ハッピーミュージカル
船崎穂乃華と雪田マリは他のプレイヤーと違い一人で考え事をしていた。
「船崎さん。」
「何ですか?」
マリが穂乃華に話しかける。
「あの時はごめん。権力を良いように使ってあんたをあんなに振り回して。」
「私はあんたに謝って欲しいなんて一言も言ってない!自分の保身のつもり?少しでも謝れば自分の行いがなかった事になると思ってるんでしょ!」
「そうよ。私は今まで自分のやったことを何も起きてなかったかのようにしていた人間よ。今のも私の保身の為に過ぎない。私の中であんたにしたことが無くならないことくらい分かってる。」
「分かっててそんなことしたの?性格悪い女ね。もしかしてゲームマスターにボロクソに言われた時笑ってたんでしょ?」
「笑ってはいない。ただ私達には溝が出来すぎたから再構築しないといけない。このまま対立してたらゲームはクリア出来ない。それにお互い復讐し合って生活することになる。そうなればゲームマスターが私達に何をしでかすか分からない。そもそもこのゲーム私達をランダムで選んでるわけではないのが分かったよ。一人一人の素行調査が完璧すぎる。あのビデオは隠してたことや隠蔽していたことが全て暴露されたようなもんだった。ゲームマスターは私達の情報を握ってるから、ゲームが終わるまでに私達は団結して変わらないといけない。誰か一人でもまとまらなければゲームはどんどん長引く。」
「それってあんたが少しでも楽になりたい口実でしょ?本当に溝をなくしたいのならゲームマスターをぶっ飛ばせば?」
「あんた本当に分かってない。そのやり方で勝てるならとっくにゲーム終わってる。私のことをいくらでも言おうが良いけど、ゲーム中とゲーム後私達がどう変わるのかあいつはきっと見てる。」
マリ以外にもこのゲームの意図や本当の恐ろしさに気がついたものが数人いる。最年長の木村知世、頭の回転の早い最年少の沢恵梨香はきっと気がついている。
「今すぐじゃなくても良い。私のやったことを恨もうが好きにすれば良い。これだけは心の片隅にしまって。たくさんの状況を握っているゲームマスターにまた目をつけられたらここに戻ることになるわ。」
正確に言うと、情報を握ってるのは情報部。あの部署に一度情報を握られるとゲームが終わっても調べ続ける。
穂乃華は自分の過去にやった行いをマリの後ろ姿を見ながら考えた。彼女は自分も結局は恨んでいるマリと同レベルな行いをしてきたと考えた。
「クズども!新しいエサの味はどうだ?気に入ったか?」
いつものように画面に登場する。
「カップラーメンよりセラフで買ったプリンの方がずっと美味しいよ。」
「今度のゲームは何?」
入江美奈子がゲームマスターに聞いた。
「今度のゲームは!!」
会場中に大音量が流れた。
「ハッピーミュージカルだ!!」
プレイヤー達は耳をおさえた。
「ちょっと待ってこれじゃあうるさすぎて説明が聞き取れないわ。耳が壊れるじゃないの!」
「それなら聞こえやすいように説明する。」
音量は普通の音量に戻った。
「今度のゲームはハッピーミュージカルだ。」
また不思議なゲームがはじまる。
「ルールは簡単。曲を作曲して、それを審査員のロボットの前で踊るだけ。」
説明にはエコーがかかった。
「ちょっと何エコーかけてるの!それに説明が抽象的すぎる!」
「そうよもっと分かりやすく説明してよ!」
「肝心なルールがある。作曲者と奏者が3人、照明が2人、ダンサーが4人に別れてもらう。決まったら、速やかに報告すること。ゲーム開始だ!」
また創作系のゲームがはじまる。このゲームも他のゲームと比べても団結しないと意味がないゲームだ。
「まず、作曲チームは私に任せて。」
時任千華江が真っ先に手をあげた。作曲や演奏に関しては彼女の上に出るものはいない。
「それから、演奏チームは山本さんと木村さんが良いわ。」
彼女は早速仕切る。
「ダンサーは私が向いてるわ。」
恵梨香がダンサーを希望した。
「私もダンサーする。」
「私も。」
「私も。」
