第1話 転生と出会い
是非読んで下さい。
「ごめんなさい。また……貴方に任せるしかなくて……」
◆◆
「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!」
(は?)
次に俺の意識がはっきりした時、俺の耳にはそんな声が聞こえてきた。
え?何故?事故に遭って爆発に巻き込まれたはずなのに。何故出産祝いの声が?それに体も自由に動かせないし、目も開けられない。
「ああ。良かったわ。私の赤ちゃん。私達の赤ちゃん。ちゃんと産まれてきてくれて。ねえ、あなた」
「ああ、そうだな。なあマリア。実はこの子の名前、もう決めているんだ」
「え? どんなの? 楽しみだわ」
「シンだ。シン・クレイ。自分の『信』じた道を進めて行けるようにって」
「まあ、それは良い名前ね」
俺の理解が追いつかぬまま、男女の声が耳にどんどん入ってくる。俺は依然として開ける事が出来ない目を頑張って開ける事に成功した。
そこには、
「ああ! 目を開けたわ。シンちゃん~。お母さんですよ~」
「シン~。お父さんだぞ~」
俺の目の前には二人の大人の男女の人がいた。声からすると、さっきから聞こえる会話はこの二人の会話なのだろうという事は簡単に確認出来た。二人の目は俺に向けられていた。
「アウッ? アウアアウ? アウアウア?アウ?」
(えっ? どういう事だ? 何で俺を見てるんだ?あれ?)
何か俺の言いたい事がちゃんと言えてないぞ?どうなってんだ?
「まあ! 言葉を喋ったわ。私達の言うことが分かるのかしら?」
「この子は天才だな」
(やっぱり…、この人達は俺に向かって話しかけている…。これって……、まさかと思うけど…)
と、ここで偶然にも俺の目に女の人の目が映った。その中に見えたのは、黒髪黒目の赤ん坊だった。
(これって…、よくラノベとかである…)
ここで、俺は状況を完全に理解した。間違いない。これはいつも見ているネット小説とかライトノベルで見たことがある。『転生』というのを俺はしたのだ。
「……。オギャアーー! オギャアーーー!」
(……。えーー! まじかよーーー!)
俺の絶叫という名の泣き声が響いた。
◆◆
どうも、伊東信助改めシン・クレイです。
俺が産まれてから一ヶ月が経った。いやぁ前世の知識って役立つ物なんだな~。前世でこういう小説や漫画とかを何度も見ていた事が幸いした。一ヶ月も経たずに平常心を取り戻す事が出来た。まあ、頭では理解出来ていても、心では納得出来ていない部分もあるんだかな。あっちに残してきた家族とかあいつの事も心配だし。意識を失う前に聞こえた声。多分あいつだろうな。あいつ、落ち込んでないといいけど。
そんな事を思いながらも、俺は今日も赤ちゃん生活をしている。
ここで、唐突だが赤ん坊の仕事とは何か知っているだろうか。
それは食べる事と寝ることだ。
何故今俺がこんな突拍子も無い事を言ったのかというと…、
「はーい。シンちゃんご飯ですよー」
「アウア。アウアウ」
(ああ…。きてしまったか…)
今日もまた俺の恥辱の時間が来てしまった。無駄に赤ん坊の頃から意識がはっきりしてるって悲しいな。早く普通のご飯が食べたいよ…。
そんな事を思いながら、俺は恥辱の時間を今日も迎えた。
「はーい。ゆっくり飲んでね」
「ゴクッ。ゴクゴク……」
それでも赤ん坊の本能には勝てなかった。気付けば、俺は一心不乱に母乳を飲んでいたのだった。
◆◆
それから数日が経った。
俺はこの一ヶ月で大体の自分の立ち位置を理解した。俺は異世界のとある国の地方貴族『グライド家』の息子…。ではなくグライド家に仕えている従者の一家に産まれたらしい。
おかしい。こういう場合小説とかだとよくある貴族に転生するんじゃないのか。それで異世界で色々やりまくるのが普通じゃないのか。まあ、この体が強いのか分からないが。それに俺TUEEEなんてキャラでもないしな。それに従者ってのもやってみるのもいいかもな。などと頭での現状整理が速攻で終わった。
