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第13話 知識と森とダンジョン

久し振りの投稿です。読んで下さい。

「よし。それじゃあ、四人とも。今日は町の外の森に行ってみようか」

『…………は?』


 開口一番、父さんが俺達にそう言ってきた。


 ……えーと。どういうこと?もしかして、何かのドッキリ?いや、きっとなにか理由があるはずだ。思い出せ…!ここ最近の事を。

 あれから気が付けば、一ヶ月の時が過ぎていた。その一ヶ月間俺達は、無属性魔法の三系統の訓練をやっていた。と言っても、俺とスコール様が使える魔法は多い上に、父さんと母さんに適性のない魔法まで俺達は持っているため、その辺りは口頭の説明と家にあった書物等で勉強するしかなかった。それでも、基本的には俺の前世で培ったイメージ力があったから、説明を受けただけで何となく理解出来た。

 そのお陰で始めてから一週間位で父さんから「うん。これなら実戦でも充分使えるレベルだよ」と言われたほどだ。

 スコール様は、最初の頃こそ苦戦していたが、俺が使っているのを見た後で大体のイメージを掴んだのか、その後は楽々と無属性魔法を覚えていった。

 エリザ様とアデリナさんは、俺達二人より魔力が少なく、イメージ力も俺達ほどあるわけではないため、最近になって漸く使え始めるようになったレベルだ。

 父さんと母さんの二人は、そんな俺達の成長に特別なにか言う訳でもなく、ただ側で教えて静観している。


 そして、現在に至る訳だが……。


 駄目だ。ずっと考えているんだが、一向に今の唐突な言葉の答えが出てこない。それに、俺達が玄関の前で「今日は何をやってみようか」等と話し込んでいたところに来て、突然言われたのだ。

 あまりにも突然過ぎたので、俺達四人の思考が一瞬フリーズしたほどだ。


「あなた。突然過ぎますよ。子供たちが戸惑ってます」

「ん? あ、ああ。ごめんごめん。ちゃんと説明するから」


 母さんから注意されて父さんの説明が始まった。

 父さんの話によると、俺達の成長速度と実力を考えてみると、子供の中ではトップレベルの実力を持っているようだ。そのため、そろそろ対人以外の戦闘経験も積ませておきたい。という事で町の外に出掛けて動物や魔獣等と戦わせてみよう。ついでに、町の中のように舗装された道だけじゃなく、森の中のようにイレギュラーな土状態での体の動かし方も教えて慣れさせておく必要があるだろう。って話で町の外まで行こうということになった訳だ。


「そういう訳で、これから森に行こうと思うんだけど……」

「皆。行きたくなかったらそう言っていいんですからね」


 父さんの説明の後で、母さんが行きたいか行きたくないかの意思確認をしてきた。父さんも母さんが聞いてきた事で微妙な顔になった。二人とも、本心ではそこまで進んで行かせたいとは思ってないんだろうなという推測をした。ま、どんな危険があるか分からないからな。不安になる気持ちもあるんだろう。


「いきなりそんな事を言われましても……」

「お嬢様に危険な真似はさせたくありません」


 エリザ様とアデリナさんは行くのに否定的なようだな。

 スコール様はと言うと、


「いいじゃん! 面白そうだし、行こうぜ。皆」


 分かりやすい位にノリノリだった。予想していたとは言え、この人は……。普段町に行くときとかは途中の時点で面倒くさくなって途中でやめるのに。理由が面白そうだから行くとか、我が主らしいといえばらしいのだが。


「シンはどうだ。反対か?」


 スコール様が俺に聞いてきた。俺の答えは勿論、


「良いと思います。それに、私の今の実力も試してみたいですし」


 賛成に一票を入れた。異世界転生してどれだけの実力を手に入れたのか気になっているのかは事実だしな。


「ほら。シンもこう言ってるし、二人も一緒に行こうぜ。もしヤバイ状況になっても俺とシンで守るからさ」


 何か勝手に約束事を取り付けられた気がするんだが、まぁいいか。俺もそこは同じ考えだしな。


「ふむぅ……。スコール様がそうおっしゃられるのでしたら、私も行きますわ」

「お、お嬢様!?」


 エリザ様が意見を変えて賛成した事に、アデリナさんが声を荒らげて止めようとする。

 しかし、


「アデリナ…」(うるうる)

