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新感覚脱出ゲーム  作者: ピタピタ子
19/32

コーディネートゲーム2

裁縫室では入江美奈子、雪田マリ、木村知世と有吉加世が作業を行っていた。

「あいつら呼び戻さなくて良いの?いくらなんでも自分勝手すぎない。」

加世が美奈子に聞いた。

「良いのよ。いた所で作業の邪魔になるし、私達だけでやったほうがすぐ終わるわ。」

「そうだと良いけど。」

知世はとにかくゲームを早く終わらせたいからここにいた。マリは他のプレイヤー達に借りを作ってしまった為残った。加世は美奈子のセンスが気に入ったのでとりあえず残っている。

「キャーー!鳩がたくさん入って来た!」

作業中に鳩がたくさん入って来た。4人がかりで鳩を追い出した。

「生地に糞がついてなくて良かったわ。」

「最悪、羽が落ちてるし掃除しないと。」

渋々と掃除をした。

「加世、どこに行くの!」

「美奈子さん、私はあいつに一回びしって言ってくる。」

「そんなことしても無駄よ。」

美奈子が引き留めても加世は舞華達のもとに行った。

「ちょっとあんた達、わざと鳩を裁縫室に連れてきたでしょ!私達大変だったんだから。」

「言いがかりやめてくれる?」 

舞華はまだ怒っていた。

「佐伯さんの言う通りね。証拠あるの?ないでしょ!」

穂乃華は美奈子を押し倒した。

「何すんのよ!もとはと言えばあんた達が文句ばかり言って効率悪く働くから悪いんでしょ!」

「は?こっちがどれだけ他の人を教えてたか知らずに指示ばかりだして、偉そうなのよ。そんなやつについていくなんて、美奈子の後ろにいる4人くらいね。」

「放棄してるのは出来ないからなんでしょ?あんた達いなくても良い洋服くらい作るから。」

「さっきまで雪田マリの言いなりだったのに、今度は美奈子サイドにつくなんて、有吉さんって自分一人じゃ何も出来ないんでしょ?」

「なんですって。」

近くにあるボールを加世は舞華に思いきりぶつけた。

「何すんのよ。」

「やめて。」

舞華が煙玉を投げて、会場中が煙だらけになった。

全員会場を出て、美奈子達だけが裁縫室に行った。

「加世、あんた少しは上手くなったじゃん。その調子よ。」

美奈子と知世の指導により、マリと加世は裁縫の腕が少し上がった。難しいところは二人が手伝った。マリは裁縫は元々少しだけ上手だった。生活には困らないレベルだ。

「今日は蝶ネクタイ完成させたわ。」

「あんた、すごいわ。レザークラフトも出来るの?」

「お店出せば良いのに。」

周りのプレイヤーは美奈子を称賛した。

「結婚してからそんなこと考えたことも無かったわね。息子が三人いるから、世間体や家族のことばかりで自分が元々やりたかったことなんて忘れていたわね。息子達には洋服作ったりとかはしてたけど、中々売る気になれなくてね。それにうちの旦那、私を働かせたがらないのよ。」

「働く女も悪くないわ。私は子供を持つなんて最初から諦めてたけど、あんたそれくらい能力あるなら洋服売ってみなよ。それにそんな旦那別れれば良いでしょ。あんた独身女馬鹿にするけど、旦那に執着し過ぎなのよ。」

美奈子の旦那は独占欲が強く、絶対に働かせてくれなかった。旦那以外の前では威張ってるが、旦那の前では逆らったりはしなかった。逆らったら一度つかんだ贅沢な生活を手放すことになるから。

