悪行公開7
プレイヤー達はカップラーメンを食べていた。
「そう言えば、あんた顔変わったね。」
「どういう意味よ。」
「化粧しないとそんな顔だってことよ。」
佐伯舞華は入江美奈子を少しけなした。
「ブスだと言いたいってこと?言っておくけど、ブランド物のバッグに全くアクセサリーをしてないかのように綺麗なの。」
「その自信どこからわいてくることか。それもあんたの才能ね。あんたの服を作る技術みたいにね。」
けなしつつも、褒めるところを褒めた。
「あんたもそんな器量で性格もそんなに良くないのによくあんなにエリートでイケメンのイギリス人の旦那手に入れたれたわね。あんた男を捕まえる才能あるじゃん。」
周りは二人の様子を見ていた。
「何やってんだあいつら?」
「またけなしあいよ。まあ感情的になったり、暴力的になって会場の雰囲気悪くするよりかはましよ。あんたも少しは学習したようね。すぐ手が出たら自分がいかに不利な状況になるか。」
木村知世は有吉加世に言った。
「それより、そろそろあんたの過去が明かされる時じゃねーの?普段はまとめ役みたいなことしてるけど、裏でどんな悪いことしてるか見てやりたいな。」
「あんたがそんなに馬鹿にしたり私のこと悪く言える立場なのかしら?あまり調子に乗ると、さっきの雪田マリみたいになるかもね。あんたは雪田マリの地位が低くなるとすぐに見下したよね?それでもあいつは復讐しなかった。あんたよりかは自分のやったことにこりたのよ。こりてない奴は案外まだたくさんいるかもね。」
プレイヤー同士、だいぶ心を開いたがまだ被害者への罪に対する反省が見られない。今は良くても、解放されたらすぐにもとに戻る可能性もある。この企業は人を追い詰めた人間を更生させることが目的。ケイジはゲーム後のことも予測しながらゲームを進行しなければならない。
一方クリスティーナがゲームを進行する会場でもプレイヤー達が協力的になった。今回クリスティーナはケイジのように精神攻撃などはあまりしなかったが、過酷な試練を与えまくった。あまりにも成長が見られないと声を荒げて言い聞かせた。
ゲームマスターが画面に登場した。
「これからビデオ視聴をはじめる。今回のヒロインはコイツだ。」
スクリーンには佐伯舞華と表示された。
佐伯舞華は小さい頃、親が毎日喧嘩していて、全然両親はかまってくれなかった。父親は他の女性と再婚しては喧嘩ばかりの日常。男性は仕事ばかりで、相手の女性は専業主婦を望んでいた。しかしお互いが相手に求めすぎるとそこで争いが起きる。さらに最悪なのがお互いがお互いの性別を見下すことだ。特に父親は女性を凄い下に見るような人だった。結局父親が再婚してもかまってくれない現実は変わらなかった。その反動でかなりの甘えん坊で少し強く言われただけで凄い反抗するような子に育った。わがまますぎる自己中な態度をとっては周りからとても嫌われた。とはいってもあまりすきは無いので、イジメられなかった。誰かの取り巻きになってクラスの弱そうな女子の陰口などをたくさん言っていた。他にもチヤホヤされる女子がいるとありもしない噂を流してカップルを破滅に追い込んだ。彼女はとにかく注目されたりしないと気がすまない、特別扱いされないと気がすまない人間になった。
ある日、大学時代していたアルバイト先によく来ていたイギリス人男性と仲良くなり、そのまま付き合うことになった。相手はまさに彼女にとっては夢が詰まったような王子様で心が広く彼女のわがままを何でもかんでも受け入れた。美味しい食事に連れてってあげたり、海外にも連れてってあげたり、彼女が望んでたレディーファーストをしてくれたりととても優しい男性だった。だからこそ彼女のわがままには拍車がかかった。
