第14話 光景と台座
前回の更新から大幅に遅くなって申し訳ございませんでした。
何とか投稿しましたので、読んで下さい。
それから、三十分。今現在俺達の状況判断と言うと、
「反省して下さい!」
「はい……」
スコール様が正座をさせられて父さんと母さんの説教を食らっていた。それを俺、エリザ様、アデリナさんの三人で横から見ている。俺とアデリナさんは呆れ顔で、エリザ様は笑いながら。スコール様は、流石に三十分間正座はきついのか足が痺れている様子だ。
「やれやれです」
「全くだ」
「フフフ。本当ですね」
俺達が談笑していると、説教が終わったのか、スコール様が立ち上がってトボトボと歩いてきた。
「説教は終わりましたか?スコール様」
「あぁ…。だけど、帰ったら今度は父さんと母さんから説教されそうだな」
「当然です!」
スコール様の呟きに母さんが激しく反応した。
「坊っちゃまはもう少し周りの事も考えて下さい!!」
「それと、これ以上勝手に行動されますと、屋敷に帰ってからの説教に私達二人も参加することになりますので。覚えておいて下さい」
母さんの言葉に父さんが続けた。
スコール様は父さんのその言葉にげっとした表情になった。よっぽど帰ってからの説教が嫌なんだろうな。
「ま、それは後にして。まずはここから何とかして脱出して元の場所に戻る事を優先しますよ」
「え~~」
父さんの発言にスコール様が不満たらたらの様子で声をあげた。
だが、
「な・に・か?」
「いえ、何でもありません……」
父さんに睨まれて、すぐに黙らされた。さっきの説教が予想以上に効いているようだ。
「さて、まずは周囲の調査から始めましょう。皆さん、何か見つけたら私かマリアに報告するように。分かりましたね?」
「「「はい」」」
「はーい」
俺、エリザ様、アデリナさんがいつも通りの返事をして、スコール様がしぶしぶとした感じの返事をした。
「それじゃあ、散開!」
そして、周辺の探索が始まった。
◆◆
それからまた三十分位探索してみたのだが、一向に手がかりの一つも見つからなかった。
まず、俺とスコール様で周りを覆っている霧について調べてみた。霧に近付き、手を霧の中に入れてみたが、何も問題が起こらなかったので、思い切って飛び込んでみると、そのまま飛び込んだところから出てしまったのだ。どこからやっても同じ結果になってしまう。スコール様はそれを面白がって遊んでいたところを母さんに怒られていた。
俺達二人が霧を調べている間、父さん、母さん、エリザ様、アデリナさんの四人は、神殿の方を調べていた。スコール様が入り口から入ろうとして弾かれたので、本当の入り口は別の場所にあるのではないかと予想を立てて、壁の方に色々やっていた。しかし、壁を叩いても、魔法を当てたりもしていたのだが、壁はビクともせず、お手上げ状態だった。
そして、現在俺達は、また集まって作戦会議をしていた。
「ヤバいな。八方塞がりだ」
「ええ。そうね」
円状になっている俺達の中で、父さんと母さんがそう言って始まった。
「まあ、確かにこういう状況になるわな。外の霧は入ったと思ったら同じ場所に戻されるし……」
「それと、二十回に一回の確率で入った場所ではないところから出ますし」
「ああ、あれは面白かったな。たまに上から落とされたりもしたからな」
ま、魔法で浮いたから問題無かったけどな。スコール様がハハハと笑いながら言った。いや、笑い事じゃないからね。本当にマジで。待っていても出てこないから不思議に思ってたら、突然上の方から「おーい、シン~」なんて聞こえてきたもんだから、振り返ってみたら、スコール様が風属性魔法の『フライ』で浮かんでいたもんだから本当に驚いたよ。
「にしてもだ……」
と、スコール様がいきなり立ち上がり、目の前に聳え立つ二つの神殿を見上げた。そして、今度は┃黒い方のダンジョンに近付き、扉の横にある柱に手を触れた。
「だいたい、こいつの中への入り方って……ウッ!!」
その瞬間、スコール様が突然頭を抑えるように手を置き、苦し気な声をあげた。
「!? スコール様!」
