社員
「これから第40回定例会議を行います。」
ケイジとクリスティーナははじめて参加する。色んな部署の社員が参席していた。
「まずは会計部のハミルトン部長、来年度の予算案をお願いします。」
「来年度の予算案は…」
二人は重要な部分だけメモを残した。
「これからは人工知能を使ったゲームも必要になります。そのため、人工知能の購入を増やしていきます。」
ケイジとクリスティーナは会計部長のまとまらない話で少し眠たくなっていた。
「会計部長どんだけ時間食ってるの?」
「あいつは話すと長くなるやつなんだ。」
二人の上司ベンが説明した。
「何でそんな人が部長なの?私か他の誰かががやったほうがマシだと思うけど。」
会議では色んな議題が取り上げられた。
「今回、10期生のケイジ・パーカーが取り扱った悪夢耐久というゲームをゲーム推進部はこれからどんどんやって欲しいです。」
「あんたの名前が出るなんて。悔しいけど、よく考えたゲームね。」
クリスティーナはさり気なくケイジを褒める。
「このゲームは被害者がどれだけの恐怖やストレスの中で生きているのか分からせるのにとても良いゲームですね。しかしただこのゲームをさせても更生しない人間は中々更生しない何も言い返せない論理で押し潰せばだいたいの悪人は更生するでしょう。」
10期生の考えたゲームはすぐに社員間の話題になった。10期生は一番応募の多い年だった。例年の採用枠は基本的に8人だ。異例の10人採用だ。1期生と2期生はほとんど他部署の部長だ。もうゲーム推進部にはいない。今、10期生のことをとりあげたのはゲーム推進部長だ。ゲーム推進部の部長は3期生のエンゾ・ベルモンドだ。数学オリンピックで数々の実績を残した秀才だ。その他にも6カ国語が出来たり、システム工学にもかなり詳しい。
「同じ部署なのに会うの久々すぎるわ。」
ゲーム推進部長が毎回ゲームに視察するわけではない。
「今後のゲーム推進部の計画です。お手元の資料をご覧ください。まず今後のゲーム開催地ですが、来年から新たにポーランド、ブラジル、タイ、ブルガリアでも行うことにします。世界各地にゲーム会場をおいて、プレイヤーの移送をより簡略化することを目指しています。9期生・10期生で上位3名以外はプレイヤー移送の時は上司もついていくようにお願いします。」
「この案に質疑がある方は挙手をお願いします。」
「プレイヤーの移送は今後より安全なものならないでしょうか?移送中に会社の情報が漏れるリスクもあります。今後の改善をお願いします。」
「プレイヤーの移送に、にかなり手間がかかります。」
質問タイムはかなり長引いた。今までゲームの開催地はアメリカ、オーストラリア、メキシコシティ、パリ、オタワ、ロンドン、ベルリン、フランクフルト、東京、ソウル、シンガポールのみでプレイヤーの移送にはかなり困っていた。
「次に今後10年以内のプランを発表していきます。10年以内にプレイヤー、いわゆるターゲットの対象を地方権力者などや大企業の社長や幹部に拡大していきたいと思います。残念ながら、理不尽な環境を作っているのは権力者です。よく考えてみてください。フランス革命が起こる前は酷い階級差別がフランスではありましたし、王族達に搾取されるばかりの時代でした。大きな抵抗をしたことによって王政は無くなりました。しかしこれは国単位の出来事に過ぎない。理不尽な現実に苦しむ人が減ったわけではありません。それにも大きな変革が必要です。きれい事ばかりでは良くなりません。ターゲット層を広げて少しでも世の中の理不尽な現実を無くしていくことを目指しています。ターゲット層を広げればあちこちで我々が更生できる人間が増えるんです。」
ターゲット層を広げることには全員が賛成したわけではなかった。
「ターゲット層を権力者にまで広げると言いますが、我々は秘密結社のような組織ですので、そんなリスク起こしたら会社の存続に影響してしまいます。」
反対派が多数出る中、ケイジが手をあげた。
「皆さん、私はこのプランに賛成です。皆さんは何故この会社に入社したのですか?ここの会社は一度入社したら退職不可な会社です。クソみたいな世界を変えたいからじゃないですか?そんな会社の相続とかきれい事ばかりではこの社会のゴミがあふれる世の中を変えるなんて無理ですから。口だけで説得出来ないクズだってわんさかいる。口で説得出来るなら世の中の差別などすぐに無くなってる。だけど現実はそんな生ぬるいもんじゃない。残虐な手段やリスクのある手段を取らなければ結局腐った権力者やゴミのような人間はは変わりはしない。」
結局このプランは継続という方向で決まった。
「あんたサイコパスな人間かと思ってたけど、本当は優しさもあるんじゃない?あんなに熱く語るあんたはじめてみたわ。いつも無表情だし、成績の話ばかりだから。」
「俺がそんなに冷徹な人間に見えるか?」
「そうよ。」
性格はどうか関係なくここの社員は皆信念や目標があってここで働いている。
2年目を迎えて、11期生は6人入社した。
「ケイジ、今回のターゲットは誰?私は世界にはびこる麻薬組織がターゲットよ。それぞれ違う団体のリーダーよ。」
「俺は世界にはびこるカルト団体の教祖がターゲットだ。」
