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10万年物語  作者: モイ
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ヘッジとホッグ

スティラはガラス窓にうつる華奢と例えるには似つかない細く拙い自分を見つめた。

頬にはそばかすを持ち、母親の趣味で遺伝子に埋め込まれた緑髪は手入れと色の鈍さから気持ち悪さを引き立てる。

瞳は白と黒を半々に施した父親からのものでこれもまた人工物である。

鼻や耳といった部位は作りこまれており、その点が他の負要素を辛うじて打ち消している。


急ごしらえの前世紀以上前の小さな起動衛星施す設の右上にはヘッジが、奥にはホッグが小さく見える。

重力場の影響を受けるため常にこの施設は重力装置により、ヘッジの衛星軌道を周回している。


それにしても……とスティラは無表情のまま、ふと与えられた領地を一瞥した。


自分も相当な曰く付きだが、これらも中々である。


まだ衛星内部を調査すらしていないが、外見だけで評価するならば最低となるであろう。


ヘッジとホッグの裏表は無数のクレーターが点在しており、スティラが想像するそれとは大きく異なる。

ニキビ跡のように無様な面をしており、愛着が湧く事はない。


スティラはため息を一つした。


ガラスに白い吐息がかかり、その靄が自分の顔と重なってぼかしとなる。


確かにスティラは人生の中で最大級の自由と手にしているが、それは父と母の監視という条件である。

ここから抜けだして別の星系に行こうと考えても、手立てが分からない。

なにより圧倒的に情報が不足しているのだ。


スティラは能がない。


先天的なものか後天的は後にしても先立つものがない。故にスティラはこれから何をすればいいかすら分からずでいた。


ここで開放されてから既に5日が経過し、食料や燃料といったものはヘッジとホッグが所属するラサウェイ星系の恒星ラサウェイからの恩恵によって保たれていた。

スティラ一人が生きていく分には問題がないが、この先、人を雇う事になればライフラインはすぐに崩壊してしまう。

そもそも自分に人を雇う力があるのだろうか、スティラは再度大きくため息をした。



20日が過ぎ、スティラは思い切って備え付けの小型シャトルでヘッジに降りてみることにした。

20日の間、スティラはありあまる時間を使い、1時間あれば読み解けるシャトルのほんの一部の使い方が刻まれた機械語を読み解いていた。

辞書を片手に機械語を直接引き、引いた先でさらに分からぬ単語を別の辞書に引き、さらにはという形で気の遠くなる作業を20日間費やし、ようやくシャトルに自動操縦の切り替え、目的地の設定、成分分析装置の使い方などを習得した。



こうして一人何かを成し遂げたのは随分と久しい感触にスティラの心は震えた。



いざシャトルに乗り込み降りてみる。

本当に何もない。

高低差の激しい大地と少し歩くだけで存在する大小様々なクレーター達がスティラを迎えてくれた。

宇宙服に着替え、ゆっくりとヘッジに降り立つ。

学生時代に味わった重力の重さに懐かしみつつ、宇宙服に備え付けられた簡易装置を使って、大気の状態を調査を始める。範囲を200km圏内と設定していたため、調査結果に時間がかかり、その間にスティラは何も考えずにシャトルの周りを歩いた。

すると、近くで爆発が起き、次いですぐに地面が震えた。

思わずその場にしゃがみ込んでしまい恐怖で瞳に涙を貯めてしまう。

揺れが収まると同時に調査結果を報せる機械音が鳴った

結果リストの一番上にヘリウムと大きくかかれている。



どうやら先程の爆発は、衛星活動の一環であったらしく地中から吹き出たガスに装置が反応らしい。

他にもラドンといった典型的な元素名が表示された。


スティラは爆発現場から隠れるかのようにシャトルの中に戻った。操縦席に座るやいなや脂汗が鼻の頭に湧き、一連の出来事を思いだし、小さく嗚咽した。頭に熱感じた後


目が覚めたのは地平線にラサウェイの残り火が霞んで見える頃でヘッジで過ごす初めての夜が迫っていた

スティラ自信が生まれれて感じる夜独特の雰囲気に動悸が高まりをみせる。


全てが暗くなりあたりに残るはシャトル上部に備え付けられたビーコンが照らすのみである

スティラはシャトル内の電気を夜用へと切り替え、一週間分の食料の中から好みの物だけを選び、ゆっくりと誰かに聞かれないよう静かに食べはじめた


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