第15話 神殿の内部と案内役
こんなに遅くなって申し訳ありませんでした。
何とか書ききったので、是非読んで下さい。
「痛ててて。どうなったってんだよ。一体!?」
渦っぽいあれに吸い込まれてからどれ位経ったのか。俺は背中に硬い感触の当たる場所で目を覚ました。辺りを見回してみると、どこかの建物の中にいることだっていうのは分かった。
周りにあるのは、何本もの太い柱綺麗に並べられたいくつもの長椅子。全体的に黒で統一された壁や床や天井。
そんで、一番に目に行くのが、俺の真正面にある綺麗な窓。確かステンドグラスだっけ?それと、そこから入ってくる光に照らされているひとつの女の像だな。普通に綺麗な女性の像だ。それにしても、この黒一色。もしかして、ここは……、
「う、う~ん…」
「ここは、一体…」
そこまで見ていた時に、並べられた長椅子の中の二つから声が聞こえてきた。声のした方に顔を向けると、そこには二つの人影があった。
「全くもう、先程のは何だったんですの?」
「体は………、何ともないわね。後はここが何処なのか。という事だけかしら…」
その人影は、俺の良く見知った二人だった。最初に起き上がったのは、エリザだ。その少し後に起き上がったのがマリアおばさんだ。
エリザは起きてそうそう、さっきまでいた場所とは全然違う場所にいるから混乱しているが、マリアおばさんは意外と冷静にしている。
「あら。スコール様?」「スコール坊っちゃま?」
俺が見ているのに気付いた二人が、同時に俺に声をかけてきた。
「おいっす、二人とも。起きたか?」
取り敢えず、起きた二人に対して挨拶をする。
「スコール様! 何が起きたのか分かりますか!?」
「スコール坊っちゃま。ここがどこか知っていますか?」
二人揃ってまた同じタイミングで言ってきた。
「あ~。多分だけど、ここはさっきのダンジョンの中だと思う。そんで、俺達はさっきの変な渦?に吸い込まれてこうなったんだと思う」
俺はさっきから中の様子を見て、ここに来る直前の出来事を思い出してなんとなく答えると、二人はまた同じタイミングで声を出した。三回目である。
「ダンジョンの中!?」
「吸い込まれた!?」
ヤバイ。ちょっと面白くなってきたんだけど。
「あり得ない!! ダンジョンにそんな機能はなかったはずよ!」
何だ? マリアおばさんの様子が変だぞ。今まで見たことないほど取り乱している。
「おばさん。どういう事?」
取り敢えず、おばさんが言っていた機能の事が気になったので、聞いてみた。
「あ。……すみません。お二人とも」
おばさんは、俺達の視線に気付くと、すぐに冷静になって謝ってきた。
「おばさん。一つ聞くけど、普通のダンジョンにさっき俺達を吸い込んだみたいな渦?とかそういう機能は無いのか?」
おばさんは、俺の言葉に少し黙った後、ため息を吐いて答えた。
「……はあ。はい、そうです。本来ならばダンジョンにこんな機能はありません。ダンジョンとはただそこにあるだけで、誰を通すとか、誰を拒む等そういうものはないのです」
おばさんが真面目な雰囲気で俺の質問に答えた。
「ふ~ん」
「成る程です」
「!? お二人とも、それほど驚かないのですね」
おばさんは、反応の薄い俺達の様子を見て、少し驚いた声を上げた。
「いや。そんな事言われてもねぇ…」
「?」
俺の様子におばさんの頭の上に?マークが出ている。
「こいつが俺が最初に入ったダンジョンだし。右も左も分からないのにそんな事を言われてもどう驚けばいいか分からないし。へぇ~って位にしか思わないよ」
「私の場合は……。単に驚き過ぎて逆に反応が薄くなっているだけです……。これでもちゃんと驚いています」
俺の言葉に続くようにエリザが言った。
おばさんは、俺達の返答に納得したようで、
「成る程。それもそうですね。分かりました」
と言ってくれた。それから少し何かを考えた後、
「それじゃあ、この中を色々調べてみましょうか。見た所この部屋にはいくつか通路があり、そこを進んでみれば他の部屋にも行けるかもしれません」