「う……!」


 エリザ様のお願い眼差し攻撃がアデリナさんに襲いかかった。アデリナさんはその眼差しをモロに受けて多大なダメージを受けた。それでも必死に耐えている。後退りをしながら、なるべくエリザ様の方を見ないように努力している。

 あぁ。あの攻撃が出たらもう終わりだな。大体、今みたいに意見が分かれて対立した時は、エリザ様のあの眼差しを受けてアデリナさんが折れるのが当たり前だったからな。

 そう思っている内に、眼差しに耐えきれなかったのか、アデリナさんが膝から折れてエリザ様が諸手を挙げて喜んでいた。

 こうして、俺達の森行きが決まった。



  ◆◆



 俺達は現在、町中を歩いていた。流石に何度も来ているため、町の構造や町に住んでる人の名前や、どこにどの店があるのか等の基本情報は頭の中にちゃんと入っている。そのお陰で、町の人達にも覚えてもらえて、親しくさせてもらっている。

 そんな訳で、


「おや、ティーダさんにマリアさん。今日は子供達と一緒にお出かけかい?シン君もおはよう」


 町中を歩いていると、こういう風に声をかけられて来るのは当然と言えば当然の事だな。今日の場合は、父さんと母さんが一緒にいるため、二人の方が最初に声をかけられるけど。


「シン君。また私の所で料理を作って頂戴ね。シン君の料理が美味しいって皆にも大好評なんだから」


 そう声をかけてくれたのは、前に何度か訪れて料理をした大衆食堂のおばちゃんだ。最初に行った時に食べた料理が何か物足りなかったので自分で作ってみたのだが、これが他のお客さんに大変好評なのだった。

 この町に住みながらギルドに寄せられた依頼を受ける冒険者の人や、行商に来ていた商人の方々の何人かはウチで働かないかと言われるほどだ。


「あらぁ。シン君じゃないの。また今度ウチによってよね。貴方は見所があるんだからぁ」


 次に声をかけてくれたのは、マークさんという、鍜冶師の人だ。名前からも分かる通り、男性だ。しかも中性的じゃなくて、かなりゴツい感じの。そんな人が何でこんな女性みたいな声を出しているのかと言うと、まあ普通にオネェだからだ。

 前に偶然マークさんの工房に行った時に、そこに並べられていた武器を見ていると、マークさんが話しかけてきたのだ。そのときに簡単な手解きを受けて作ったナイフがマークさんの琴線に触れたみたいで、気に入られた。そして、それ以来、会うたびに勧誘してくるのだ。


「すみません。私はスコール様の従者ですので……」

「あらぁ。それじゃあしょうがないわねぇ。でもぉ、たまに遊びに来るとかしてよねぇ。また、色々と教えてあげるから。それか、スコール坊っちゃまが嫌になったりしたら私の所においでよ」

「ははは……。もしそうなったら考えておきます」


 他愛のない話をしてマークさんと別れた。

 その後も、道行く人達から声をかけられた。ちょっと前に服を縫うのを手伝ってあげた人や、その他にも俺が手伝った人やアドバイスをした人達からお礼を言われたり、勧誘されたりしていた。


「何気にシンって多芸だよなぁ~」

「いくらなんでも多芸過ぎる気がしますけど…。あれでは、多芸というよりむしろ……」

「何というか“万能”という方が正しい気がしますわね」

「というか、シンのあの技術ってどうやって身に付けたんだろうな?」

「? ティーダさんやマリアさんが教えたのではないのですか?」

「いや、おじさんもおばさんも教えてないって前に言ってた」

「そうなのですか?」

「では、一体何故……?」


 後ろでスコール様達がう~んと悩んでいる声が聞こえる。俺が何でこんな多くの技術と知識を持っているのか疑問のようだ。

 ま、それを俺に訊いてきても答えは俺自身も知らないから無駄なんだけどな。何でか分からないけど、俺がやろうと思うと勝手に頭の中で何をやれば良いのか浮かんでくるんだ。で、それをやったら成功したって訳よ。俺自身、何でこんな風にポンポンと知識が沸いてくるのか不思議でしょうがないけど、これのお陰で、アクトルの町の皆の生活が良くなって、それが転じてグライド領が豊かになっていく事になるんなら嬉しい。


