大好物推測2
「正解は…」
これで間違えたら、またやり直しだ。
「スクランブルエッグだ!」
恵梨香と彼女と回答が同じだった人は喜んで舞い上がった。
「答えも納得いかないし、沢が正解したのも気に食わないけど次のステージに通過出来そうで良かったわ。」
知世が独り言を言う。
「全員セカンドステージ通過とする。正解したチームにはパンオショコラ、不正解のチームにはカピカピで美味しくないパンを配給する。」
いつの間にかプレイヤー達の手元に配給品がのっていた。ケイジが融通良く通過させるのは絶望をどちらかに味わせるためだった。ケイジは本当に侮れない。
「1時間の休憩が終わったら動画視聴の時間とする。次のゲームは数時間の動画で説明する。それでは休憩だ!」
プレイヤー同士睨み合っていた。
「あんたを信じたら酷い目にあったわ。何よこのパン。これからはあんたを信じるメリットはないわね。」
加世が山本佐江に八つ当たりをする。見るからにパサパサのパンだからだ。
「有吉さん、あなた山本さんを責めるのは違うわ。あなた文句ばかりで何もしてないじゃないの。偉そうに仕切ることばかりは得意なのね。」
知世がマリを指摘する。
「私にパンオショコラよこしなさいよ。」
千華江が恵梨香の持ってるパンオショコラを盗もうとした。
「近づかないでよ。このクソ豚女!食い意地ばっかはってるからあんたは一生痩せないのよ。本当は70kgよりもっとあるでしょ。」
「何ですって、もういっぺん言ってみなさいよ。」
「食うことしか才能がないデブ!」
「あんた、許さないわ。私には才能があるの。私のおかげで吹奏楽部は毎年予選通過出来てるのよ。」
雪田マリが近づく。
「時任さん、良い加減諦めなよ。パンオショコラは優勝した人の特権よ。世の中は勝ち組と負け組がいるの。勝ち組は優遇されて、負け組は淘汰されるの。そんな悔しければ勝負に勝てば良いのにね。音楽教師なんて、いつも生徒ばっか利用して金賞とか自分の実力じゃないでしょ。」
マリは勝ち負けが全てだと考える。
「不平等はあってはならないのよ。」
「負け組のままだから差別と不平等に苦しむのよ。はい上がりたいなら正しい努力をすれば良いのよ。」
パンオショコラを盗もうとした千華江をマリは蹴飛ばした。
一方、他の酷い配給品を貰った人達もパンオショコラを盗もうとしていた。
「パンオショコラをよこしなさいよ!あんたらがカピカピなパンを食べなさいよ!」
「怒るならゲームマスターに怒りなさいよ。私達がルール決められないの分かってるでしょ。馬鹿なの?」
壮絶な争いは中々終わらない。
ケイジは休憩中、優雅なランチを過ごしていた。今日は専属料理人が作ったラーメンを食べている。この会社にはゲームマスターの為に専属の料理人を雇っている。専属の料理人自体はアメリカにいるが、特殊な輸送手段で料理を色んな会場に届けている。どんな手段を使ってるのかはケイジは知らない。もちろん会社の一部しか知らない。
「相変わらず、料理が上手いな。ワインでも飲むか。キャンティ・クラシコにするか。」
食事中に電話がかかる。彼の同僚の女性社員、クリスティーナ。彼女も同じゲーム運営部の社員だ。
「クリスティーナ、久々だな。元気か?」
「元気よ。洪水発生機が誤作動してて、少ししか水が出てないの。どうすれば良いの?こんなこと中々ないわ。」
会場の機械は基本的に故障することはほぼないがたまに誤作動で言うことを聞かない場合もある。その時に備えて機械を使いこなす訓練をするが、1番使いこなせるのはケイジだ。さらに半年もしないうちに遠隔操作で他の会場の装置を瞬時に治すことも習得している。何度も言うけど、会社の期待の星の一人だ。もちろんクリスティーナも期待値は彼と同じくらい大きい。
「分かった。治すから数分待ってろ。」
遠隔操作で彼は装置を治した。
「ケイジ、ありがとう。これで悪いプレイヤーを思う存分洪水で流すことが出来るわ。」
クリスティーナはプレイヤーの前では落ち着きを見せている。
「クリスティーナ、俺休憩中だから残業代払ってもらうからな。」
「しょうがないわ。社長に申請するわよ。」
「証拠としてこの会話録音しといたからな。」
