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新感覚脱出ゲーム  作者: ピタピタ子
11/32

悪行公開3

結果発表が終わり、皆ビデオ視聴の時間を待っていた。

「あら、何この食事。どうしてパンだけなの?」

雪田マリが他のプレイヤーを馬鹿にする。

「私の朝ごはん、佐伯さんのより多いから2人くらいに分けられそうね。分けてあげるわ。」

有吉加世、時任千華江、船崎穂乃華はそう言われるとすぐにマリのご飯を食べる。

「ただで食べていとは言ってないわ。ゲームマスター、私に誰にご飯を与えるか決めれる決定権をちょうだい。」

ケイジが画面から出てくる。

「それなら、すでに与えてる。権利を行使するのも破棄するのもお前次第だ。」

「それなら、私のご飯食べた3人はこれから私に従って貰うわ。もし私に逆らうようならあんた達を食事泥棒とみなしてゲームマスターの言うとおり、会場を50度の灼熱地獄にするわ。どう?もしそうなればあんた達だけじゃなくて、皆に迷惑を被ることになるわ。最悪死ぬかもね。」

「何言ってんの?そんなことしたらあんたも死ぬのよ。馬鹿なんじゃないの?」

穂乃華は言い返す。

「そうよ。あんた一人でことを決めたら皆が苦しむのよ!勝手に決めないで。」

美奈子もマリに言う。

「外野は黙ってな!」

マリは美奈子を押しのけて穂乃華に近づく。

「あんた達が死のうが私はどうでも良いの。それに私は自分がはい上がれるチャンスがあるなら自分の命も他人の命もどうでも良い人間なの。私はこのゲームが自分の都合の良いように進むことしか考えてない。悔しければ、頭を使いなよ。お馬鹿さん。」

恵梨香と知世をのぞいて、ほとんどのプレイヤーが冷や汗をかいた。マリは自分の権利を誰かを駒のように使うための権力に変えた。

「下僕さん達、つべこべ言ってきた入江さんも一発ぶん殴ってよ。」

「何でそんなことしなきゃいけないのよ!私、あんたみたいな暴力人間じゃないのよ!」

千華江は感情的になった。加世が千華江の肩に手をおく。

「あんたゲームで足引っ張ってばっかりじゃん。あんたみたいな無能が出来るのはせいぜい誰かに従うことよ。」

千華江は美奈子を殴る。

「何するのよ!」

美奈子は怒る。

「有吉さんがお手本を見せて。」

マリは指示を出す。加世の拳がまた美奈子にあたる。美奈子は3人に殴られた。

「いくら何でもやりすぎよ!こんなことして何になるの?」

山本佐江が言った。マリは佐江を殴った。

「今、この3人を説得したらどうなるか分かってる?ここの会場のプレイヤー暑さで死ぬのよ。」

佐江は何も言い返せなかった。


ビデオ視聴の時間がやってきた。

「これからあるプレイヤーの悪行を映し出す。ここにあるのは紛れもない事実。どんな逃れようとこの状況からは逃げれない。」

画面には入江美奈子と表示された。


入江美奈子は株式会社入江カンパニーの代表取締役の入江宗一郎の妻で、専業主婦だ。子供は今年18歳になる長男、15歳の次男、12歳の三男の3人の息子がいる。彼女は宗一郎とは18歳の歳の差だ。

「ねえ、私妊娠したんだよね。だから奥さんと離婚して私と結婚してくれない?」

ビジネスホテルの一室で彼女は宗一郎の身体をなぞりながら言った。

「あんなシミの多い女なんてもう抱けない。最近、思春期の娘のことでやたら八つ当たりしてるし、育児のことで俺のことを協調性のない男だって言うんだよ。俺が外で稼いで、嫁が家で家事と育児をするのが約束したのにな。それにお金やってるのに最近太りだしたし、家が癒やしの場所じゃないんだよな。それと息子の一人くらい産んでくれたら良かったのにな。」

「奥さん、何も分かってないですね。宗一郎さんは奥さんに綺麗になって欲しくてお金稼いでるのに。それに自分でその人生を受け入れたのに文句言うなんて大人げないですね。」

彼女は宗一郎の顔を見つめて、ゆっくり耳から頬、頬から首のあたりを触る。

「ねえ、私なら男の子産める自身あるよ。後継ぎにも息子が欲しいでしょ?」

入江カンパニーは昔から大企業だ。小売や飲食だけはなく、リペアや設備など様々分野の事業を展開してる。子会社もたくさんある。

美奈子は妊娠してる子供が男子だと分かると、宗一郎と結婚することになった。前妻とはかなり言い争いになったものの、稼げる能力がない前妻は何も出来ず、お金で全て事実が隠蔽された。思春期の娘に深い傷が残ることになった。それからも美奈子は変わらなかった。長男が5歳になると社宅内ではママ友ぐるみでお茶会をしたり、子供同士絡むことにが多くなった。すでに出来上がったグループの中に、新しく澤田夫妻が社宅に転居することになった。彼らも美奈子と同じくらいの娘がいる。

「私、民子って言うの。君は?」

「僕は宗大だよ。よろしくね。」

子供同士はすぐ仲良くなった。しかし民子のママは些細なことでハブられる。

「美奈子さん、素敵。常に食生活を気にされてるし、ジムで体型も維持してるし、きっと旦那さんも幸せだよね。」

「美しさは化粧品だけ使えば良いもんじゃないわ。特にグルテンの多いものは身体にも悪いし、肌を汚くするわ。それに腸内環境が乱れて、老化や肌のくすみの原因になるわ。スイーツは基本米粉スイーツよ。」

