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新感覚脱出ゲーム  作者: ピタピタ子
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地獄のクライミング

ゲームがはじまる前の3日間有吉加世と他のプレイヤーの間で距離が出来た。皆、あからさまに彼女を無視した。

「ちょっと無視してるじゃないわよ。ここを通しなさいよ。」

時任千華江と雪田マリと木村知世が通路を塞ぐ。

「何か聞こえない?時任さん。」

「気のせいよ。呪縛霊とかなんじゃないの?」

「プレイヤーが一人死んだのかもね。」

笑いながら彼女達は無視した。有吉加世のやってることは同情しないし、改心してる様子も見られないけど、ここのプレイヤー達のやってることは罪からの逃亡とも言える。

「あんた達だって悪いことしてるじゃん。何で私だけこんな扱い受けなきゃいけないのよ!他の奴らの罪も一緒に公開すべきよ!ゲームマスター出てきなさい。他のプレイヤーの罪が私のより重かったらキツイ罰を与えるようにしなさいよ。これだと不平等だわ。」

「不平等?それなら世間はお前みたいな人間を見て、平等にしたいと思うのかな?人を平等に扱えない奴に平等を行使できる権利などない。特にここの会場に集められてる以上そんな言葉は通じない。どんなに逃げてもこれから起こる罰からは逃れられないから。覚悟しろよ。」

当然、加世の言葉に聞く耳なんて持たなかった。

「何をしてるんだ?もう休み時間終了してるんだけど。罰として蚊に刺されて貰う。」

会場には数匹の蚊が放たれた。

「嫌、こっち来んな。」

「最悪だわ。」

入江美代子と佐伯舞華が蚊を振り払う。

「捕まえたわ。ぼそっとしてないでそっち早く捕まえて。」

加世や沢恵梨香は身体能力が高いので何も困ること無く蚊を退治できた。

「何で私ばっかり!痒いわ。誰か虫さされのくすり持ってないの。」

「持ってないじゃん。時任さん、デブで鈍いからすぐさされてんじゃん。もっと痩せたらどうなの。」

雪田マリは毎回体重のことを指摘する。彼女には太ってる人間を見ると自己管理の出来てない人間だという偏見がある。仕事がバリバリに出来るが、実力で人を見下す癖がある。仕事後はジムに通ってる。彼女は太ってる人間に実力はないと思ってる。

「お前ら、たるんでるぞ!今まで多めに見ていたけどこれからはそうは行かない。」

ケイジはいつもにまして厳しくなった。

「ゲームマスター、だらしなくて、たるんでるのは時任さんのお腹だけですよ。」

雪田マリが千華江を挑発する。

「何ですって?誰がデブですって?私はスマートなのよ。」

彼女は自分の体型を指摘されるとスマートだとよく返す。悪口に敏感で怒りっぽいが、ある意味でメンタルが強い。

「私、一言もデブなんて言ってないけど。被害妄想も程々にしたらどうなの?自覚があるのに痩せようとしないなんて自己管理がなってないわ。」

「本当にそうだわ。その体型ならジムとか行かないのかしら。」

美代子も便乗する。

「私は胸もお腹もたるんでなくてスリムなのよ。たるんでる人は大変ね。でも千華江さんの気持ち分かるわ。千華江さんは腹で重くて、私は胸で重いんだもん。」 

「私だってそこそこあるわ。」

マリや舞華が対抗する。

「ちょっとそんな胸を見せびらかすんじゃないよ。巨乳の女って下品な女しかいないわ。世の中の男共は胸ばかりね。胸しか見てないわね。ゲームマスターも同じなんでしょ?」

山本佐江は男性が胸しか見てないと言う偏見を持っている。確かにそういう人間もいるが、そんな人ばかりではない。彼女自身貧乳がコンプレックスだ。

「誰が俺のプライベートについて聞いて良いと言った?罰として全員会場を掃き掃除だ。もちろんホウキなどないから。手でゴミを拾え。」

「何故全員なの?可笑しいよ。山本だけに罰を与えなさいよ。」

「良い忘れてたけど、基本ここで下す全ての罰はプレイヤー全員に行使する。」

「私達だけ見逃してよ。」 

「俺がゲームマスターである以上連帯責任が適用される。運が悪かったな?お前らが利用してきた人間がここまでやらなかったから大きな罰を受けなかっただけだ。どんなに頑張ろうが罰からは避けられない。覚えとけ。」

