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さあ、新たな駄作を始めようか
その帰り道は、雨が降っていた。
帰ったら、無造作に積まれているまだ読んでない本の山を崩しに行こうか。
それとも積んである未プレイのゲームに手を付けようか。
やはり、まずは風呂だ。天気予報は降水確率40%だったから、今さしている傘は普段から鞄のそこに入っている、なんとも心もとない折り畳み傘だ。おかげで靴の中は水浸しだしズボンもけっこうびしょびしょだ。
今日はついてないなぁ、なんて思いながらも家に向かって歩く。
6月の中旬、帰り道は紫陽花が綺麗に咲いている。たまの晴れで午後からは曇り。そして明日からはまた雨が降り出すような今日。
私はかなりついていなかった。
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何とか家に着く。浸水状況的には靴は壊滅、ズボンは下半分がやられてて、鞄もけっこう被弾した。
とりあえず風呂だ、風呂。冷えた体には温かい湯で対抗だ。
急いで風呂を沸かす。沸くまでの10分間は随分長く感じた。
熱いシャワーで体をよく洗って、湯船につかって最近はやりの曲の鼻歌なんか歌っていざ上がろうとして、不運にも足を滑らせた私は頭をしたたかに打ち付けた。
残念なことに私の人生は終わってしまった。
そして、今はあまり読まなくなった異世界転生を、この身で体験するのだった。
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「・き・・だ・・なー」
「おき・く・さい・・」
「おきてくださいなー」
気が付いたら、雲の上のような場所だった。
そして、目の前には私をのぞき込んでいる若い女の人がいた。
「やっと、目が覚めましたね」
「うーん、ここはどこですか?」
「そうですね...あなたにわかりやすく言うのなら天界でしょうか」
「天界ですか...あちゃー私もしかして...」
「残念ですが、風呂場で頭を打ち付けて死んでしまったんです」
「やっぱりそうですかーなんとなくこれはやばいなって頭を打ったときに思ったんですよねあはは」
「あれ実はかなり不運な死に方ですよ。頭を打ち付ける人は少なくはないんですがだいたいはなんとか死なずに済むんですよねぇ」
「そっかぁ珍しい死に方しちゃったなぁ。このあと私はどうなるんです?なんか地獄か天国かみたいな感じです?」
「このまま天国に行って次の生が始まるまで過ごしてもらってもいいんですが、今は希望者には異世界の方に転生してもらってるんです」
「はえーそうなんですか」
「むむ、あまり反応がよろしくありませんねぇ、そういった作品は現世でよんでいらっしゃいますよね?」
「まあ、確かに一時期はまっていたこともありましたね」
「その異世界転生のチャンスがあなたにめぐってきたんですよ!喜んでも罰は当たりませんよ?」
「うーん頭を打ち付けたせいか、なんだかまだ頭がボヤっとしてるような...まだ現実じゃないような夢の中のようなはっきりしない感じです」
「あらら、そういうことですか。では異世界に転生することに消極的なわけではないんですね?」
「たぶん、はい。いきます、はい、異世界転生ですもんね、はい、異世界行きます」
「(大丈夫かなこの子...ま、いっか)それでは転生させますよ~そーれ!」
まだちょっとぼんやりとしてる。優しい女のひと(かみさまかな?)はなんか手をかざしたところから、虹色の粉みたいな霧みたいなのがでてそれを浴びた私は眠くなってきたのでまた目を閉じた。
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まぶしくて目が覚めた時はそこは森の中だった。
異世界のどこかの森の中、周りの木は全部高い。一本一本が東京タワーくらいありそうだ。めちゃくちゃ高い。
すぐそばには泉がある。何なら滝もある。そして都合がいいことにこの周辺だけ木々が光をさえぎってなくて、太陽の光が差し込んでくる。ぶっちゃけこれはいくらでも寝れる。太陽の光と滝の水しぶきがちょうどいい、もう動かなくてもいいのでは?
「寝よう」
そう呟いて私はもう一度寝ることにした。
気が向いたら続くと思うね