俺は直ぐ様スコール様の元に駆け寄って具合を確かめた。
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
今現在の具合を看る限りでは、呼吸が荒くなって、眼も完全に見開いている。動悸も激しい。だが、そこまで大事という訳でも無さそうだ。呼吸も正常になってきているし、さっきまでとは違い、様子も落ち着いてきた。
「大丈夫ですの!?」
「あ、ああ。大丈夫だ……」
エリザ様の心配する声にスコール様は呼吸を整えて答えた。俺達は取り敢えずは大丈夫だということが分かったので、安堵の溜め息を吐いた。その後、父さん達の所に戻って会議に参加しようとしたところで、
「シン。ちょっと待ってくれ」
「? どうかしましたか、スコール様」
俺はスコール様に呼び止められた。俺は振り返ってスコール様の方を見た。するとそこには、真剣な表情でこちらを見るスコール様がいた。さっきまでとは大違いの顔だ。
「………………」
「あの、スコール様…?本当にどうしたのでしょうか?」
呼び止められたままこちらを見て黙っているスコール様に、ちょっと不安になった俺は、また声をかけた。
「シン」
「は、はい」
そして、改めて名前を呼ばれて少し上擦った声で返事をした俺に、
「あっちの白い方のダンジョンに触ってみてくれないか」
「はい?」
スコール様は、そんな事を言った。
◆◆
いきなりのスコール様の発言に、俺は思わずすっとんきょうな声を出してしまった。
一体何故?その疑問符が俺の頭の中を埋めていった。何故スコール様がそんな事を言ってきたのか。その理由が皆目見当もつかなかったため、脳が一時的にフリーズを起こしてしまった。
「あ、あのスコール様。な、何故触らなければ…?」
「訳は後で言う。だから、頼む」
その余りにも真剣で真面目な表情と声に、俺は冷静になって、心も落ち着いた。
「……触れるだけで良いんですね?」
「ああ。触るだけで良い」
「……分かりました」
その真剣な眼差しに俺は何か特別な理由があるのだと直感で分かり、スコール様の言う通りにしてみた。
そして、白い方の神殿に、手を触れた。
その瞬間、
「ウグッ……! グアッ!?」
突然頭の中に 何かが入ってくるような感覚がして、視界が真っ白になった。
そして、少し時間が経って、俺の視界が段々と晴れてきた。だが、完全に晴れた訳ではなく、所々曇っている。
改めて周りを見てみると、今、俺が見えている光景の場所がさっきまでいた神殿の前だと分かった。何故なら、目の前にさっきの神殿があるからだ。しかし、さっきまで居たところとは異なっている部分がいくつかあった。まず一つ目は、神殿そのものだ。俺がさっきまで見ていた神殿は、いかにも昔から建っているような、古の神殿って感じだったのに、今視ている神殿は、真新しく最近造られたような状態だ。二つ目は、周りの景色だ。さっきの場所と今のこの光景とでは、何となく違和感があった。改めて確認してみると、それは周りに生えている草花だと気付いた。さっきの場所は、周りの草も花も綺麗にそして元気に生い茂っていたのに対して、ここのは、何と言うか、まだ幼いんだ。草も花も。まるで新芽のような状態なんだ。そして最後に、目の前にある台座だ。これが目下の一番の謎だ。これが今までの中でも一番搾り分かりやすい違いだった。だって、こんな台座、俺達が何度探しても見つからなかったのだから。一体これは何なんだ?
俺がこの光景について色々と疑問に思っていると、不意に視界が横にずれた。
(何だ? 何が起こったんだ?)
突然の事態に頭の中が混乱している。だが、そのすぐ後に頭が真っ白になる光景が視界に飛び込んできた。
横にずれた視界に映っていたのは、
(ス、スコール……様?)
我が主、スコール・グライドと瓜二つの顔だった。
(……いや、違う。スコール様じゃない)
落ち着いてよくみると、スコール様とは決定的に違う箇所があった。それは年齢だ。目の前の男は、スコール様よりも年をとっているのだ。見た感じで十五、六歳位かな?
