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新感覚脱出ゲーム  作者: ピタピタ子
26/32

悪行公開8

ケイジはパソコンをずっと眺めていた。チェックしないといけないデータがたくさんあった。まずはゲームの進行状況についての報告をした。その後、次のゲームの準備や機械の調整などもした。同期が書いたゲームの報告書もくまなく確認した。送られて来たランキングでは彼は同期のクリスティーナに抜かされていた。

「まだゲームは終わってない。次は挽回する時だ。」 

彼はさほど焦っていなくて冷静だった。他の同期も数人成績が良くなっている。

「会議?直近だな。」

新人で会議に参加できるのは上位の社員だけ。

「面白そうな会議だな。こんな会議欠席なんてしない。」

クリスティーナから電話が来た。

「ちょうどあんたも会議の案内読んだと思ったから電話したの。」

「そんなことで電話したのか。」

「そんなことって何よ。あんたも会議気になるでしょ。今後のこの会社について議論するならたくさんあるわね。もっと裁くべきターゲットを拡大しないといけないの。私達の同期も成績次第で他の部署に異動する可能性も高いし、次はもっと新人を雇わないといけないと思うの。」

「まだ入社1年経たないで新人の話か。人材を増やすのはそこまで賛同ではないが、ターゲットを広げるのは賛成だ。こんなに世界が広いならクズの数も多い。法に触れてようがなかろうがな。法律は犯罪を減らすだけでクズを更生させるものではない。引き続き法に触れない範囲のクズには制裁が必要だな。例えば毒親とかモンスターペアレントとか。世の中の理不尽な決まり事は一部の頭の良い層が頭の悪い奴らを洗脳させて逆らえないようにしてターゲットになれば苦しんで命だって落とす。世界の情勢なんて見たら今だにおかしいことがあちこちではびこってるだろ。」

「これ以上話さなくてもアンタが何を話してるかなんてお見通しね。おかしなルールで傷つく典型的なパターンと言えば宗教、風習、国家体制という所かしら。その理不尽なルールに洗脳されて、いかにもこの世の全てを知ったかのように正義感押しつけて平気で人を傷つけるような人間をターゲットにして徹底的に打ちのめすって興奮するわ。」

「お前は違った意味でヤバい奴だな。そういう更生出来そうにない奴を更生させるのがこの会社の存在意義だな。」

「あんたのサイコパス具合にはかなわないわ。とにかく会社がまだ踏み込んでない所までゲームを拡大するのよ。」

例年尖ったタイプの新人は一人いたりする場合もあるが今年は二人も鋭いタイプがいるとは思ってもいなかった。ただ勉強が出来るだけの新人ではない、物事や人をよく分析してるとも言える所だ。


「木村さん、これ食べて。少しセラフを使って買ったの。」

プレイヤーの何人かは木村知世を慕うようになった。一番年上でかつプレイヤーが困った時に色んな解決策を導き出したから。

「恵梨香がいれば次のゲームも余裕だな。」

船崎穂乃華は沢恵梨香を高く評価した。彼女は最年少。しかしながら知世と同様かなり頭の回転が速い。

今日この二人の悪事が暴かれる。

「お待ちかねのビデオ視聴の時間だ。今日は豪華な二本立てだ。もうどのプレイヤーが主役か分かってるよな?」

ケイジがモニターに顔を出した。ケイジの言葉を聞いて全員、木村知世と沢恵梨香を見た。

「ビデオ視聴を開始する。」


画面には木村知世と表示された。木村知世は息子一人と娘一人がいて、スーパーでパートの仕事をしてる主婦だ。旦那の稼ぎだけでは家計を支えられないのでパートに出ている。最初からこんなに威張っていたわけではないが、年数を重ねるに連れて彼女の威張りは増していった。

「吉永さん、サンドイッチの袋の閉じ方違うんだけど。」

「綺麗に見せれれば良いんじゃないですか?それとも他に理由があるんですか?」

「あんたね、袋の閉じ方一つでお客様が商品を買わなくなるの。うちのお店だけ違うやり方してたらブランド全体のイメージが崩れるの。あなた一人のせいで会社に損失を与えるなんて絶対駄目。これ2回も言わなきゃいけないわけ。」

新人の吉永さんは自分の意見をよく持つものなのでターゲットにされた。しかし彼女は別にお店を駄目にするために働いてるわけではない。

「吉永さん、もう入って1ヶ月経つのに、独自のやり方つらぬいて社会人としての常識がなってないのよ。」

知世の仕事への情熱は人を傷つけることに傾いた。彼女に目をつられた新人達は運が良ければ生き残れるが、だいたいはやめてしまうことが多い。本人のいる所やいない所でも悪口大会のオンパレードだ。

