コーディネートゲーム
ビデオ視聴から雪田マリは皆から無視された。ランクが落ちただけではなくビデオ視聴もかなり響いた。今まで、世渡り上手で優位にたっていたが今回は地獄を見た。
「時任さん、何無視してるの!あんた少しは私にカップ麺分けなさいよ!あんたはデブで太り過ぎなのよ。」
「雪田さん、あなたそんなこと言える状況ですか?自分がどんな状況なのか分からないの?」
「何よ。あんただってたくさんの生徒の未来を奪ってきたじゃないの。何で私だけこんな目に合わなきゃいけないわけ?おかしいでしょ!」
「あんたよりかはましだし。生徒のためにちょっと厳しくしただけよ。」
マリと時任千華江は口論になった。
「時任さん、そんな人相手にする価値ないよ。」
船崎穂乃華が言った。
「あんた、自分が潔白で完全な被害者だと思ってんでしょ?まだビデオ見てないだけでヤバイことやってるんでしょ?」
「だから何?あんたに散々なことされたことは変わらないわ。許さないから。」
マリをビンタした。
「本当はもっと制裁を加えるべきだと思うけど、あなたが何か悪事を働いたらゲームマスターに報告するわ。」
「チクるのが得意なのね。」
今回のマリの一件で皆、あまり目立つ行動は危険だと認識した。
「雪田さん、そろそろ黙る時じゃない?あれだけプライドをへし折られたら、調子にのらないと思うけど。調子に乗ってるのは他にも何人かいるけど、都合よく態度変えるあんたとかね。」
恵梨香が加世に言った。
「私のこと言ってるの?」
「自分がそういう自覚あるの知ってるんだね。一緒になって、穂乃華のことイジメてたのに。」
「何良い子ぶってるの?」
「あんたも調子に乗らないほうが良いわ。」
恵梨香は忠告した。
その頃、ケイジは入江美奈子の家族に関するデータをまとめていた。
「クリスティーナ、聞こえるか?」
「聞こえるわよ。さっきは電波悪かったの。それで用事は何?」
「クリスティーナ、昨日仕事が一段落したところだろ?お前に仕事を一つふる。」
「は?同じ部署内で協力なんて出来るわけないでしょ。」
「やっぱりそうか。次のゲーム内容聞いたら、気になるか?」
「何なのか教えな。条件次第で協力するかもね。」
内容を話した。
「つまり私に審査をして欲しいってことね。内容的にあんたの評価が上がるわけではないし、こっちのプレイヤー達をずっと持たせても問題ないわ。こっちのプレイヤーも気にかけるほどの価値がある人間ではないからね。」
ケイジとクリスティーナの会話は終わる。
「クズども、元気してるか?ご飯は食べたか?ゲームマスター、ケイジの登場だ!」
「何か今日ゲームマスターやけにテンション高くない?」
「何か良いことでもあったのかしら?」
いつもと少しテンションが違い、プレイヤー達は少し動揺していた。
「ちょっと、何か分からないけどテンション高い?逆に怖いんだけど。何かたくらんでるでしょ。」
「今日はお待ちかねの新しいゲームを発表する!コーディネートゲームだ!」
「また過酷なゲームなんじゃないの?」
「コーディネートゲーム?まさかの洋服対決みたいな感じ?それなら誰が負けるか目に見えるわね。」
ケイジがゲームのルールを説明する。
「ルールは簡単だ。まずモデルは俺だ。9人には裁縫室にある生地で3着俺に似合う洋服を作ってもらう。ミシンなどの道具は一式揃えてあるから、それを使え。作り終えたら、黄色のポストがあるから3着をラッピングして、そこに入れるだけだ。他のゲームマスター一人と数名の社員にに審査してもらう。もし合計900点いけば合格だ。制限時間は特にもうけない。説明は以上だ。」
「ちょっと待って!」
佐伯舞華がケイジをよびとめる。
「何だ?」
「体型が分からなかったら、サイズがぴったり合わなくてそんな高得点獲得出来ないわ。身長やウエスト、足の長さ、靴の大きさとか教えなさいよ。」
「俺がお前らに身長を教えるゲームではない。いかに評価される服を作れるかが鍵になるゲームだ。分かったか?」