俺がそんな風に考えていると、目の前の男が何か言葉を俺に向けて言ってきた。俺と言うよりも、俺の意識が入っているこの体の持ち主にだが。そして、言ってきた言葉は俺には何故か聞こえなかったが、この体の持ち主にはちゃんと聞こえたようで、頷くように視界が縦に揺れた。
そして、視点がさっきの台座に戻ると、その台座の上に手が置かれた。
その瞬間、俺の視界が真っ白になった。
◆◆
「………はっ!」
俺の視界が一気にクリアになった。俺は念のために手をグーパーさせて体を動かせるか確認してほっと安堵の溜め息をこぼした。
「だ、大丈夫か! シン」
俺のすぐ横からアデリナさんが心配そうな顔を近付けて覗きこんできた。
「す、すいません。大丈夫ですから」
俺は何ともない風に装って立ち上がった。
「本当に大丈夫ですから。そんな顔をしないで下さい。アデリナさんは笑顔の方が可愛いですよ」
アデリナさんを安心させるために俺が言うと、
「ば、馬鹿な事を言うな! 私は別に可愛いなどと……!」
と言いながら顔を赤くしていた。
ヤバい。可愛い。抱きしめたい。今すぐ抱きしめたい。
そんな衝動に駆られるが、それより前にやるべき事があるので、グッと堪えた。
スコール様の方に顔を向けて、
「シン!」「坊っちゃま!?」
口を開こうとした所で父さんと母さんによる邪魔が入った。
「二人とも大丈夫か!?」
「頭や身体に異常はない?」
恐らく、俺達が二人連続でおかしな事になっているのを見てエリザ様が呼んだのか、もしくは二人が自分で気付いたかのどちらかだろう。
「大丈夫です。何ともありません」
「そうそう。全然平気だって」
俺達の様子を見て、本当に心配がなさそうだと判断した二人は安堵の声を出した。
それよりも、
「スコール様」
「言いたい事は分かってる。お前も見たんだろう?」
「はい」
「じゃあ、多分あれも……」
スコール様はそう言うと、顔をある一方向へと向けた。つられて俺もその方向に向くと、
「やっぱり」
「ありましたね」
さっきの光景にもあったものと同じ物らしい台座があった。
「シン。お前もあの光景を見たんなら分かると思うけど、あれに俺達が触れたら…」
「はい。確実に何かが起こると思います」
「ああ」
「え? どういう事だ?」
「あの…、お二人とも、さっきの数秒間で何があったのですか?」
俺達だけで話を進めていると、アデリナさんとエリザ様から疑問の言葉をかけられた。
「あ、えっと、すみません。実は私達もちゃんとは分かってないのです」
「でも、今確実に言えるのは、あいつがこの状況を変えてくれるって事だけだ。付いて来いよ。二人とも」
そう言って、俺達は台座の元に歩き出した。 アデリナさんとエリザ様の二人は頭に疑問符を浮かべながらも俺達の後について来た。
「あ、ちょっと待て四人とも!」
「全くもう! 何があったのよ!」
父さんと母さんは台座がいきなり現れて俺達がそこに向かったのを見て慌てて追って来た。
そして、俺が白い台座、スコール様が黒い台座の元までたどり着いた。
台座に着いて分かった事がある。台座の上に文字と絵が彫られていたのだ。さっきの光景を見た時は白いモヤみたいなのがかかっていたのでちゃんと見えなくて分からなかったのだが、こうやって直に見てみると、何かが描かれているのが分かる。この中央に描かれているのは、太陽か?それにこの絵の上下に彫られている文字。これは……、
「シン。その台座に何があるのだ?」
「俺にも見せてくれ」
と、ここでアデリナさんと父さんが追い付いたようで、俺に声をかけてきた。
俺は見せても別に問題はないだろうと考えて二人にも見せる事にした。
「ん? 何だ? この絵? 太陽か?」
「それに、この文字、見たことがないぞ。何と読むのだ?」
……何? 二人はこの間文字が読めないのか? 俺には何て書いてあるのかはっきり分かるのに。
「おい、シン」
「……! はい、スコール様」
唐突に隣の台座にいるスコール様が声をかけてきた。スコール様の方ではエリザ様と母さんが横から覗き込んでいる。