「ほら、四人とも。そろそろ町の門に着くから、気を引き締めてね」


 父さんから声をかけられて俺達は気が付いた。町の中と外とを分ける塀が見えてきている事に。その中で唯一開けられている場所である門が目の前にあった。


「お、もうそこまで来ていたのか。それじゃあ、行こうぜ」

「はい」

「楽しみですわ。ね、アデリナ」

「は。お嬢様は私が絶対に守ります」


 四者四様のコメントをして、それぞれの武器に手を触れさせて父さんと母さんの後ろについて行き、門から外に出た。



  ◆◆



「………おかしい」


 俺達が街道から外れた森に入って約一時間位が経った。俺達は未だに魔獣はおろか普通の獣にすら遭遇していない。俺達は頭に疑問符を浮かべて何故なにも出てこないのかと思い始めた時、父さんがそう呟いた。


「いくらなんでもこれはおかしいぞ。ここら一帯は、比較的安全な地域だとは言え、それでも普通の獣やEランク程度の魔獣が生息しているんだ。それなのに、一時間歩いて何も出てこないのはおかしすぎる。冒険者達が狩り過ぎたという報告も入ってる訳ではないし。一体何が起きてるっていうんだ!?」


 父さんが少し焦ったように慌てた様子で声を荒らげた。


「なぁ。俺もさっきから気になってた事があるんだけど。良いか?」


 そこで、スコール様が挟んできた。


「スコール様。何か?」

「ああ」


 スコール様は鼻をふんふんとさせて周囲の匂いを嗅ぐと、


「さっきからこの辺の匂いをちょくちょく嗅いでて気付いたんだけどさ、動物っぽい匂いの全部がこの森から離れてってるんだけど」

「!! それは本当ですか!?」

「うん。一応注意深く嗅いでるんだけど、動いている匂いは全部遠ざかってるんだよ」

「馬鹿な!」

「一体何が起きてると言うの?」


 スコール様の言葉に父さんと母さんが揃って混乱した。どうやら二人もこんな事態に巻き込まれるのは初めてのことみたいだ。


 二人とも少しの間混乱していたが、すぐに冷静になって二人だけで話し合いを始めた。


「こんな異常事態は初めてだ。一度帰ってレオンハルト様の指事を仰いだ方がいいな」

「そうね。それじゃあ子供達も早く帰らせましょう」

「ああ。四人とも、すまないけど、今日はこのまま…」

「あの、おじさん。もう一つあるんだけど良い?」


 父さんの言葉の途中で、またスコール様が遮るように挟んできた。


「どうかされましたか? スコール様」

「いや…、関係あるかどうか分からないんだけど……、あっちの方からなんか霧みたいなのがこっちに迫ってきてんだけど………」

『え!?』


 スコール様が指差した方向を全員で見ると、そこには、この森全部を覆わんばかりの霧が広がっていた。それがこっちまでどんどん広がってきている。


「おい。何かヤバそうだぞ。早く逃げろ……!」

「いえ。おそらくこれは間に合わないかと…」

「だな」


 父さんが俺達に逃げるように促すが、もうそこまで迫ってきていたため、俺とスコール様が諦めの声を発した所で霧が俺達を襲った。


「きゃっ」

「お嬢様!」

「マリア!」

「分かったわ」

「うおっ!」

「……………」


 エリザ様が小さく悲鳴をあげ、アデリナさんはエリザ様を素早く庇うように抱き締め、母さんはその二人の肩に手を当てて庇った。父さんの方は、俺達の肩に片手ずつ伸ばして側に引き寄せた。スコール様は少し驚いて声を出したが、俺は基本的に無言で成り行きを見守っていた。

 そして、そんな状態で霧が俺達を襲った。



  ◆◆



 そのままの状態で数分が経った。俺の身体には未だに何の変化もみられない。俺は周りがどんな状態になっているのか気になり、目を開けてみた。

 そこには、


「なんだ……これ…………?」


 目の前にあったのは、霧の森の中で開けられた空間とそこに佇む二つの建物だった。白と黒、二つの反対の色でそれぞれ統一されている。だが、それは今までみたことのない雰囲気を醸し出している。俺達の住んでる屋敷のような、貴族のの家のように立派なものでもなく、かと言って普通の家のように素朴な感じでもない。古びた建築物だった。それはまるで……、


