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新感覚脱出ゲーム  作者: ピタピタ子
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地獄のクライミング2

夜が明けて、皆壁を越えることになった。時任千華江派と雪田マリ派に分裂して、プレイヤー同士に新たな亀裂が入った。

「そろそろ到達ね。」

木村知世が上まで登ろうとすると、有吉加世が彼女を突き落とす。

「私が先よ。」

「何するのよ。」

幸い高性能なマットなので、知世は怪我することはなかった。

全員クライミングが終わったあと新たな休憩地点に行った。

「さっきはよくも突き落としたね。」

「何のこと?言いがかりやめてくれる?」

「そうよ。そんな言いがかりが通用すると思ってるの?」

佐伯舞華も言った。

「元はと言えば、元凶は時任さんじゃん。時任さんが要領良くやればこんなことにはならなかったのよ。」

船崎穂乃華は千華江を責める。

「時任さんを責めるのは検討違いね。全てはこの女と雪田さんが悪いのよ。」

休憩室中に口論の声が響き渡る。

「これから救済クイズを出す。」

「ゲームマスター!」

救済クイズがあると分かると皆喧嘩をすぐにやめた。自分達の利益のためなら喧嘩も忘れられる。

「問題だ。時任千華江の体重は何キロだ?」

「また同じ問題出すんじゃないよ。」

千華江は呆れていてたが、それほど怒ってはいなかった。

「A、80kg、B、89kg。決まったら教えろ。」

話し合いになった。

「選択肢が少なくなったわ。次も時任さんが答えなよ。」

千華江はまた険しい顔をする。

「この質問答えなくて良いかしら?」

ゲームマスターがでてくる。

「今回も解答権は時任千華江にしかない。これを放棄したら、チャンスを捨てるのも同然だ。間違っても答えればまた違う発見があるかもな。答えるも答えないもお前の自由だ。お前らがどうなろうが俺にはどうでもいいからな。」

時任千華江は少し間をおいた。

「あんた自分の体重くらい知ってるでしょ?遅いよ。」

「そうだけど、少し考えさせて。」

千華江は口を開く。

「答えAよ。」

「解答を受理した。」

結果はどうなるか。

「不正解だ。罰として20壁追加とする。」

皆、かたまってしまった。

「時任さん、良い加減にして。」

加世が千華江をビンタする。

「千華江さん、最悪だわ。何でうちらまでこんな罰を受けなきゃいけないんだろうね?これじゃあ一生ここから出れないかもね。」

「そうなったら時任さんのせいね。」

皆で千華江を責めることになってしまった。さっき千華江をかばっていたプレイヤーも千華江を責めた。

「本当の体重なんて誰でも答えたいだなんて思わないじゃない。」

「だからといってあんたのやったことは許されるわけじゃないんだよ?分かってるの?」

船崎穂乃華が彼女に言い返す。

「本当に詐欺師ね。でもこれで分かったわ。あんたの体重が89kgというのがね。もっと救いようないデブじゃん。」

ケイジが話す。

「このゲームの鍵は時任千華江だ。こんなに良いヒントなんてないからな。」

ケイジはたまにヒントを与えることはある。今回は時任千華江に他のプレイヤーがどう接するかが鍵だ。

「それではまた次の救済クイズで。」

皆、千華江を見る。

「やっぱりあんたがデブだって認めるのが今回のゲームの鍵よ。」

「私はスマートなのよ。」

無理のある嘘をいつも言う。恵梨香が立ち上がる。

「時任さん私もうざいけど、このまま皆で悪口言ったらいつまでたってもこのゲームクリア出来ない。時任さんはむきになって余計壁の数は増えるだけよ。」

恵梨香の一言で皆静まった。

「分かったわ。悪口はゲーム終わった後にたっぷり言ってあげるから。その代わり、皆もこのステージでは時任さんにデブは禁止よ。」

雪田マリが皆に呼びかける。

「分かったよ。デブと言わなければ良いんでしょ。」

ゲームを早く終わらせたいから皆流石に言うことは聞いた。早くゲームを終わらせて抜けたくて、他のプレイヤーがどうこう考えてはいなかった。

「千華江さん、このパンあげる。疲れてお腹空いてるんでしょ?」

穂乃華が千華江にパンを渡す。

「あんた食いしん坊でしょ?食べなよ。」

「そんなに言うなら食べてあげるわ。」

「素直に受け取れば良いのに。あんた何で音楽教師なんてやってるの?」

マリもう隣に座る。

「音楽が私を認めてくれたのよ。学校ではあんた達みたいな奴らに体育の時間たくさん馬鹿にされたわ。表向きは仲良く振る舞っても、裏では体育の時間は一緒にペア組みたくないとか、球技大会で使えなくて邪魔だとは散々言われてきたわ。だけど音楽の授業と部活は憩いの場だったのよ。成績は5だったし、歌声は先生が認めてくれたし、吹奏楽部だってフルートを吹きこなしたわ。当時もスリムで可愛くて男子部員から気に入られて困ったんだから。」

「いや、何か嬉しそうじゃない?学生時代のあんたがスリムだったこととモテてたことは嘘だと思うけど、音楽の才能があったのは確かね。それとあんたが男ばかりひいきするのも分かったわ。」