「あら、隣の美波さんじゃない。よく見たら、お腹が大きい。もしかしておめでたですか?」
彼女は土足でずかずかと踏み込む。
「そうですね。」
「私もよ。私の旦那イギリス人だから、ハーフが産まれてくるんだけど、絶対可愛いに違いないわ。将来はモデルとかやってもらわないと、小さい時から習い事たくさん通わせないと。そう言えば、旦那さん、日本人でしょ?私、外国人としか付き合ったことないから日本人の旦那持つ奥さんの苦悩分からないの。日本人の旦那って大変なんじゃないの?頑固でレディーファーストも出来ないし。」
舞華は奇跡的に理想な旦那を捕まえられただけだ。旦那はかなりエリートだが女を見る目がなかった。
「人生生きてれば誰でも大変なことあると思います。でもうちの旦那となら困難乗りこられると思います。」
「それなら私の子供ハーフで絶対可愛いと思うから嫉妬されないか心配だわ。」
「佐伯さん、用事あるので失礼します。」
彼女は色んな人にあってはベラベラと国際結婚マウントをとった。
舞華とイギリス人の旦那の間には二人の娘が産まれた。
「美波さん、幼稚園どこ通わせてるの?早川さんには無縁だと思うけど、私の娘はインターナショナルスクールよ。下の娘もそこに通わせるつもりなの。」
「私は共働きで、普通に保育園に預けてます。」
「日本人の旦那でお金が無いのね。」
「え?今なんて?」
「あら、ごめんなさい。私、日本人旦那を持つ奥さんの苦労知らないからつい本音が出てしまったわ。でもわざとじゃないのよ。あなたのこと心配してるんだから。」
彼女の言ってることは中身がない。世の中、クソみたいな人間が性格の良い人と付き合ってることは普通に多い。
「は?ここのお店亜麻仁入りのシリアルもないわけ?海外行けばこんなのあるんだけど。」
「申し訳ありません、商品入れ替えの為来週新しいものが入荷するんです。」
「最近国際結婚増えてるの分かってる?一時的とはいえ、こんなのも置いてないなんて時代遅れね。」
彼女は旦那と結婚してから健康志向になった。
「あれ、美波さん、買い物の帰り?」
「はい。ちょうどセールとかやってたのでついたくさん買いました。」
「そうなのね。私はフランスのオーガニックスーパーとかに行ってるの。健康志向だから普通のスーパーの何が入ってるか分からないし、怖いわ。日本のお菓子とかって海外からは添加物がてんこ盛りで子供に食べさせるものじゃないって言われてるの。もしかして添加物てんこ盛りのお菓子食べさせてるのかしら?」
各国、食品添加物の課題はある。有機認証マークの知らない人は外国からのお菓子というだけで危険と判断する人はいる。
子供が小学生になると友達と遊ぶ機会が多くなった。
「ママ、芽衣子ちゃんのうちに行ってくる。」
「駄目!」
「何で?」
「あの子の家、体に良くないお菓子ばかり食べてるのよ。絶対に駄目よ。そんなに遊びたいならうちに連れて来なさい。」
娘の沙羅と仁奈は決まった友達の家しか行くことを許されなかった。しかし親の目を盗んで添加物が入ってると言われるお菓子を食べたりすることもあった。
「CBDグミ入れてくれないのかしら?マカパウダーやヘンププロテインがあるなら置いて良いよね?今すぐ調べてちょうだい。」
彼女は店員を顎で使うことは多かった。
「もしもし、今休憩なの?今日娘がピアノ教室でコンクールに出ることになったの。」
彼女は店員を調べてくれるいるのにかまわず大声で電話をした。
「お待たせしました。」
店員が声をかけても無視をした。いつもの長電話で娘は退屈そうだった。電話で誰かと話しては自慢話ばかりだった。自慢なら人間誰でもするもんだが、相手を下げて自分の価値を上げるほど惨めなものはない。