他に佐伯舞香と入江美奈子と有吉加世がダンサーを希望した。
「そしたら残った雪田さんと船崎さんで照明係ね。」
「え?何で私が雪田さんと照明なの?最悪なんですけど。」
「それならダンサーやる?」
「もう良いよ。」
演奏や踊りの才能がない穂乃華はむしろ得意な機材関連以外の仕事はしたくなかった。
「ゲームマスター。」
知世が呼ぶと、すぐに画面はついた。
「役割分担は決まったか?」
「決まったわ。まず作曲チームが私と時任千華江と山本佐江。照明係が雪田マリと船崎穂乃華。ダンサーが入江美奈子、沢恵梨香、佐伯舞香、有吉加世よ。」
「了解だ!次に曲のテーマをルーレットで決めてもらう。」
「私が行くわ。」
「待てまだ説明は終わってない。ルーレットは1回のみ、テーマは20個ある。」
テーマの一覧をプレイヤー達は見た。
「入江さんより私が行ったほうが確実よ。」
知世はルーレットを回したがった。
「そう言うのなら私に任せて。」
穂乃華もルーレットを回したがった。
「ルーレット引くのは私よ!もしあんたが引いて最悪なの引いたら許さないわ。」
「何様よ。」
美奈子と穂乃華は喧嘩になった。
「二人が喧嘩するようなら私に決定ね。」
「ちょっと何勝手なことしてるの!?」
「木村知世で決定だな。前に出てルーレットを回せ。」
ゲームマスターに言われてルーレットを回そうとした。
「ちょっと何してるのよ。」
美奈子と穂乃華がとめに入った。
「ルーレットを回すプレイヤーに対しての不正行為は禁止だ。」
二人とも電気でしびれた。
「それを早く言って。」
ルーレットが回る。最初はすごい速いスピードで、段々とスピードが落ちる。そしてルーレットは止まった。
「今日のテーマは掃除だ!ダンサーには掃除用具を持って踊ってもらう。」
今回も中々の難題を出してきた。
「嘘でしょ?」
「掃除、燃えてきたわ!」
「はぁぁ?」
全プレイヤー、情熱的になる千華江にビックリした。
「いやいや可笑しいでしょ!そんなので曲作るなんて。」
「今まで挑戦したことないような音楽じゃん!」
「それやりたいのあんただけだよ!それと木村さんどういうつもり!」
ダンサーを希望したプレイヤー達に知世は囲まれる。
「私はルーレットを引いただけよ。それにダンサーじゃないから関係ないわ。それにダンサーやりたいって言ったの入江さん達でしょ。」
「本当、最悪!」
4人は怒ってゲームマスターを呼んだ。
「ゲームマスター!さっき決めた役割分担変更して!」
「却下。このゲームのルールで一度決めた役割は最後までこなして貰う。」
「どうして!そうだ交渉すれば良いんでしょ!」
「交渉?」
「そうよ。あんた私の荷物募集したと思うけど、そこにある小切手をあげる。全てのゲームが終ったら、約束通り使って。お金は好きな金額で良いわ。そうだ100万でどうかしら?」
「呆れてものが言えんな。」
ゲームマスターは要求を飲まなかった。
「それが子供3人いてよくそんな取り引き出来るな。俺があんたの息子なら心底軽蔑して明日には家出るだろうな。」
「これくらい大したお金じゃない。」
「お前にどんなに説明しても無駄か。他の奴らもプレイヤーとゲームマスターの間での金銭の取り引きはここの通貨セラフのみで交渉する。どちらにせよこのゲームは他のゲームみたいにどんな交渉も無効だ。残念だったな、入江美奈子。」
美奈子は掃除用具を投げ飛ばした。
「それではダンサー以外は違う部屋に移動してもらう。作曲チームは音楽室、照明係は隣の機材部屋に移動してもらう。」
言われるとおりにダンサー以外は指定場所に移動した。
「まず私達が作曲しないとダンサー達は振り付けが出来ないわ。」
「曲の系統はどうする?」
「オペラ感満載な曲がいいわ。」
「あんた上手い音楽とか完璧の音楽しか奏でられないのね。あんたの作曲と楽器や歌の才能は認めるけど。」
千華江の意見は知世により却下された。知世は高校までピアノを習っていた。
「時任さん、あんたは音楽教師でクラシックや合唱曲の選曲しかしてこなかったけど、今回の審査員は音楽に精通してないゲームマスターよ。」