「私はスリムなのよ。何度言わせたら分かるのよ。大学時代は音大の声楽科に入ったけど、成績は良かったけど、卒業後はプロで食っていくのが厳しくなって、音楽教師になったわ。たくさんの絶望を味わったし、才能がある私が何で認められないか常に嘆いていた。それから吹奏楽部の顧問をしてたくさんの学校を金賞にした音楽教師よ。」

「それなら何でこんな所にいるのかしら?あんた生徒達に酷いことしたんじゃないの?」

「私の指導は何一つ間違っていないわ。」

「どんな悪行をしたのか楽しみね。」

千華江は穂乃華に学生時代のことなどをたくさん話した。

「あんたこそ何でここにいるのよ?さっきの有吉さんみたいにきっととんでもないことしたのよ。」

「あの人と一緒にしないでくれる?あんなに私はヒステリックじゃないし、暴力的じゃないのよ。」

マリが千華江に声をかける。

「あんたみたいな人間は働かずに家に引きこもっている方が良いわ。それが社会のためよ。あんたみたいにプライドだけ高い奴は私の会社ではどんどん解雇するわ。」

「音楽教師をなめてるでしょ?私は実力もプライドもあるのよ。プライドが無駄に高いのはあんたの方よ。」

千華江とマリはまだ喧嘩していた。

次の日もその次の日も数日間壁を越えた。10壁越えたあたりでまた救済クイズが出題された。

「お前ら、お待ちかねの救済クイズだ。今回は特別なボーナスだ。このクイズに正解すれば壁は残り1壁になる。こんな大事なクイズ棄権するわけじゃないよな?」

時任千華江が流石にそこまで馬鹿ではないのは皆知っていることだ。

「次の問題だ。時任千華江の体重は何キロだ。A、89kg、B、90kg。答えろ。」

「答えは89kgしかないわ。」

「それで良い、時任さん。」

「そうそう、ずっとそれを待っていたのよ。」

皆が89kgだと確信していた。マリと恵梨香をのぞいては。

「90kgって、1kgの差よ。皆、千華江の機嫌取るのにたくさんのパンをあげてたからそれで太った可能性もあるわ。」

マリが皆に言う。

「ゲームマスターのことだから何か罠を仕掛けているはずよ。あいつが私達を簡単にクリアさせると思う?もっと皆、冷静にならないと駄目よ。」

マリと恵梨香の一言で彼女達の希望が打ち砕かれた。

「何をするのよ。」

恵梨香が千華江の体を触る。

「勝手に人の体を触らないでくれる?失礼しちゃうわ。」

「これは身体検査よ。あんたの体なんて誰も触りたいと思わないから安心して。」

「私はそこそこモテるのよ。」

「苦し紛れの自慢は良いから。」

恵梨香が足を何度も触る。

「ズボンめくるわ。」

ズボンをめくると両足に重いものが貼りついていた。

「これを取れば解決ね。ゲームマスター、出てきなさい。質問があるから答えて。」

「良かろう。」

「足についてたものは体重に含まれるの?それとこれを剥がしたら剥がしたあとの重さが正解なのよね?」

「そうだ。そのために、Aの体重計とBの体重計を用意した。重量がオーバーなら体重計が壊れる仕組みだ。」

「体重が89kgで、Bの体重計に乗ったらどうなるのよ?」

「それなら時任千華江の体重がさらに10kg増えて壊れる仕組みだ。そして時任千華江が一人指名して、指名された相手が5kg太るように出来る仕組みだ。」

いずれにせよ外したら時任千華江だけじゃなく、全プレイヤーの損害につながる。それにしても、ケイジの人の体型に触れまくるのは失礼極まりない。それが彼の悪人に対する罰でもある。彼のやり方を支持する人も出てくるだろう。どうしたらいかに悪人を怒らせて孤立させるか考えているんだろう。どうやって更生させるのか全く想像がつかない。

「重いのを外したけど、外した時の体重があってるかも分からない。」

「ゲームマスター、このクイズ千華江じゃなくて私に権限ちょうだい。」

恵梨香が発言した。

「ちょっと何勝手に決めてるのよ!」

マリはそれを許さなかった。

「そうよ。恵梨香、私達のさっきの話は無駄だったの?」

舞華も続けて言う。

「ここは任せない。」

知世は言う。

「信用性がない人に任せちゃ駄目よ。」

佐江は知世に言い返す。 

「沢は男に色目を使うしか能が無いと思ってたけど、大好物推測でも賢い判断をしたのは彼女よ。人として嫌いだけど、ここは沢に従ったほうが良いわ。」  

知世の一言で渋々従い、誰も反論しなかった。

「ゲームマスター答えるわ。」

彼女は体重計に近づく。,Aの体重計を持ち上げた。

「何やってんの?」

さらにBの体重計も一緒に持った。

「恵梨香、体重計に千華江を載せないと駄目よ。答えにならないわ。」

「答えわこれよ。」

彼女は勢いよく2つの体重計を投げて壊した。

「このクイズは選択肢に答えがない。答えはどっちでもないわ。」 

ケイジは静かになった。口を少しずつ開く。

「沢恵梨香…正解だ!」

「やっぱりね。」

「どうしてそう思ったの?」

「88kg以下の体重について言及が亡かったから怪しかったのよ。それに千華江は激しい運動で通常より1kg以上減量できたのよ。」

正確に言うと地獄のクライミングで5kgの減量に成功した。

次の日全員で壁をこえてケイジが画面から出てくる。

「地獄のクライミング、クリアだ。次のステージに行く前に動画視聴をしてもらう。」

また誰かの過去が明かされていく。

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