夫にたくさん優しくされて彼女はすごいわがままになり、良い年をして店員に横暴な態度で振る舞うことが多かった。
「お客様、袋はいりますか?」
彼女は電話しながら、ジェスチャーした。
「ちょっと何で袋つけないのかしら?」
小声でボソッと文句を言った。これが毎回続くもんだから、店員からは陰で嫌われていた。それと彼女のオーガニックは薄っぺらいものだ。環境問題に関しての意識は恐ろしいほど低い。住んでる地球や生命を守ることが出来なければ自分の健康なんて守ることなんて出来ない。
娘が大きくなると、上の娘はイギリス人よりの顔で、下の娘は日本人よりの顔になった。
「沙羅は凄いわ。いつも成績も良いし、部活でも部長に決まったなんて。それに比べて仁奈、あんたもう少しお姉ちゃんを見習ったらどうなの?」
姉妹差別が激しくなった。実際は成績はさほど姉妹で変わらなかった。仁奈はアジアよりの顔だから差別された。どこか自分や父親に似てるのが似てるのが気に食わなかった。
「あんた何でこんな似てないのかしら?姉妹なのに不思議だわ。もっとヨーロッパらしい顔になってれば良かったのにね。」
姉妹差別はいくら仁奈が良い成績をとっても解消されなかった。
「ねえ、算数で100点取ったの!」
「そんなんで満足してるの?お姉ちゃんはもっと凄いのよ。バレー部でもエースだしスポーツ推薦を決まったのよ。その器量ならもっとお姉ちゃん以上に頑張ったらどうなの?」
仁奈が学校でイジメられても母親である舞華は無関心だったので、だんだん仁奈は周囲の大人達を信用できなくなった。そんな中彼女は彼氏が出来た。
「爽太君、大好き。今度爽太君の所行きたい。」
「良いよ。うちの母さんには仁奈のこと話してるから。」
「本当?嬉しい!」
「仁奈は?」
「誰にも言わないで。私、お父さんがイギリス人で、お母さんはそのことをよく自慢しては日本人を見下す人なの。私の顔が日本人らしくなると凄い見下して来て最悪なの。」
「それでも君の性格は最高だよ。家庭のこととかイジメられこととか俺に話してくれて嬉しかった。今まで辛かったよな。何かあったらいつでも話してくれよ。」
舞華は日本人の父親の無責任な離婚やネグレクトや女性を見下す行為を経験して、世の中の日本の男性と父親を重ねるようになった。もちろん娘のボーイフレンドが日本人だと分かると勝手に携帯を取り上げては履歴を全て削除した。
「ちょっと、何でこんな帰りが遅いわけ?説明して!」
「姉ちゃんだって帰り遅いじゃん。」
「舞華、娘をひたすら責めちゃ駄目だ。ちゃんと話を聞かないと。」
舞華を甘やかして旦那も、娘を前にすると指摘するようになった。
「これは私と仁奈の問題なのよ。あなたは仕事で大変でしょ。」
「仕事より家族が一番だからこれは僕の問題でもある。まず双方落ち着いて話して。」
「だからあの頑固な娘が話しても無駄よ。本当に可愛くない子に育ったものね。」
これをきっかけに夫婦仲も悪くなった。
一方長女の沙羅は母と一緒に仁奈を馬鹿にした。
「あんたもっとお母さんの言う事聞いたら?ガキなの?」
「たくさん贔屓されてるお姉ちゃんには分からないよね。お姉ちゃんなんていなくなれば良いのに。」
「そう言うあんたこそいなくなれば良いのに。あんたのことを妹だと紹介しなきゃいけない姉の気持ちも分からないの?似てない似てないって周囲からいつも言われるわけ。本当に何であんたこんなに似てないわけ?」
「そんなに私のことが嫌いなら私が何やっても勝手よね。」
仁奈はどんどんグレるようになった。ストレス解消に好きでもない男のもとに行くようになった。それで自分の存在を認められようと必死になった。そして自分がどうなろうとどうでも良い存在なんだと考えるようになった。