「はい」「分かりましたわ」
そして、俺達三人は辺りを探索し始めた。
◆◆
「それにしても、ここがダンジョンの中とはな……」
「おかしい。前に入ったダンジョンにはそんな機能無かったと思うんだが……。このダンジョン特有の機能か。でもそれならどうしてこんな特殊なダンジョンがいきなり現れたんだ。…………」
「いや、あくまで推測ですから。そこまでの確信はありませんよ」
(父さんの反応が変だな。ま、そんな事は置いておいて)
俺は改めて周囲の状況を確認してみた。
回りにあるのは、何本もの太い柱、綺麗に並べられた長椅子。全体的に白で統一された壁や床や天井。
それに、起きた時に目の前にあって、この建物の中で俺の一番に目を惹く、あの綺麗なステンドグラスとそこから入る光に照らされている一人の女の人の像だな。
それにしても、まさか俺と一緒に父さんとアデリナさんがここに吸い込まれていたとはな。取り敢えず周囲の探索をしようとしたら二人がいきなり起き上がってきたんだよな。まだ状況をよく呑み込めていない二人に俺の推測を言ったら、父さんとアデリナさんは、予想に反してそこまで取り乱すことは無かったから手間が省けて良かったけど。その後は、探索をしてみようと父さんが言い出したので、三人で探索をしている最中だ。
(さて、と。これでこっち側は大体の場所の探索したけど、何も無かったな。父さん達の方は何かあったかな?)
俺が起きた所で待っていると、アデリナさんと父さんが戻ってきた。
「父さん。アデリナさん。そっちはどうでしたか?」
「ああ。扉があったんだが、どうやっても開かなかったよ」
「私の方もだ」
やっぱり、無理だったか。俺の方でも同じく扉が何個かあったんだが、普通に開けようとしても、叩いても、蹴っても扉はビクともしなかったんだよな。う~ん。前世のゲームとかだったら、こういう最初のダンジョンだったら、すぐに次のエリアに行って冒険スタートって感じなんだけどな……。何か入り口の時と同じようにアクションを起こさないといけないのか?
と、なると。何かするとしたら、まだ唯一調べてないあそこだな。あそこに行ってみるか。
俺は体をある一方向に向き直し、その方向に歩き始めた。
「シン。どうしたのだ?」
「その方向にあるのは、確か…」
突然の俺の行動にアデリナさんが疑問の声を上げ、父さんは俺の行く先を確認している。
「白い女性の像…」
「……と、言うことは…、あそこに何かあるということなのか?」
「それは分からないけど、もうあそこ以外の全部は調べ終わったし。取り敢えず、俺達も行ってみようか」
二人も俺がどこに行くのか確認した後、俺の後ろに付いてきた。
そして、俺が像に触れる位に近付くと、遅れて二人も俺の横に立った。
「ここに、次の所に行く手掛かりがあるのか?」
「それはどうか分からないけど、他の場所が全部駄目だったならば、必然的にここだと思います」
俺達三人は、女性像を見上げながらどうしたらいいのか話し合った。
(まあ、多分……。ここに入った時と同じ様にすればいいんだと思うけど)
俺は、確信に近い推測を立てていた。何故か分からないが…。此処に入る時と同じ様な感覚に襲われている。
俺は入り口の時にやった時と同様に今度は女性像へ触れようと一歩前に出た。
「っ!? 近付いても大丈夫なのか…!?」
「さあ?」
「さあって……」
「大丈夫だと思いますよ。他の所を触っても大丈夫だったのですから。此処を触ったとしてもそうそう危険な事になる訳ではないと思います」
「そ、そうか…。そうなのか?」
まだ少し混乱しているアデリナさんを放っておいて、俺は女性像に触った。
◆◆
「本当に大丈夫なのでしょうか?」
「まあ……。大丈夫じゃない?」
「何でスコール様が疑問系になってるんですの?」
「いや、何が起きるか分からないし?予想だけを言っても混乱させるだけだと思うし」
「それは……。そうなのですが…」
