3話
前回までのあらすじ
・レインでの生存報告。
レインにメッセージを送ってから私は今、ダンジョンの中を調査している。ダンジョンマスターになる前は部屋があまりなかったのに今はいくつか部屋があるし、下への階段もあったからだ。
「うーん、新しい部屋にはこれと言って何もないな。」
ダンジョンだったら宝箱とか、それっぽいやつとか…とにかく何かがあるのではとちょっとわくわくしたが、実際は何もなかった。今いる階にはめぼしいものはないので、仕方なく下に降りることにした。
「…なにあれ?」
下に降りると何やらフィルムを送るタイプの映写機のようなものがあった。私は即座に鑑定をする。
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ディスコ・プロジェクター
・記録された映像を映し出す。
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意外性とかなく、まんま映写機だった。…何が記録されているのか気になる。いや、されてないかもしれないけど。
とにかく、危ないものではないようなので記録されているのか確かめるためにも私は起動させようと映写機に触れた。すると、パッと動き出し、向かいの白い壁にとてもイケメンな眼鏡をかけた男性が映し出された。
……ジジ…
『これを見ているということは、あなたがこのダンジョンを踏破したのですね。とりあえずダンジョン踏破おめでとうございます。これはこのダンジョンが初めて踏破されたときにのみ開かれる部屋にあります。そして私は神という存在です。私は地球という星がある世界と、ソーレリアという世界、ほかにいくつかの世界の管理をしていました。しかし、地球がある世界とソーレリア、この2つの世界が私の管理ミスによって融合してしまうという事態が起きました。』
「……えっ!?」
急な展開に理解が追いつかない。だが、記録された映像なので、止まることなくそのまま神を名乗る男は続けた。
『小さい規模ならばすぐに解決できたんですが…予想よりも規模が大きく融合を止めることが出来ない状態になってしまっていました。今、このダンジョンのある地球はソーレリアとの融合の前段階にある状態です。融合後に異常を出さないようにするために地球をソーレリアの在り方に合わせ少しずつ変えていっているのです。地球に魔物が出現したり、魔法などが使えるのものもソーレリアに魔物がいて、魔法が使えるので地球の者たちが融合後の世界で困らないようにするための世界なりの配慮です。しかし、誤算がありました。地球には人々に世界の意思を伝える手段がなかったのです。ですので神である私が過干渉にならない程度にこのダンジョンに魔道具を置き、初めてダンジョンを踏破した者にこの事実を伝えることにしました。』
突然の世界が激変した理由を聞かされ愕然とする。
(誰がこの展開予想できるかー!)
『…本当はもっと手を貸して差し上げたいのですが、修正不可能なまでに融合が進んだ世界に神は手を出してはいけない決まりなのです。もちろんこれは融合後も当てはまります』
(じゃあ今後何があっても神様は助けてくれないってわけか)
『融合を止めることはできませんでしたが、本格的に融合する前に世界で初めて魔物を倒した人やパーティに称号という形で、力を与えることが出来ました。』
(称号の効果がすごかったのはそのためか)
『称号をもし獲得したのなら、先導し、人々が生きていけるように導いてほしいです。』
(うーん、人前に出たり目立ったりするのめちゃくちゃ苦手…というかそもそもしたくないんだが。あと、絶対面倒なことになりそう…いや、なるな。)
もし、私がやったとして…成功するとは到底思えなかった。持っている力を知られたら最後、奴隷のようにこき使われるに決まっている。
(それにしても…誰が称号を得るのかも、この映像を称号持ちが見るかも不確定のはずなのによくこんなことしたよね?博打にもほどがある。)
そう思いながらため息を吐く。
(それとも…この事態を予見していた?こんなやらかしをしたけど一応神らしいし…。まあ、称号持ちに丸投げはどうかと思うが)
『…そしてあともう一つお願いしたいことがあります。ソレーレリアの人々にもこのことを知らせようとしましたが時すでに遅く、干渉ができないようになっていました。ですので、もし融合後などにソーレリアの人々を見かけたらできるだけ力になってあげてほしいのです。』
神がそういうと映像はそこで終了した。
・・・・・・
「うーん、まさかのラノベ的展開になるとは」
“誰も予想だにしないことだろう”と思いながらため息をつく。
本当に神様がいてその神様のミスで今の状況になっているのだ。しかも神様の助けはもうない。自分たちで何とか頑張らねばならない。
(ていうかこれ誰かに言っても信じてもらえないでしょ)
ネットで調べたところ、謎の生物が出現したといっても今は小康状態になりつつあるらしい。もし、この事実を伝えたとしても今の状況じゃいたずらに不安になっている人々をより混乱させるだけだし、信じてもらえるどころかネットでの炎上案件になること間違いなしだ。あと、頭のおかしい人だと思われる。
「まあ、言うかどうかは保留で」
そう決めると私は荷物を置いている部屋に戻る。
「とりあえず今日はもうすぐ夕方だし、外に出ずにスキルとかの検証をしようかな?」
今日はダンジョンに逃げ込んでからダンジョンの中を探検したり、あの映像を見たりしてかなり時間が過ぎてしまった。映像はそれほど長くなかったけど。ダンジョンがね…。隠し部屋があるかもしれないので隅から隅まで鑑定しまくりながらしらみつぶしに見ていき、疲れたら休憩というルーティンで探検したのだ。広さはそこまでなくてもなかなかに時間がかかった。結果はあの映像以外収穫なし。まあ、今の鑑定ではわからないのかもしれないけどね。
「じゃ、まずは…鑑定は使ったから、収納だ!」
収納…字面から察するに、あの青いロボットが使ってるポケットみたいな感じかな?というか、ラノベの異世界ものでは名前は違うことも度々あるが…物をしまえるスキルって定番すぎるスキルだよね。よし、試してみよう!