「吉永さん、謝る時はお辞儀の角度が浅すぎる。それだと誠意が伝わらないけど。あと全てのクレームもちゃんと謝罪するのよ。」

「そんなに謝ってことが解決すると思ってるんですか?誰かを傷つけるようなことでしたら反省は必要です。しかしことを解決するほうが大事です。謝れば何でもしてもらえると思う客をこれ以上増やさないためです。謝るのは完全な解決策ではないです。相手が何を求めているか考えたほうが良いです。出来ないことはハッキリと出来ないことを伝えるのだって大切です。あなたのやり方は全て正しいわけじゃないんです。」

「私の言ってる意味分かってるの?あなたのやり方にどれくらいの人が迷惑かかってるのか分かってるわけ?それと解決策は社員とも協力して考えるのあなた一人で解決しようとすれば2次クレームにつながりかねないわね。」

彼女はハッキリと言う性格で、今までの新人より酷い扱いを受けた。

「吉永さん、早くそこの棚の品出し終わらせて。ボジョレーヌーボーだって解禁してるだから、ワインの品出しもやってよ!」

「吉永さん、店内ちゃんと掃除してるの?床が汚いじゃないの!」 

「吉永さん、入店挨拶する時くらいお客様の顔を見て挨拶出来ないの?本当に今回の新人は口答えばかりするし使えないわ。」

「吉永さん、ホットドリンク補充してよ!品出ししないと売上出せないのよ。そこの所分かってるの?」

タイムスケジュールに組み込まれていない仕事や本来知世やその取り巻き達がやるべき仕事を全て押しつけられた。取り巻き数人も知世のようによく嫌味を言う。

「ねえ、知ってる?吉永さんってシングルなのよ。」

「子供がいる年齢なのにあんなトゲトゲしてるとか子供が可哀想だし、大きい子供が子供を育てるような感覚ね。」

「離婚理由も旦那との営みが楽しくないからよ。」

「何それ?そんなことで?」

「私知ってるだけど、吉永さんあの年齢でわない男の子とデートしてるんだって。」

シングルマザーということ以外は全てデマだ。

「吉永さんって仕事終わったらいつも何してるわけ?」

「すぐ疲れてベットで横たわってます。少し休んだら子供達に夕飯を作るんです。こういう仕事してると疲れますから。」

「シャワーとか浴びないわけ?」

「シャワーは寝る前に浴びてます。」

知世達が珍しく普通の質問をする。

「ねえ、聞いた?」

彼女達はすぐに休憩室で噂話をした。

「吉永さんって、シャワー浴びずにベッドに転がるんだって。汚くない?」

「不潔そのものよね。」

「マジでありえない。」

「本当に不潔だわ。そう言う生活習慣が普段の勤務態度になって出てきてるのよ。あとこういう仕事疲れるって私達を馬鹿にする目で言ったよね。」

「知らないですか?この前、私に木村さんの悪口吹き込んだんですよ。吉永さんって自称サバサバ系なんですよ。」

知世は仕事が良く出来るが、一緒に働きたいタイプではない。

「えっ?さっき棚整えたのに崩されてる。」

彼女の悪行は噂話だけではなく、仕事をわざと増やして嫌がわせもしてる。

「店長、木村さん、立川さん、雨沢さん、与田さん達の嫌がらせが酷すぎます。今日だって、せっかく整えた棚をわざと荒らして仕事増やしたんですよ。他にもやんなくても良い仕事をふってきたり、今すぐじゃなくても良い仕事ばかり。本当にどうにかしてください。」

社員に相談しても、確認すると口だけで実際は何もしてくれない。

「ちょっと、店長と話があるから事務所の方に来てくれる?」

吉永さんは知世と立川に呼び出された。

「私が嫌がらせをしてるって店長に言われて来たけど、私は決して嫌がらせをしてるわけじゃないの。」

「店長、監視カメラ見てください。証拠はやまほどありますから。」

「カメラの一部だけで全てを判断するわけ?それって監視じゃない?怖いんですけど。」

「あなたは分からないと思うけど、あなたを成長させるために色んな仕事任せてるの。それを嫌がらせだってとらえるのはあなたに問題あるんじゃないかしら?もう入って2ヶ月半なのよ。」