プレイヤー達はまた動揺していた。
「もう一つルールを追加する。必ず全員で役割分担をしろ。もし一人でもゲームに参加しなければ、ある条件を除いて全員体重150kgになってもらう!」
またプレイヤーをぞくぞくさせる罰を準備した。
「ゲーム開始だ!」
画面が消えた。
「今回も中々難解なゲームね。」
「ゲームマスターのやつ、どんだけ私達を振り回したら気が済むのよ。」
「とにかく会議を進めるよ。私は時任さんみたいに太りたくないから皆協力して!皆、罰を受けたら体型が変わるのよ。」
美奈子が言った。
「偉そうにリーダーぶっちゃって。ただ自分が罰を受けたくないからそれっぽいことを言ってるんでしょ?」
加世が美奈子に嫌味を言った。
「でもどうせ皆150kgになるなら、誰も私を馬鹿に出来なくなるから私はゲームに協力しないわ。散々馬鹿にしてきた罰をあんた達も味わえば良いわね。」
千華江はゲームの参加を拒否した。
「何言ってるか分かってるの?馬鹿なの?ここを出たら私達だけ悪目立ちして、世間から後ろ指さされるのよ。その後の生活のことも考えられないわけ?馬鹿なの?」
穂乃華が千華江に言った。マリと知世が穂乃華をおさえた。
「そうよ。時任さん一人のせいで皆が困るのよ。分かったら、ゲームに協力しないと。」
舞華も続けて行った。
「皆、頭悪いの?感情に感情を返してどうするの。」
知世が言った。
「私をその頭悪いやつと一緒にしないで。今から聞いて!ゲームプレイ中に時任さんを馬鹿にしたらゲームマスターに言って馬鹿にしたものに罰を与えるルールを作ってもらうわ。」
マリが言った。
「あんたにそんな権限あるの?自分が今底辺って理解できてないの?立場をわきまえなよ。勝手に決めないで。」
「今、このまま争ってたらどうなるかわかる?」
恵梨香が言った。
「全員でゲームを放棄してることになる。放棄してる人数が多ければ多いほど体重が150kgじゃ済まない。それなら山本さんが言うみたいに時任さんの悪口は禁止ね。世の中論理だけで成り立ってれば争いなんて今頃ないのよ。」
「そんなこと言っても時任さんはゲームに参加しないわ。」
「そうよ。」
「それなら大丈夫よ。ゲームマスターが時任さんだけは違う罰をうけるようにするから。さっきある条件を除いたらって言葉聞いてなかった?」
全員思い出した。
「そのある条件は高確率で時任さんのことをさしてるの。時任さん、あなたもゲームに参加しないと悲惨な目に合うけど、それでも参加しない?」
「何よ!参加すれば良いんでしょ!その代わり、私をデブとか言ったら本当に許さないんだから。」
ようやく本題に入った。
「まずはゲームマスターの体型よ。私の分かる範囲では彼はそこそこ筋肉のある体型ね。」
美奈子が話を進めた。
「身長はどれくらいあるか分かる人いる?」
「そんなの分かるわけないよ。」
「いや、分かるよ。」
穂乃華が手をあげた。
「身長は175cmよ。私、目で見ただけで身長が分かるの。」
「そう言えばあんた顔見たって言うけど、顔の系統はどんな感じ?」
「詳しくは言えないけど、無表情がよく似合うクールな男よ。」
「あんたの旦那よりカッコいいんじゃないの?」
「は?私はそんな尻軽じゃないわ。あと、あいつはヒゲは生やしてないわ。」
ケイジはアメリカと日本のミックスのアメリカ人。普段は無表情だが、プレイヤーを目の前にすると煽りながら笑うことはある。社員の間では成績が良くて、クールな雰囲気でケイジを狙ってる女子社員は数名いる。もちろん男性社員でもケイジと付き合いたい社員もいる。
「次に生地選びね。」
皆で裁縫室にある生地を選んだ。
「これなんてどう?」
千華江が皆に見せた。
「これって、サテンじゃん。着心地悪いし、簡単に使える記事じゃないの。」
「このチェック柄とかは?」
「細かいチェックのほうが良いわ。大き目なチェックは主張が激しいわ。クールに見せるなら激しい柄は使いにくいから。それに小物でアピールするのもカッコイイわ。」