「一応、何が起きても対処出来るように準備くらいはしておいても良いんじゃない」
「そうですね」
「分かりましたわ」
二人がそれぞれの武器を構えて準備が整ったと判断した俺は、黒い女性像に触れようと手を伸ばした。
(ま、多分そんなに危険な事になる事は無いだろう)
俺は何となくそう思いながら手を触れた。
◆◆
この時、その場にいた全員は分かれた場所に居たから気付かなかった。いや、どうやっても気付く事は出来なかったかもしれないが。
今までの一連の流れは、別々の建物で同じ時間で行われていたのだ。
それは、本当に偶然だった。いや、もしかしたら何者かがそうなるように仕組んだのかもしれない。が、それを確かめる術は何もない。
だが、例えその術があったとしても、もう関係無い。そこに至る最後のピースが揃ってしまったのだから。
二人が同時に像に手を触れた瞬間、
━━おお。この懐かしい感覚は……、お久し振りです。我が主━━
━━もう遅~い。どれだけ待ったと思ってるのよ!早く来て、主━━
シンの方には、おしとやかな女性の声が、スコールの方には活発そうな女性の声がそれぞれ二人の頭に響いてきた。
「!? 何ですか。この声は」
「一体どこから!?」
いきなりの声に二人とも驚いた。
「え! どうしたの? スコール坊っちゃま」
「何かあったのか? シン」
しかし、その声はシンとスコール以外の四人には聞こえないようで、突然大声を出した二人にティーダとマリアが疑問の声を出した。
(はぁ!?)
(聞こえていないのか!? この声が)
四人を見て、二人は更にどういう事なのかと混乱した。
だが、
━━大丈夫です。今は声を主にしか聞こえないようにしているだけです━━
━━大丈夫大丈夫。主以外に聞こえなくしているだけだから━━
((何っ!?))
二度目の声に今度は二人とも声を出さずに心の中で驚いた。
二人ともそれ以降、少し黙り、再度同じ声がまたこないかと身構えていた。だが、待っていても一向に次の声が聞こえてはこなかった。
二人とも、少しの間、一体何でと考え込んでいた。他の四人も、考え込んでいる二人を黙って見続けていた。
そして、二人は同時に思い至った。
(まさか………!!)
(こっちから聞かないとダメっ!?)
その事に至った二人は、早速試してみる事にした。
二人はそれぞれの目の前にある像に向かって、
「あなたは何者なのですか?」
「おい! お前は誰だ!?」
シンはいつも通りの口調だが、大きな声で、スコールは声を荒げて謎の声に向けて質問した。
「うわっ! どうしたのだシン。いきなり」
「いきなりどうしたんですの。スコール様?」
しかし、返答が来る前に、アデリナとエリザからビックリした声を出した。ティーダとマリアの方は、シンとスコールが突然声をあげたので、訝しげな視線を送っている。
「あ…。すみません」
「あ~。悪い」
二人とも、いきなり声を出して驚かせてしまった事を悪いと思い、反省の言葉を口にした。
「あの~。すみませんが、声は他の人達にも聞こえるようにしてもらえませんか?」
「すまんけど…。他の奴等にも声を聞かせてやってくれないか?」
そして、何が何やら分かってない四人の為に、声がちゃんと聞こえるようにお願いした。
すると、
━━はい。承りました。我が主━━
━━オッケー。了解主━━
「え!」
「何! この声」
「どこから聞こえてきてるんだ!」
「誰ですの!」
突然どこからか聞こえてきた声に四人がさっきのシン、スコールと同様に驚いた。
「とまあ。これが先程声をあげた原因です」
「こういう事。分かった?」
二人はさっき大声をあげたを簡潔に話した。
『成る程…』
四人は余りの出来事にそう答えるしかなかった。
「さて、と……」
「それじゃあ……」
四人とも納得(?)してくれた所で、二人は体の向きを女性像の方にして、
「あなたは何者なのですか? それと、この後どうすれば良いのか教えてほしいのですが」
「あんたは誰だ? それと、こっから次に進むにはどうすれば良い?」
