第4話 親達の会話と謎の夢
是非読んで下さい。
初めての模擬戦から更に一ヶ月が経ったある日。時刻は深夜、外も真っ暗になった頃、二組の夫婦が話し合っていた。
シンの両親、ティーダ・クレイ、マリア・クレイ
スコールの両親レオンハルト・グライド、レナ・グライドの夫婦だ。
「どうだ?二人の様子は」
「ええ。とても穏やかな寝顔でしたわ。旦那様」
「そうね。二人とも向かい合って幸せそうだったわね」
「ハハハ。目に浮かんでくるね」
四人は我が子の寝顔を想像して笑い合った。
しかし、すぐに真剣な表情になった。
「それで、前にも聞いたと思うけど、そんなに凄かったの?あの子達」
「ああ……。この一ヶ月あの子達の事を見てきたけど、一言で言うなら、あり得ない。だよ」
「そう」
「しかし、ティーダの報告とは言え、俄には信じがたいな」
話を切り出したのはマリアだ。
それにティーダが答え、レオンハルトがそんな感想を漏らした。
「改めて報告しますけど、僕はこの一ヶ月あの子達の模擬戦を見てきたけど、唯の五歳の子供があんな風に簡単に武器を使いこなせるのはおかしい。しかも、剣や槍ならともかく、あの子達が使っているのは刀と大鎌だ。いくら武術の才能があるにしても異常過ぎる。あれではまるで…」
心と体が戦い方を知ってるみたいだった。とティーダが言った。その言葉でその場の空気が更に重くなった。それもそのはず、ティーダはこの領地内では、一番の強さを誇っているからだ。そのティーダが異常だと言うのならば、それは余程の事なのだろうとティーダ以外の全員が思った。
更にマリアが続けて言った。
「それと、あの子達が寝てる間に何度かあの子達の魔力を調べてみたのですが…」
「…ん?どうかしたのか?マリア」
次の言葉が出てこないマリアにティーダが質問した。
「底が、見えなかったの。何度調べてみても」
「底?」
ええ。とマリアが説明した。マリアがやった手法は、他者に直に触れ、その者が宿す魔力の核を直接調べるという手法だ。魔力の核を直接調べる事によってその者が今どれだけ魔力を有しているのか。そして、これからどれだけ成長するのか。ある程度まで察知することが出来るのだ。
因みに、こんな方法で魔力を調べる事が出来るのは、世界広しと言えどマリア位である。
他の家の場合は、基本的に魔力を量る為に水晶を用いてやるのが普通である。
その手法を用いてマリアが二人から感じ取ったのは、底知れない魔力量だった。二人からはマリアが今まで感じ取った誰よりも深く強い魔力が感じ取れた。調べたマリアが一瞬恐怖を覚えた位に。
「おそらく…、このまま訓練していくならば、とてつもない強さを手に入れると思います。魔力も身体能力も有りすぎます。いずれは私達が暮らすこのアクトルの町やグライド領だけでなく、人間という種族や他の種族、いやこの世界の中でもトップクラスになると思われます」
マリアのこの言葉に他の三人は驚愕の表情を浮かべた。それも当然の反応だ。
このグライド領だけであるならばそこまで気にする事もなかったのだが、それが世界クラスともなれば、また別の話になる。それほどまでの才能を秘めているならば、遅かれ早かれ目立つだろう。
それは、子供達の幸せを願っているこの親達にとって喜ばしい話とは必ずしも言える訳ではない。子供達が立派に成長してくれるのは素直に嬉しい。しかし、それで周りからいらぬ介入をされて子供達の成長の妨げになるのは好ましくない。
どうにか出来ないか暫くうんうんと頭を悩ませていたが、結局答えは出なかった。
「案が出ないのならば仕方がない…。皆、今日話した事は誰にも言うでないぞ。二人とも子供だ。いらぬ心配事を増やさせる必要はない。いつも通りに過ごすように」
「「は」」
「ええ」
こうして、大人達の夜の会議が終わった。
◆◆