「これ、読めるよな」
「…………はい」
「「「「え?」」」」
俺達二人の会話に台座に注目していた四人がこっちを見た。
「上の方に何て書いてある?」
「『太陽の神殿』と」
「へぇ。因みに、俺の方は『月の神殿』って書かれてるぜ」
「「「「え!?」」」」
俺達が簡単に文字を読んでいったので、他の面々は驚愕の顔になった。
「じゃあ、下の方の文字は…」
「それは同時に言うぞ」
「はい」
俺達は一拍置き、空気を吸って声を出した。
「「光(闇)の力の資格を持つものよ。これに触れよ」」
俺がそう言った瞬間、
ビキビキ パリーン
二つの神殿の扉の所に皹が入り、音を立てて何かが割れた。
だが、神殿の見た目に変化をした様子はみられなかった。
「今のは……」
「さあな。だけど、これで俺達がこれに触れれば、何かが起こりそうだな」
「はい」
「ちょ、ちょっと待って下さいませ! スコール様、シン」
俺達が今度は台座に手を触れようとしたところで慌てた声のエリザ様に止められた。
俺達が顔を向けると、アデリナさんや父さん達も俺達に向けて説明しろという視線を向けていた。
「あの、今一体何が起きたんですの? というよりこの台座はなんですの? 二人は何を知っているんですの?」
エリザ様から一気に質問された。まあ当然の反応だよな。いきなりこんなにスパスパ物事が進んだら普通に疑問に思うだろうな。
さて、どうしようか。俺達はただ流れに沿って動いているだけだし。説明しようがないんだよな。
「悪い。俺達も全部分かってる訳じゃないんだ。だけど、今のこの止まった状況を何とか出来るかもしれないんだ。頼む。ちょっとだけ、任せてくれないか」
俺にどうしようか考えていると、スコール様が簡略化した説明をしてくれた。
「私からもお願いします。父さん、母さん」
スコール様の発言にまだ少し迷っている二人に対して俺も加勢した。
「う~む。しかしだなぁ……」
「……あなた。私は一度試してみても良いと思うわ」
「え?」
それでもまだ悩んでいる父さんに、母さんが俺達の顔をじっと見た後に賛成の意を示してくれた。
「どうした、いきなり?」
「よく分からないけど、この二人の顔を見たらやってみても良いんじゃないかなと思ったのよ」
母さんはまた俺達の方に顔を向けて言った。
「う~ん。…………よし、分かった。二人ともやってみてくれ」
「! ありがとうございます。父さん」
「ありがとうおじさん! シン。早速やろうぜ」
父さんも無事賛成してくれた所で、俺達二人はあの光景と同じようにダンジョンを正面にした状態で台座の側に立った。
「これで何も起こらなかったらどうなるのでしょう?」
「だ、大丈夫だと思います。シンもスコール様もあんなに自信を持っていましたし……」
エリザ様とアデリナさんの不安げな会話が後ろから聞こえてきた。だが、俺の中にそんな不安な気持ちなど一切芽生えていなかった。確実に何かが起こるという確信に近い思いが頭の中に沸いている。
そして、俺達の手が台座に触れた。
すると、
パアアア
突然、二つのダンジョンが輝き出したのだ。
「な、なに!?」
「何が起きた!?」
突然の事に俺達は思わず目を手で覆った。後ろの方で父さんと母さんの驚きの声が聞こえた。後ろを振り返って何か異変がないかと確認してみると、四人ともちゃんと目を覆ってダンジョンの方を見ないようにしていた。
「おい、見てみろよ。何か変なものが扉の所にあるぞ」
「え?」
スコール様に言われて、扉の方に視線を戻すと、本当に変なものがあった。あれは、渦か?
目を覆いながらなので、詳しくは見えない。だが、渦があるのは分かった。
「あれは一体……?」
「分かんねぇ。だけど、行ってみた方が良いってのは分かる」
そう言って、スコール様は一歩踏み出した瞬間だった。
俺達六人の身体が浮いたのだ。そして、ダンジョンに向かって吸い寄せられるような風が吹いた。浮いていた俺達はその風に乗って、扉の渦に呑み込まれてしまった。