「マリア。シンの準備も出来たか?」
「ええ。でも大丈夫なの? ご子息のスコール様は…」
「ああ。その話をしておくにしても、シンの挨拶は済ませておいた方がいいだろう」
ここで、俺の両親を紹介しておこう。
父親の名前はティーダ・クレイ。がっちりした体型にさっぱりした性格。
母親の名前はマリア・クレイ綺麗な人でおっとりした性格。
この二人が俺の今の両親だ。
この二人の話を聞く限り、今日は主人のグライド家に俺の事を紹介しに行って、その後何か話をするようだ。
◆◆
主人の家はすぐ近くだった。というより俺達が居た場所は敷地内だったのだ。まあ、当然だろうな。何があったときすぐに駆け付けられるように屋敷に住まわせるのは普通の事だしな。ちなみに俺達が今までいたのは屋敷の離れだったようだ。
両親の会話曰く、「騒がしい所だとシンが泣きかねないからな」だそうだ。
屋敷に入り、父さんの案内で俺達はある部屋に辿り着いた。
コンコン
「旦那様、ティーダです」
「ティーダか、入れ」
「は」
中から声がして、父さんが中に入りその後に母さんと抱き抱えられている俺が入った。すると、そこには異様な光景が広がっていた。
所々にベビー用品やおもちゃ等があり、いかにも子供部屋といった雰囲気が部屋全体に感じた。しかし、その中で重苦しい雰囲気を出している人が二人いた。二人ともベビーベッドの中を覗き込んでいた。
「旦那様。どうですか。スコール坊っちゃまのご様子は…」
「見ての通りだ。一ヶ月前から変わらん」
見てくれと旦那様らしい人がベビーベッドの中を見るように促してきた。俺の両親も促されてベビーベッドの中を覗き込んだ。俺も頑張って見ることに成功した。そこに見えたのは、何枚もの布で異様に覆われている俺と同じ位の年の赤ん坊が寝ていた。
「奥様。やはりまだ触れないのですね」
「ええ。もう一月よ。一体なんなのかしら…。産まれて数日は何も問題無かったのに…」
「幸い、布か何かで覆っている状態だと抱くことも出来るしミルクも飲ませる事も出来るんだけど…」
どうしても、直接触れる事だけが出来ない。弾かれると旦那様はおっしゃった。
一ヶ月前か…。俺が産まれた時期と丁度重なるな。まさか、俺が関係しているとか。ハハハ、まさかな。ただの偶然だろう…。
俺がそう思って見ていると、俺の目にスコール様の全身が光って見えた。一瞬驚くが、俺は落ち着いてもう一度じっくりと見た。綺麗でそれでいて優しそうな白い光。全てを包み込むような暖かい光。そんな感じだ。
俺はその光に不思議な魅力を感じた。どうしてもその光に触れたくて、必死に手を伸ばした。
「あら?どうかしたの?シンちゃん?」
「マリア。どうかしたのか?」
「この子が、スコール様に手を伸ばしてるのですよ。うん。よしよし、坊っちゃまに挨拶しましょうね~」
母さんが何かを察してくれたのかスコール様に近付けてくれた。俺は好機とばかりに手をむき出しの顔に近づけた。
「おい! やめろ。弾かれるぞ」
旦那様が止めようとするが、その前に俺の手がスコール様の顔に触れた。
その瞬間、
パッリーン
何かが割れる音がした。そして、一陣の風が吹いた。大人達は思わず手で顔を覆った。
少しして、皆が見てみると、
「…………………」(じー)
「…………………」(じー)
俺とスコール様が見つめ合い、
「「キャ、キャ」」
俺もスコール様も互いに何かを感じ取ったのか笑いあった。
「一体何が起こったんだ?」
『さあ…?』
大人達は俺達を見て、何がなんだか分からない、という顔をして困惑していた。
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