クリスティーナも中々頭のネジが飛んでいる。この仕事は少し頭おかしくないと務まらない仕事だ。
「そう言えば、ゲームは順調に進んでいるか?初っ端からやらかしたんじゃないか?」
「確かに、逃亡中の連続殺人犯が一人死んだけど、証拠残らず死体を処理しといたわ。残り7人連続殺人犯がいるけど、私は最後に挽回するタイプなのよ。今回こそあんたの成績を抜かすよ。覚悟しなさい。」
「早速一人死なせたのか。この会社にはよくあることだから、驚きはしないな。どんな状況だろうと俺は手を抜かない。覚悟するのはお前の方だな。」
「そう言うのも今のうちよ。」
クリスティーナとケイジは良きライバルだ。仲が悪い訳では無い。この前の新人の成績はケイジがトップで、クリスティーナは1点差で彼の次に高い成績だった。
「それにしてもそっちもプレイヤー同士の喧嘩ばかりね。」
「パンオショコラの取り合いをしてるんだ。正解したには美味しいパンオショコラをあげて、不正解者には不味いカピカピのパンをやったんだ。あいつらは分け合うというのが頭にないから貪り合うのは目に見えてた。全て予想通りだな。こうやって画面越しで見ると面白い光景だけどな。」
ケイジはニヤついていた。
「ケイジ、あんたかなり悪趣味ね。」
「君もプレイヤー達に罰を与えまくって楽しんでるだろ?悪趣味じゃなきゃこの仕事は務まらないな。」
裏NPO法人社会的ダスト更生プロジェクトの社員は皆どこか変だ。
「休憩、終了!昼ごはんは仲良く食べれたか?」
ケイジが画面越しに顔を出す。仮面を外すのは休憩だけ。まだパンオショコラの争いが終わっていなかった。
「これからビデオ視聴の時間にする。ご飯は見ながら食べろ!」
画面には有吉加世の悪行と表示された。
「え?何これ?」
「ちょっと待って、これどういうことなのよ!ゲームの説明する動画じゃないじゃんかよ。今すぐ消しなさい。」
有吉加世が激怒する。
「誰も100%そうするとは約束してないけどな。それとも何か決定的な証拠でもあるのか?」
加世は歯ぎしりをする。
「よく聞けよ。どこかのタイミングで一人一人の素行をビデオ化したものをお前らに見せる。どんなに上手く誤魔化そうが、ここにいる限りは防げない。」
船崎穂乃華が会場を出ようとする。するとすれすれの所に矢が落ちた。
「下手なことをするとトラップが作動して死んじゃうから、気をつけろ。一人死んだら、全員死ぬ。それが嫌ならここの会場から出るなよ。」
出ようと思っても、何重にも施錠されているので、プレイヤー達が出るのはほぼ不可能だ。
有吉加世の悪行がビデオで公開される。皆、ビデオを見る。
有吉加世、41歳。飲食店でフルタイムで働く主婦。6年前に今の夫と再婚した。前の旦那との実娘と旦那の義娘と暮らしている。
「新人の坂本です。よろしくお願いします。」
彼女は最初だけは良い顔をする。日数を重ねると有吉加世のいびりは加速する。
「坂本さん、洗い物たまってるんだからやってよ!言わないと分かんないの?」
彼女より後に入った人達は、彼女の取り巻きする人と耐えて仕方なく働く人と辞める人に別れた。
「ちょっと坂本さん、ゴミ溜まってるんだから片付けてよ。こっちはあんたと違って忙しいんだよ?こういう細かい仕事率先してやってくれないと困るのよ。」
八つ当たりは日常茶飯事だ。
「有吉さん、すみません。そこのゴミまとめといた方が良いですか?」
「じゃあ捨ててよ。」
裏では社員の元に行き、悪口大会。
「新人の坂本さん、動きは遅いし、仕事も中々覚えてくれないの。何であんな人雇ったの?人件費の無駄遣いよ。もっとビシバシ教育出来るかしら?」
仕事は1番出来る人だし、逆を選んでニコニコして常連客もついてるので、社員も中々この手の人間は辞めさせられない。
「有吉さん、この前坂本さんが魚の仕込みの調味料の料間違えていたんですよ。」
「何それ、ありえないわ。」
「私も注意したんですけど、その矢先ミスして仕事が増えて大変だったんですよ。」
「あういうのはそろそろ泣かせて見ないときっと分からないのよ。次見たら、泣かすわ。」
彼女は取り巻きをたくみに使って、人のミスに対する情報を聞いて、すぐに攻撃する。彼女の悪行はこれだけでもすまなかった。