「え?面白そうじゃん!担当変わってくれない?」
「駄目だ。お前は麻薬組織も裁くことも出来ないほどの能力なのか?」
「そんなのなんてことないわ。麻薬組織のリーダー達なんて私が発案したゲームでビビりまくるわ。ただもっとやりがいある方が良いだけよ。」
「何だかんだ言って引き受けた仕事、やる気満々だろ?」
「やるからには楽しませてもらう。カルト団体の教祖ってめちゃくちゃ更生させるの難しいんじゃん。だからこそやりがい感じるのよ。」
この団体がカルト団体の教祖の更生に手掛けるのはこれがはじめての試みだ。
「この仕事が終われば、10期の誰かとペアを組んでゲームをすることになる。」
共同任務も今後増えていく。
「プレイヤーリスト見せてよ。」
「これだよ。見たらすぐ返して。」
リストをクリスティーナに渡した。
「どれも私の知らない宗教団体ね。」
「ゲーム推進部長が実験的にマイナーなカルト団体を選出したんだ。それと麻薬組織を更生させるのも今回がはじめての試みだ。」
「何でそんなこと知ってるの?」
「ゲーム推進部長から聞いた話だ。麻薬組織のリーダーを更生させるのもそう簡単じゃない。これも実験的な試みだ。俺達の実績次第で更生できない人間も更生させる可能性もある。部長は俺ら10期に結構期待している。」
8期の上司ベンがやって来る。
「お前、社長が呼んでるぞ。多分俺と同じ内容だと思うけどな。」
「分かったよ。」
ベンに言われるとおり移動した。彼は扉をノックする。
「入りなさい。」
彼は私の部屋に入る。
「社長。どういった件でお呼びですか?」
「あなたの活躍は常によく見てるいるわ。10期生は本当に優秀ね。私の時と比べればね。今回はそんなあなたに採用担当も兼任して欲しいの。さっきベンにも同じ話をしたけど。彼はやる気満々よ。あなたはどうする?来月には応募をかけるわ。」
もちろん公に出来る組織ではないのでダークウェブで求人広告を出している。
「兼任させてください。」
ケイジは採用担当も兼任することになった。
「まずメンバーが変わったからには掲載する求人広告もちゃんと変えましょう。」
しばらく話した後、ケイジが私に聞く。
「社長は何故こんな組織を作ったんですか?それに法人登録してないのに、裏NPO法人とつくのも不思議ですし。そう言うやり方をしてまで世界を変えたいんですね。」
「あなたに話すことじゃないわ。話が終わったから仕事に戻りなさい。」
「中々宗教家を捕まえて、誘拐するのも一苦労だな。プレイヤー集めが中々毎回面倒くさいんだよな。」
プレイヤー達の仕事はまた忙しくなる。今年も成績をかけた社員同士の戦いがはじまる。
あれから数ヶ月して採用面接がはじまった。
「次の応募者、日本人だ。日本語で面接するか?」
「いや、ここは英語ですべきだ。」
面接に来るのは19歳、日本人男性だ。
「どうぞ、お入りください。」
ベンとケイジのペアで面接をする。
「面接番号15番、入江太一です。」
「入江…?」
「多分、私のことはご存知ですよね?日本の大企業入江カンパニーの長男の入江太一です。」
何とかつてのプライヤー美奈子の息子だ。
全ての面接が終わった。
「最後に来たやつ、前代未聞だな。大企業のお坊ちゃま、それも長男がこんな闇組織に面接来るなんてな。あいつ入社したら、面白いことになりそうだな。特権階級のお坊ちゃまがここの会社に来るってことはすごいことになりそうだな。」
「彼はかつてのプレイヤーの息子でもあります。権力というものを近い距離で見てる人間。経歴や能力値も文句もない。権力者の扱いをよく知っている自分をほっておくなんてもったいない。こんな重要な人材採用して育成しないと損ですね。」
「何その話?本当なの?」
ベンとケイジの話をクリスティーナは聞いていた。
「私が面接官でも採用ね。だって面白そうじゃん。」
この後、他の応募者と比較しながら数回の面接を経て決めた。大企業や政治家、著名人の子供がこの会社に応募するのはこれがはじめてだ。これからそう言ったバッググラウンドのある人も応募して来るのだろうか?
私は裏NPO法人ダスト更生プロジェクトの女社長。私の会社は設立当初から10年でかなりの変革を遂げた。1期生の私と副社長でこの会社を設立した。最初は小規模だが段々と大きな組織に変わって行った。これからも優秀な部下達を引き入れて、混沌とした世の中をじわじわと変えていく。悪いことをした人間はこの企業が制裁をする。もしあなたが人のことを追い詰めてたり、犯罪を起こして逃げわっていたらこの企業があなたを制裁する。
最後まで読んで頂きありがとうございます!この小説はゲームを主催する側を中心に書いた小説です。気がついた人もいらっしゃるかもしれません。この小説の主人公は誰か分かりましたか?それはゲームを運営する会社の女性社長が主人公です。正確に言うと会社そのものが主人公のようなものです。
結構心が苦しくなるような描写が多いかと思いますが、もしかしたらこの話のように厳しい現実が身近にあるかもしれません。こういうやり方を肯定してるわけではありませんが、一人一人人に優しくなれる世の中になることを願ってます。
また連載することもあると思いますので次回作がはじまったらまた宜しくお願い致します。




