すると、それを聞いた彼女はなぜか誇らしそうにこう言ったのだ。


「ふっ、簡単に言えばスリーピング・オンライン世界一を目指す部活ね。名前を付けるとするなら――『ドリーマーズ』よっ!!!」


 これが俺と部長の出会いであり、新たな人生の始まりだった。

ここまで読んでいただきありがとうございました!!

さて、今回は初めてのVRゲーム物だった訳ですが、いやぁ実はこの短編、完成に数ヶ月掛かってますw

途中、全然思いつかなくて、それはもう大変でしたw

そして、今回の作品もこれまでと同様に皆様からの評価が高ければ現在連載中の物の次に連載版として続きも書こうかなと考えています。ですので是非!!ブックマーク、評価、そして感想をよろしくお願い致します!!!

以上、カツラノエースでした!!また別の作品でお会い出来れば幸いです!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