「な、なんだこいつは……!」


 と、ここまで考えたところで父さんが目を開けて俺と同じようにこの建物を見たようだ。他の面々も、自分の身に何も起きない事を疑問に思ったのか、続々と目を開けてきていた。そして、自分の目の前に聳え立っている建物を目にしてビックリしている。


「あなた。これってもしかして……」

「ああ。これはおそらく、ダンジョンだ。それも突発性の中でも超レアの【神殿】タイプのな」

『ダンジョン!?』


 俺達四人は、父さんの言った一つの単語[ダンジョン]を聞いて、思わず口を揃えて興奮したテンションで声をあげた。


  ダンジョン

 それは、その名の通り[迷宮]である。内部の構造は謎。中にどんな罠や仕掛けがあるのかも謎。どんな生物が住んでいるのかも謎。まさに謎尽くしな存在なのである。その謎を知ることが出来るのは、実際に内部に入った者だけである。そして、ダンジョンを攻略すると、そのダンジョンの所有権を得ることが出来る。

 ダンジョンには、それぞれレア度がある。レア度が低い程出やすくて、高い程出にくくなる。一番低いのが洞窟タイプ。次が森タイプ、塔タイプ、遺跡タイプ。そして、最も出にくいのが神殿タイプだ。ダンジョンの中にはダンジョンの主となるボスがいる。

 ダンジョンには難易度と報酬がきちんとある。報酬と所有権は、ダンジョンボスを倒す事で手に入る。難易度と報酬は、レア度に比例する。洞窟タイプのダンジョンは、比較的簡単に攻略出来る構造になっていて住んでいるのも弱い部類に入るもの達しかいない。しかし、報酬はそれなりである。反対に神殿タイプのダンジョンは、内部の構造が複雑になっていて、住んでる奴等もトップクラス。だけど、攻略した時に得られる報酬は超一級品のものばかりで、何と必ず神武器ゴッドウエポンが一つはあると言うのだ。[神]殿タイプなだけに。

 ダンジョンは、二つの性質に分かれている。それが、永続性と突発性だ。永続性は、一度出現すると、ずっとそこにあり続ける性質を持つ。突発性はその逆で、一度出現すると、一定期間の間に誰も攻略する事が出来なければ、自然に消える性質を持つ。付け加えるならば突発性は、永続性に比べて出にくい。まぁ元々、ダンジョン自体出現するのは稀ではあるが。これらのタイプの中で、突発性限定なのが神殿タイプだ。それ以外のダンジョンは、永続性、突発性どちらにも確認されている。


 さて、ここまでの説明の中で実は気が付いた事が二つあるだろう。まず一つ目、これってゲームっぽくね。ダンジョンのボスとか、難易度とか報酬なんかも。実際はそこまで気軽なものじゃないだろうけど。

 もう一つは、と、その前にこのダンジョンの話は結構前にそれもエリザ様達と出会う前に聞かされた話でな。実はその時に一人ダンジョンに入ってみたいと駄々を捏ねた人がいたんだ。幸い、近くにダンジョンが無かったので、その我が儘が通らなかったので良かったといえる。

 まぁ、その人というのが、皆さんもお気付きの我が主な訳で……。

 んで、その主の目の前にダンジョンを持ってくると……、


 俺はチラリとスコール様の方に目を向けた。スコール様は…、


「…………………」(キラキラ)


 めっちゃキラキラした眼でダンジョンを見ていた。念願のダンジョンをお目にかかれた事で今にも飛び出しそうな勢いで興奮している。

 ……って。


「うおおおおおぉ! ダンジョンだあ~!? 冒険だぁ~!!」


 本当に飛び出しやがったよあのバカ主。しかも、あまりに突然過ぎたんで誰も反応出来てない。

 俺は咄嗟に走り出したが、時既に遅し。スコール様が《《白い方》》のダンジョンに飛び掛かると…


  ガンッ


『…………え?』

「……っ痛てて。何だったんだ? 今の」


 何もない入り口のところで、いきなりなにかにぶつかったような音がしてスコール様が弾かれたように吹き飛ばされた。

 俺達は、モロにぶつかって頭を抑えているスコール様とダンジョンとを交互に見ながら呆然としていた。




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