竜人姫 清姫
一人の女性を目塞き編み笠を被った者たちが取り囲んでいる。
女性は、笠を被る者たちのリーダーと思わしき者に薙刀を向け、笠を被っている者たちは苦無や吹き矢を女性の方へと向けており、お互い既に臨戦態勢の状態で一触即発しそうな雰囲気に包まれている。
「本当にしつこい方々ですわ。あなたたち、もう私のことは諦めて下さいまし?」
「そうは参りません。若がどうしても貴女様を妻に娶りたいと仰られているのです。貴女様の方こそ諦めて若の元へ嫁として参られてはいかがなさいましょうか」
「ごめんあそばせ!あのような女を自分の玩具としてしか思えない殿方はこっちから物凄く願い下げですわ!」
「是非もありません。気絶させて若の元へ連れていきましょう。皆の者、かかれぇ!」
笠を被っている集団は一斉に薙刀を持つ女性へ攻撃態勢に移る。女性も一番近い者に対して攻撃に移ろうとした瞬間、一本の短剣が投げ込まれ、笠を被っている集団の一人の首が飛び雪の大地を赤く染め上げる。
この場にいる者、全員が短剣が飛んできた方向へ目を向ける。
そこには全身鎧で固めた人物がいた。男か女を確かめようにも兜はフルフェイス型なので顔が隠れてしまい性別がわからない。
「お取込み中のところすまないが、さすがに女性一人に集団でかかるのは卑怯だろ。ここは助太刀させてもらうぜ」
「何奴!名を名乗れ!」
「貴様らに名乗る名前は無い!」
~少し時間がさかのぼる~
オレはバルバトスの鎧を求めて森を抜けて雪山に行こうと盗んだ地図を見ながら歩いていた。時に追手が来ていないか森の茂みに隠れて来た道をしばらく観察する。来ていないことを確認した後、先に進むを繰り返す。何度もしている時、突如笑い声が森中に響いた。
「ふふふははははははははぁはっはっはーー!」
こんなところで笑うやつがいるのか、何か楽しいことでもあったのだろうか。と気になって声がした方向へ足を向ける。
歩いているうちに雪の上に足跡があることに気づいて、オレは足跡を追って行った。
足跡を追っていくうちに茂みの中に籠に穴を開けてそれを被った変な奴を見かけるようになった。一人ならまだしも複数人いるから驚きだ。いったいこいつらは何者だと気になり気配を消して籠を被った奴らの後をつけていく。
そいつらは茂みの中で武器を構えて、茂みから飛び出し先にいる女性を取り囲む。
女性はオレと同い年ぐらいだろうか、綺麗な緑色の髪に可愛い顔、バランスが取れた体をしており、傷んでいるとはいえ着ているのは高価な着物でどこかの良家のご令嬢であると推測できる。
着物ということはヤマブキの国出身者か、籠を被った変な奴らの来ているものもヤマブキ特有の服装だ。
さらにオレが一番目が引いたのは女性の頭についている二本の角だ。ヤマブキの伝承に記されている龍と思われる角の形に似ている。
それにオレの体の奥底から彼女は同族だと告げている。同族ならオレの島に招待したいというかアネモネ島の島民になってくれ。というわけで彼女を助けることにする。
お互いに臨戦態勢に入っており、どうやら聞こえている限り、彼女は籠を被った奴らの要求を拒否したようだ。
お互いに攻撃態勢に移ろうとしている。そこでオレはすぐさまサイドアーマーに収納してあるノーザンライト・リッパーを抜き、ここから一番遠い籠を被った奴に投げつける。ノーザンライト・リッパーは見事命中して籠を被った奴の首を跳ね飛ばし雪の大地を血で赤く染めた。
オレは茂みから出て籠を被った奴らと対峙する。
「お取込み中のところすまないが、さすがに女性一人に集団でかかるのは卑怯だろ。ここは助太刀させてもらうぜ」
「何奴!名を名乗れ!」
「貴様らに名乗る名前は無い!」
オレは一角獣のバックパックについている。スラスターをふかして、地面の雪を巻き上げ、姿を隠した後、もう一本のノーザンライト・リッパーを投げる。
「何ぃ!」
投げたノーザンライト・リッパーを直撃してまた一人死んだようだ。オレはスラスターで加速して最初に投げたノーザンライト・リッパーを回収して近距離戦へと持ち込む。
「こ奴、速い!マントの下に何か仕込んでいるぞ!気をつけろ!」
早いな。こうもあっさりマントの下のバックパック存在に気づくとは、だが、気づいたところでそれを対処できなければ意味なんてねえんだ!
オレは縦横無尽に駆け回り雪を巻き上げ、雪で視界を奪いながら、攻撃する。相手はかなりの手練れで視界を奪われてもこちらの攻撃を苦無で受けて少しずつ後ろへと後退している。
オレはただ追撃しない。オレは一か所に集めるように後退させている。このことに気づいているのは何人いる?