「また夜遅いわね。また男と遊んでるのかしら?この尻軽女。」
舞華は娘の仁奈に対して嫌味ばかり言った。
「何その格好?淫乱な娘を持つと大変だわ。」
「うるさい!このクソババア!それが親の言う事?私とお姉ちゃんを自分が注目されために産んだわけ?」
「あばずれね。親に向かって何その態度?被害妄想も良い加減にして。あんたがこの家庭の雰囲気を壊してるの。」
仁奈の高校生活は悲惨なものだ。彼女はかつての爽太のような存在が出て来ないか願うばかりだった。
「君にはガッカリだよ。これ以上娘を悪く言うなら離婚する。」
「お願い、それだけはやめて。沙羅は私のほこりなの。」
「仁奈だって大事な娘だ。それが娘にかける言葉だったのか?」
家庭は完全に崩壊していた。表向きは金持ちの良い家庭だが、お互いがいがみ合う最悪の家になった。旦那だけは性格がひねくれてはいなかった。ここのゲーム会場に集められる直前、離婚を言い渡された。
ビデオ視聴が終わると何人かのプレイヤー達は舞華を白い目で見た。しかし美奈子は変わらず声をかけた。
「あんたの自慢も人のこと言えないわね。離婚を言い渡されたのに、自慢してたわけでしょ?大した心の持ち主ね。」
「うるさい。あんたに何が分かるわけ?」
「分からないけど、あんたこそ娘のこと全然気にかけてないじゃない。自分は過去にネグレクトや見下されたこと気にしてるのに、娘に同じことしてるんでしょ?あんたアホなの?自分と同じように娘が育って欲しいわけ?妹馬鹿にしても怒られない娘と常に見下されてる下の娘のことちゃんと見てないじゃん。親ならちゃんと人を傷つける行為を叱ったり、話を聞いたりとかしないわけ?娘が好きでもない男と一緒になってても心配とかしなかったわけ?どこまで馬鹿なの。結局あんたは父親と一緒なの。」
「あんただって人を傷つける行為たくさんしてきたじゃないの!それってあんたが言うセリフなの?」
「資格なんてなくてもあんたにかつをいれる人が必要なのよ。善人だろうと悪人だろうと。今ここで言えるのは私しかいないの。今はゲームマスターは休憩中なの。あんた家庭崩壊しても良いの?こんな良い旦那中々いないのよ。あんたは男運はだいぶ恵まれてるのよ。」
「もう遅い。もう遅いんだよ!」
彼女は泣き叫んだ。
「うるさいな。会場中に響いてるぞ。」
ケイジが画面から出た。
「ゲームマスター。」
「佐伯舞華、お前いつまで甘えたことを言ってるんだ?自分の生まれた国の男を見下すほど哀れなものはないな。お前は見下してる相手以上に落ちぶれてるんだよ。」
「私が落ちぶれてる?離婚しても、私がハイスペックな旦那と付き合ってた事実は消えないのよ。あんた達、悔しいんじゃないの?」
「お前の言う外国人男性って範囲が広すぎるんだよ。何で大嫌いな日本人の父と理想が詰まったイギリス人の夫を見ただけで世界の全てを語るんだ?海外って行っても色んな国や地域があるし、階級や職業だって違う。自分の住む国籍同士の結婚だって地域や階級の違いがある。家が一つ違うだけで、時計の置く位置だって違うだろ?自分が見てきた断片的な経験で全てを語るな。本当に救いようのない人間なんだな。」
舞華は何も言い返せなくなった。今更ながら自分の行為を自覚したから。
「お前らも全員同レベルの人間だ。お前らは切り取られた一部の情報や自分がしてきた体験で物事を全て知ったかのような言動を取る生ゴミ以下の馬鹿だ。世間はそんな大人が目立つようになったな。これ以上視野を広げられないならそのまま落ちぶれて無様に暮せば良い。本当に誰かに信頼されたいならゲームが終わるまで変わるんだな。」
画面が消えた。ケイジは部屋で家族の写真を見た。何も言わずにずっと見つめ続けた。
会場中が無言になった。




