表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/15

1-2 予知世界1 → 現実時間2

「あたしずっと、浮気してたんだよね。多分浩太はずっと気付いてなかったと思うけど、割とけっこー前から、それこそ高校入って浩太と付き合ってすぐくらいの初めから、実は他にも付き合ってた人、ほかにも何人もいたんだよね。」


そんなかなみの独白に、「……マジか。」浩太はせいぜい、そんな一言しか呟けなかった。


「ふざけんなあーっ!」喫茶店の隣の席で変装し聞き耳をそばだてていた寧子は、ガバっと身体を起こすと、そんな二人の席へと詰め寄った。


「てめぇかなみ! ふざけんなっ! なに上から目線で偉そうにてめぇの浮気を語ってやがるっ! ふざけんなっ! てめぇにそんな資格はねぇ! 今すぐ浩太に土下座しろ! 土下座して謝れ! ついでに慰謝料の話だけきちっと詰めて、それから二度と浩太の前に現れるなっ!!」寧子はテーブルの上に足を乗せつつ、一気呵成に言い切ってみせる。浩太の側からちょっとパンツが見えているのがかえってどこか物悲しくもある。


「えええええーっ。」ヘンな声で嫌そうに唸ったのは浩太であった。



ここでハッとなった寧子は、100%未来視にて覗いていた数年後の未来から、今を生きる現実世界へと瞬間的に意識を戻す。


「くそーっ! また失敗だーっ!」


時計の針は夜22時を過ぎたところ。数分程度で3年ほど先まで一挙に見通してきたが、どうやらまたうまくいかなかったようである。


「今のままだとどうしてもかなみは浮気する。何度やっても浮気する。どう初期値を変えても浮気する。ほんっとあいつの頭ん中、どうなっているのよ! 浩太のどこが不満なのよ!」


うがーっ! と寧子は声を荒げる。


「寧子、ちょっといいかい? ご近所様に迷惑になるからもう少し静かに……。」

年老いた父親が少しだけ空いたふすまの間から寧子に声をかけるが、寧子はまるで気付いていない様子。

「お父さん。寧子のこれは仕方がありません。ここは少し放っておいてあげてくださいな。」

同じく年老いたお母さんが、そんなお父さんを押しとどめる。

「いやしかし、ご近所さんに申し訳が……。」

「お隣の近藤さん、すっかり最近耳が遠くなってしまったそうです。多分聞こえていないでしょうから、そんなに心配することもありません。」

「いやしかし。」

まだ心配するお父さんを、お母さんはうんしょと引っ張ってリビングへと戻っていく。


あんまりご両親を心配させるものではないぞ、寧子。



それにしても、と寧子は一人ごちる。


これが寧子と浩太の事であれば事はとっても簡単なのだ。

寧子はいつでも、浩太を自分のモノにする自信がある。

容姿をちょっと変えるだけでも、15歳の今の年若い浩太はコロッと簡単に落とすことが出来る。


彼の好きな髪形ポニーテールに変えて。彼の好きな喋り方(あたし、浩太の事……みたいな口調)に変えて。浩太の好きな格好(ショートパンツで太もも見せつけてやれ)をして。


なんだか「かなみ」みたいな格好と喋り方な気もしなくもないが、ともかく寧子がそれをやれば、あっさり浩太は自分に落ちる。


嘘だと思うならちょっと試してみるから待ってなさい……。1分後、あっさり陥落した浩太といちゃつく未来を「予知」しまくってきた寧子は、でれっと顔をゆがませる。


「いやいや違う違う! そういうことがしたいんじゃないっ!」


寧子は慌てて首を横に振る。

これでは駄目なのだ。肝心なのは、浩太とかなみをくっつけることなのだ。


「はあっ」と寧子はため息を一つ漏らす。


「浩太さん」の言っていたとおりね。私の能力は私自身にのみ特化していて、私以外のほかの誰か、例えば浩太とかなみをくっつけるのには、あまりうまく働かないわ。

本当に私の力ってポンコツね。


悲しくなってしまった寧子は、しばしぼんやりと薄暗い窓の外を見上げる。

ベランダの鉄柵の向こうに、まん丸いお月様が昇っている。


あら! まあっ!


寧子は「浩太さん」との3度目のハネムーン、海外のホテルで二人して見上げたあの日の月の事を思い出し、思わずうっとりと目を細めた。


寧子は浩太さんと7度結婚している。それぞれ異なる初期値を設定し、様々な出会い方で浩太さんと結ばれ、子供をたくさん設けて大家族になった未来もあれば、最後まで二人きりでしっぽりとした老後を送ったこともある。

結婚をしなかった回を含め、寧子は11回「浩太さん」の最期を看取り、寧子自身も4回浩太さんに看取られた。

そのどれもが寧子にとっての大切な思い出だ。

寧子はいつでも幸せだった。


だが、それで果たして浩太の幸せだったのだろうか?

浩太が望む本当の未来は、もっと別のところにあったのではないだろうか?


寧子にはわからない。何度未来を見通してみても、浩太の心は最後まで分からない。

寧子はだから、決意した。


自分はさんざん『浩太さん』に幸せにしてもらったのだ。

今度は私が浩太を幸せにしてやろう。


何度しかたも分からない決意を今日も新たにし、寧子は浩太とかなみの未来予知を再開した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