俺の目の前には二人の人(?)が戦っていた。正確には一人の人間の男性と一体の異形がだ。場所はどこかの建物の中か。異形の方は背中に悪魔の翼のようなものが生えていた。勉強の時に聞かされていた魔獣のならば特徴とは一致しない、全然違うような気がする。男性の方は手に一振りの長刀を持って戦っている。
戦況は五分五分だった。どちらも一歩も譲らず、どちらも決めきれない感じだ。
「もう、諦めるのだな。人間よ」
「は。嫌だね。俺は諦めるってのが一番嫌いなんでね。そっちこそあと残ってるのはお前だけだぜ●●●。お前こそさっさと諦めるんだな」
「ふん。貴様等人間など余一人で充分だ。それに余にばかりかまけてる暇もないのであろう。なあ××××よ?」
「ふ。それこそ無用の心配ってもんだ。あっちにはあいつがいる。あいつならなんとかしてくれる。だから大丈夫だ」
二人は会話をしながらも戦闘を続行している。二人の会話は鮮明に聞こえてくるのだが、何故か名前の部分が聞こえない。
男性は長刀を振るい、異形は素手で、互角の戦いが繰り広げられている。
そして、十数分経った所で、
「このままじゃ埒が明かないな。しょうがない。出し惜しみは無しだ。出てこい○○○」
男性が手を前に出して誰かの名前を呼ぶと、その手に白い長剣が現れた。更に、男性の傍には白い女性が出てきた。
「はい、主。○○○。ただいま参上つかまつりました」
「よろしく頼む。それじゃ、やるか」
「はい」
男性の隣に白い女性が並んだ。そして、
「「“覚醒”」」
二人から白い光が放たれた。
白い光が止むと、そこには、
「さあ、やろうか」
白い外套を纏った男性がいた。周りには六つの輪が浮かんでいる。
「ほう。それが“覚醒”か」
“覚醒”?何だそれは?
「ああ、そうだ。これがお前を倒す俺のとっておきだ…。行くぞ!!」
「いいだろう。我が同胞を倒した力、余に見せてみろ」
そして、戦いを再開させようと二人が衝突しようとした時だ。
俺の目の前が真っ白に染まってきていた。
「くそ。あともう少し見せろよ!」
俺は必死に手を伸ばしてあの二人の元に行こうとした。
だが、手が届く事はなく、俺の視界は完全に真っ白になった。
◆◆
「「……は!!」」 (ガバッ)
俺は飛び起きた。結局、あの夢の続きは見れなかった。
くそっ。あの後、どうなったのか知りたいのに。
俺がそんなことを考えながら目を覚まさせていると、隣ではスコール様が俺と同じように手を前に出した状態で起き上がっていた。
「スコール様?」
「…は。シン」
「どうかしたのですか?」
俺の視線に気付いたスコール様は、戸惑いながらも答えた。
「い、いやなあ、変な夢を見てな」
「! 夢……ですか?それはどんな?」
俺はさっき見た夢を思い出した。
まさか、な。そんな事あるはずがないだろう。二人して同じ夢を見るなんて。
「あ、ああ。どっかの建物の中でな。一人の男の人とよく分からない奴が戦ってたんだよ」
「!! それは本当ですか!」
「うお。ど、どうしたんだよ。いきなり」
「あ、す、すみません」
「ま、まあ。話を進めるぞ。それでな、そいつ等が戦ってたんだけどな…」
そこで、スコール様は言葉を濁した。何か言えない事でもあったのか?もしかして、俺が見た“覚醒”とかを見て混乱したのか。確かにあれは説明し難い物だったしな。
取り敢えず、俺は質問した。
「それで、どうなったのですか?」
「あ、いや。……やっぱ今の無し。忘れてくれ」
「え、ちょっと…!?」
「そろそろ飯の時間だぜ。早く行こう」
そう言うと、スコール様は、俺の疑問の声など聞かず、さっさと出て行った。
結局、俺達が見たとする夢は謎のままだった。
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