(まずどうすれば発動するかな…?)
ラノベだとイメージするだけで発動したり、声に出すことで発動させていた。なら…
(どんなものでも入りそうな箱をイメージ)
私は、どんなサイズのものでも入る箱をイメージした。
「…できた」
私の前には半透明な箱が浮かんでいた。それに適当にその辺にあった小石を入れてみた。
「おおーすごい!」
小石はするっと入り、さらには顔の前に半透明のボードが浮かんでいて、それには、〔小石×1〕と表示されていた。わかりやすくて便利!
(うーん、世界の融合前にもこれ欲しかった。片付けとかすぐ終わりそう。)
そんなことを考えた。リスト化されるので、片付けが苦手な人でもすぐに片づけられるな。
(…はっ!ということは片付け損ねていたグッズもきれいに整理できる!?)
など、ついつい考えてしまった。あの後、スキル名を唱えても発動できることが分かった。あと他に分かったことは、
・空間内は時間経過がない、もしくは限りなく遅い
・サイズは今のところ持っていたリュックサックほどの大きさまでなら問題なし
・今のところ、持っていたもの全部の合計の重さ(約10kg)までなら確実に入れることが出来る。
の3つだ。ほかにも調べたいこともあるので、また後日検証しよう。いやーマジ便利すぎるよ収納。
「調理は道具もないし、テイムも魔物いないしできないから…残りの魔法系について調べよう!」
私は残りの調理とテイム以外の魔法系のスキルについて検証することにした。
「じゃあ、まずは失敗しても被害が小さそうな風魔法にしよう」
スキルレベルが1でも火ではダンジョン内の酸素が薄くなりそうだし、水だと周囲が水浸しになりそう。土だとダンジョンにどんな影響があるか分からないし。その点、風は最初の検証には一番無難に思う。
「さて、どんなのが使えるかな?」
私は鑑定で調べてみた。
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風魔法:風属性の魔法が使える。スキルレベルが上がるほど強力な魔法が使える。Lv.1ではウインド、エアカッターが使える。
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うん、見たところ多分ほかの属性も似たような感じだろうな。まだレベルも低いしじゃんじゃん使ってレベル上げていこう。じゃあ、実際に使ってみよう。
「ウインド」
私がそういうと、目の前を風が通り抜けた。ふむ、聞こえた風音から察するに扇風機の強より少し強いくらいかな。砂とかとうまく組み合わせたらいい目眩しとかになりそう。
よし、次はエアカッターだ。名前からして攻撃魔法ぽい。イメージとしては斬り裂く感じかな?
私は前方に枝を置く。ダンジョンにあったけど多分私がこけたときに一緒に落ちてきたものだと思う。
「エアカッター」
狙いを定めつつ、私はそうつぶやく。すると、置いていた枝がスッパリ真っ二つに斬れた。
(怖っ)
近づいてどんな風に斬れたのか確かめる。ふむふむ…断面はやすりで磨いたかのようにツルツルだ。
不可視だしLv.1にしては斬れ味もいいし強力なようだ。これ、共闘するとき、連携がうまくできてなかったら…仲間の体バッサリとかやらかしそうなんだが…。
…使うときは周りに気をつけよう。
それから私は他の魔法スキルも使った。火魔法は"ファイア"と"ファイアボール"、水魔法は"ウォーター"と"アクアカッター"、土魔法は"ピット"と"ストーンパレット"だった。各魔法の前者はラノべにあるような生活魔法ぽい感じでそれ単体だと攻撃向きでは無いけど使える。後者は完全な攻撃魔法だった。それにしても…憧れてた魔法が使えるなんてめちゃくちゃ楽しい!
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