「いや嫌がらせじゃないですか。私の仕事の妨害までするのが私のため?ふざけるのも良い加減にしてください。」

「それもあなたを試してるの。あなたがどれだけトラブルに対応出来るか試したのよ。それをそんなふうに言われるの悲しいわ。そんな人だと思ってなかった。」

結局、上司に相談などしても何も解決なんてしなかった。それからも嫌がらせはエスカレートした。

「あのさ、レジ混んでるならすぐ入れないわけ?本当にこれで3ヶ月目なのかしら?」

知世が何故こんなにも辞めさせられないのか。それは多くの仕事を早くこなすから。それなりに仕事が出来る為、辞めさせたらお店の運営や人手の面でも打撃を受けるので中々辞めさせられなかった。

「店長、体調の関係でこの仕事続けられません。」

吉永さんは日々続く嫌がらせに疲弊して行った。ついにストレスによって体調も壊してしまい、お金のない彼女は知世を訴えることも出来なかった。精神的に余裕がなくなりそれすら考えられなくなったのだろう。嫌いな相手の為に訴訟沙汰までお越して嫌いな相手のことを考えるのに時間をかけるのはさらに疲弊すると思い何もしなかった。それからも彼女は入って来る新人を指導と言う響きの良い言葉を使って嫌がらせをした。

今回のこのゲームではそこまで酷い様子を見せなかった。何故か?いずれ終わるのが目に見えてるコミュニティで威張っても何にも彼女にはメリットを感じないから。長年働いてる場所の方が自分の長年勤めた肩書きをアピール出来るからだ。ここの会場ではそんな肩書きは通用しなかった。だからこそゲームを早く終わらして、いつもの日常に戻ることばかりを考えたのだ。


「これでビデオ視聴を終わる。次のビデオは1時間後だ。」

ケイジはそう言うと画面から消えた。

「あんたここでは喧嘩を止めたりとか良い人な感じだったわね。本当はこんなにヤバいことやってたんだ。」

入江美奈子が知世に近づいた。

「ねえ、そうなったのも何か理由があるんじゃないの?」

山本佐江が心配そうに言った。

「理由があるなら木村さんの悪口すべて許すよね。」

佐江は知世が最初から悪人だったわけではないと考えた。仕事に対する情熱が変な方向に傾いてしまったんだ。知世を称える人しかいない環境で彼女はきっと勘違いしたに違いない。

「木村さん、あなた家庭に問題あるんじゃないの?」

「そんなこと話すわけないでしょ。」

彼女は家庭では誰も彼女を感謝したりしなかった。旦那からは色んなことにおいてやってもらって当たり前な態度を取られたし、義父や義母に嫌がさらせを受けても旦那は全て知世を悪者扱いした。思春期の息子や娘も知世のことをババアなど言ってののしったり、父親の言う事を二人とも信じてかなり見下していた。旦那や子供達とは毎日喧嘩ばかりだった。その彼女からしたら何故自分ばかりだと考えていた。

「あんたの言いたいことは分かったよ。」

雪田マリ、佐江、船崎穂乃華は話を聞いた。

「自分と同じようにあんたらも苦しめってことね。相当ひねくれてるじゃん。」

マリは率直に言った。

「独身のあんたに主婦の大変さなんて分からないでしょ?山本さんだって分からないでしょ?気楽にしてる独身とは違うの。もしくは婚期を逃した僻み?」

「今なんて言った?」

「私は一度言ったことを繰り返さないの。」

「独身だって老後大変だし、孤独死と隣り合わせなの。そんな中私達はたくましく生きてるの。旦那や子供がいなければ生きてけない主婦とは違うの。そんな嫌でも離婚してないのは一人で生きていけないからでしょ。」

珍しく知世は感情的になって佐江とマリをビンタした。穂乃華は面倒臭いと思い離れた。すると3人に空き缶がぶつかる。

「次のビデオ視聴をはじめる。まだ準備出来て無い罪としてそこに落ちてる空き缶のお酒を飲め。」

ケイジがビデオを視聴を始めようとしていたがまだ喧嘩していた。

「さっきから聞けば、お互いの苦労をぶつけ合って何になるんだ。既婚者で子供の育児が大変だから苦労しろ?独身で全て自分一人でやんなきゃいけないから既婚者はパートナーに甘えてる?それってお前らの選択肢だろ。その選択肢を選んだからって自分が偉くなるわけじゃないし、誰かを傷つけて良い特権にはならない。そんな選択肢の違いで人を傷つけるほどお前らは哀れなのか?自分の機嫌も1人前に直せないのか?個人的な感情で人の人生をめちゃくちゃにしたお前らに次はもっと恐ろしいゲームを用意したから楽しみにしてろ。自分達の行いに対して後悔するようなゲームだ。」

ケイジはそう言うと次のビデオを見せた。

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