確かにケイジは音楽は全然詳しくない。同期達にオススメの曲を紹介されても、中々聞こうとしない。
「オペラはダンサーの美味しいところを全て奪うわ。ダンスも目立たせないと。」
「何でゲームマスターが音楽に疎いと言い切れるの?」
佐江が知世に聞いた。
「女の勘よ。とにかく曲は明るいミュージカルにするわよ。聞いてもらえない音楽は意味がないの。」
「分かったよ。作れば良いんでょ。」
千華江は着々と曲を作り上げた。約5日ほどが経った。
「曲は出来てもこの人数じゃ曲が作れないわ。」
作曲チームは全員悩んだ。
「曲が出来上がったようだな。」
音楽室の画面がついて、画面上にケイジが現れた。
「編成に困ってるなら奏者を増やせば良い。」
「そんなの無理よ!ここの3人以外は音楽は全然駄目なのよ!」
「だからこそクイズに答えるたびに奏者ロボットを配給する。ただし正解すればの話だ。」
プレイヤー達はこの手の感じはいつでもクイズに挑戦できることを聞かなくても理解した。
「早速クイズを出しなさい。」
「了解だ。さて、今から流れる曲を当てろ。」
早速、音楽が流れた。
「ゲームマスター。」
「時任千華江、答えろ。」
「バレエ音楽ダフニスとクロエよ。」
「正解だ。」
数秒で答えた千華江を見て、他の二人は驚いた。
「次の曲の作曲者を答えろ!」
また音楽が流れる。
「分かったわ。」
千華江は早くも回答しようとした。
「答えはハチャトリアンよ。」
「正解!」
次の曲が流れた。
「これはクイーンの曲よ。私、こう見えてファンだから。イントロ聞いただけでも余裕だわ。」
3人とも順調にクイズに答えた。
その頃、ダンサーは手持ち無沙汰にしていた。
「ねえ、作曲してる奴ら遅くない?もうあれから5日経ってるんだけど。」
「自分達だけ手を抜いてんのよ。」
「それ言えてる。」
「早く曲つくり終えて欲しいんだけど。」
ゲームを早く終わらせたい美奈子と舞華の不満はつのった。恵梨香は正直どうでも良いような雰囲気だった。
照明チームも退屈そうだった。
「何でよりによってあんたと一緒にこんな裏方作業しなきゃならんのか理解出来ない。」
穂乃華はマリと同じチームなのが嫌だった。彼女はとにかく不平不満ばかりマリに話した。
「私も好きであんたと同じ係になったわけじゃないから。あれは最後の余り物が私達だけで。」
「それにしても暇すぎるわ。作曲チーム何でこんな遅いのかしら。」
穂乃華も別室で他のプレイヤーの様子が分からない状態だから不満がつのった。
「ちょっと、いつまで曲作ってんの!もう5日が過ぎてるのよ。」
美奈子と穂乃華が作曲チームのもとに来た。
「曲ならもう完成してる。あとは奏者のロボットを集めるためにクイズに答えてる。」
「早く決めて貰わないと困る!」
「誰が困るの。」
「プレイヤー全員よ。とにかく私達はこのゲーム早く終わらせたいの。曲作るの遅すぎよ。」
「音楽をなめてるのかしら?これから合わせて、曲の手直しもしなきゃいけないの。出来もしないあんたが文句を言わないで。」
「だからあんた達が早く決めてくれないと困るの。ダンスの振り付けが決まらないのよ。」
またスクリーンがついた。
「無許可のプレイヤーの部屋移動は禁止だ。」
ケイジが新しいルールを発動した。
「そんなの聞いてないわ。」
「各部屋に注意書きが書いてあるはずだ。確認しなかったようだな。」
音楽室の壁をよく見ると、ハッピーミュージカルプレイ中のプレイヤーの移動は禁止だと書いてあった。
「罰として、辛すぎる料理を食べてもらう。食べ終わったら報告しろ。ただし作曲チームはルールを全員守った為、罰を受けなくて良い。。」
「そんな。」
地味に辛い罰だった。美奈子や穂乃華達は約束通り罰を受けた。
それから2日後、作曲チームに進展があった。
「やっと完成だわ。ゲームマスター、録音データを送りたいから最初にいた会場に移動したい。」
「了解だ。」
千華江達は録音したCDを届けに行った。