ケイジのプライベートは確かに謎が多い。そもそもここの会社の社員のプライベートは謎そのものだ。普段から簡単に私生活を明かさないのもゲームマスターの心得でもある。

プレイヤーは憂鬱ながらゴミをかき集める。

「もう疲れたんだけど。誰かさんのせいでこんな羽目になったわね。」

「そうよ。掃除するなら山本さんだけにしなさいよ。」

加世の次は佐江が皆から避難された。佐江は少し涙目だった。

「全てはあのゲームマスターが悪いのよ。あんな男に連れてこられなければ私達はこんな目に合わなかったのよ。」

この地獄はまだまだ序の口。これから新たな地獄がどんどんやって来る。

「無駄よ。分からない?ここを出たら殺されるかもしれないんだよ。あんたが死ねば私達も死ぬんだから。そんなことも分からないの?」

船崎穂乃華は佐江にキツい言い方をする。

「皆お待ちかねのゲームの時間がやって来ました。次のゲームは地獄のクライミングだ。」

「地獄のクライミング?」

「名前の通り、クライミングをしてもらう。安心しろ、流石に危険なロッククライミングをさせるわけではない。今流行ってるボルダリングだ。ルールは簡単で、3mの壁を登ってもらう。壁は計4つ。一日で登れる壁は一つまでだ。服は自動的に着用される。全員が登り終わってゲームクリアだ。説明は以上だ。」

「それなら簡単ね。ボルダリング、私よくやってるのよ。」

美代子はかつてボルダリングをやったことがあるようだ。千華江は冷や汗をかいていた。

「ゲーム開始だ。」

皆、勢いよく壁を登る。

「私が一番のりよ。雪田さん、意外と遅いのね?有吉さんももうすぐ登りきるのよ。」

美代子が一番乗りだ。壁の一番上の先は休憩地部屋があった。

「抜かしてやるわ。」

次々と皆、登っていく。知世と佐江が登るのに苦戦していた。その二人も何度も落ちては苦戦しては登りきった。

「死ぬかと思ったわ。」

「死ぬなんて迷惑よ。私達の命も関わってるんだから。」

千華江はずっと立ち止まっていた。上から恵梨香が降りてきた。

「おばさん、運動苦手でしょ?その体重なら登るのも大変よね。」

「私は音楽の才能があるのよ。運動出来なくても困らないの。」

「そう言うけど、おばさんが登らないとこのゲーム皆クリア出来ないから登りなよ。」

千華江は恵梨香ふっ飛ばした。

「何するのよ。このデブ!」

「そうやって運動能力で人のこと見下す奴らが1番嫌いなのよ。登れば全て解決するんでしょ。」

千華江は登ろうとしたがすぐに落ちた。100回以上挑戦したが駄目だった。そうなると皆、千華江に対しての不満がたまる。恵梨香が登って、上から指示を出す。

「私の登ったルートにしたがって登って。」

「早すぎる、もっとゆっくり見せて。」

「しょうがないわ。この仮は返してもらうから。」

千華江は恵梨香に従って登る。

「手だけじゃなくて、足も意識して。下半身を支えればそんなに辛くないよ。」

千華江は落ちた。

「もう一度。」

千華江はもう一度登る。

「もっと全身を使って。緑のボールドをつかんで!」

「ボールドって何よ。」

「突っ張ってる石のことよ。」

千華江は半分以上登った。

「あともう少しよ。」

千華江はあと少しで壁を超えられる。越えた先には休憩室だ。すれすれの所で足を滑らせて、壁を掴み続ける。たまたま踏んだボールドが全部崩壊した。

「皆、手伝って。」

「何で私達が?」

「文句は後で千華江さんに言って!今は千華江さんを引っ張って。」

恵梨香は千華江の手を掴んで言う。

「本当に重すぎるわ。」

「重いとか言うな。」  

千華江は苦しながら言う。他の8人は千華江を頂上に引き上げようとした。 

「皆、もっと力入れて!」

「重すぎるわ。」

何とか全員壁を越えられた。

「重すぎて、死ぬかと思ったわ。」

舞華がボソッと言う。

「今誰よ。私のこと重いって言ったの?」

「時任さん、別に誰もあなたのこと重いなんて言ってないわ。体重が重い自覚があるなら、とっとと痩せれば良いでしょ?」

マリは正論で千華江に何も言わせなくした。

「そんなに言われたくなければ痩せる努力をすれば良いのよ。努力しない奴に文句を言う資格はないわ。重いと言われて怒るのって、自分の努力不足を人のせいにして逆恨みしてるのと変わりないわよね?」