それが何回も続き。そして、相手は仲間同士で肩をぶつかり合う。これによりこちらに対しての集中がいったん途切れる。その隙をつき一気に仕留める。
「何!」
「なぜ!?」
「いけない」
「いかん!」
こちらの攻撃のいとに気づいたのは四人の内二人、この二人はオレの攻撃を食らわず避けることに成功した。残りはオレによって惨殺されて、冷たい雪の大地に身を晒した。
「隙あり」
オレの攻撃のいとを理解した一人が反撃としてオレに苦無で襲いかかる。しかし、
「私の存在をお忘れではありませんか!」
同族の女性がオレを襲おうとしている籠を被った奴の背中から薙刀で串刺しにして、同族の女性に意識を奪われているうちにオレがとどめを刺した。
同族の女性と話していた奴残して、籠を被った奴らはオレたちによって倒された。
最後の籠を被った奴はこちらとやり合う気はもうないようだ。
「戦意喪失と見るが、それともまだ続けるか?」
「やめておきましょう。こちらの負けです。だからと言ってあなた方に捕まる訳に行きません。この事を若にお伝えしなければなりませんので、さらば!」
籠を被った奴は煙玉を炸裂させてこの場から去っていった。これ以上何かないか気配を探る。
しばらく探ったが彼女以外誰もいなかった。
そして、ただいま絶賛、彼女か警戒されて背中に薙刀を突きつけられている。
「あなた様は何者ですか。助けていただいたことには感謝させていただきます。ですが、まるで狙ったような登場仕方は私に何か用があると見てよろしいのでしょうか?」
流石にここでうそを言っても意味が無いのオレは彼女に用があることを伝える。
「あんたの言う通り、オレはあんたに用がある」
そこで薙刀が背中ら離れたと思ったら思いっきり突かれた。突きを寸前のところで回避して彼女と顔合わせ状態になる。
「何が目的なんですの。あの男たちと同じで、私の血をお求めですの?はっきり言わせていただきますが、私の血をお飲みしても不老不死になどなれません」
どうやらさっきの奴らは彼女の血を飲めば不老不死になれると思い、彼女を襲ったようだな。
なら彼女がオレを警戒するのは分かる。というか彼女、オレが同族であることに気づいていないのか?
「オレは不老不死に興味はない。オレが欲しいのはあんた自身だ」
「ふぇ!?な、な、何を言っていますのあなたは!お互い初対面なのですよ。バカなことは言わないでくださいまし!」
いきなり照れて怒り出すとはどういうことだ。いや待てよ。さっき言った言葉を思い出せ。こりゃダメだ。完全に誤解しか生まない。が間違ったことは言っていない。島民として彼女が欲しいというのは本当だ。と言ってもまずは誤解を解かなければ話が進まなそうだ。
「すまなかった。今のはオレが悪かった。実は・・・」
オレは彼女にちゃんと説明する。血の匂いがすごいがこの際、仕方がない。
「つまり、あなた様は私を島の住民に勧誘しようしているということでよろしいですの?」
「そういうことだ」
「私、勘違いしてしまいました。ああ、本当に冷静になればあなた様と私は同族なのですのね」
「それで一緒にアネモネ島へ来てくれるのか」
「助けていただいた恩がありますし、よろしいですわよ」
彼女から了承をもらったオレはひどく大喜びして奇声とか挙げていたかもしれない。気づけばオレは彼女に名前を名乗っていない。
「自己紹介がまだだった。オレいや、ここは元に戻って、私の名はフリージア・エーデルワイスと言います」
「私の名は清姫と申します。これからよろしくお願いしますフリージア様。今からアネモネ島へ戻られるのですか」
「いや、まずはこの森を抜けた先にある雪山の中に湖を目指しているんだよ」
「なぜそこへ?」
「何とそこには伝説の宇宙の武具のバルバトスの鎧が眠っているようなんだ」
「バルバトスの鎧・・・、ヤマブキにいたころ聞いたことがあります。確か鎧としての性能もさることながら、身に着けた者は動物の言葉が理解できるようになるとか」
「そうそう。もしかしたら獣みたいになった人間がいて言葉がしゃべれなくなっていそうだからな」
「確かにあり得そうですわね」
「では行こうか」
「ええ、行きましょう」
オレたちは歩き出し森を抜けようと歩き出した。
~とある場所での二人組~
「その報告は真か」
そこにはさっきフリージアたちの前からいなくなった目塞き編み笠を被った者と若者が対談していた。
「はい、若、我々が若のために清姫殿を取り囲み若の元へ来るよう説得しましたが、よりよい返事はもらえず、仕方なく気絶させ、若の元へとお連れしようと臨戦態勢に入り次第、邪魔が入り、自分を除き全員殺害されてしまいました」
