帝国を侵入!
あれから15分ぐらいたちました。カップラーメンを初めていただいたけど本当に美味しかった。俺、呉羽裕翔は荷物あまりないか|ら、旅の支度はあっという間にできた。皐月ゆい姫様は旅用のリュックを予め準備していたから彼女も意外に早く支度を終えた。
「呉羽くん! 女性の服を着こなしているってことは…呉羽くんめっちゃ変態ってことだな!」
「なんで?!」
俺はぼこぼこになった服の上に彼女から借りたジャケットを着ていた。しかし下着とかズボンはさすがに借りられないので、フィーニスについたら、まずは服屋に行きたい。金はもちろん…彼女から…くそ、俺はジゴロ男になっている!
「ほら、道路があったじゃん!」
「本当だ!」
5分歩いたら、石畳みの道路があった。昨夜は雪だったのに、道路に雪はあまりなかった。それは整備されている証拠だと思ったが、その考えを遠ざけるように、皐月さんは軽い口調で言う。
「ん? この道路に雪があまりないってことは、軍が多分近くにいるね?」
「軍がいるって、それはなんでだよ?」
「簡単な話さ、この道路はルプス大王国とタウルス帝国の国境に沿って作られたものよ。つまり、物を運ぶのに最適じゃない?」
「物を運ぶ?」
「弾、食べ物、金属、兵士。前哨戦に欠かせない物質を運びたいなら、ここは最適だろう?」
彼女の説明に納得する。確かにそう、戦争を始めようとしている今はなおさら。パカパカ石畳みを叩く蹄鉄の音が耳に届く。
「おお! 馬じゃん!」
そう、発音の方向に振り返るとそこには馬車が走っていた。パカパカとどんどん近づいてくる。そして馬車の前板に座っていたおっさんはこっちらへ視線をなげる。皐月さんはそれに気付いたか、おっさんに合わせるそぶりで手を挙げる。
「おーーーーい」
と彼女の叫びに応じるかのように、馬車は減速し始める。パカ、パカと音とともに馬車が鼻の先に止まる。おっさんはものすごいウィスパーボイスで皐月さんに話しかける。
「これはこれは? めっちゃかわいいお嬢ちゃんではないか ! えへへ、おじいさんの馬車に乗ってみないのか?」
「えー? いいの?」
「もちろん! こんなかわいいお嬢ちゃんならただで乗せる! えへへ」
俺の目にとって変態なおじいさんにしか見えないが、天真爛漫なお姫様はそれに気づくことがなく、ただ明るい笑みでおっさんと話す。しばらくたってから、彼女は俺に目を向けて、こう告げた。
「フィーニスまで載せられるって! あ、でも呉羽くんはただじゃないね!」
「俺だけがただじゃないと? この変態ジジ!」
俺たちは馬車に乗ることにした。馬車の中は高級ぽい皮ベンチと金襴緞子の内壁。おっさんに聞いてみれば、彼は普通にタクシーとして働いている。貴族が多いフィーニスとその近くに位置する数々の村。
「しかしね、私たちは運がいいね!」
「そうなの? 全てを失った二人は運がいいとは言えない気がするけど…」
俺は真面目な仕草で言葉を紡ぐが、彼女はただ明るい形相をそのままにして。パカパカの音と馬車の揺れとともに、俺たちはフィーニスという都市に近づいた。今はそれを知る由もないが九頭竜候に会えることは、とんでもない出来事を起こす。