「あんた服に詳しいね。」
「若い時、服のデザイナーが夢だったの。デザイナーになって何億も稼ぐのが夢だった。でもアパレル産業の世界は私が望むような世界じゃなかったし、専門学校なんて行くお金なんて無かったわ。結婚してからはそんなことすら考えなくなったわ。」
親の反対やお金がなくすぐに美奈子は夢を諦めてしまった。家庭科の成績は誰よりも良い。アパレル業界でも働いていたが、お金持ちの旦那を捕まえたことにより夢はないことになってしまった。それから彼女はデザイナーになることは考えなくなった。
「穂乃華、私の描いたデザインを明確な図にしてくれる?」
穂乃華が美奈子の言った図案をまとめた。
「これから皆に役割分担する。」
美奈子がプレイヤーを振り分ける。
「まずは1つ目の服は時任さん、舞華、恵梨香に作ってもらうわ。2つ目は雪田さんと木村さんと有吉さん。3つ目は穂乃華と山本さんよ。私は全体の総監督を務めるわ。」
この中で裁縫が上手なのは美奈子以外に知世と舞華だ。
「ミシンってどうやって使うの?」
佐江が美奈子に聞く。
「そんなの家庭科の授業で習うでしょ!知らないの?もうしょうがないわ!まずこれがボビンよ!これじゃあ使い物にならないから、まずミシンの上にある所に引っかけて、糸をこのように巻く。それでミシンを稼働させてどんどん巻き付けるの。私が終わったら一人でやりな。」
一方同じチームの穂乃華は説明を読みながら何とかミシンをセット出来た。
「ちょっと、穂乃華!これは薄手の生地に使う糸よ。デニムの生地には90番は駄目!30番の糸よ!」
美奈子は佐江と穂乃華にキツめに怒っていた。
「これじゃあ最初からセットし直しなの?面倒くさい。」
「もう私はここまで進んでるのよ。私はただの玉の輿の主婦だと思ったら大間違えよ。」
「自慢?こんな人と洋服作りとか余計やりたくないわ。」
穂乃華が文句をたくさん言った。
「そうよ。女だからって裁縫できて当たり前だと思うなんて偏見よ。家庭科は男もちゃんと出来なきゃ駄目よ。裁縫とか出来なかったら、女じゃないと思う奴らばかりでイライラするわ。」
確かに美奈子は誰より早く作業を進めていた。しかし美奈子だけで洋服を作るとルール違反になるため二人を手伝わざるをえなかった。
「私は一言もそんなこと言ってない。山本さんに気持ちは分かったから、ヒートアップしないで。」
一方、知世達は時々美奈子に質問しつつゆっくり作業を進めた。
「木村さん、途中で詰まっちゃった。」
「下糸のセットがさっきと違うわこれだと針も壊れてしまうわ。」
知世は冷静に対応した。
舞華達も中々上手くいってなかった。
「恵梨香!あんた裁縫も出来ると思ったら全然出来ないのね。時任さんも何回ミスするのよ。これじゃあ私の仕事進まないじゃん。」
舞華は出来ない千華江と恵梨香に苛立っていた。
「舞華、二人に教えるのも良いけど、自分の仕事もちゃんと進めないと。」
美奈子からの言葉が舞華の怒りをさらに誘発した。
翌日、作業を再開した。
「あれ?他の数人は?」
美奈子が聞く。
「ボイコットしたのよ!」
マリが返した。
「え?」
舞華、千華江、恵梨香、佐江、穂乃華は美奈子基準の教え方や進め方を受け入れられずボイコットした。舞華が中心になってボイコットを促した。
「ちょっと、何ボイコットしてるの!そんなことしたら皆罰を受けるの。自分中心に行動しないで。」
美奈子が舞華達のもとに来た。
「何って。昨日あんた達が寝てる間に裁縫室の監視カメラを全部壊したの。私達がサボろうがゲームマスターは監視することも出来ないわ。それに私だって頑張ってたのに何も知らないであんたに口出しされてムカついたのよ。こんなのもうやってられないわ。」
「私も。出来て当たり前の態度が本当に最悪だった。あんなのやる気なくやるわ。」
「残りはあんた達でお願い。」
5人は美奈子たちを見捨てていつも会場に行った。
「最悪!何なのよ!」
美奈子の声が裁縫室中に響いた。