二つの質問をした。これに対して、声の主は、
━━残念ですが、一つ目の問いには答えることは出来ません。二つ目の方は扉を開けますので、そこから進んで下さいませ━━
━━ん~。一つ目の方は答えられないけど、二つ目の方はちゃんとドア開けるから、そこから入ってきて━━
そう答えてきた。すると、声が聞こえたすぐ後に、
ゴゴゴゴゴ
と、音がして、像の下の床の一部が開き、その下から階段が現れた。
━━さぁ。そこからお入り下さい━━
━━ささ。ちゃちゃっと入ってきてね~━━
床が完全に開ききった所にまた声が聞こえて、中に入るように促してきた。
「それでは、皆さん。入りましょうか」
「んじゃ、早速入ろうぜ~」
二人は、本当に入って良いのか少し考えたが、今は声に従う方が良いという結果に行き着いて、後ろの四人と一緒に入ろうとする。
━━ああ。駄目でございます。入って良いのは主お一人だけでございます━━
━━ダメダメ。進めるのは主だけだよ━━
だが、その直前で、声の主により、止められてしまった。
「え? 何でですか?」
「え? 何でだ?」
二人は、声の主に何故と聞いた。
━━訳は後でお話しますので、取り敢えず主お一人でお進み下さい━━
━━ごめん。今は話せないんだ。でも、後で話すから取り敢えず主一人で入ってきて━━
二人の問いかけに、謎の声の主は、そう答えた。
この答えに二人は、それぞれ自分の後ろに立つ他四人に目を向けた。
四人はその視線に対して、
「行っても良いぞ」
「うむ!」
「それしか方法は無さそうですからね」
「そういう事ですわ」
快く送り出す言葉を言ってくれた。
「………はい、分かりました。絶対に戻ってきますから。待っていて下さい」
「………うん。分かった。絶対戻って来るから待ってろよ!」
四人の言葉に、二人は力強く返事をして、像の方に振り向くと、中に入って行った。
◆◆
「此処は、何だろう。変な感覚がする」
「何だこれ。よく分からないけど、変な感じがする」
像の下の床から降りて行った二人は、終わりの見えない位に長い階段を下に下に歩いていた。
その途中、歩いていると、二人は奇妙な感覚に襲われた。まるで、初めて訪れた場所なのに、妙に懐かしく、前に一度訪れたような感覚だ。階段を降りる足の感触、壁に着いている手の手触り。さらに中に入ってからの空気や匂い等、その全てに懐かしいような感覚を覚えたいる。
二人ともそんな感覚を味わいながら歩いていると、
「ん? ここが階段の終わりか?」
「お。やっと階段が終わったみたいだな」
二人は、階段を抜けて、広い通路に出た。壁にはランプが掛けてあり、建物内でも、きちんと奥まで見えている。所々に横道があるのが気になり、どうすればいいか分からず、二人は立ち止まっていた。
━━ふふ。大丈夫ですよ。真っ直ぐ進めば良いですよ━━
━━あはは。別に危険な事はないから真っ直ぐ進んできて━━
「あ。大丈夫なんだ」
「OK。じゃあ行くか」
声の主がそう教えてくれたので、二人は、歩み始めようとしたところで、
━━ああ。待って下さい━━
━━あ。ちょっと待って━━
その声の主から待ったがかかった。
「っ!? 何だ?」
「何だ? 問題でも起きたのか?」
一歩踏み出そうとしたところに声をかけられたので、二人とも変な体勢で聞き返す事になった。
━━念のために、案内役をそちらに送りましたので、その者の後に付いてきて下さい━━
━━道に迷わないように案内する奴をそっちに寄越したから、そいつの後に付いて来てね~━━
どうやら道案内をする者を送った事を報告するために、呼び止めたみたいだ。
「それは誰なんだ?」
「どんな奴なんだ?」
二人がその案内役の事を聞こうとした瞬間、
バサバサバサ
コツコツコツ
シンの方からは翼は羽ばたかせる音が、スコールの方からは、何者かの足音が向かってくる音が聞こえてきた。
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