「美奈子さんの話聞くといつも勉強になるわ。私もグルテンフリー最近はじめたので色々教えてください。」

美奈子は誰よりも美意識が高く、美容や健康や食品のことを常に調べてるのでかなり知識が豊富。そういった面で社宅のママ友からも慕われていて、ママ友同士の結束は強い。

「澤田さんはどうなの?普段からどんなケアをしてるの?」

「私は美容とかそういうのあまり興味ないんです。そういったことより旦那や娘と毎日楽しい思い出を作ることを考えてます。」

民子ママは美奈子や取り巻きのママ全員から睨まれた。

「そう。それは良かったね。」

美奈子はそっけない態度になった。

次の日からグループラインはあまり稼働しなくなった。

「ねえ、与野さん。今日どこでお茶するのかな?」

「え?私用事あるから。」

澤田絵里をハブいてお茶会を開く。

「何これ!」

SNSを見ると絵里以外皆、カフェでお茶会を開いていた。

「これ、イタリア行ったお土産なの。」

美奈子は皆にお土産を配る。

「あ、ごめん。澤田さん、あなたの分まで買えなかった。また今度凄いお土産用意するから。」

絵里だけにお土産を渡さなかった。絵里は他のママ友からも同じ扱いを受ける。

「気を使わなくて大丈夫です。」

さらに嫌がらせはエスカレートする。

「ねえ、見た?澤田さん、人前に出るのにまともに化粧してないんだから。育児が原因で手を抜くなんてそれでも専業主婦なんかしら?」

「実は腹出てたりして。あんな女がここの企業の男捕まえるなんてビックリしますよね。」

「あと態度もデカいよね。この前お土産わざと渡さなかったらブチギレて強がってんの。こっちは仲良しくてあげてるだけなのにね。勝手に裏切られたって勘違いしてるのかしら?」

「何それ?怖い!」

美奈子のグループは聞こえるように毎日澤田家の扉の前で悪口ばかり言っていた。それが毎日続くから、絵里は中々外に出れないし、逆らえば旦那の仕事に影響すると思い、何も行動には出れなかった。それに旦那のいない所で嫌がらせをする。そういうことにはかなり頭がさえる人物だ。

「ねえ、ママ!今日、民子ちゃんと手をつないだの!」

「民子ちゃん?怪我は無かった?あの子はね、前の幼稚園で問題起こして有名な子なのよ。お願いだから民子ちゃんと一緒に遊ばないで。」

さらに絵里は美奈子を敵にまわす。

「民子ちゃんがうちの宗大が嫌がってるのに無理やり手をつなごうして来たのよ。」

「何それ?それって民子ママが無理やりそうさせたんじゃないの?」

「民子ちゃんをうちの宗大と結婚させて自分の家系を金持ちにするのが目的よ。ここの社宅に来たのも最初からそれが目的なのよ。」

「それって民子ちゃんの意志じゃないよね?可哀想。」

美奈子はありもしない噂を流して、絵里の立場をどんどん狭くした。

「自分の娘を社長の息子と結構させようと澤田さんの階級は変わらないわ。私が社長の妻としてのステータスには勝てないわ。」

「もっと身の程知らないと。」

絵里は部屋から出て、美奈子に言った。

「私のことはいくらでも好きに言っていいけど、娘のことを悪く言ったら許しませんよ。私の娘が何をしたって言うんですか?」

「別に澤田さんも民子ちゃんのことなんて悪く言ってないのに。被害妄想も程々にしたら?私はただ事実を言っただけだから。」

絵里は美奈子を叩こうとした。

「殴りたければ殴れば?ここで私を殴ればあなたの旦那さんの立場が危うくなるし、民子ちゃんまであなたのように暴力的な子として見なされるけど良いのかしら?良い大人ならこれがどういうことか分かるよね?」

美奈子は絵里を冷たく突き放した。

「宗大君、遊ぼ!」

「宗大、今日はママと美味しいもの食べに行こうね。」

「民子ちゃんと遊びたいのに。」

「言うことが聞けないなら、次の誕生日プレゼントはなしね。」

美奈子やその取り巻きたちはわざと絵里と民子をはぶいた。

「痛い。」

「あれ?どうしたの?」

取り巻きたちが子供に民子をいじめるように仕向けた。

「私の傘がない。どこ言ったの?」

民子の傘はゴミ箱に捨てられていた。これも社宅のママ達が子供に指示した。もちろん中にはやりたくなかった子もいた。

ついには澤田一家は精神的に弱り、社宅から離れた。

それからも美奈子は社宅で自分と合わない人間を旦那のいない所で追い詰めた。

「あら、皆川さん。大企業の旦那の妻なのに、共働き?旦那さんは平社員で、昇進も出来なくてそれほど稼ぎがないのね。」

「マジでウケる。私にはそんな生活想像出来ない。」

相変わらず、美奈子は取り巻きとケラケラ笑う。彼女は女性が働きでたら旦那の稼ぎが無いという古い考えだった。長男の宗大が大きくなってからも、社宅の親はぶきや子供はぶきはあとが経たなかった。言い返さないものは社宅を出るしか選択肢が無かった。男女が共働きな時代でもこの手の女性はまだまだいる。


ビデオが終わる。

「ご覧頂けただろうか?これが入江美奈子の悪行だ。どんなに隠そうがこの事実は消えない。特に傷ついた人間の心には消えない。」

「私は何も間違ってないわ!相性の問題よ。」

「相性か。それが許させるならお前が他のプレイヤーに殴られたのも相性の問題だな。相性を理由にして好き勝手するなら、その相性による仕打ちも受け止めないとな。」

ケイジはケタケタと笑った。美奈子は画面の前で崩れ落ちた。

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