「息子達の為にも離婚するわけにはいかない。」

美奈子は作業に戻った。

あれから洋服が出来上がるまで数日間が経った。完成すると4人は達成感を感じた。

「やっと出来上がったわ。」

「あとは洋服を袋に入れるわ。」

「何か臭くない?」

「洋服が?」

「いや、煙の臭いがするの。」

「嘘!火事よ。」

入口付近が燃えていた。

「ちょっと、木村さんどこに行くの!」

「佐伯さん達を呼んでくる。」

知世は何とか火を避けて、ドアをくぐった。

「加世、消化器を探して。」

「これに洋服を入れて。」

紙袋に洋服を入れた。

「このままだと洋服が燃えて1から作り直すことになる。それはまずい。」

「そうだけど、一人でも死んだら不味いの。」

知世が舞華達のもとについた。

「皆、今裁縫室が家事なの。お願い。今すぐ消化器を持って来て!」

「そう言って、嘘ついて私達に仕事ふるんでしょ!」

「そうよ。確かに仕事はふるわ。でも裁縫の仕事じゃない。このままだと全員が死ぬわ。脅しじゃないから今すぐ来て!」

知世が大声を出した。

「木村さん、一人で逃げるなんて。」

加世が美奈子に言った。

「流石に逃げてなんてしないわよ。皆、死ぬかもしれないんだよ。」

「どんどん火が広がっていく。あ!あそこにスプリンクラーがある。ビニールでおわれて気づかなかった。」

「分かったから、すぐにビニールを外して!」

マリが袋を外すとスプリンクラーは作動した。美奈子と加世は洋服を守っていた。

「あそこよ!」

舞華達が消化器を作動させて、消火活動をする。

「美奈子、今すぐ部屋を出て!私が火を消すから。」

美奈子と加世は舞華に言われた通り、紙袋を持ちながら裁縫室を出た。入り口付近の火は消えた。

「時任さん、そこを消して。山本さんはあっちを消して!」

「分かった!」

火は順調に消えていく。

「これで終わりね!」

「まだよ!」

部屋のすみにかすかに火が残っていた。

「どこ?」

「穂乃華、そこのすみよ!恵梨香でもいいわ!」

消火活動は終わった。

「舞華、ありがとう。おかげで服は無事だった。それと他の人も協力してくれとありがとう。私、流石に言いすぎわ。」

「あんたらしくないわね。そんな弱気な姿見せるなんて。」

「命が助かったからね。」

「服、見せてくれる。」

美奈子が皆に服を見せた。

「これは雪田さんが作ってくれたの。私の図案に色々提案してくれておかげで良いものが出来たわね。」

「やれば出来るのよ。」

「こっちは木村さんで、こっちは加世が作ったものよ。これは私が作った革の蝶ネクタイ。」

「あんたレザークラフトも出来るの?」

「そうよ。私に任せれば色んなハンドメイド作品が出来るの。私は奇跡の女よ。」

「良い意味でも悪い意味でも、自信満々ないつもの美奈子に戻ったね。」

舞華が言った。

「あんたには負けるわ。」

ここにいるプレイヤーは全員我が強い。

プレイヤー達は全員、黄色のポストに服を入れた。1つ目はアメカジスタイルのブルーのジャケット、清潔感のある白いシャツ、濃い色のデニム生地のパンツ。ネックレスは小ぶりの地味なものだ。2つ目のコーディネートはハンチング帽子、細かい縦縞のブルーシャツ、グレーのジャケット、茶色のチノパンだ。3つ目のコーディネートは全体が白で袖とフードが白のパーカー、チャコールグレーのカーゴパンツ、ぶら下がりタイプのピアス、チェーンの細かいブレスレットだ。