千華江とマリは取っ組みあいの喧嘩になった。

「あんた調子にのってると上から突き落とすわよ。」

「マットがしいてあるから死にはしないけどね。もしかして殺そうとする気?どうしたいの?本当に殺したら、皆死ぬけどね。そんな我慢も出来ないんの?」

「そんなの分かってるよ。」

「分かってないでしょ。」

「やめろ。喧嘩するな。」

他のプレイヤー達が二人をおさえて、止める。

「良い加減にしなさいよ。まだゲームは終わってないのよ。」

知世は声を荒げて言う。

「あんたのような人の気持ちを考えられない人なんてとっとといなくなれば良いのよ。あんたがいなくなるのは皆のためなのよ。」

千華江はマリにツバを吐く。

「それってあんただけが思ってることでしょ。渡しは正しいことしか言ってないわ。正論には感情論なんて通じないの。この世は全て正しいことに価値があるのよ。」

恵梨香が二人をビンタする。

「こんな言い争いして満足?もしこのステージ上手くいかなかったら二人は責任とれるの?あんた達のせいでゲーム失敗してまた私が罰を受けるのよ。」

皆、自分のために自分の正義しか言わない。その後マリと千華江は目も合わせず休憩室で休憩した。

「何このレバー?」

穂乃華がレバーを発見する。

「見つけたあんたが引きなさい。」

加世に言われると穂乃華は渋々とレバを引っ張った。

「救済クイズ!」

休憩室中にケイジの声が響く。

「今から出すクイズに答えれば、残りの壁が1つになる。ただし、条件は全員が同じ回答であることだ。」

皆、耳を集中させて聞いた。

「時任千華江の体重は何キロだ?A、70kg、B、80kg、C、89kg。」

皆話し合った。中々タブーな質問を彼はした。

「最初の紹介で、70kgって言ってたわね。」

千華江はピリついた。

「そうよ。答えは絶対にAよ。」

「Aで決まりね。」

ほぼ全員一致だった。

「ちょっと待って!ホントに70kgなの?ゲームマスターの言ってることだから嘘も混ざってるはずよ。千華江さんにここは答えてもらおうよ。」

恵梨香は何かと頭の回転が早い。

「そうよ。沢の言う通りね。本人の体重は本人しか分からないわ。ゲームマスター、この救済クイズの権限を時任さんに与えて。」 

マリが言う。

「よろしい。それでは時任千華江、答えろ。」

「答えはAよ。」

数秒沈黙になる。

「不正解!」

最初に言った体重は情報部のミスだ。

「不正解ということで、登ってもらう壁はあと15壁になる。クイズは以上だ。せいぜい頑張れよ。」

それを聞き、皆かたまってしまう。

「何間違えてるのよ!」

「知らないわよ。そのクイズが間違ってるのよ。」

「間違ってたらクイズじゃないわ。」

美代子が返す。

「時任さん、あんたがやったことは詐欺ですよ。皆を騙して、皆の負担を増やしたのよ。どうするの?」

穂乃華が千華江を責める。

「詐欺?それなら皆、秘密とかないのかな?もしあんたらに同じような質問来ても正直に答えなよ!」

千華江は感情的になる。

「論点ずらさないで。船崎は詐欺をするなって言ってるの。責められたくなければ、最初から正直に答えるべきね。」

マリがまた千華江に正論をかまそうとした。

「そもそも権限を全て与えた雪田さんが悪くない?時任さんを責めるのは違うよね?」

知世の一言で皆、マリに注目する。

「私はクイズが円滑に進められるために言ったのよ。悪いのは全て詐欺をした時任さんよ。」

メンバーは千華江の肩持つメンバーとマリの肩を持つメンバーに別れた。このゲームでも分裂は起きた。

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