若者はもう一度報告を聞いて思案顔になって地図を見る。どうやらこの者が清姫を狙っている。若と呼ばれる人物のようだ。この者はしばらく考えた後、閃いたがごとく、目塞き編み笠を被った者に作戦を伝える。
「この地図によれば森と雪山の間に廃村となった村があるようだ。僕の予測では清姫たちはここで休憩を取るはずだ。この廃村の出入り口は一つ、清姫がいるのを確認次第、出入り口で待ち伏せするのだ。今回は僕も出向く」
「若、そううまくいきますかな?」
「じいよ。これまで僕の勘が一度たりとも外れたことがあったか」
「いいえ、ありませんでしたな」
「よし、廃村へと急ぐぞ!」
「ははーー」
この二人は廃村へと急行する。
~それからのフリージア一行~
オレたちは無事、森を抜けることに成功した。これまでの雪道でさすがに疲れたので休憩がてら廃村に立ち寄ることにした。
かつてこの村は貧しくても山や森からの恵みをも糧に、日々を一生懸命生きている人たちが多くいた。しかし、若者はこのような田舎でなく都会をあこがれるようになり少しずつ若者がいなくなり、とどめにこの近くで魔族が出て暴れたことによりこの村に住む人々に立ち退き命令が出て廃村になった。と教会から盗んだ地図には書かれてあった。
この廃村には朽ちていない家があったおかげでそこでオレたちは休憩する。
「この時間から雪山を上るのはやめておこう。雪山を上るのは明日にしてここで朝まで過ごそう」
「そういたしましょう」
「体は大丈夫か冷えていないか」
「疲れただけで他は大丈夫です。暑さや寒さは竜人になってから感じなくなってしまいましたし」
清姫の言う通り寒さは感じていないようだ。かく言うオレも今は寒さを感じていないだけではなくあまり食欲も湧かない。これは魔族になったせいで寒さを感じなくなり食欲もでなくなってしまったのだろうか。
寒さとかを感じにくくなっただけでなにかあるといけないのでオレは暖炉に火をつける。
オレたちはそこでゆっくりとくつろいで雪山に備えて体力を回復させる。
清姫はこれまでの疲れが出たのか船をこぎ始めてそのまま眠ってしまった。
オレは清姫に何か掛けるものが無いか探しに家中を探し回り、ボロボロだが毛布を見つけ、一度叩いてから清姫に毛布を掛けた。
雪山を上るため登山に使えそうなものが無いか探し回る。が、あるもの全てがボロボロで使い物になりそうなものが何もなかった。
オレはおとなしく清姫がいる部屋に戻り疲れをいやす。
「匂う、匂うぞ。拙者と同じ匂いが拙者の根城にしている村から妖の匂いが漂ってきておる。今度はどんな妖だ。人に仇名す妖なら拙者が成敗してくれよう。その時は簡単には斬られてくれるでないぞ。楽しみがなくなってしまうからな」
その者はヤマブキ特有の着物を着ており、刀をもってフリージアたちがいる廃村へと向かっている。
その者から後ろの少し離れたところに二人組がいた。
「若、このようなところに我々と同じ出身者がおるようですぞ」
「あの武士、いったい何者、もしあの刀が滅鬼丸ならかつてヤマブキにいた。伝説の退魔師、浅木頼光様かもしれん」
「頼光様は遥か昔におられた退魔師。若、とても生きているとは思えませぬ」
「いや、もしかしたらかの頼光様は魔を憎んでいたと言われていたもし僕らが知る妖魔病が心からなる病なら憎しみのあまり魔に落ちた可能性があるではない」
「まさか頼光様ほどのお方が!いや、それはありますまい頼光様の子孫の方では」
「それこそあり得ん、浅木家は頼光様が行方不明になってから50年もせぬうちに没落して一族全員死亡しているのが確認されている。そして、浅木家の本家跡地には滅鬼丸は発見されなかったと聞く」
「それで本人ではないかと」
「わからん。見つからぬようゆっくりとあの者についていこう」
「わかりましたのじゃ」
二人は前にいる者に気づかれないように慎重に行動してついていく。この二人は気づいてはいないが前にいる者は既にこの二人の存在に気がついている。
清姫が仲間になった!
フリージアと清姫に迫る謎の人物は、伝説の退魔師、浅木頼光なのか
清姫のことを妻と呼ぶこの若者はいったい。
仲間の装備状況も書き込んでいきたいと思います。
現在のフリージアの装備
武器:剣:ビームサーベル
短剣:ノーザンライト・リッパー
兜:自作品の衝撃の兜
鎧:自作品の天使を狩る者の鎧
腕:自作品の命中のガントレット
足:自作品の命中のグリープ
背中:自作品の一角獣バックパック
その他:マント
現在の清姫の装備
武器:薙刀
頭:欠けた簪
服:傷んだ良家の着物
足:草履