「やっと届いたか。」

ケイジは届いた服を確認した。

「サイズちゃんとピッタリだな。」

同じような服しか着ないケイジはかなりカッコよく映る。

「2つ目はフランスでも意識してるのか?」

2つ目の服を彼は来た。少し上の年代が着そうな服にも見えるがバランスのとれた体型の彼には違和感がなかった。

「蝶ネクタイなんてはじめてだな。おしゃれとか気にしたことないけど、こんなに手間かかるんだな。」

彼は色んな分野に優れているが、洋服に関しては機能性しか考えないためおしゃれな着こなしなんて一日も考えていなかった。

「ハンチングとかフランス人みたいだな。」

彼は独り言を言いながら鏡を見た。それから3つ目の服を着た。

「ブレスレットにピアス。仕事してる時、邪魔なんだよな。今回だけするからな。たく、面倒くさいな。」

自分で仕事を作って面倒臭がった。

ケイジの目の前のモニターにはクリスティーナ、他の女性社員達も映っていた。

「これが1つ目のコーディネートだ。」

女性社員達は画面越しで彼をじっくり見た。そして採点をした。

「これが2つ目のコーディネートだ。」

2つ目も採点する。

「その革の蝶ネクタイ素敵ね。ジャケットや縞模様のシャツともかなりマッチしてるね。」

「カッコいい。以外と帽子似合うじゃん。」

「これがベンとかパブロならデレデレしてたよね。」 

「それ言えてるわ。クールな表情を崩さないケイジにはお似合いね。」

3つ目の服に着替えた。

「3つ目だ。」

一人の女性社員は彼に惚れて、目を離さなかった。彼女は情報部の社員だ。

「これ、プレイヤーが考えたの?」

「そうだ。」

「センスが良いわ。モデルが良くてもセンスが駄目なら採点が厳しいわ。」

「小さく揺れるアクセサリーと白黒の服がマッチしてる。機能性を重視して、性格も飾らないケイジにはこれくらい地味なアクセがピッタリね。」

ケイジが着るどの服も主張が激しい訳では無いが見せる所を見せるようなコーディネートだ。

採点は数分間にも続いた。採点した点数をケイジはまとめた。


次の日、結果発表がやって来た。

「待たせたな。社会の粗悪品達。」

「相変わらず、あのゲームマスター口悪いんですけど。」

「待ちに待った結果発表だ。」

合計900点以上達成できればプレイヤーは次のゲームに進める。それを達成出来なければもう一度やり直しだ。

「1つ目の服は240点だ。」

プレイヤー達はざわついた。

「最初からこの点数なんて勝ち目あるの?やばくない?」

「落ち着いて!審査員にも服の好みがあるの。全部アメカジでせめなくて正解だったわね。」

「なんでそんな自信満々なの?」

「あんた旦那が何着ても良いと思うかしら?」

美奈子は穂乃華に聞いた。

「それは似合ってない服とか、いつもと違う系統の服は嫌ね。」

「おしゃれなら何でも良いわけじゃないし、全員ファッションに詳しい相手ばかりじゃないわ。それでも240点ならまだましよ。挽回の余地はあるわ。」

どうやら審査員で情報部にいて、アメカジスタイルが嫌いなフランス人女性社員がひどく点数を下げた。他の社員からは高評価だった。

ケイジが次のコーディネートの点数を発表した。

「2つ目のコーディネートの点数を発表する。」

緊迫感が会場に走る。

「370点だ!今の所、合計点数610点だ。」

プレイヤーは少し安心した。

「やったー!」

「静かにまだ勝負は終わってないわ。」

「最後の点数が肝心よ。」

次で290点以上獲得できなければまた1からやり直しだ。

さっきはフランスやイタリアらしい雰囲気で、昔のフランスを愛する女性社員はかなりの点数をあげた。

「最後のコーディネートの点数を発表する!」

「ついに来たわ。」

「大丈夫よ。私のセンスに間違いはないから仮に負けてもゲームマスターに交渉して、審査員の傾向をつかめば良いのよ。」

美奈子は得意分野のせいか同様しなかった。

「点数は…」

ケイジは間をあけた。

「あそこの窓汚いから、掃除するか。」

「何だよ、あいつ!」

ケイジはプレイヤーをふりまわす。5分後ケイジが画面に戻ると、また緊張感が戻った。

「点数は…」

美奈子はじっとケイジをにらんだ。

「320点だ!合計940点獲得だ!」

「助かった!」

「やったー!」

プレイヤー達は以前より誰かと喜びや達成感を共有することが出来た。

「プレイヤー全員、次のステージ通過だ。今回余分に40点獲得した。ここだけで使える通過、セラフ(ceraf)を渡す。」

札束とコインを見せた。

「このお金は全てお札だ。今回は40万セラフを支給する。」 

プレイヤーのもとに4枚の紙幣が落ちる。

「ということはこれが10万セラフということね。」

「違う。よくお札を見ろ。」

お札には数字が書いてなかった。

「え?」

「数字がない。」

「これじゃあ使い物にならないじゃない!」

「分かってないな。どの紙幣でも今このお札は40万セラフなんだ。もし5万セラフ使ったらどうなるか分かるか?どの紙幣も35セラフになる。」

「それならプレペイドカードと同じね。」

「その通りだ。ただし、残高全て使い終わったらそのお札は爆発する。」

「私達を殺す気なの?」

「殺すとは一言も言ってない。説明は最後までよく聞け。会場内に数カ所残高を確認する場所がある。ピンクと紫色のフクロウのオブジェがある。そいつの背中に札をかざすと残高が見れる。お前ら、頭を使わなければ全員死ぬということだ。今までの生き方じゃ通用しないだろうな。」

ケイジはプレイヤー全員を見つめた。

「最後に全員の食事をカップラーメンにする。」

「は?」

「何だよそれ?」

「お前らに珍しく平等に扱ったんだよ。ゲーム終了だ。」

ケイジは画面から消えた。プレイヤー達は未開封のカップラーメンを持って、ポットの前に並んだ。

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